公共サービス・地方創生

IP×地活シリーズ②
「愛されるコンテンツづくり」で地域をブランディング

近年はコンテンツツーリズムや「聖地巡礼」などのキーワードが根付いてきていることもあり、自分の地域でもコンテンツや地域資源を有効活用した取り組みを強化したいとお考えの方も多いのではないでしょうか。しかし、コンテンツを活用するにはポイントを押さえる必要があり、前提となる基礎知識も求められます。
今回は、IPコンテンツを地域活性化に活かすポイントとして、具体的な方法やポイントをご紹介します。

コンテンツツーリズムの概要やIPコンテンツの活用メリット、活用の際に留意すべきポイントについては、前編の「IP×地活シリーズ① コンテンツツーリズムで地域活性化!」の記事で解説しています。合わせてご覧ください。


IPコンテンツを最大限に活用するポイント

IPコンテンツを最大限に活用し、一時的な盛り上がりだけで終わらせず、長きに渡って多くの人々に愛されるようにするためには、次のことがポイントになります。

●地域の特色を生かしたIPコンテンツを選定する
●地域住民の理解と協力を仰ぐ
●企画のコツを押さえて立案する

IPコンテンツを活用するには、まず根幹となるコンテンツの選定が求められます。この選定においても重要なポイントがあります。また、活用して成果を出すためには、地域住民の協力が必要不可欠です。いかに共感を引き寄せ、協力体制を築き上げられるかが問われます。

また、企画立案に関しては、ただ漠然と企画するのでは継続的な効果が見込めません。コツを押さえることで、長きに渡って愛されるIPコンテンツの魅力を最大限に引き出せる企画となるでしょう。

それでは企画のポイントを具体的に解説していきます。

企画のポイント①~地域とIPコンテンツの“共通点探し”

IPコンテンツを最大限に活用する施策を行うためには、地域の特性やニーズに合わせた企画が重要になってきます。

「うちの地域は人気アニメの舞台となったから」と、ただ単に人気のコンテンツを起用するだけでは、継続的に人は訪れてくれません。IPコンテンツを起用すると同時に地域の魅力を最大限、引き出す体験を提供するといった企画の吟味が重要です。

企画に力を入れることで「コンテンツファン」を「地域のファン」にすることもできるのです。

それを実現するためには、まずIPコンテンツ選びが重要になってきます。

「あの人気アニメの舞台となった地域だから、このアニメを起用すれば一気に知名度が向上するのでは? 人が流入してくるのでは?」と期待するかもしれません。しかし、現実はそう単純ではないのです。ファンとしては、コンテンツの魅力だけでなく「体験の独自性」つまり「なぜそこでなければならないのか」といった視点で評価をするからです。

ただ「舞台になった地域」だけでは、そこに訪れるほどの必要性や価値を感じないファンもいるでしょう。遠方からは交通費や移動時間もより多くかかりますし、宿泊費なども必要になります。

そこで重要なのは、地域とIPコンテンツを紐づける共通点を探し、企画化することです。

例えば、アニメの舞台になったのであれば、主人公が物語の中で食べていたものに地元食材が使われていないか確認し、もし見つかればその食事を再現して飲食店メニューとして販売したり、土産物として加工生産して販売したりすることができます。

すると「ここでしか食べられない」「ここでしか手に入らない」という価値が生み出されることから、ファンはわざわざ訪れたくなります。

「愛されるコンテンツづくり」で地域をブランディング|TOPPAN

●聖地となる作品が存在しない地域はどうする?
地域によっては、いわゆる「聖地」となるような作品が存在しないということもあるでしょう。しかし、そういった地域であっても、十分にIPコンテンツ活用による地域活性化の施策は可能です。例えば歴史、伝統、文化、特産品、産業、建造物、風景など、地域の特色を活かしたコンテンツを選定することもできます。

これらのコンテンツについても「なぜそこでなければならないのか」の条件を満たすことができれば、ファンを創り出し、訪れたくなるコンテンツに変わるのです。幸いなことに、地域の特色を活かしたIPコンテンツは地域との結びつきが強いため、地域とIPコンテンツの“共通点探し”が行いやすいといえます。

企画のポイント②~地域の共感を呼ぶストーリーテリング

企画を立案する際にもう一つ、ポイントになることとして、探し出した地域とコンテンツの共通点を、ストーリーテリングに取り入れることがあります。

ストーリーテリングとは、物語風に訴求することでこちらが伝えたい想いや意図を伝える手法です。例えば観光誘致の際に、ただ単に「アニメ○○で使われた食材の産地です」と訴求するのではなく、「アニメ○○の第2話で主人公が食べていたお昼ご飯に使われていた地元食材△△を使ったおかずを再現しています。これを食べて主人公は元気になり、また敵との戦いに向かっていくことができました」など、背景や想いをストーリーとして表現します。

このストーリーテリングには、地域住民とコンテンツファン両方の共感を喚起する要素を加味することが重要になってきます。

●「地域住民」が共感できるストーリーにするには?
地域住民に共感してもらうためには、地域の誇りや想いが込められているか、地域のニーズ・課題を解決できる施策内容であるかという視点を持ってストーリーに盛り込むことが重要です。

地域住民が共感することで、地域コミュニティの結束が高まり、コンテンツの浸透が促進されます。また、地域住民による受入環境の整備にもつながっていきます。

●「コンテンツファン」が共感できるストーリーにするには?
コンテンツファンに共感してもらうためには、コンテンツに対する愛着、地域に対する親しみが醸成されるものであるかという視点を持ってストーリーに盛り込むことが重要です。

コンテンツの魅力と地域の魅力や特色がリンクすることで、地域への親近感が増進されます。

これらの2つの視点のうち、どちらかのみを追求するだけではIPコンテンツ活用による地域活性化施策は続いていきません。ぜひ両方の視点を持ちましょう。

成功の秘訣は「地域コミュニティ」活性化の仕組みづくり

「愛されるコンテンツづくり」で地域をブランディング|TOPPAN

地方自治体が、コンテンツツーリズムや地域活性化のために推進するIPコンテンツプロジェクトを成功させるには、秘訣があります。

それは長期的な視野を持ち、地域住民や関係者との協働やコミュニケーションを通じて、IPコンテンツの開発・普及を推進する「仕組みづくり」にあります。

これにより、地域コミュニティを活性化することができ、より多くの観光客や関係人口を呼び寄せることが可能になります。

IPを活用して地域の課題に対応するには?

IPコンテンツを活用することで、地域のさまざまな課題を解決へと向かわせることもできます。具体的にどのような解決方法があるのか、参考に地域の課題感と紐づけられるTOPPANの事例・ソリューションの概要をご紹介しましょう。

●地域資源の発掘・磨き上げ
地域資源の発掘・磨き上げの一つのアプローチ方法として、デジタル化やデータベース化、アーカイブ化があります。例えばある地方の博物館では児童生徒に対し、地元の歴史に関する学びへの興味喚起のために、VR(※1)やAR(※2)を活用して恐竜をデジタルコンテンツとして復元する試みを実施しました。

TOPPANでは、文化財のアーカイブ構築からデジタル化、文化財コミュニケーションまでトータルでご対応できます。これらのサービスにより、地域に眠るIPコンテンツを磨き上げ、価値を高めるお手伝いも可能です。

※1 VR:Virtual Realityの略。仮想現実。デジタルの仮想空間やモノを現実であるかのように疑似体験できる技術。
※2 AR:Augmented Realityの略。拡張現実。現実世界にデジタル情報を付加し、世界を拡張する技術。

●知名度向上・魅力発信
IPコンテンツの魅力をより高める発信手段も数多くとりそろえています。

「ストリートミュージアム®」は、VRで史跡を復元し、観光客にARコンテンツとして楽しんでいただける現地体験型XR観光アプリです。

また多言語AIを搭載したAIチャットボットが接客するデジタルアシスタント「BotFriends®Vision」を搭載したサイネージを観光施設内などに設置することで、効果的な情報発信が可能になります。

メタバースに店舗を出店できる「メタパ®」を用いれば、メタバース上で物販やイベントを開催し、アバターを介してユーザーに遠方からでも地域イベントなどへの参加や体験をしてもらうことができます。

●関係人口の増加
関係人口の増加を目的としている地方自治体向けには、関係人口ポータルサイトを構築するサービスをご提供しています。地域の魅力を紹介する記事や動画投稿などが可能な「情報発信機能」と、地域特産品の販売などが可能な「サービス提供機能」の2種類の機能を備えており、IPコンテンツの広い周知や物販などにつなげられます。

また移住・定住マッチングWEBサービス「ピタマチ™」では、移住・定住希望者に暮らし診断を受けてもらい、その結果から、マッチ度の高いユーザーに個別でアクションを取ることができます。地域の魅力を情報発信するツールとしても利用できます。

●繁閑期の平準化、域内周遊促進
「まちなかAR」は、街の風景にリアルタイムの飲食店情報・地域情報・キャラクターなどをARで投影し、まちあるきを促進するサービスです。スマホをかざすだけでお店の情報を検索・確認できるなど、地域のまちあるきをより楽しくさせてくれます。IPコンテンツとコラボしたARの制作も可能なので、施策の幅が広がります。

さまざまな場所にARを仕掛けておくことで、繁閑期の平準化、域内周遊促進の課題解決に寄与します。

●消費額の向上
観光客の消費促進のためのお手伝いも可能です。手持ちのロゴやキャラクターを簡単にグッズ化し、在庫を持たず販売できる「かなプロマーケット®」や、地域通貨や商品券のデジタル化を手軽に実施できる「地域Pay®」はその一例です。

まとめ

IPコンテンツを最大限に活用し、地域活性化につなげるためのヒントをご紹介しました。IPコンテンツを有意義に活用して観光誘致や関係人口創出などのさまざまな成果を出したいという場合には、ぜひご参考にされてください。

TOPPANでは、今回ご紹介したように、IPコンテンツの有意義な活用につながるさまざまなサービスをご提供しております。ご興味のある方は、サービスページをご覧ください。またご不明な点等ございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

「愛されるコンテンツづくり」で地域をブランディング|TOPPAN

2024.05.23