コラム

温度管理を見える化!
RFID技術を応用した新しい温度管理
ソリューションのご紹介

  • TOPPANデジタル株式会社
  • 事業推進センター カード・IoT本部
  • 小林 燃

本コラムは、2024年2月9日(金)に開催した「温度管理を見える化!RFID技術を応用した新しい温度管理ソリューションのご紹介セミナー」のレポートです。


PROGRAM 1 温度管理ソリューションのキーデバイス
「温度ロガーラベル」

温度ロガーとは

温度ロガーとは、温度を一定時間ごとに測定・記録できるデバイスです。食品の劣化や精密機械の故障を防ぐために、管理ツールとして使用されている方も多いのではないでしょうか。
従来から温度管理が求められる場面で使用されてきた温度ロガーですが、昨今の管理課題への対応は、より一層難しくなっています。

SX(サスティナビリティ・トランスフォーメーション)課題として食品ロスを削減するためのコールドチェーン構築や、不適切な温度管理による品質の低下が消費者の信頼を失う恐れがあるため、企業は数々の課題やリスクを想定しなければなりません。

そこで求められるのは、より細かい管理により品質を確保することです。また、管理精度を高めると、その分負担が大きくなってしまうため、管理・運用の負荷を低減する必要もあるでしょう。

温度ロガーラベルの特長

そこで、TOPPANでは、こうした温度管理課題に対応した「温度ロガーラベル」を開発しました。

<特長 1:低コストの実現>
温度センシング機能付きのICチップと、使い切り型のバッテリーを採用し、本体から操作パネルを省いてスマートフォンアプリでロガー設定を行います。ラベル形態と機能をシンプルにして低コストを実現しコストにしたことで、個々の荷物に貼り付けて細かく管理することが可能になります。

<特長 2:運用負荷の軽減を実現>
配送後にラベルを回収しない「ワンウェイ利用」や、スマートフォンアプリを使ってのデータのアップロード、CSVデータとしてメールでの送付が可能です。温度ロガーの回収やPC接続が不要なため、運用負荷が軽減されています。

温度ロガーラベルの機能

ロギング機能としては、最大4,864回、連続ロギングができ、仮に測定間隔を60分に設定した場合は、約6か月の測定が可能で、ほかにも温度管理に必要な各種のロギング設定が可能です。通信規格は、ISO/IEC 14443 TypeAで、スマートフォンのNFCで通信ができます。

PROGRAM 2 物流課題に対して着目されるRFIDについて

RFIDとは

RFIDとは、自動認識技術の一つで、ICタグを利用した非接触の識別技術です。このRFIDは、物流課題に対して着目されている技術になります。

EC市場の拡大に伴い、物流件数の増加が続いている状況です。また、少子高齢化によって、多くの業界同様に人手不足が課題となっており、物流2024年問題を契機に、より深刻化していくことが懸念されています。今後さらに業務負担が増加し、リソース不足から輸送品質が低下していくという指摘もあります。
そこで求められる物流業務の効率化や輸送を含めたサプライチェーン管理に対して、RFIDが活用できると着目されています。

※温度ロガーラベルはRFID技術の中の一つの方式になります

RFIDが果たす役割

現在、RFIDはその役割を進化拡大させています。リーダライタ機器がインターネットに接続されることで、ICタグが取り付けられた製品のIDデータをインターネットにつなげることが可能になり、インターネットを通して取得できたIDデータを基に、入出庫管理、在庫管理、不正流通防止などなど新たな付加価値サービスの実現が可能になります。
RFIDは、製品などの「モノ」をインターネットにつなげるためのコネクテッドデバイスへと役割を進化拡大しています。

PROGRAM 3  RFID技術を応用した新しい温度管理ソリューション

TOPPANからご提供するもの

温度管理ソリューションは、3つのパートから成り立っています。

<1:温度ロガーラベル>
低コストで運用負荷を抑えながら温度管理を実現するキーデバイスです。

<2:スマートフォンアプリ>
スマートフォンのNFC通信を使用して、温度ロガーラベルに対して温度ロギング操作を行ったり、温度ロガーラベルから取得したデータをクラウド上のシステムへアップロードします。また、ICタグとしての温度ロガーラベルからIDを読み取ることで、トレーサビリティを行える機能も備えています。

<3.クラウド上の管理システム>
スマートフォンアプリとインターネットを通してデータ連携します。WEBアプリとしてご提供し、アップロードされた温度ロギングデータの確認や、トレーサビリティ管理機能も備えています。

※スマートフォンアプリは、クラウド上の管理システムを利用せず、ロギングデータをメールで送付できるメール版もご提供しています。

温度ロガーラベル使用方法

<温度ロギング>
TOPPANが提供する温度ロガーラベル、スマートフォンアプリ、管理システムを組み合わせた使用例をご紹介します。

ある経路に沿って製品が輸送されていくことを想定した場合の、温度ロギングの使用例です。ロギング開始時は、作業者の方がスマートフォンアプリを使用してロギング設定やロギング開始を行います。
同じように、輸送経路途中におけるロギングデータ取得時も、スマートフォンを温度ロガーラベルにかざして行います。このとき取得したデータを、クラウドシステムにアップロードする操作もスマートフォンアプリで行います。
製品が配送先へ到着した後も同様に、取得したデータをクラウドシステムにアップロードして、最後にスマートフォンアプリでロギングを停止させます。
この過程においては、管理者の方は、管理システムを通していつでもアップロードされたロギングデータを確認することができます。

<トレーサビリティ>
同様に、各拠点で温度ロガーラベルにスマートフォンをかざしていくことで、トレーサビリティを行うことも可能です。
まず、管理者の方が管理システム上に輸送経路の各拠点を登録します。例えば、「1出荷」、「2経由地」、「3到着地」のように管理システム上に登録します。ここで登録された情報は、各スマートフォンアプリから参照することができます。

次に、出荷時において、作業者の方がスマートフォンアプリを使用してスマートフォンを温度ロガーラベルにかざします。スマートフォンアプリが温度ロガーラベルを読み取った後、スマートフォンアプリの操作で、トレーサビリティのステータスを「1出荷」に更新します。このとき、「誰が」、「どこで」、「いつ」更新したかのデータがクラウド上の管理システムへアップロードされます。
このように、各拠点でステータス更新を行っていくことで、トレーサビリティ情報がクラウド上の管理システムへ蓄積され、管理者の方は各製品の輸送状況を把握することが可能です。

PROGRAM 4 温度管理ソリューション活用例

「日本酒輸送実証実験」の概要

TOPPANの温度ロガーラベルは、2021年10月から2022年3月にかけて実施された「日本酒輸送実証実験」に参画した「日本酒コールドチェーンコンソーシアム」によって、日本国内の酒造メーカーから中国国内の保冷倉庫までの梱包箱の表面温度を記録するツールとして採用されました。この実証実験の結果として、コンテナに積載する直前など、外気に一定期間触れるタイミングにおいて温度が一時的に上昇することが確認できました。

温度ロガーラベルが取得した温度データ例

実証実験において、温度ロガーラベルが取得した温度データの一例がこちらになります。グラフを見ると、記録されている温度データは、常温から始まり、徐々に温度を下げ、冷蔵保管されていたであろうことを推測できます。ところどころに温度変化が不連続になる部分があり、急激な温度上昇が確認できます。
このように、従来の温度ロガー小型機と同じように、温度ロガーを設置して輸送先に届けるまでの温度記録だけでは、温度上昇があったタイミングで何が行われていたのかは、記録されている時間情報を基にした予想しかできません。

同じ温度ロガーラベルのトレーサビリティ情報

これに対し、管理システムに記録されているトレーサビリティ情報が下記になります。あらかじめ登録されていた経路情報に対して、スマートフォンアプリにてステータス更新されたときの情報が記録されています。
スマートフォンアプリの使用には、ユーザログインが必要になりますので、アプリの使用者が分かります。場所情報は、スマートフォンのGPS情報から取得し、地図情報として表示することもできます。
そして、このステータス更新は、対象の温度ロガーラベルをその場でスマートフォンアプリで読み取ることで実施できる機能なので、「いつ」、「誰が」、「どこで」作業したかという信頼性の高いデータを取得できます。

温度データとトレーサビリティ情報の重ね合わせ

温度ロガーラベルが取得した温度データと、トレーサビリティ情報を重ねた情報が下記になります。トレーサビリティ情報は、輸送経路途中の拠点ごとに取得していき、ロギングされた温度データと合わせて活用していくことで、例えば、輸送経路途中で発生した事象に対しての責任の切り分けが可能です。
このように、TOPPANの温度管理ソリューションは、RFID技術を応用することで、その場所にあるデバイスのIDが読まれたということ、いつ、誰が読んだのかといった付加価値ある情報を提供することが可能な新しい温度管理ソリューションです。

QRコードを使用した運用

実証実験の運用においては、ほかにQRコードを使用した運用も検証しました。QRコードを温度ロガーラベルの表に印刷することで、スマートフォンアプリを使用しなくても、クラウド上の管理システムにあらかじめアップロードされている温度ロギング情報にアクセスが可能です。また、クラウド上の管理システムにアクセスできるURLもQRコード化し、ご自身のスマートフォンでQRコードを読んでいただくと、WEBサイトのブラウザ上で温度ロギングの情報を確認できます。

※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です

最後に

TOPPANでは、RFID技術を用いて、様々なシーンでの省人化・省力化を実現し、業務効率化、コスト削減につながる、お客さまにとって最適なソリューションを提供しています。
今回のセミナーの内容が、今後の皆様の業務にとって少しでも有益なものであれば幸いです。

2024.05.09