コラム

温度管理の必須ツール!
「温度ロガー」活用の基礎知識

地球温暖化やグローバル輸送の増加などを背景に、「温度管理」が私たちの生活や事業に直接影響を及ぼす問題として注目されるようにされるようになってきました。化学品や食品、医薬品、酒類、そして物流など多くの領域で温度管理の重要性が増しています。本コラムでは、温度管理の運用に欠かせない「温度ロガー」について、その基本的な機能や活用シーン、機器選定時や活用時のポイントについて解説。さらに、導入が容易で多彩な運用に対応する「ラベル型温度ロガー」をご紹介します。


温度ロガーとは

「温度ロガー」は、一定間隔ごとに対象物の温度を測定し、そのデータを記録することができるデータロガーの一種です。
データロガー自体は温度測定以外にも周辺環境の調査や品質管理、製品試験などさまざまな用途で利用されています。機種により少し異なる場合もありますが、温度ロガーの主な機能は、以下の通りです。

・温度センサーによる温度測定
・測定データの記録
・測定データの表示や転送・通信

温度を感知する「センサー部」と測定値を記録する「ロガー部」、「その他通信機能等」から構成されています。

温度ロガーには大きく分けて、アナログ式とデジタル式があります。アナログ式は旧来から使用されてきたタイプで、計測結果の電圧値をそのままアナログデータとして保持し、信号の波形を記録紙などに直接記録します。
現在、主に導入されているのはデジタル式の温度ロガーです。測定対象の信号をデジタル信号として記録する方式で、データは内蔵メモリやSDカード、USBメモリなどに記録します。アナログ式よりもコンパクトなため設置場所の自由度が高いのが特徴で、冷蔵庫や輸送経路、工場での品質管理まで幅広く活用されています。

温度ロガー導入の目的と用途

温度ロガーはさまざまな業界・分野での活用が広がっています。各業界での活用例には次のようなものがあります。

物流業界

■温度管理が必要な製品の輸送中状態を可視化
→温度ロガーによって食品や医薬品をはじめ、さまざまな製品の輸送中状態を可視化することが
 できます。

■冷凍・冷蔵食品や生鮮食品のコールドチェーンの維持
→冷凍・冷蔵食品や生鮮食品の品質を維持するためには、サプライチェーン全体でコールドチェーン
 の確保が重要です。その際の温度管理には温度ロガーが欠かせません。

■輸送中のトラブル発生時の問題特定
→輸送中に温度逸脱などのトラブルが発生した場合は、発生時期や状況を特定し、問題を解決する
 必要があります。温度ロガーで取得した情報は、その原因究明に活用されます。

医療・医薬業界

■医薬品や検体、ワクチンの輸送や保管中の温度管理
→医薬品や検体、ワクチンなどの中には、輸送中や保管中の温度管理が必要になるものがあります。
 また、医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインには温度ロガーなどによる温度モニタリングの必要
 性が示されており、このようなケースに、校正が可能な温度ロガーが活用されます。

■高温殺菌や滅菌処理時の温度管理
→医療機関などにおいて一定の温度以上での殺菌や滅菌処理を行う場合、規定の温度と時間をクリア
 しているかどうかを管理する必要があります。温度ロガーで測定/記録することで適切に管理する
 ことができます。

■手術室や病室の適切な環境管理による患者の安全や快適性の向上
→手術室や病室の温度は、利用する患者の快適性に大きく影響します。さらに、暑すぎる、または
 寒すぎる環境は症状などに悪影響を及ぼす恐れもあるため、温度ロガーで管理することで安全かつ
 快適な環境を維持することができます。

■医薬品製造時等の適切な温度管理
→医薬品の場合は輸送・保管時以外にも、製造プロセス上での温度管理が必要な場合もあります。
 そのようなケースでも、温度ロガーによる管理が適しています。

食品業界

■製造工程の適切な温度管理による安全性向上
→食品加工や製造において温度管理が必要な工程が必要な場合も多い加工・製造工程において、
 温度ロガーを活用することで適切な温度管理ができるようになり、トラブル(事故)を防ぐことが
 できます。

■保管場所の温度管理による食品鮮度の保持
→食品の鮮度保持ためには、サプライチェーンでの適切な温度管理が欠かせません。
 保管場所等の温度管理において、温度ロガーが活用されるケースが増えています。

■HACCP対応や輸出入の際の温度記録自動化
→HACCP(ハサップ)では、原料の受け入れから製品化までの各工程での温度管理が必要になるた
 め、作業負担が大きくなります。また、輸出入の際にも温度管理が必要な場合があり、状態を
 トレースしておくことが重要になります。温度ロガーを活用して温度記録を自動化することで、
 工数負荷を減らすと共に、管理精度を高めることができます。

その他の用途

温度ロガーラベルは、さまざまな分野での温度管理に幅広くご利用いただいています。

・化学品の輸送・保管、および製造工程中の品質確認
・生花輸送や海藻の育成観察などの生体管理用途
・酒類の品質保持や風味向上を目的とした温度管理
・居住空間や船内環境の快適性評価
・配電盤や電気設備の発熱監視・発火予防管理
・空調設備や冷暖房システムの性能検証

温度ロガーの選定や活用のポイント

温度ロガーの導入には、下記ポイントを意識して最適な製品を選ぶ必要がございます。

測定温度範囲

測定する製品や周辺環境に適した測定範囲の機種を選択します。  

記録間隔

数分単位で記録することで温度変化を厳密に管理したり、1時間単位で記録することで長距離輸送中の温度挙動を把握するために記録するなど、目的の測定に適した機種を選択します。

測定精度

一般的な製品では厳密な精度を求められることは多くありませんが、医薬品などでは、高い精度が求められる場合があります。

データ保存容量

遠方への輸送など長期間測定が必要な場合もあれば、短期間で測定データを回収できる場合もあります。自社の活用シーンに適したデータ保存容量かどうかを確認する必要があります。

本体のサイズ

本体サイズもさまざまなものがあります。小型や薄型のものであれば設置場所の選択肢が広がり、測定対象の製品に同梱したりすることも可能になります。反対に大型のものは設置場所が限定されてきます。

データインターフェース

(通信方式)

測定データを回収する際のデータインターフェースを確認しておく必要があります。例えばUSBで有線接続するのか、Bluetoothによる無線通信を使うのか、また、Wi-Fiやセルラー通信でリアルタイムにデータ転送するのかなどの選択肢があります。また、最近ではNFC通信でデータ読み取りするタイプもあります。

校正対応の有無

GDPやHACCP対応など温度の校正が必要な場合があります。その場合は校正に対応した機種を選択する必要があります。

温度ロガー導入後に実際に使用する際には、次のような点を考慮しなければなりません。

設置場所 実際に計測する環境や温度分布などを把握し、できるだけ正確に温度計測できる場所に設置します。窓際などの直射日光が当たる場所やエアコンなどの吹き出し口付近への設置は、それらの外部影響を受けます。 また、倉庫などの広い場所では複数個所に設置して環境全体の温度分布を把握するようにしましょう。
定期的なメンテナンス 温度ロガーの精度や信頼性を継続するためには、定期的なメンテナンスが必要になります。具体的には、バッテリー状態や本体の動作確認、損傷チェックなどを行います。また、必要な場合は搭載するファームウェアやアプリケーションの最新版への更新も実施します。

低コストでワンウェイ運用も可能なTOPPANの「温度ロガーラベル」

TOPPANでは、従来の温度ロガーと比較して構造や機能シンプルにし、低コストで運用できるラベルタイプの「温度ロガーラベル」を開発しました。

機器タイプより10分の1以下の低コストを実現したことで、さまざまな製品に貼り付けて個別に温度管理できるようになりました。
また、低コスト化により国際輸送などの長距離輸送でも、使用後に回収しないワンウェイ利用が可能です。

最大4,864回(1時間間隔の場合、約半年間)の連続測定ができ、測定間隔は30秒から60分の間で選択可能など、ロギング性能も従来の機器タイプと同様にご利用いただけると評価をいただいています。

2025.11.12