AIエージェントとは?
概要から具体的な活用例まで解説!
生成AIの業務への活用が進む中、さらに高度なタスクを自律的に思考して実行する「AIエージェント」への注目が高まっています。これから業務に取り入れたい、もしくはさらに活用を進めたいという方も多いのではないでしょうか。
今回は、AIエージェントの概要から生成AIとの違い、注目される理由、3つのメリット、具体的な活用例、導入を成功させるポイントと今後の展望を解説します。
<目次>
1.AIエージェントとは?生成AIとの違い
2.AIエージェントが注目される理由
3.AIエージェントがもたらす3つのメリット
4.AIエージェントの具体的な活用例
5.AIエージェント導入を成功させるポイントと今後の展望
6.まとめ
1.AIエージェントとは?生成AIとの違い
AIエージェントとは、AI(人工知能)があらかじめ設定した目標に向け、自律的に計画を立てて多様なタスクを実行するシステムです。人が介入せず自律的・能動的にタスクを遂行することや、状況に適応しながら行動できることが特徴であり、従来のAIや自動化プログラムのように単に情報を処理・生成するに留まりません。
AIエージェントの仕組み
「センサー(情報収集)」「頭脳(意思決定)」「アクチュエーター(実行)」の3つの要素で構成され、人間のように状況を認識・判断し、様々なツールを使いこなしながら業務を遂行します。
(1)センサー(情報収集)
センサーは、AIエージェントが環境の状態や情報を受け取るための入力装置です。これにより、エージェントは周囲の世界について知覚し、次の行動を決定するためのデータを集めます。
(2)頭脳(意思決定)
頭脳は、センサーから得られた情報を分析し、エージェントが取るべき行動を決定する中核部分です。プログラムされたルール、アルゴリズム、または学習モデルに基づいて最も適切な応答を選択します。
(3)アクチュエーター(実行)
アクチュエーターは、頭脳によって決定された行動を物理的またはデジタル的に実行するための出力機構です。これにより、エージェントは環境に対して指示を出し、設定された目標の達成を試みます。
生成AIとの違い
AIエージェントについて生成AIとの違いが気になる方も多いのではないでしょうか。両者はAIでありながら異なる点が多くあります。
生成AIとは、学習したデータをもとに新たにコンテンツを生成するAIです。生成AIはユーザーの指示に基づいてコンテンツを生成する「受動的」なツールである一方、AIエージェントは、与えられた目標を達成するために、人の指示がなくとも自ら最適な手段を判断・実行できる「能動的」なツールである点が大きく異なります。
生成AIとAIエージェントは共に業務での利活用が進んでいるため、それぞれの特性を理解して最適なものを利用することが求められます。
2.AIエージェントが注目される理由
AIエージェントが注目される理由として、次の点が挙げられます。
従来のAIやRPAと決定的に異なる特徴を持つ
従来の自動化ツールは事前に定義されたルール通りの処理のみの対応に留まっていましたが、AIエージェントは、人が目標を与えるだけで自律的に行動するほか、予期せぬ状況にも対応できる点が高く評価されています。そして複数のツールを組み合わせながら、より複雑で多段階のタスクを実行できる点も注目されています。
大規模言語モデル(LLM)の進化
AIエージェントの実用化を大きく後押ししたのは、自然言語での高度な対話能力や推論能力を持つAIモデルの一種である大規模言語モデル(LLM)の進化です。人間による曖昧な指示も、AIが意図を汲み取って判断し、行動できるようになりました。
ビジネス環境の変化とコンタクトセンターでの活用可能性
近年はAI開発プラットフォームや関連ツールが充実しており、クラウド環境も整備されていることから、多くの企業でAIエージェントの導入が容易になりました。
特にAIエージェントの顧客サービス分野での活用の期待度は高く、ガートナー(米国ICTリサーチ・アドバイザリ企業)社の分析では「2025年には問い合わせの最大65.7%がAIで解決される」と予測(※)されています。同分野のうち、コンタクトセンターはAI活用の最前線と位置づけられています。
※出典:CX TODAY「Future Trends: What’s Next for AI in Contact Centers?」
https://www.cxtoday.com/contact-center/future-trends-whats-next-for-ai-in-contact-centers-8x8/
3.AIエージェントがもたらす3つのメリット
AIエージェントを導入することで、次の3つのメリットが期待できます。
メリット1:圧倒的な生産性向上とコスト削減
AIエージェントは、生成AIや従来の自動化ツールとは一線を画すパフォーマンスを発揮します。24時間365日稼働し、定型業務や反復作業を自動化することで、従業員はより付加価値の高い創造的な業務に集中できます。その結果、人手不足の解消や人件費の削減にもつながる可能性があります。
メリット2:高度なCX(顧客体験価値)の提供
近年は、CX(Customer Experience/顧客体験価値)が重要視されています。CXとは商品が単に安い・便利という価値だけではなく、接客や問い合わせ時の応対、アフターサポートまで含めた顧客が感じる価値やメリットを指します。CXを高めることで顧客は企業やブランドに対してより信頼や共感、愛着が増し、競合他社との差別化につながります。
AIエージェントを通じた問い合わせへの即時対応や、顧客一人ひとりの状況に合わせたパーソナライズ化された提案を行えば、待ち時間の削減やスムーズな問題解決により、顧客満足度を大幅に向上させることができます。
メリット3:データに基づいた迅速な意思決定
AIエージェントによりデータに基づく迅速な意思決定を実現できます。膨大な顧客データや応対履歴を自動で分析・要約できるため、ビジネスに有益な情報を抽出可能です。これにより、コンタクトセンターサービスの改善やマーケティング戦略の立案を迅速かつ的確に行えるようになるでしょう。
4.AIエージェントの具体的な活用例
AIエージェントの具体的な活用例をご紹介します。
(1)問い合わせ対応・メール業務の効率化
近年は、顧客からの問い合わせやメール対応を自動化するAIエージェントの導入が進んでいます。社内のFAQやマニュアルなどを自己学習し、適切な回答文を自動生成します。トーン&マナー 、ルールなどを策定することで、企業やブランドのイメージに合ったメール文を作成できます。メール作成時間が大幅に削減されることから、人はより複雑な問い合わせへの対応に集中できる体制を構築できます。
(2)ECサイトでの注文受付・手続き業務の完全自動化
AIエージェントは、ECサイトでの注文受付や月額サービスの各種申込といった複雑な手続きを24時間・自動対応で完結させ、業務効率を大幅に向上させることができます。
顧客の最終目的を理解し、手続き完了に必要な情報を自ら判断して質問する「ゴール指向型対話」が可能です。
月額サービス提供事業者が、受電での申込受付における本人確認を自動化した例があります。ユーザーからの受電と音声入力により、連携しているユーザーデータベースの内容と一致すれば申込受付が完了する仕組みを構築しました。これにより、受付対話完結率75%以上を実現しています。
5.AIエージェント導入を成功させるポイントと今後の展望
AIエージェントを導入する際には、次のポイントを踏まえることで成功につながります。また、AIエージェントの今後の展望をご紹介します。
導入のポイント
●目的の明確化
何よりも先に、AIエージェントを導入することで、「どの業務の、どのような課題を解決したいのか」を具体的に定義することが肝心です。目的が明確であれば、エージェントの種類や必要な機能、評価指標が定まり、導入後の効果測定も正確に行えます。
●「人」と「AI」の役割分担とリスクの明確化
AIエージェントの活用範囲について、導入前に「人」と「AI」が担う業務の切り分けを明確に定義することが重要です。対応範囲やリスク許容度を事前に設定することで、運用後のトラブルを未然に防ぐことができます。
●禁止事項の設計とプロンプトへの組み込み
人であれば自然に制御できる倫理的・法的な遵守事項や業界特有の禁止事項を洗い出し、プロンプトとしてAIエージェントに組み込むことで、リスクを抑え、安全かつ適切な運用を担保します。
●データとプロセスの整備
AIエージェントが学習・活用するためのデータや、業務プロセスを事前に整理しておくことで、スムーズな導入と早期の効果発現 につながります。
●スモールスタート
AIエージェントの導入は高コストであり、組織全体に広げるにはハードルが高いといえます。まずは特定の業務や部門に限定して導入し、効果を検証しながら段階的に拡大するほうが、リスクを抑えつつ、 費用対効果の算出にも有効です。
今後の展望
今後、AIエージェントは、単一のタスクをこなすだけではなく、複数のエージェントが協働し、より複雑なプロジェクト全体を管理・実行するように進化すると考えられています。
将来的には、人が「何をすべきか」(戦略や目標) を指示するだけで、AIエージェントが「どのように実行するか」の最適な方法を見つけ出し、ビジネスを遂行する「ビジネスパートナー」のような存在になると予測されています。
そうなれば、さらなる業務効率化と生産性向上を実現し、人手不足の解消やDX推進など、企業が直面する様々な経営課題の解決に大きく貢献するでしょう。
6.まとめ
AIエージェントは従来のAIや生成AIを超えた高度な対応が可能であり、進化が進んでいることから、期待が高まっています。
今回ご紹介したような手続き・申込業務の完全自動化 や問い合わせ対応などコンタクトセンターを効率化する活用を通じて、顧客対応や周辺業務が大きく改善する可能性があります。
TOPPANは、長年の実績で培ったコンタクトセンター運営のノウハウと、AIエージェントをはじめとする最先端のデジタルツールを組み合わせ、貴社の課題解決を強力にサポートする様々なサービスを展開しています。
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2025.11.14



