自治体ポータルサービス「クラシラセル®」が行政情報を一元化!
より便利で安全な市民生活に貢献
「西側に山、東側に海」と自然に囲まれた豊かな風土を誇る宮城県名取市。その豊かな自然が、閖上(ゆりあげ)赤貝や北限のしらす、仙台せり、カーネーションなどの多くの名産品を生み出してきた。一方同市は、年間300万人以上が利用する東北の空の玄関口「仙台空港」を擁し、さらに、東北新幹線、東北本線、仙台空港アクセス線などの鉄道網、東北自動車道、仙台東部道路、国道4号線などの道路網を有するなど、県内屈指の交通の要所でもある。令和7年度には、市内の大規模ショッピングモール内に無料で遊べる屋内遊戯施設「なとりぱーく」をオープンさせる予定など子育て事業を拡充し、子育て教育先進都市を目指している。政令指定都市の仙台市と隣接し、県内でも数少ない継続的に人口増加を続けている都市だ。このように着実に発展を続ける名取市は、行政情報のアクセス環境の整備・改善などを目的とした自治体DXに本格着手した。同市が進める自治体DXは具体的に何を目指しているのか、その独自の取り組みについて名取市役所 企画部 DX推進室 主査 今野 雅人氏、同室 主査 菅原 裕氏にお話を伺った。

施策認知度向上や市民参画の促進を目的とした情報発信の再整備に着手
名取市では2022年、地域向けのDXを推進することを目的としてDX推進室を設置した。まず、具体的にどのようにしてDXを進めていくべきなのか、そのロードマップを描くことが同室の最初のミッションとなった。

企画部 DX推進室 今野 雅人 氏
「同室立ち上げに際しては、まったくゼロからのスタートとなり、まず課題の洗い出しから着手しました。庁内全体を対象にヒアリングを実施して、実際にどのような課題が存在するのかを洗い出していく中、『情報発信』に関わる課題が浮かび上がってきました。
当市では、広報誌やホームページをメインに、その他インスタグラムやX(旧Twitter)などさまざまな媒体を通して行政情報を発信しています。市民の方の目にできるだけ触れやすいように多様な媒体で発信してはいるのですが、欲しい情報は市民の方ご自身で探しに行かなければ手に入りません。また、我々市側も媒体ごとに1つ1つ手作業で情報を登録していかなければならないので、作業の負担が徐々に大きくなってきました」と、当初の課題について今野氏は説明した。
上記を受けて同室は、市の施策認知度向上や市民参画の促進を目的とした、情報発信の整理に着手。行政情報の市民の側から見たアクセス環境の整理・改善と、さらに、市職員の負担軽減を目指す取り組みを開始した。
分かりやすく自由に情報を受け取ることができるような情報ツール開発を目指す

企画部 DX推進室 菅原 裕 氏
前述の課題を解決するために開発を進めたのが、名取市公式ポータルアプリ「ナトぽた」だ。しかし、新たな情報媒体としてアプリをリリースするとなると、職員からは「また仕事が増えるのでは」という懸念を抱かせる恐れがある。そのような懸念を念頭に置きつつ、どのような媒体が最適なのかを検討を進めた。
「これまでさまざまな情報媒体に対応した結果、情報の受け取り方も多様になってしまいました。そこでそれを一元化し、市民の方にとっても分かりやすい方法で、しかも自由に情報を受け取ることができるような、ポータルサイトのようなイメージのものを作りたいと考えました」と、菅原氏はナトぽた開発のコンセプトをこのように説明した。
市民目線での使いやすさを重視し、「クラシラセル」ベースでアプリを開発
実際にどのようなツールが適切なのかを判断するために、他の自治体の状況を踏まえていくつかのツールを比較検討したという今野氏「他の自治体では、公式SNSアカウントを使って情報発信するケースが多いと思います。我々も市民の方により身近に手にとってもらいやすい公式SNSアプリを情報発信ツールの有力候補の1つとして考えていました。しかし、同ツールのようなメッセージが縦スクロールしていく仕様だと、古い情報から上に情報が流れていってしまい確認が難しくなります。他の自治体の公式SNSアプリで実際に確かめてみたのですが、どうしても直感的に操作しにくい印象を持ちました」
また、すでにパッケージ化されているSNSアプリは、カスタマイズが必要になった際に自分たちの要望にどこまで柔軟に対応できるのかが不安だったと言う。最終的にはプロポーザルの形で公募し、審査の結果TOPPANのクラシラセルを採用した。
「今回最終的にクラシラセルが採択されたのは、まず市民目線で見たときの使いやすさや操作感の良さ、デザイン性などです。加えて、職員の情報発信時の作業効率化面でも評価しました。作業効率化という視点では、今回クラシラセルとホームページとを情報連携できる『Con:tegration(コンテグレーション)※』機能を実装する形でご提案いただいていたことも大きな採択理由でした」と、今野氏はクラシラセル採択の経緯を振り返った。
「Con:tegration」は、仮想統合データベースにより自治体メディアの配信情報を一元管理できるようにするTOPPANの自治体情報発信支援ツールだ。今回名取市のホームページなどとナトぽたを情報連携し、ホームページ側の新着情報をアプリ側で自動取得できるようにした。

TOPPANと共同でアプリ公開の準備作業を進める
アプリ公開に向けた準備・設定に際しては、クラシラセルの強みである見やすさや操作性を活かして、市民視点での使いやすさや職員の負荷軽減などに特に焦点を当てて進めた。具体的な準備作業について、今野氏は次のように説明した。
「登録情報の準備は、TOPPANさんの支援を受けながら、我々のほうで用意し、データベースへの登録やマスターの設定などはTOPPANさんにお任せして、公開準備を進めました。
また、菅原氏は、「多言語化の作業は我々だけの力では難しかったため、少々無理を承知でTOPPANさんに協力をいただき、進めることができました」と、当時のことを振り返った。

必要な情報がその都度届き、行政情報が分かりやすくなったと好評
名取市の公式ポータルアプリ「ナトぽた」公開からおよそ10カ月。クラシラセルの機能を活かしたさまざまな市民向けサービスを提供している。
「まず一番のポイントになるのが『プッシュ通知』機能です。受け取りたい属性情報や居住地区などをダウンロード時に選択しておくだけで、市民の方それぞれが必要な情報、欲しい情報がその都度探しに行かなくても市民の方に届くようになりました。『地域マップ』機能では、公民館などの公共施設や昨年から本格運用を開始した交通バス「なとりんくる」の指定乗降場の位置などがいつでも確認できるようになっています。また、地域経済活性化のために導入したデジタル地域通貨『なとりコイン』の加盟店を表示させることで、地域活性化促進と市民の方の利便性向上を図っています」。ナトぽた活用状況について今野氏は説明した。

その他、さまざまなサービスやアプリケーションを一箇所に集約する「マイサービス」機能や、「カレンダー」機能を使ったごみ収集日の表示、さらに、シナリオ型Q&Aを活用して必要な情報に素早くたどり着くことができる「案内ナビゲーション」などが好評だ。独自の取り組みとして、上記で少し触れたCon:tegrationを使った情報連携がうまく機能している点が挙げられる。
「今年に入って名取市内でもクマの出没頻度が上がっており、出没情報は速報的にナトぽたの通知でお知らせしています。また、県警から不審者情報が発信された段階でCon:tegrationを使ってナトぽた上で表示させるようにしました」と、菅原氏は市民の安心・安全な暮らしに貢献している点を強調した。
市民の方からは、「これまで自分で必要な情報を探しに行かなければならなかったが、今はその都度届くようになり行政情報が分かりやすくなった」「ポータルサイト的な機能を備えており、そこに情報が集約されているので使い勝手がよい」などの好意的な意見が届いているという。
また、職員の作業負荷軽減に関しても、「当初のようにさまざまな媒体向けの作業が減った分、作業軽減につながっているのではないか」と、菅原氏は感じている。

触ってみれば「ナトぽた」の便利さは実感できるはず
名取市は、しっかりとKPIを定めてポータルアプリ「ナトぽた」の利用促進を図っているのも印象的だ。
「2025年1月15日時点のダウンロード数は3,595。今年度の目標ダウンロード数を3,900で、人口79,000人に対して5%として設定しています。現在、目標まであと一歩のというところです。また、TOPPANさんから頂いているアプリデータによると、ダウンロードした方の約半数が継続的に利用していただいているようです。来年度の目標は人口比10%ですが、ダウンロード数は堅調な状態が続いています」と、今野氏はナトぽたの利用状況について説明した。
今後の課題の1つが、利用者をどのように拡大していくかという点だ。現在の利用者層は30代から60代が中心で、若年層や高齢の方の利用促進が鍵になる。そこで、市で行っているデジタルデバイド対策の1つであるスマホ教室の機会を利用して、研修の際にナトぽたをダウンロードして実際にアプリを触ってもらっている。実際に触ってみると「やっぱり便利だ」と実感してもらえるという。
「パソコンやスマートフォン操作などのIT関連が苦手な方も潜在的に結構いらっしゃるのではないか、と想定しています。しかし実際に触って体感するとその便利さは充分伝わるので、ユーザー数も自然と増えていくはず。どのようにナトぽたの良さに触れてもらうのか、その機会を作っていくことがこれからの課題です」菅原氏は当面の課題についてこのように語った。
その他、名取市では、転入者への案内やフリーペーパーへ掲載するなど、積極的に推進を図っている。
今後はユーザーインターフェース改善とデータ活用がポイント

「ナトぽたに関しては、一括既読機能を搭載して最新の情報が見やすい状況など、今後さらに使い勝手を向上させるための細かなユーザーインターフェース改善に取り組んでいきたいと思っています」
「市のDX推進という観点からは、今後さまざまなシステムやデータが連携していく中で、いかにデータを活用するかがポイントになってくるのではと想定しています。少しハードルが高いかもしれませんが、データに基づいて効果的な施策を立案するようなことが実現できればよいと考えています」と、今野氏は今後の自治体DX推進のビジョンを語った。
名取市 山田市長からコメントを頂戴しました

山田 司郎(やまだ しろう)氏
「ナトぽた」は、利用者自身があらかじめ設定した、関心のある行政情報カテゴリーに応じて、個別に市の情報がプッシュ通知されるほか、市の提供するアプリやWEBサイトが集約されているので、行政情報や各サービスへのアクセス性が良くなり、お知らせや施策の認知度向上を図ることができたと感じています。また、ホームページへ新着情報を掲載した場合に、自動的に連携して「ナトぽた」でも発信される仕組みを実装することで、情報発信作業に係る職員の負担軽減にも配慮しました。DX化に取り組むうえでは、業務負担の軽減を図ることも重要であると捉えています。
今後、名取市民の生活利便性向上、安心・安全に貢献していくためにも、周知を重ねて利用促進を図るととともに、「ナトぽた」に対する様々なニーズを捉えて、機能を改善・拡張し、「ナトぽた」を窓口とした幅広い行政サービスを市民の皆さまに提供したいと思っています。
「ナトぽた」が市民の皆さまに、より一層活用されることを期待しています。

最後に
TOPPANでは、自治体様の課題に一緒に向き合い、それぞれの自治体様に最適な住民ポータルサービスを提供いたします。是非、お気軽にTOPPANへお問合せください。
2025.03.24