【徹底解説】温度管理の基礎
~第1回 温度管理の方法とラベル型ロガー活用のすすめ~
輸送中や保管中、細心の注意を払っているにもかかわらず、“想定外の温度変化”が発生してしまうことがあります。たとえば、冷蔵庫の開閉や荷下ろしのわずかなタイミングで、温度が一時的に上昇するのは珍しくありません。こうした変化は記録に残らず、現場でも見落とされやすいため、気づかないうちに品質リスクを抱えてしまう恐れがあります。
本コラムでは、温度管理におけるこうした課題をどのように解決できるのかを整理し、TOPPANの「温度ロガーラベル」を現場視点でご紹介します。
温度変化の原因と対策
すぐに始められる温度管理の見直しポイント
輸送や保管期間が長くなると、一定の温度を保つことが難しく、何らかの外的環境の変化を受け、想定外の温度変化が発生してしまうことがあります。また、化学品や食品、医薬品などの輸送中、現場での温度チェックや記録が不十分であると、温度変化が発生したことを見逃してしまう恐れもあります。そのような課題に対して、すぐにでも対応できる温度管理の見直し方法としては次のようなものがあります。
作業者による温度の確認と記録の徹底
まずは、現状の把握を行うために、現場の作業担当者による温度の確認と記録を徹底することです。
特別な準備や追加コストが大きくかからない方法ですが、人に依存する方法であるために、確認や記録忘れなどのヒューマンエラー発生のリスクがあります。
また、温度の読み間違いや記録ミスが発生する恐れもあることからデータの信頼性の確保に課題ががあります。さらにデータを記録する方法によっては、事後に記録データの確認や分析を行うため、余分な手間と時間がかかってしまう場合もあります。

温度逸脱の対策
確認や記録を徹底し、実態を把握ができるようになったあと、その次に考えなければならないのが、温度逸脱の対策です。温度管理では、定期的な確認や記録の徹底に加え、温度逸脱が発生した際に速やかに対策を行うことが重要です。
万が一の事態に備え、適切な連絡と対応の仕組みをあらかじめ整えておくことが不可欠です。連絡体制の整備は、単に発生直後の迅速な対応を可能にするだけでなく、温度管理全体の信頼性を高める予防的な施策としても大切です。逸脱が確認された際に責任者へ専門家に速やかに連絡を取り、必要な処置や判断を仰げる体制を整えることで、被害の拡大を防ぎ、品質リスクを最小限に抑えることができます。

導入ハードルの低いデジタル化手段
運用を見直すことで温度管理上の課題に対応することも可能ですが、より正確かつ迅速な対応方法として考えられるのが「温度管理のデジタル化」です。
温度管理のデジタル化と聞くと、多くの準備やコストが必要になるのではという印象を持たれるかもしれません。しかし、温度管理のデジタル化に必要な温度ロガーにはさまざまなタイプのものがあり、状況に応じて適切に選択することで、運用の見直しよりも、さらに手軽に温度管理の質を向上させることが可能です。
温度ロガーラベルの活用
まず検討したいのが、薄型カードサイズのラベル型ロガーです。温度ロガーは、いわゆるデジタル温度計のような小型デバイスタイプのものがよく知られています。しかし、このタイプの温度ロガーは取り付ける場所に制約があります。また、輸送時の温度管理に使用する場合は輸送に適した温度ロガーを選ぶ必要があります。
一方、ラベル型の場合は、対象物に直接貼り付けたり対象物と同梱したりすることができるため、簡単に対象物により近い条件での温度測定が可能です。電池を搭載しているので貼り付けておくだけで一定間隔ごとに自動測定し、測定データはスマートフォンと無線通信するだけで取得。クラウドへアップロードすることも可能です。このようにラベル型の温度ロガーは、現場での記録作業を大幅に省力化すると共に、手軽に正確な温度管理を実現するためのツールとして活用が拡大しつつあります。

履歴データをもとにしたリスク分析
温度ロガーラベルを活用すれば、輸送中や保管中の温度データを自動記録できるため、温度変化の“見える化”が可能です。どの輸送経路や保管場所にリスクや問題が潜んでいるのか把握でき、各ラベルのデータは自動で保存できるため、人手による記録忘れや手書きによる集計の手間が大幅に軽減され、現場の作業効率も格段にアップします。
温度データを分析すると、たとえば特定の区間で温度が上昇していれば、その地点の設備や管理方法に課題があることが分かり、特定の時間帯に異常が発生している場合は、その時間帯の積み替えや運用方法を見直すきっかけにもなります。
このように、温度ロガーラベルを取り入れることで、リスク発生の予防や異常発生時にも迅速に原因を特定し、再発防止や的確な温度管理へとつなげることができます。
温度ロガー導入で実現するトレーサビリティ
化学品、食品、医薬品の分野では特にトレーサビリティの強化が求められています。そのためには「いつ・どこで・どのような温度で管理されていたか」を記録として残すことが非常に重要となります。
多くのワクチンやバイオ医薬品は低温での保管が必須であり、化学品の中にも高温や直射日光にさらされることで性質が変化するものがあります。また、食品では、冷蔵などによる細菌の繁殖防止や鮮度保持が必要な場面が多くあります。
これらの製品の温度管理状態を記録することは、品質保証や安全面から見ると必須だと言えるでしょう。もし、輸送中などに温度の逸脱が生じても、それを記録していなければ異常を発見できず、そのまま市場に流通してしまうかもしれません。
その結果、製品回収や最悪の場合は健康被害など大きな問題に発展してしまう恐れがあります。ラベル型の温度ロガーを活用すれば、温度情報をロット単位や箱単位で記録できるようになり、さらに管理帳票とのひも付けも容易になるなど、簡単で正確な温度管理・記録が可能になります。

まとめ
温度管理における具体的な課題は業界や現場によって異なりますが、共通して言えるのは「記録と検証」が必要なこと。本コラムでは、まず現場が抱える課題とそれに対する手軽なアプローチ方法として、ラベル型の温度ロガーをご紹介しました。
次回は、「薄型カードサイズのラベル型ロガー」の「用途別の導入事例」や「どのような業種で活用が広がっているか」を詳しく紹介し、導入検討の具体的なヒントになる情報をお届けします。
2025.07.28