コラム

自治体のDX化とは?
推進するためのBPOサービスや
事例なども解説

近年急速に進む自治体のDX化。自治体向けBPOサービスを導入することでそのDX化をさらに推進することができます。また、アナログ業務とデジタル業務を掛け合わせることで、住民に寄り添ったサービス提供と自治体の業務効率化が同時に実現するという大きなメリットが得られます。今回は自治体のDX化の基礎的な概要から、自治体向けBPOサービスの基礎知識とメリットをご紹介します。


■自治体のDX化推進の背景

DX「Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)」とは、総務省の定義によれば「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら第3のプラットフォーム(クラウド・モビリティ・ビッグデータ/アナリティクス・ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービスさらには新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」です(「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(令和2年7月17日閣議決定))。

ただ単にデジタルを活用するのにとどまらず、社内エコシステムの変革を目指し、ネットとリアルの両面で顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出するという点に意味があります。そして自治体には「自治体DX」が求められています。国が掲げたデジタル社会のビジョン実現のためには住民に身近な行政を担う自治体、特に市区町村の役割は極めて重要とされているのです。

自治体DXにおいて、自治体は行政サービスを提供する際にデジタル技術やデータを活用し、住民の利便性を向上させると共に業務効率化を図り、人的資源を行政サービスのさらなる向上につなげていくことが求められます。またDXを推進するにあたっては、住民等とその意義を共有しながら進めていくことも重要だとされています。

自治体DXは、総務省の「自治体DX推進計画」をもとに進めていくことができます。

■総務省がまとめた「自治体DX推進計画」とは

自治体DX推進計画にはどのような役割があり、どのように活用ができるのでしょうか。概要をご紹介します。

●自治体DX推進計画とは

自治体DX推進計画とは、総務省が2020年12月25日に取りまとめた自治体がDXを推進する際に重点的に取り組む事項や国の支援策について示された計画書です。

自治体DXは、決して自治体単独で取り組むものではなく、国と自治体の連携や、自治体同士の連携が必要不可欠となっています。そのため、国の支援も含めた計画が示されています。

冒頭には自治体におけるDX推進の意義が書かれており、まずは自治体におけるDXの推進体制の構築が必要とされており、構築方法が示されています。次いで、取り組むべき具体的な事項がまとめられており、特に重点的に取り組むべき事項が6つ掲げられました。この重点取組事項については2024年2月5日に改定が行われ、7つとなりました。
またDXとあわせて取り組むべき事項も示されています。

●「自治体DX推進計画」の重点取組事項の内容

重点取組事項の7項目の概要を見ていきましょう。

1.自治体フロントヤード改革の推進
2.自治体の情報システムの標準化・共通化
3.公金収納におけるeLTAXの活用
4.マイナンバーカードの普及促進・利用の推進
5.セキュリティ対策の徹底
6.自治体のAI・RPAの利用推進
7.テレワークの推進

自治体フロントヤードとは住民と行政との接点のことを指し、行政手続きのオンライン化や、「書かないワンストップ窓口」という職員の聞き取りによる窓口支援システムへの入力によって、窓口に来た人の紙の書類記入をなくす窓口対応といった新しい手続き方法に変革することが目指されています。

また自治体の情報システムの見直しやAI・RPAの利用推進などのデジタル化、インターネットを利用した地方税に関する手続きの電子化を図る「eLTAX」の活用などがあります。

マイナンバーカードの取得に向けた環境整備を進めるため、郵便局窓口を利用した申請受付の実施なども重要視されている取り組みの一つとなっています。

ただ利便性を高めるだけではなく、セキュリティ強化やテレワーク推進などの観点からの取り組みも盛り込まれています。

●国の主な支援策

各取組事項に対して、それぞれ国の支援策も示されています。

例えば「1.自治体フロントヤード改革の推進」においては、先行・優良事例の周知や窓口BPRアドバイザーの派遣といった人的支援、「デジタル田園都市国家構想交付金」による資金的支援などがあります。

これらの支援を通じて、自治体は国や他の自治体と連携を取りながら、より効率的にDXを推進していくことができます。

■「自治体DX推進手順書」とは? 「推進計画」との違いも

その他、自治体DX推進に関わる文書として、「自治体DX推進手順書」があります。

●自治体DX推進手順書とは?

自治体DX推進手順書とは、総務省が2021年7月にまとめた文書で、DXに取り組む際の標準的な手順が示されているものです。

次の3つの手順書と事例集で成り立っています。

・全体手順書
・自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書
・自治体の行政手続のオンライン化に係る手順書

全体手順書では、以下の4つのステップで進めていくことが示されています。

ステップ0 DXの認識共有・機運醸成
ステップ1 全体方針の決定
ステップ2 推進体制の整備
ステップ3 DXの取組の実行

●自治体DX推進計画との違い

自治体DX推進計画には推進計画の全体像が記されている一方で、自治体DX推進手順書には具体的な取り組みの手順が書かれています。

どちらか一方で成り立つものではなく、推進しながらどちらも常に参照すべき文書といえます。

■自治体DXの推進に対する補助金・交付金

自治体DXを推進していく中で、多額のコストがかかることは避けられません。システムやツールの初期投資をはじめ、運用フェーズのメンテナンスコストを限られた予算内でやりくりしていくことは大きな課題となっています。そうした課題を解決する方法の一つが、補助金や交付金を利用することです。

補助金や交付金は返還不要であることからコスト負担を大きく軽減します。予算の枠がある程度広がることで、より積極的にDXのための投資を進めていくことができるでしょう。

自治体がDXを推進する際に受けることができる補助金・交付金には、次のものが挙げられます。

●デジタル基盤改革支援補助金

自治体がデジタル基盤改革に計画的に取り組んでいけるように支援する、総務省による補助金です。この補助金の目的は、自治体がマイナポータルと基幹システムをオンラインで結び、重要な子育てや介護関連の手続きをオンライン化するための経費を支援するものです。そのため、この手続きのオンライン接続が完了することを必須要件としています。

オンライン接続に必要な、連携サーバ・ファイアウォールの設置、申請管理システムの導入などに関する経費を補助します。

●デジタル田園都市国家構想交付金

内閣府によるこの交付金は、「新しい資本主義」の柱の一つであるデジタル田園都市国家構想の実現により、地方の社会課題の解決や魅力向上の取り組みを加速化させ、深化することを目的としています。

自治体がデジタル技術を活用し、行政や公的サービスの高度化・効率化を推進するため、デジタル実装に必要な経費などを支援します。

またデジタルの力を活用して豊かな社会・経済、持続可能な行財政基盤などの確立を目指す「デジタル行財政改革」の改革分野における社会変革につながるような先行モデル的な取り組みの支援も目的に含んでいます。

■自治体のDX化における課題と解決策

前述の通り自治体のDX化は、住民サービスの質の向上や行政の効率化を目指していますが、実施にあたってはいくつかの課題が存在します。自治体DXの主な課題と解決策について紹介します。

まず、主な課題としては、既存の古いシステムと新しいデジタル技術との互換性の問題が挙げられます。多くの自治体では古いシステムが根強く使われており、これらと新しい技術との統合が困難であるという問題があります。
次に、DXを推進するには相応の初期投資が必要であり、限られた予算の中での資金確保が大きな課題です。さらに、ITスキルを持つ人材が不足しているため、導入から運用に至るまでのサポート体制が不十分なことも問題となっています。

これらの課題を克服するための解決策としては、まず「段階的な導入」が考えられます。全面的なシステム刷新ではなく、部分的にデジタル化を進めることで、リスクとコストを抑えることが可能です。
また、「共同調達」により、近隣の自治体と共にシステムやサービスの調達を行うことで、コスト削減と効率的な運用が実現できます。さらに、「研修と人材育成」を行うことで、自治体内部の人材を育成し、長期的なDXサポート体制を確立することができます。
その他にも昨今注目されているのが、自治体向けのBPOサービスを活用することです。BPOサービスにより、専門的な知識を持つ外部のリソースを利用することができ、IT運用の負担を軽減しながら、効率的なシステム管理と運用が可能になります。これにより、予算の制約がある中でも、質の高いDXを推進することが可能になります。

これらの解決策を理解し、計画的にDXを進めることが、自治体におけるサービスの質の向上と効率化を実現する鍵となります。自治体DXの成功は、住民からの信頼を得るためにも非常に重要となります。

■自治体向けBPOサービスとは?

自治体がDX化を進めていく際、BPOサービスを導入することが成果を出す有効な手段の一つとなります。

●BPOサービスとは

BPOは「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の頭文字をとったものです。業務やビジネスプロセスを専門企業に外部委託することで、より優れた業務品質を実現し、住民へのサービス提供価値を高めることができます。

自治体向けに提供されているBPOサービスでは自治体業務を代行・支援します。例えば窓口業務・受付事務局運営業務・コールセンター業務・申請書類の審査などの業務代行や、事務処理のデジタル化や業務効率化など業務改善を一手に引き受けるサービスもあります。
つまり自治体が業務をBPOに委託することで、業務代行とともに従来業務の効率化や経験と知見の少ない業務においても高いレベルでの対応が可能になります。

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■自治体のDX化にBPOサービスが有効な理由

従業員の働き方改革やDX化の推進によって自治体に求められる役割が変化しています。2020年に発生したコロナ禍においてのワクチン接種の準備や、各種支援金・給付金などの準備といった自治体の業務が増加する一方で、自治体は本来の業務である公共サービスを安定的に提供する責任があるため、前述であげたような突発業務が発生したとしても、コア業務である公共サービスの提供をおろそかにすることができません。
また人手不足の影響で複雑化・多様化する自治体の業務を職員のみで対応することが難しくなっています。そのため安定的な公共サービスの提供には、外部への委託などを含めたBPOサービスの活用を導入・検討する必要があります。
BPOサービスを活用することでコア業務とは関係のない新しい知識やノウハウを学ぶ時間が不要となり、本来の業務へ集中することができます。また業務の効率化にもつながり、質の高い公共サービスの提供が実現できます。

■自治体向けBPOサービスを導入してDXを促進する方法

●「行政手続きのオンライン化」を促進

自治体が自治体向けBPOサービスを導入することで、具体的にどのようにDX化につながるのでしょうか。

BPOサービスを導入することで、行政手続きのオンライン化をよりDXにつながる形で実現できることもあります。自治体DX推進計画で示された取組事項の一つ「行政手続きのオンライン化」を実現することによってDXにつなげるには、ただデジタル化するだけはでなく、従来のアナログな方法に慣れていた住民が、よりスムーズに利用できるように利便性も提供しなければなりません。

●文書管理・電子決済・業務改善アプリやシステムを導入する業務効率化

事務作業や決済などの個別業務をデジタル化するほか、業務改善のための仕組みを開発導入し、運用するBPOサービスを利用することもDXにつながります。
ただ導入するだけではなく、DXにつなげるためには業務改革の効果が求められます。例えば定型業務を完全自動化し、担当人員が不要になるといった抜本的な改革ができるのが理想です。

●RPAやAI-OCRなどを用いたAI業務改革

特にRPAやAI-OCRといったAI(人工知能)を用いた技術を用いるBPOサービスを利用することは、業務改革につながりやすくなります。
RPAとはロボティックプロセスオートメーション(Robotic Process Automation)のことで、これまで人が対応していた作業をAIやルールエンジンなどで代替し、より高度な作業を実現する仕組みです。
AI-OCRとはAI技術を活用したOCRの仕組みやサービスを指します。OCRをAI技術と掛け合わせることで文字認識率が向上し、帳票フォーマットの設計なしで項目抽出ができるなどの特徴があります。
AIはこれまで不可能だったことを可能にするだけではなく、人にはできない高度な処理を実現し、業務改革にもつなげられるでしょう。

●テレワークの推進

自治体業務は情報セキュリティの観点においてテレワークがむずかしい業務が多いと言われています。しかしながらテレワーク導入は今後の自治体DXのポイントの一つと言えます。定型業務をBPOで委託することによってテレワークを実現しやすくなります。

■自治体のDX化を進めたBPOサービス導入事例

実際に自治体がDX化を進めることに成功したBPOサービスの導入事例を見ていきましょう。

●マイナンバーカードの普及促進

ある自治体ではマイナンバーカードの取得率向上に向け、出張申請の受付会場の設置を推進しており、その一環としてマイナポイント手続きのためのBPOサービスによるオンライン窓口システムを市内のスーパーマーケットに設置しました。これはリモートでビデオ通話を通じて専用オペレーターによる案内が受けられるものです。開庁時間外や土日などにも手続きが可能で、住民の行政手続きの利便性向上を提供すると共に、マイナンバーカードの取得率向上も期待できるようになりました。

●スマートシティ化

ある自治体では民間企業に業務委託し、産官学民連携による震災復興・地方創生の支援を受けています。すでに数多くの事例を生み出しており、中でもスマートシティ化を推進しているのは特記すべき点です。市民中心の次世代社会の創造を目指し、AIやビッグデータ、IoTなどの先端デジタル技術を駆使した都市づくりを推進しています。

■TOPPANのBPOサービスを導入した自治体の事例

次にTOPPANのBPOサービスを導入した、自治体の成功事例をご紹介します。

●「行政手続きのオンライン化」によるDX推進

TOPPANでは地方自治体向けにアナログ技術とデジタル技術を掛け合わせた独自の「Hybrid-BPO™」を開発提供し、自治体の業務効率化・業務品質向上を推進しています。
相模原市では住民の行政手続きや施設利用、イベントなどの質問に答える有人のコールセンターである「ちょっとおしえてコール相模原」と、デジタル上で行政手続きのナビゲーションを行う「わたしの手続案内」を連携し、住民と自治体をスムーズにつなぐことで、自治体の業務効率化・業務品質向上のほか、双方にとって利便性の高い行政サービスの実現を目指しています。
行政手続きのオンライン化のDXを進めるためには、ユーザビリティ、つまり使いやすさの観点から徹底して工夫する必要があります。相模原市の例では「電話で問い合わせができる」という住民が慣れ親しんでいるアナログのサービスと行政手続きのオンライン化を上手く組み合わせることで、煩雑な行政手続きを住民に対して分かりやすく案内できるというメリットが生まれます。
またコールセンターに入った問い合わせの分析結果を用いてオンライン手続き時に注意書き等を追加することで問い合わせ数削減を目指したり、住民のアクセスログ解析結果をコールセンターのトークスクリプトに盛り込み、より一層のユーザビリティの向上を目指したりと多様な取り組みを実施しています。

●市役所での導入事例

【課題】
ある市役所では職員の業務量増加、時間外勤務の増加、職員数減少への対応という課題がありました。そうした中、行政サービスを持続可能な形で続けていくために業務にICTを導入することで、誰もがミスなく効率よく事務作業を行い、さらには職員の事務作業の負担を軽減することによって、より価値のある業務に注力できるようにしていきたいと考えました。

【成果】
BPR(業務改革)の業務設計からRPA導入まで伴走型で実施できるTOPPANに業務を委託しました。業務の調査・分析の後、軽自動車の新規登録・廃車手続きの実際の業務にRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)を導入。期待通りの正確性と効率化の効果を得て大きな手応えを実感しました。その他、複数の課で実証を行い、動作の確認・検証を行いながら業務改革を推進しています。

■まとめ

自治体向けBPOサービスの活用によって自治体DXを促進することができる可能性があります。何を業務委託するかによって大きく変わってくるものですので、ぜひ積極的にBPOサービス事業者に相談してみてはいかがでしょうか。

TOPPANでは自治体や企業の業務に幅広く対応するBPOトータルソリューションを提供しています。企画設計・事務局・制作・発送・情報管理・システム開発・コールセンターなど幅広い業務にそれぞれのプロフェッショナルが対応いたします。自治体への導入実績も豊富にあります。また今回、事例でご紹介した自治体向けのアナログ技術とデジタル技術を掛け合わせた事務代行支援サービス「Hybrid-BPO™」では、自治体DX推進のお手伝いが可能です。

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2024.07.30

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