カスタマーエンゲージメントサービス コラム

膨大なVOCデータを宝に変える
─ 生成AIが解決する3つの壁

コンタクトセンターなど、社内の様々な場所に「顧客の声(VOC)」が眠ったままになっていませんか?
その大量の蓄積データこそ、ビジネスを成長させる「宝の山」です。データを効果的に利活用することで、具体的な成果へとつなげることが可能です。

今回は、VOC分析がビジネスに不可欠な理由から現状と課題、活用術、生成AIが変革するVOC分析の未来展望まで解説します。


<目次>
1.なぜ今、VOC分析がビジネスに不可欠なのか?
2.VOC分析の現状と課題
3.VOC分析の活用―コンタクトセンターとマーケティングの変革―
4.生成AIが変革するVOC分析の未来
5.まとめ


1.なぜ今、VOC分析がビジネスに不可欠なのか?

なぜ今、VOC分析がビジネスに不可欠なのか?

VOC分析が今、ビジネスに求められる理由を確認していきましょう。

VOC(顧客の声)の重要性

VOCとは「Voice of Customer」の略称であり、顧客からの問い合わせ内容やコンタクトセンターのオペレーターがヒアリングした意見や感想、要望、不満などのあらゆる「顧客の声」を指します。

VOCは日々蓄積されていくものですが、実は適切に分析することで、製品・サービスの改善、新規事業創出、顧客満足度向上などにつながる宝の山です。なぜなら顧客の声を真摯に受け止めることで、既存の製品・サービス改善や新規事業創出のヒントになるからです。また、顧客の声をもとにサービス改善をすれば、顧客ニーズを満たし、顧客満足度にもつながるでしょう。

近年、市場では類似商品が乱立し、競合他社との差別化を図ることが困難になってきています。また顧客ニーズの多様化や市場変化の激しさにも対応しなければなりません。
このような環境下において、VOC分析と活用の取り組みは、自ずと競合他社との差別化につながるうえ、市場の変化へ迅速に対応するカギにもなります。

日々蓄積されるVOCデータ

VOCは日々、企業と顧客とのあらゆる接点(タッチポイント)で 発生しています。例えば、次のものはすべてVOCデータです。

・電話の通話記録
・メール
・チャット
・Webサイトの問い合わせフォーム
・SNSの投稿、口コミ
・アンケート結果
・店舗で得られた意見
など


2.VOC分析の現状と課題

VOC分析の現状と課題

一方で、現状VOC分析が必ずしもうまくいっているとは限りません。
日々蓄積される膨大なVOCデータが宝の山だと分かっていても、多くの企業でその価値を十分に引き出せていないのです。主に次の3つの課題が挙げられます。

主な課題①|データの「量」と「多様性」への対応限界

通話記録、メール、チャット、SNSなどから日々蓄積されていく膨大な量のVOCデータは、構造化されていない多様な形式であることがほとんどです。構造化とは、Excelデータのような列と行の概念を持たせ、整理することです。分析するには構造化が必要ですが、手作業や従来のツールでは、データを網羅的に収集・分類・分析することが難しいのが実情です。

主な課題②|分析の「深さ」と「速度」の不足

分析そのものにも課題があります。検索エンジンを通じたキーワード検索で顧客ニーズを探ったり、簡易なテキストマイニング(※1)を実施したりしても、顧客の真の感情や潜在的なニーズ、複雑な因果関係まで踏み込んだ分析をすることが難しいのが実情です。分析の深さを追求しようとすると時間がかかってしまうことから、タイムリーな施策実行は困難です。

※1 テキストマイニング:テキストの単語を分析し、有益な情報を取り出すこと。

主な課題③|分析結果の「活用」の難しさ

分析を進めたとしても、分析結果の活用における課題もあります。例えば次のような問題が生じます。
・分析結果が抽象的すぎて、具体的なアクションプランに落とし込めない
・特定の担当者しか分析・活用できない
・部署間の連携不足により、コンタクトセンターで得られたVOCがマーケティングや製品開発に十分に活かされない


3.VOC分析の活用―コンタクトセンターとマーケティングの変革―

VOC分析の活用―コンタクトセンターとマーケティングの変革

では、VOCの分析・活用は具体的にどのような場面で効果を発揮し、事業を前進させるのでしょうか。
VOCの分析結果には、主にコンタクトセンターの運営改善とマーケティング施策の強化という二つの活用領域があります。そこで、それぞれの具体的な活用内容についてご紹介します。

活用①コンタクトセンター運用改善

VOCはコンタクトセンターの運用改善に役立てられます。主に「オペレーター支援」「応対品質向上」「業務効率化」の側面で活用されています。

●オペレーター支援
VOCから抽出された情報に基づき、リアルタイムで問い合わせに対する最適な回答候補やFAQをオペレーターの画面に表示します。 これにより、経験年数に関わらず、オペレーターは迅速かつ正確な顧客対応ができるようになり、心理的な負担も軽減されます。

●応対品質向上
VOCの分析を通じて、顧客が不満を感じた具体的な要因や、評価の高い応対パターンを特定します。これを教育プログラムや応対スクリプトの見直しに反映させることで、オペレーター全体のスキルが向上し、顧客体験(CX)の改善につながります。

●業務効率化
頻繁に寄せられる問い合わせ内容や、解決までに時間を要する課題をVOCから定量的に把握します。これをもとにFAQやチャットボットの改善、問い合わせフローの最適化を進めることで、入電数や後処理時間 を削減し、生産性を高めることができます。

活用②マーケティング施策の強化

マーケティング分野では、施策の強化に役立てられます。特に「ターゲット顧客の深掘り」「製品・サービス開発への反映」「パーソナライズされたコミュニケーション」といった分野では、顧客の生の声が重要なインサイトを提供します。

●ターゲット顧客の深掘り
VOCを分析することで、既存のセグメントでは見えなかった顧客の潜在的なニーズ、悩み、購買動機が明確になります。 これにより、企業が想定していたターゲット像をより具体的に修正・強化し、マーケティング戦略やプロモーション施策の精度を高めることが可能になります。

●商品・サービス開発への反映
顧客からの不満や要望、競合製品に関する言及をVOCデータから体系的に抽出し、商品・サービス開発部門へフィードバックします。 そこから得られたインサイトを商品・サービスの改良や新機能開発に直接活かすことで、市場のニーズに合致した価値提供を実現し、顧客満足度と市場競争力の向上を図ります。

●パーソナライズされたコミュニケーション
個々の顧客の過去の問い合わせ履歴や感情データをVOCから分析し、その顧客が抱える課題や関心事を深く理解します。この理解に基づき、以降の情報提供において、顧客一人ひとりに最適化されたチャネルやメッセージを選択し、ロイヤルティを高めます。


4.生成AIが変革するVOC分析の未来

生成AIが変革するVOC分析の未来

近年、生成AIを活用したVOC分析が注目を集めています。生成AIとは、学習したデータをもとに新たなコンテンツを作り出すことが可能なAI(人工知能)の一種であり、データ分析にもその能力を発揮します。
従来のAIと比較して、生成AIは文脈やニュアンスを理解する能力に優れており、VOC分析の精度向上、業務効率化に貢献します。その結果、顧客理解の質とスピードを劇的に向上させることが期待され、VOC分析に大きな変革をもたらします。具体的な変革の例としては次の3つが挙げられます。

生成AIによる変革①VOCデータの「自動要約」と「構造化」

●通話やチャット記録の自動要約
生成AIによる通話・チャット履歴の自動要約は、VOC分析変革の鍵となります。まず、通話要約を行うには、音声認識によるテキスト化が不可欠です。AIは、オペレーターの後処理負荷を軽減するだけではなく、人手による人力の負担を排除し、バイアスのない詳細な顧客インサイトの網羅的な取得を可能にします。これにより、「業務効率化」とVOCデータの「品質向上」を両立させ、分析基盤を強化します。

●非構造データの構造化
顧客に対して行った自由記述のアンケート結果やSNSのコメントなどの非構造化データから、生成AIが顧客の感情、意見、要望、商品名、課題点などを自動的に抽出します。そしてタグ付けやカテゴリ分類を高精度で行うことで、データを構造化することができます。
従来の手作業による負荷を大幅に低減し、膨大なデータを高速かつ一貫性を持って分析可能な形に変換できます。

生成AIによる変革②顧客の「感情」と「意図」の深掘り

生成AIは文脈や感情理解に長けているため、例えば顧客からの通話内容から不満の度合い、期待、驚きなど、より詳細な感情を識別できます。この分析結果は、顧客の心理状態を深く理解するための鍵となります。さらに、顧客が直接言葉にしていない潜在的な感情・意図を生成AIがテキスト間の関連性や文脈から推測、示唆出しを行います。これにより、従来の分析では難しかった潜在ニーズの発見が可能になります。

生成AIによる変革③示唆の抽出と施策の「自動提案」

生成AIは、VOCデータから具体的な施策のヒントを導き出します。例えば「なぜ顧客満足度が低下しているのか」「特定の商品にクレームが多い原因は何か」といった複雑な問いに対し、生成AIは関連するVOCデータを分析し、考えられる要因や因果関係を自動で示唆出しします。
そして分析結果に基づき、生成AIは「WebサイトのFAQの改善案」「特定の顧客セグメントへのDM(ダイレクトメール)の内容」「新商品のコンセプト案」など、具体的なアクションプランを提案します。
これら一連の分析・提案プロセスの自動化は、従来の手作業や施策立案の手間を大幅に削減するだけではなく、膨大なデータに基づく精度の高い施策の実行を可能にし、効果の面での向上が期待できます。これはまさに、VOC分析における抜本的な変革と言えるでしょう。


5.まとめ

VOC分析の重要性が高まる昨今、より効果的かつ効率的な活用を進めていくためには、コンタクトセンターやマーケティングへの活用方法を知ることが重要です。
また生成AIによるVOC分析は精度向上、業務効率化に貢献し、顧客理解の質とスピードを劇的に向上させる可能性があります。

TOPPANでは、貴社のVOC活用を分析から施策実行まで、伴走支援いたします。またVOC分析関連のほか、コンタクトセンターの課題を解決する様々なソリューションをご提供しております。コンタクトログマネジメントは、顧客の声(VOC)を、AIツールを用いてスピーディーに分析し、顧客接点の課題を可視化します。分析結果のレポーティングだけではなく、CX向上施策の立案・実行までを伴走支援いたします。

そのほか、CX向上の視点で課題分析から運用までを伴走支援する「コンタクトセンターリデザインサービス」や、CX向上に向けて顧客特性に合わせた最適なチャネルの選定から、チャネル横断のデータを活用したコンタクトセンター運用、その後の改善までトータルサポートする「CX向上コンタクトセンター運用サービス」、業務効率化と顧客体験向上をAIで実現し、持続的なコスト削減と事業成長を伴走支援する「コンタクトセンターAI Powered化支援サービス」がございます。

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2025.11.14