カスタマーエンゲージメントサービス コラム

コンタクトセンターにおけるCX改善のためのAI活用ガイド
顧客対応で成果を出す5つの導入ポイント

人材不足や問い合わせ内容の高度化、顧客期待値の上昇など、コンタクトセンターを取り巻く環境は大きく変化しています。限られた人員で応対品質を維持・向上させるには、従来の運営方法だけでは対応しきれない場面も増えてきました。

こうした中、業務効率化とCX向上を同時に実現する手段として、AI活用に注目が集まっています。
本記事では、コンタクトセンターにおけるAI活用をCX改善の視点から捉え、メリットや導入時に押さえるべきポイントについて解説します。


<目次>
1.CX改善施策におけるAIが担う役割
2.CX領域でAI活用が進む背景
3.CX向上におけるAI活用のメリット4選
4.顧客対応プロセスに沿って整理するAI活用術3選
5.CXを高めるAI導入の5つのポイント
6.AIを活用したCX改善の実践例
7.まとめ


1.CX改善施策におけるAIが担う役割

コンタクトセンターにおけるCX改善は、AIなどのツールを導入するだけで実現できるものではなく、以下の要素が相互に連携して成り立つ取り組みです。

●人(オペレーター・担当者)
●業務プロセス
●データ
●ツール

その中でAIは、特定の業務を単純に置き換える存在ではなく、CX改善施策全体を横断的に支える役割を担います。たとえば、顧客からの問い合わせ内容を整理・可視化したり、過去の応対データをもとに適切な対応を支援したりすることで、オペレーターの判断や対応をスムーズにします。

AIと人がそれぞれの強みを活かして役割分担することで、業務効率向上と応対品質向上の両立が可能です。結果として、CXの継続的な向上につながります。


2.CX領域でAI活用が進む背景

コンタクトセンターにおけるCX向上は、これまでオペレーターの教育強化や業務プロセス改善を中心に進められてきました。しかし近年、それだけでは十分な成果につながりにくい場面が増えています。

そのような状況を踏まえて、ここではAI活用がコンタクトセンターのCX向上の現実的な選択肢として注目される理由について解説します。

高度化・多様化する顧客ニーズへの対応負荷

顧客は迅速で正確な回答に加え、自身の状況や履歴を踏まえた柔軟な対応を求めるようになっています。そのうえ、問い合わせ内容は年々複雑化し、従来のFAQやルールベースの対応だけでは現場の負荷が高まりやすい状況です。

特に負担になりやすいのが、過去の対応履歴の参照や、資料から適切な回答を探す工程です。これらは対応時間の増加や品質のばらつきにつながりやすく、オペレーター個人の経験に依存しがちになります。

こうした背景から、情報の整理・提示を支援するAI活用が注目されています。必要な情報や回答候補を即座に提示できれば、オペレーターの判断負荷を軽減しながら、応対品質の安定化と対応スピードの向上が図れます。

人手不足・業務負荷増大によるCX品質低下

人手不足や問い合わせ件数の増加により、オペレーター1人当たりの業務量は増え続けています。その結果、待ち時間の長期化や応対品質のばらつきが生じ、CXが低下しやすい状況です。

特に、一次対応や定型的な問い合わせ処理、応対後の記録作業など、繰り返し発生する業務に負荷が集中しがちです。こうした業務はAIと相性が良いため、オペレーターの負担を軽減しながらCX品質を安定させる手段として活用が進んでいます。

オペレーターごとに生じる応対品質のばらつき

応対品質はオペレーターの経験やスキルに依存しやすく、CXにばらつきが生じる要因となります。教育やマニュアル整備だけでは、すべての問い合わせや判断パターンを網羅することは困難です。

そこで、AIの活用により、対応中の判断や案内をリアルタイムで支援でき、オペレーターのスキルに依存しない応対が可能になります。その結果、CX全体の水準を底上げし、安定させることが可能です。

チャネル増加によるCX管理の複雑化

インターネットが普及し、コンタクトセンターの顧客接点は年々多様化しています。主に、以下のようなチャネルが利用されています。

●電話
●メール
●チャット
●Webフォーム
●SNS

チャネルごとに対応履歴や管理方法が分断されると、顧客状況を一貫して把握することが困難になります。情報が分散したままでは、一人ひとりの背景を踏まえた対応ができず、CX改善の取り組み自体が進めにくくなります。

そこで、AIを活用して複数のチャネルに蓄積された対応履歴や顧客状況を整理・統合することで、CX全体の管理・改善を支援できます。

コンタクトセンター運営における顧客対応コストの増加

人件費や運用コストの上昇により、CX向上とコスト抑制の両立が難しくなるケースが増えています。特に、対応件数の増加に比例してコストが膨らむ業務構造は、コンタクトセンター運営における大きな課題です。

そこで、限られたリソースの中でCX施策を継続するための新たなアプローチとして、AIの活用が注目されています。業務量の多い工程や繰り返し発生する作業を見極め、効率化余地のある領域にAIを取り入れることで、現場負荷を抑えながらCX品質を維持・向上させることができます。


3.CX向上におけるAI活用のメリット4選

AI活用は、単なる業務効率化や省人化の手段として捉えられやすいものですが、コンタクトセンターにおいてはCX向上の観点からも大きな価値を発揮します。ここでは、AIがどのようにCXを支え、その質を高めるかを解説します。

顧客満足度向上につながる応対品質の平準化

コンタクトセンターでは、オペレーターの経験やスキルによる応対品質の差がCXに影響を与えます。AIを活用してナレッジの即時参照や回答候補の提示が可能になれば、担当者ごとの判断差や情報検索のばらつきを抑えることが可能です。

その結果、誰が対応しても一定水準の応対品質を維持しやすくなり、顧客に常に安心感のある体験を提供できます。

CXを損なわずに実現する顧客対応の効率化・省人化

AIによる定型問い合わせ対応や一次対応の自動化は、業務効率化の代表的な活用例です。しかし重要なのはすべてをAIに置き換えることではなく、人が対応すべき場面との適切な役割分担です。

AIが繰り返し発生する業務や負荷の高い工程を担うことで、オペレーターは判断や配慮が求められる対応に集中できます。CXを犠牲にしない形で効率化を進めることで、現場負荷の軽減と応対品質の向上を同時に実現できます。

顧客の声(VOC)を活かしたCX改善の高度化

コンタクトセンターには日々多くの顧客の声(VOC)が蓄積されていますが、十分に活用しきれていないケースも少なくありません。AIを活用すれば応対履歴や会話データを横断的に分析し、不満や期待、改善の兆しを可視化できます。

VOCを個別の対応や担当者ごとの気づきにとどめず、データとして整理・活用することで、CX改善をより継続的かつ戦略的に進めやすくなります。

顧客対応プロセス全体でのコストの最適化

問い合わせ受付から一次対応、FAQ案内、応対内容の要約・記録といったプロセスにAIを組み込むことで、顧客対応全体の効率化が可能です。単純業務や定型的な対応をAIが担うことで、オペレーターは顧客の状況判断や個別対応など、人にしかできない業務に集中できます。

応対品質を維持しながら無理のない運営体制を構築でき、コスト抑制とCX向上を両立したコンタクトセンター運営を実現できます。


4.顧客対応プロセスに沿って整理するAI活用術3選

問い合わせ対応の工程ごとに適切な形でAIを組み込むことで、業務効率化とCX向上の両立が可能です。ここでは顧客対応の流れに沿って、代表的なAI活用術を3つ紹介します。

問い合わせ受付・一次対応におけるAI活用

問い合わせ受付や一次対応は、CXの第一印象を左右する重要な工程です。待ち時間が長かったり、用件がうまく伝わらなかったりすると、CXは大きく低下します。

一次対応にAIを活用し、問い合わせ内容の自動分類やFAQ提示によるセルフ解決を促すことで、顧客は必要な情報にスムーズにたどり着きやすくなります。単純・定型的な問い合わせをAIが処理することで、オペレーターにつながる前の待ち時間や「たらい回し」のストレスも軽減されるでしょう。

結果として、オペレーターは対応難易度の高い案件に集中でき、応答スピードと応対品質の両面からCX向上が期待できます。

対応中のオペレーター支援

顧客対応中はナレッジ検索や過去履歴の確認、最適な回答の検討など、オペレーターに多くの判断が求められます。対応中の工程にAIを組み込むことで、リアルタイムでのナレッジ提示や回答案の生成、過去対応の要約が可能です。

AIが必要な情報を適切なタイミングで提示することで、オペレーターは迷いなく対応でき、応対時間の短縮やミスの防止につながります。また、経験やスキルに依存しがちな応対品質のばらつきを抑え、誰が対応しても一定水準以上のCXを提供しやすくなるため、CX全体の安定化と底上げにつながります。

対応後の記録・要約・VOC抽出の自動化

対応後の記録や応対内容の要約、VOCの整理は、CX改善に欠かせない一方で、現場負荷が高くなりやすい工程です。ここにAIを活用すれば、応対ログの自動要約や項目ごとの整理、VOC抽出を効率的に行うことができます。

後処理工数を削減することで、オペレーターの負担を軽減しつつ、対応内容の正確性や一貫性を高めることが可能です。また、蓄積されたVOCが活用しやすくなり、改善施策の検討や応対品質の見直しにもつながります。

このように仕組みを整えることで、応対品質を高めながら顧客に寄り添った対応を継続的に提供できる環境づくりが実現し、CX向上が期待できます。


5.CXを高めるAI導入の5つのポイント

AI導入時には、AIをどのように活用すればCX向上につながるのかという視点での設計が重要です。ここでは、AI導入を成功させるための5つのポイントを解説します。

コンタクトセンター業務におけるAI導入目的の明確化

AI導入にあたってまず取り組むべきは「何を改善したいのか」という目的の明確化です。応対時間の短縮、応対品質の平準化、オペレーター負荷の軽減など、解決したい課題を整理したうえで導入目的を定義することが大切です。

解決したい課題を整理せずに導入を進めると、AIが十分に活用されず、CX改善につながらない可能性があります。目的を明確に定義することで、AI活用は単なる効率化施策ではなく、CX向上を支える取り組みとして機能します。

AIとオペレーターの役割分担を踏まえた運用設計

すべてをAIに任せるのではなく、AIとオペレーターそれぞれの強みを活かした役割分担が重要です。定型的な問い合わせ対応や情報整理はAIが担い、判断や共感が求められる場面は人が対応することで効率化と応対品質を両立できます。

AIと人の共創を前提とした運用設計により、顧客に寄り添った対応を維持しながらCXを高めることが可能です。

応対品質を維持・向上させるための仕組みづくり

AI活用を進める際には、応対品質を維持・向上させるための仕組みづくりが欠かせません。AIの回答精度や表現を管理するためのナレッジ整備、監修ルール、エスカレーション基準を明確にすることで、誤回答や品質低下のリスクを抑えられます。

さらには継続的なチューニングを行うことで、効率化とCX向上を両立した運用が実現します。

【お役立ち資料】コンタクトセンターにおけるナレッジマネジメントの重要性が高まる!よくある課題の対策を徹底解説

顧客情報・会話データを扱うためのセキュリティ配慮

コンタクトセンターでは顧客情報や会話データを扱うため、AI導入時のセキュリティ対策は重要な前提条件となります。個人情報や機密情報を含むデータを安全に取り扱うために、データ管理のルール整備やアクセス権限の制御、利用範囲の明確化が欠かせません。

安全性を確保した環境でAIを活用することで、情報漏えいや不適切な利用といったリスクを抑えながら業務効率化やCX向上を進められます。こうした配慮は顧客からの信頼を守るだけではなく、現場が安心してAIを活用できる土台となり、結果としてCX向上を支える重要な要素となります。

効果検証を前提とした段階的な導入

AIは一度に全業務へ導入するのではなく、効果検証を前提に段階的に展開していくことが重要です。まずは問い合わせ件数が多い業務や定型化しやすい領域など、効果が見えやすい工程から導入することで、現場の負担を抑えながら成果を確認できます。

導入後の効果を踏まえて適用範囲を広げていくことで、無理なく運用を定着させると同時に、CX向上につながる改善点を継続的に洗い出すことが可能です。定期的な効果測定と見直しを行うことでAI活用を一過性で終わらせず、CX向上につながる施策として定着させることができます。

【お役立ち資料】3年後、今のコンタクトセンターは通用するか?AI活用・CX・コストから考える次世代センターの設計指針

【お役立ち資料】コンタクトセンター運営を可視化する20のチェックポイント


6.AIを活用したCX改善の実践例

コンタクトセンターにおけるAI活用は、すでに実務レベルでの検証・導入が進み始めています。ここでは、回答支援と要約AIによる業務効率化の2つの事例を紹介します。

AI回答支援によりオペレーターの応対品質と業務効率を向上

大手自動車会社において、オペレーターの応対品質向上と業務負荷軽減を目的に、AIによる回答支援の検証を実施した結果を紹介します。

業務で使用している操作マニュアルや過去の対応履歴をもとに、AIが質問に対する回答候補を提示する仕組みを構築しました。24時間365日対応が求められる業務環境において、7割の回答精度が確認され、本格導入に向けた検討が進められています。
AIアシスタントによる回答支援PoCにより、担当者のスキル差に左右されにくい応対体制の構築と効率的な業務運営の両立が見込まれています。

【ウェビナーレポート】失敗しないAI導入!コンタクトセンターの未来戦略〜導入ハードルを乗り越える実践的ステップと成功事例〜

要約AIによりコールセンターの後処理時間を30%削減

あるコールセンターでは、通話後の記録業務の効率化と、オペレーター・管理者の負担軽減を目的に、要約AIを活用した検証を行いました。

Amazon Connectで取得した通話録音をテキスト化し、AIが応対内容を自動で要約。その結果を自動入力することで、手作業による記録業務の削減を図りました。検証では、平均後処理時間(ACW)が544秒から366秒へ短縮され、約30%の削減が確認されました。

また、特定のオペレーターだけではなく全体に共通して減少傾向が見られたことから、AI活用により、個人のスキルに依存しない業務効率化が期待されています。今後は、効果的な活用方法の横展開により、さらなる精度向上と業務標準化が見込まれています。


7.まとめ

顧客対応を取り巻く環境が大きく変化する中で、CXの改善は多くの企業にとって重要なテーマです。一方で、コスト削減や人材不足への対応を優先するあまり、応対品質が低下してしまう場合もあります。

このような課題に対し、AIは業務効率化とCX向上を両立させる有効な手段として注目されています。重要なのはAIを万能な代替手段として考えるのではなく、AIと人の共創を前提に設計し、業務プロセスや運用を踏まえて段階的に活用していくことです。

TOPPANでは、応対品質と運用定着を重視した「コンタクトセンターAI Powered化支援サービス」を提供しています。AI活用によるCX改善を具体的に検討されている企業さまは、ぜひ一度ご相談ください。

2026.07.03