公共サービス・地方創生

IP×地活シリーズ①
コンテンツツーリズムで地域活性化!

地域にはそれぞれの地域の特色を反映した魅力的なコンテンツが豊富に存在します。そうした既存のコンテンツを活かす取り組みがいま、注目されています。特に、「コンテンツツーリズム」を軸とした、観光誘致や地域振興などの地域活性化の施策が活発になっています。IP(知的財産)コンテンツの活用は、地域課題解決の鍵を握ります。
今回は、コンテンツツーリズムの概要からIPコンテンツの活用メリット、活用の際に留意すべきポイントをご紹介します。

具体的な施策については後編記事「IP×地活シリーズ②『愛されるコンテンツづくり』で地域をブランディング」で詳しくご紹介していますので、合わせてご覧ください。


いまさら聞けない…「コンテンツツーリズム」って?

コンテンツツーリズムで地域活性化!|TOPPAN

近年、観光分野ではコンテンツツーリズムを軸とした観光誘致や地域振興が盛んになりつつあります。

コンテンツツーリズムとは、一般的に映画やテレビドラマ、アニメ、ゲーム、小説などの作品の舞台を訪れる観光を指します。いわゆる「聖地巡礼」と呼ばれるものです。これは物語の舞台を宗教の「聖地」になぞらえ、実際に現地を訪れることで、その物語をより深く理解し、またより楽しむことを意味します。

しかし、これは狭い意味合いであり、もっと広い範囲では、観光客が地域固有のコンテンツやテーマに関連した体験や観光地を求めて旅行する傾向といえます。

そのため、地域固有のイベントやブランド、文化財、ゆるキャラといったものもコンテンツツーリズムにおけるコンテンツに該当します。例えば地域に伝わる伝統的な技術を軸としたコンテンツを広く発信して、実際に現地でその技術を活用した作品に触れるアクティビティの提供も、コンテンツツーリズムに該当するでしょう。

●IPコンテンツとは?
コンテンツツーリズムにとって、コンテンツが命です。コンテンツとは、主にIPコンテンツを指しています。

IPとは「Intellectual Property(インテレクチュアル プロパティ)」の頭文字をとったもので、日本語では「知的財産」と訳されます。知的財産とは、発明やアイデア、デザインといった人の知的な創作活動によって生み出された、財産的な価値のあるものを指します。

先述の通り、コンテンツには映画・アニメ・漫画・ゲームといったエンタメ分野に限らず、地域固有のイベントやブランド、文化財なども含まれますが、これらはすべてIPコンテンツに該当します。

各地方自治体においては、コンテンツツーリズムの潮流も背景として、このIPコンテンツをいかに活用して地域活性化につなげるかを重要視しています。

●コンテンツツーリズムが注目されている背景

コンテンツツーリズムが注目されている背景としては、旅行者の嗜好の変化やSNSの台頭、デジタル化の浸透などが挙げられます。

いわゆる定番の有名観光地を巡るような従来の旅の楽しみ方から、自身にとって特別な思い入れがあり、価値を感じる場所を訪れ、SNSなどを通じて旅の記録を仲間と共有したり、広く発信したりする、新しい旅の楽しみ方へと変化しています。

また、コンテンツを提供する地域においても独自のコンテンツやストーリーを活用して観光資源を開発し、観光客の誘致や地域振興を図る動きが盛んになっています。

その背景として、情報発信手段のデジタル化が進み、より地域のコンテンツを発信しやすくなったことが挙げられます。同時に他地域との差別化を図るために、より一層、発信力が問われやすくなっており、各地方自治体などはコンテンツに関する情報発信にも力を注いでいます。

IPコンテンツを活用して地域課題を解決! 活用メリットとは?

IPコンテンツは、地域の魅力を伝える発信力を備えています。IPコンテンツをうまく活用することで、地方自治体が抱える多様な課題にアプローチすることができます。例えば、次のような課題への解決につながると考えられています。

●地域観光資源の発掘・磨き上げ
地域に眠る観光資源は発掘して磨き上げることで他地域との差別化を図ることができます。地元にとっては当たり前のことであっても、磨き上げることで地域外の人にとっては特別な価値を持つことがあります。例えば、地域固有のIPコンテンツには、独自性や特色が凝縮されており、地域資源の発掘・磨き上げに最適な要素となり得ます。

●知名度向上・魅力発信
地域の名称や特色が全国的にあまり知られていない場合でも、IPコンテンツを活用することで、その地域の知名度を高めたり、魅力を広めるきっかけを作ることができます。複数のIPコンテンツを組み合わせて付加価値を高めて提供するなど、より魅力が向上する仕掛けを考案することで効果が出やすくなるでしょう。

●関係人口の増加
IPコンテンツをうまく活用することで、関係人口の増加にもつながります。移住してきた「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を「関係人口」と呼びます。この関係人口を増やすことが将来的な経済の発展につながるといわれており、各地方自治体は施策を実施しています。

●繁閑期の平準化、オーバーツーリズム対策、域内周遊促進
近年、観光分野で問題になっているのが、一部の地域に一定期間だけ観光客が偏ってしまい異常なほどの混雑となったり、マナー違反などが発生したりするオーバーツーリズム(観光公害)です。抑制のためには繁閑期の平準化や域内周遊の促進などが求められています。IPコンテンツをうまく活用することで、閑散期の誘客や訪問地の分散につながるでしょう。

●消費額の向上
IPコンテンツの活用が進めば、観光客による消費額がより向上しやすくなります。地元の観光施設や宿泊施設、飲食店、土産、特産品、オリジナルグッズなど多様な消費の可能性が生まれるためです。

また、IPコンテンツの権利を持つ会社などを「コンテンツホルダー」と呼びますが、コンテンツホルダーにとっても、版権使用料という「二次収入」を得つつ、コンテンツの露出を増やすことができるため、新たなファンを獲得できるメリットがある点も、IPコンテンツ活用の施策の特徴といえます。

IPコンテンツを活用した地域活性化で留意すべきポイントとは?

一方で、IPコンテンツを活用した地域活性化で留意すべきポイントもあります。

コンテンツツーリズムで地域活性化!|TOPPAN

●著作権への正しい知識を持つ
IPコンテンツは基本的に著作権で保護されています。著作権とは、文芸、学術、美術、音楽などの著作物を保護する権利です。登録などは不要で創作した瞬間に権利が生まれ、死後70年までは保護されます。IPコンテンツを最大限に活用するためには、著作権に関する正しい知識を持つことが重要です。

●法律に関する基本的な知識を持つ
著作権だけでなく、知的財産に関する権利には特許権、商標権、実用新案権、意匠権といったさまざまなものがあり、法律も非常に細かく定義されているため、取り扱う際には注意が必要です。
よって、無断で他者のIPコンテンツを利用するなどすれば違法となります。また、コンテンツの著作者との契約に際しても、基本的な知識が求められます。

IPコンテンツを活用する際には、ぜひ基本的な権利や法律に関する知識を押さえておくことをおすすめします。

まとめ

コンテンツツーリズムとIPコンテンツの概要、IPコンテンツの活用メリットや留意すべきポイントについてご紹介しました。

IPコンテンツの活用可能性についてご興味がわいた方も多いと思われます。後編の「IP×地活シリーズ②『愛されるコンテンツづくり』で地域をブランディング」では、IPコンテンツを実際に活用する際のポイントをご紹介しています。ぜひ合わせてご覧ください。

コンテンツツーリズムで地域活性化!|TOPPAN

2024.05.23