コラム

自治体BPRのトレンドと
デジタル化・DX化とAI活用の未来

自治体ではいま、BPRの手法が取り入れられており、業務改革が進んでいます。BPRは自治体業務にどのような効果をもたらすのでしょうか。

今回は、自治体BPRの概要から効果、必要性、最新トレンドまで導入ステップ、未来の展望について解説します。これからBPRの導入をご検討されている場合には、ぜひヒントにされてください。


■自治体BPRとは? 自治体BPRの必要性

まずは自治体が行うBPRの概要とその必要性についてご紹介します。

●BPRとは?
BPRとは、「Business Process Re-engineering(ビジネスプロセスリエンジニアリング)」のことで、直訳すると、「ビジネスのプロセスなどをデザインし直す」といった意味合いになります。これは、単に業務の一部を効率化する「業務改善」とはまったく異なり、企業の経営目標を達成するために、既存の業務フローや組織構造、情報システムといったビジネスプロセス全体を根本から見直し、ゼロベースで再構築する抜本的な経営手法であり、コストの劇的な削減、生産性の飛躍的な向上、そして顧客満足度の最大化といった、企業全体の競争力を根本から高めることにつながります。

プロセスが分断された組織においては、業務効率化はもちろんのこと、デジタルツールの導入に際しても、不都合が多く、業務が遂行しにくくなっています。そうした状況を解決するべく、BPRの手法が、日本でも取り入れられるようになってきました。

●自治体で進むBPR
自治体においてもBPRが進められています。自治体では、住民に対して提供する行政サービス業務や、バックグラウンド業務などのあらゆる業務プロセスを根本から見直すことで最適化し、業務改革を目指しています。

●BPRが自治体にもたらす効果と必要性
近年、日本社会は少子高齢化と労働人口の減少という深刻な課題に直面しており、地方自治体も例外ではありません。限られた職員で増大する行政サービス需要に応えなければならない状況は、喫緊の課題となっています。さらに、人口減少は税収の減少に直結するため、財政基盤の弱体化も懸念されています。

こうした背景から、自治体BPRの必要性が急速に高まっています。自治体BPRは、以下の理由から自治体運営の持続可能性を高めることが期待されています。

・職員の負担軽減とモチベーション向上
複雑で非効率なアナログ業務や紙ベースの作業をデジタル化することで、職員の作業時間を削減し、より付加価値の高い住民サービスに注力できます。これは、職員の働きがい向上にもつながります。

・住民サービスの質の向上と利便性の確保
BPRを通じて業務プロセスを最適化することで、住民はオンラインで手続きを完了できるようになるなど、待ち時間の短縮や利便性の高いサービスといった恩恵を享受できます。これにより、住民満足度の向上に貢献します。

・財政基盤の強化
業務の効率化はコスト削減に直結します。BPRによって無駄を排除し、限られた予算をより効果的に配分することで、厳しい財政状況に対応できる強固な運営基盤を構築できます。

・デジタル化・DX化の推進
自治体BPRは、DXの第一歩となります。業務プロセスをデジタル前提で見直すことで、テクノロジー導入の障壁をなくし、AIやRPAなどの最新技術活用をスムーズに進めることが可能になります。

このように、自治体BPRは、現在の社会課題を解決し、将来にわたって住民に質の高いサービスを提供し続けるための、不可欠な経営手法といえます。抜本的な業務改革を通じて、人手不足や財政難を克服し、持続可能な自治体運営を実現することが求められています。

■自治体BPRの最新トレンド

自治体BPRでは、主に次のテーマやツールで取り組みが進められています。最新の取り組みのトレンドを見ていきましょう。

●ペーパーレス化とデジタルデータ管理
自治体において、近年課題になっているのが窓口手続のデジタル化です。添付書類の簡素化やデジタル化、押印の廃止、キャッシュレス決済の導入といったペーパーレス化やデジタルデータの管理などがBPRの主流となっています。

ある自治体ではBPR計画について、幹事課を経由する照会回答業務においてはフォーマットの統一や集約作業の自動化などを実施したり、消耗品の購入業務においては見積簡易作成ツールやとりまとめルールの設定をしたりする旨を設けました。このBPRを推進する際に、同時にペーパーレス化の推進も取り組む項目としています。

●クラウドサービスの利用
自治体では業務へのクラウドサービスの利用が進んでいます。クラウドサービスとは、サービスをインターネット経由で利用することができるサービス全般を指します。従来の自治体の中にサーバーを設置するオンプレミス型のサービス利用から、インターネット経由でのサービス利用に切り替えることで、システムのアップデートへの早急な対応や、自治体内での行政業務のシステム連携など、自治体業務の負担を大幅に軽減できることが期待されています。

近年は共同クラウド化を実現する「自治体クラウド」の計画も国によって進められており、将来的にはクラウド環境での業務遂行がベースとなる可能性もあります。

●DX化の推進とAI活用
DX化は、民間企業のみならず、自治体でも進んでいます。ICT技術の浸透が、住民の生活をより良い方向に変化させることがDX化のベースとなる考え方です。

自治体においては、行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させるとともに、ICT技術やAI(人工知能)などの活用によって業務効率化を図り、貴重な人的リソースを住民サービスや行政業務全般にあて、さらなる質の向上につなげていくことを目指しています。

■自治体BPR導入のステップ

自治体BPRは、次のようなステップで導入を進めることができます。

●現状分析と課題抽出
まずは、現場の業務プロセスの中から課題を特定して抽出します。洗い出した課題の中から優先順位をつけて解決が見込める改善策を考えます。

●目標設定と計画立案
ただ改善を図るのではなく、BPRの目標を設定することが重要です。例えば住民サービスの質の向上、DX化の推進などの具体的な指標を設定して改善計画を立てていきます。計画においては最適なデジタル技術の選定と導入についても策定しておく必要があります。

●実行とモニタリング
計画に基づき、業務改善の実行を進めます。このときに必要なデジタル技術も導入します。

計画を実行していくにあたって、モニタリングも重要です。ただ実行するだけでなく、どのくらいの改善が進んでいるのか指標に基づいて検証していく必要があります。

■自治体でBPRが進まない理由

これまで、自治体BPRの重要性や導入のステップについて解説してきましたが、その一方で、多くの自治体でBPRがなかなか進まないという現実があります。そこには、民間企業とは異なる、自治体ならではの課題が存在します。

●前例踏襲主義
「これまでと同じやり方で良い」という意識が根強く、抜本的な業務改革に対する抵抗感が生まれやすい傾向にあります。

●財源と予算の制約
BPRの初期投資(システム導入費など)が大きな負担となり、予算の確保が困難な場合があります。

●縦割り組織の弊害
部門間の連携が不十分なため、業務プロセス全体を横断的に見直すことが難しく、部分的な最適化にとどまってしまうことがあります。

●専門人材の不足
BPRを推進するための専門的な知識やスキルを持つ職員が不足していることも大きな要因です。

●住民サービスの公平性の担保
民間企業と異なり、一部の住民だけではなく、すべての住民に公平なサービスを提供する必要があるため、画一的な改革が難しい場合があります。

これらの課題を乗り越えるためには、トップダウンでの強力な推進体制、職員への丁寧な説明と理解促進、そして外部の専門家やサービスの活用も有効な手段となります。

■自治体BPRの未来展望

多くの自治体がBPRを進め、業務改革を成功させていくことにより、どのような未来が待ち受けているのでしょうか。

先に効果としてお伝えした通り、業務プロセスが改善することにより、住民サービスの質向上や業務効率化のメリットや効果が得られます。

これが各業務に広がっていくことで、さらに効率化が進み、自治体全体の効率化につながるでしょう。

●新技術の登場と影響
自治体において、BPRでよく活用される技術に、 RPAやAI-OCRなどが挙げられます。RPAは、ロボットによって業務を自動化することを指し、AI-OCRは、AI技術によってOCRの精度を高め、より紙帳票類のデジタル化をスムーズにするものです。

これらの技術を導入するにあたって、自治体の課題として多く挙げられるのが導入活用の人材不足です。また具体的なサービスの設定においても、知見が乏しいことから、より効率的に技術の導入を進めていくためには工夫が必要になってきます。

●BPOの活用の検討
BPRを進めるにあたって人的リソース不足や、新技術の選定導入などは、自治体にとって、今後さらに大きな課題となっていくと考えられます。このことから、BPRを丸ごと業務委託によって実現するというアプローチ方法も検討していくことが重要といえるでしょう。例えばBPO(Business Process Outsourcing)の業務プロセスをアウトソーシングするサービスを利用することで、BPRを実現する手段もあるということです。

■まとめ・TOPPANのご紹介

BPRは自治体が抱える課題を解決するために必要性の高い取り組みといえます。今後、さらにBPRを進める業務を増やしていくためにも、より知識を高め、BPOサービスを利用するなどの手段も考えながら対応していくことが重要といえるのではないでしょうか。

TOPPAN BPOサービスでは、自治体さま向けのBPOサービスをご提供しております。BPRはもちろんのこと、自治体さまそれぞれが抱える課題解決のために最適化した業務をご提案いたします。

Hybrid-BPO 画像バナー(TOPPAN).png

給付金BPO_画像バナー.png

2025.10.06