自治体DXの成功事例と
成功へと導くポイントを解説
本コラムでは、自治体DXの成功事例をご紹介するとともに、成功へと導くポイントを解説していきます。自治体DXの課題をより深く取り上げているコラムもご用意しておりますので、合わせてご確認ください。
事例1:自治体ポータルアプリから市民参加を促す
~つくば市政策イノベーション部科学技術戦略課~
つくば多言語ポータルアプリ整備・運営委託、自治体オリジナルアプリ構築SaaS型サービス活用によるポータルアプリ開発

●課題背景
つくば市に住む高齢者や若い子育て世代に対し、それぞれに必要な情報を適切に届けることが求められていましたが、市のホームページだけでは情報を分かりやすく適切なタイミングで届けることが難しいという課題がありました。また、つくば市には144か国約1万2千人の外国人(2023年1月1日時点)が居住しており、多国籍化が進むなかでさらなる多言語対応の必要性が生じていました。
●事業概要
課題解決のためにつくば市が推進する「つくばスーパーサイエンスシティ構想」の取り組みのひとつとして、自治体オリジナルアプリ構築SaaS型サービス「クラシラセル® 」を活用し、つくばスマートシティアプリ「つくスマ」が開発されました。自治体から発信する情報を一人ひとりの住民にパーソナライズし、適切なタイミングで情報を届ける仕組みを構築しました。
●具体的な取り組み
1.自治体オリジナルアプリ構築SaaS型サービス「クラシラセル® 」を活用したアプリ開発
属性情報などをもとに住民へパーソナライズ配信を行える自治体オリジナルアプリ構築SaaS型サービス「クラシラセル® 」を活用し、つくばスマートシティアプリ「つくスマ」を開発。年代や家族構成などを登録することで、住民が必要な情報をプッシュ通知で受けとることが可能です。ほかにも、選択肢を選ぶことで必要な情報へ誘導するナビゲーション機能や、公園や避難場所などの地域情報を表示するマップ機能なども搭載。日本語のほか、英語、中国語(簡体字)、韓国語、インドネシア語、ベトナム語にも対応しています。
2.図書館利用カードのデジタル化等、住民生活をより便利にするアプリへ
アプリを継続して使用してもらえるよう、自治体の職員や住民からの声を参考に、図書館利用カードのデジタル化などを追加実装。今後、一方的な情報発信だけでなく住民の要望を市と共有するレポート機能や、市からのアンケートに住民が答えられる機能など、双方向コミュニケーションサービスにアップデートしていきます。
●本事例で採用されたサービス
事例2:山間部での高負荷な見回り業務をセンサーで自動化
~長野県 飯綱町~
飯綱町LPWAを活用した実証実験事業
LPWA基地局の設置、対応センサーの作成・設置、データ閲覧システムの導入
●課題背景
飯綱町ではこれまで自治体職員や市民が数時間かけて山間部のため池の水位や、山沿いに設置した狩猟罠などの確認を行っており、見回り業務の負担の大きさが課題となっていました。現地に足を運ばなくては異変の有無が分からないという点や、積雪のシーズンには見回りのできない場所があることも問題となっていました。
●事業概要
IoT向けの無線通信技術LPWA※を町内全域で利用できるよう中継器を設置し、センサーをため池や狩猟罠などの確認したい対象物に設置しました。水位や温度などのデータを遠隔から確認でき、異変が生じるとアラートメールが発信される仕組みを構築。閲覧システムにより、各種データをグラフなどで確認することも可能です。将来的に見回りが不要となった場合には、年間約850時間の業務時間削減が見込めます。
※Low Power Wide Area…省電力かつ長距離での通信が可能な無線通信技術のひとつ
●具体的な取り組み
1. 基地局/中継器の設置 : 基地局10台、中継器17台を設置
2. 河川/配水池/ため池の水位監視 : 水位センサーを設置し水位を計測
3. 雨量の監視 : 3か所に雨量センサーを設置し雨量を計測
4.育苗ハウスとサクランボ圃場の管理 : 育成管理のため温度や湿度、照度などの計測センサーを設置
5.除雪車の管理 : 除雪車5台にGPSロガーを設置し、除雪車の出動情報や除雪状況を管理
6.獣害対策 : 罠センサー6台を設置し罠の作動状況を監視
7.積雪量の監視 : 3か所に独自開発の積雪センサーを設置し積雪量を計測
●本事例で採用されたサービス
事例3:小中学生向けのデジタル防災教材を導入
三豊市デジタル防災学習システム「デジ防災®」
三豊市デジタル防災学習システム「デジ防災®」
~香川県 三豊市役所~
三豊市デジタル防災学習システム「デジ防災®」
タブレット端末で防災を学ぶ全80コンテンツの新たな学習システムで自分ゴト化を支援
●詳細
小中学生の防災意識を自分ゴト化でき、楽しく防災を学べるデジタル防災学習システム「デジ防災®」を開発し、全国で初めて三豊市に導入されました。
児童・生徒の習熟度の可視化を可能にし、教職員の授業準備の負担軽減にもつながっています。
●本事例で採用されたサービス
自治体DXの課題と成功へと導くポイント
1.DXの必要性を十分に理解してもらう

まずは、自治体内部でDXの必要性を十分に理解してもらうことが重要です。行政職員にDXの必要性を十分に理解してもらえないと、施策を推進するのは困難です。そのため、施策を実施する前に、DX推進の目的や方向性、効果に関しての周知徹底が必要です。残業時間の削減や柔軟な働き方の実現など、職員にとってのメリットも同時に伝えると、よりスムーズな理解促進につながります。
2.段階的なアプローチ

一度にすべてのシステムをデジタル化するのは現実的ではありません。段階的なアプローチを取ることで、リスクを最小限に抑えつつ、効果的にDXを進めることができます。まずは小規模なプロジェクトから始め、成功事例を積み重ねることで、徐々に規模を拡大していく方法が推奨されます。
3.デジタル人材の育成・教育

デジタル技術を活用するためには、専門知識を持った人材が不可欠です。自治体内でのデジタル人材の育成・教育は、DXを成功させるための鍵となります。外部からの専門家の招聘や、職員への定期的な研修を通じて、デジタルリテラシーを向上させることが重要です。
4.住民とのコミュニケーション

住民の利便性を考慮せず、行政側だけの都合でDXを進めてしまうと、住民の混乱を招き、かえって行政サービスに対する満足度が低下する可能性があります。このような事態を避けるためにも、住民と十分なコミュニケーションを取ったうえで、適切な施策を考えましょう。
住民の意見を汲み取るには、アンケートや意見箱の設置などの施策が効果的です。また、この機会に住民アプリを開設し、効率良く意見を汲み取る仕組みを構築するのも良いでしょう。
まとめ
本コラムでは、これから自治体DXに取り組まれる方への参考として、TOPPANがご支援してきた自治体DXの事例をご紹介してきました。
TOPPANでは、自治体さまの業務効率化に長年貢献し、自治体さまがかかえる課題の解決に向けてご支援しております。業務プロセス改善からデジタルツール導入支援まで、幅広いDXソリューションで解決いたしますので、悩みごとやご質問等ございましたら、ぜひ弊社へお問い合わせください。
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2025.01.22