メタバースの教育現場での活用方法とは?バーチャル空間が変える教育の未来
現在、注目を集めているメタバース。ゲームやショッピングなど体験価値の提供や、オフィス空間の代替、またリアル空間と並行したコミュニケーションの場としてなど様々な分野で活用されていますが、学校の授業などの教育現場でも活用され始めているのをご存知ですか? 学校などの教育現場での活用というのは、なかなかイメージがつきにくいところもあるかと思います。そこで今回は、メタバースが学校などの教育現場で活用されている背景や活用用途、メリット、事例を解説します。
メタバースが教育現場で活用され始めている
ここ数年で、世界的に、メタバースが学校などの教育現場で活用され始めています。
メタバースは、これまでのVR(バーチャルリアリティ)技術を用いるだけでなく、アバター同士の日常的なコミュニケーションが実現可能な、リアル世界と連動した仮想世界です。
そのメタバースを教育分野に活用することは、海外ではすでに浸透しています。
例えば、米国スタンフォード大学では、ほぼすべての授業でVRを使用して講義を行っているといいます。授業では、学生がバーチャル空間に各自アバターを用いて集まり、ディスカッションを行うなどして体感的な実習を行っていると伝えられています。
また、米国オンラインゲームプラットフォームのRoblox(ロブロックス)が世界中の学校向けに、メタバースを用いた教育ゲームの開発を進めていることや、教育系VRコンテンツを提供する企業がメタバース上で仮想大学のキャンパス創設を計画していることなどが報じられており、将来的には身近なところに「メタバース×教育」が浸透していく可能性があります。
メタバースが教育業界に与える影響
メタバースが教育業界に与える影響として挙げられるのが、時間や場所・環境を問わずに、教育を受けられるようになることです。平日の日中に用事があって忙しい社会人の方でも、メタバースの環境が整っていることで、教育の機会が設けられ、学力や知識を高めることが可能となります。
教育を受けるにあたり、メタバースを活用することで、時間や場所・環境による制限がなくなります。例えば子供の場合、自由な時間に教育が受けられ、学業以外に取り組みたいと考えていることに対して、時間をあてられるようになります。
その他にも、メタバースを活用して外国語を学ぶ方法なども期待されており、グローバル人材の育成の一役を担うなど、効果が期待されています。
メタバースの教育への活用用途
メタバースを教育へ活用する用途には、実にさまざまな種類があります。現状、次のような用途が考えられます。
学校・塾のオンライン授業
学校・塾などのオンライン授業にメタバースを取り入れる方法です。自宅で誰でも受講ができます。VRゴーグルを装着することで、仮想空間の教室に入り込んで授業を受けることができます。
学校行事やイベント
入学式・卒業式・運動会・オープンキャンパス等のイベントもメタバース上で行われています。東京大学では、2022年度に新入生歓迎会のオリエンテーションをメタバースで実施するなど、すでに実用化されています。
学校自体をバーチャル化
すでに日本のいくつかの大学では、学校自体をバーチャル化しており、バーチャル上で講義やオープンキャンパス、オンライン学園祭などを開催しています。
その他にも、不登校児の支援を目的とした、「メタバース登校」という取り組みも増えており、学校における授業の形の多様化も進んでいます。
障がいをもつ学生への教育ツール
認知障がいなどを持つ学生が、他人とのコミュニケーションや感情・行動の実践練習など社会的スキルを身に着けるために、メタバースを活用し、現実世界を再現した空間でトレーニングする教育手法が考案されています。
企業の社員研修
メタバースの教育への活用は、学校だけでなく、企業研修にも広がっています。火事や事故の体験や、感染症拡大の可視化などリアルでは難しい内容をバーチャル上で再現することで、より深い理解習得につながることから、有効なトレーニングツールとなっています。
メタバースを教育に取り入れるメリット
メタバースを教育に取り入れることは、新鮮で多様な可能性が広がっているように感じられますよね。では、具体的にどのようなメリットが生まれ、これから教育にどのような新しい可能性が生み出されていくのでしょうか。考えられるメリットをご紹介します。
仮想空間での体験から失敗を学べる
バーチャル体験や、仮想空間における思考や行動は、たとえ失敗しても、現実空間での失敗よりは心身のダメージを軽減できます。失敗を怖がらず臨むことができるため、失敗から学ぶ環境を作りやすいのがメリットといえます。例えば、理科の授業では、実験を学生に好きなように行わせて、あえて実験に潜む危険を仮想空間で体感してもらうということもできます。
現実世界では取り扱えないもので学習ができる
先述のように、メタバース教育では、現実の授業では扱えないような危険な物質や生物なども手軽に取り入れて教えることができます。さらに、CGや映像を作り込むことで、歴史の一コマを追体験するような授業展開も可能となり、より臨場感を持った授業となるでしょう。
ゲーム感覚で没頭しながら楽しく学べる
授業に興味を持てない生徒でも、メタバースであればゲーム感覚で学べる可能性があります。モチベーションが高まれば、生徒の学力向上につながるでしょう。
学校へ通えない生徒でも気軽に参加できる
身体的、精神的、家庭の事情等で登校できない生徒でも、メタバースなら遠隔でどこからでも参加できるため、受講の幅が広がります。
メタバースを教育現場で活用する際のポイント
メタバースの学校などの教育現場での活用用途やメリットについて説明してきましたが、ここでは、具体的にメタバースを活用する際のポイントについて、解説します。
生徒の参加意欲を引き出す
メタバースは、ゲーミフィケーションという手法を用いて、学習者の興味やモチベーションを引き出す有効なツールとなります。
教師自身がメタバースの操作に慣れる
教師がメタバースの操作に慣れていないと、生徒の学習効果が減少します。そのため、事前の準備や研修が必要となります。
実世界とメタバース内の連携
実際の教育現場で学んだ内容をメタバース内で再現したり、逆にメタバース内で学んだ内容を実世界で活用したりするなどの方法を考える必要があります。
教育内容を適切な設計にする
メタバースを活用した教育プログラムは、教育目標や学習内容に適した設計が必要です。また、学生が自主的に学習できるように、ゲーミフィケーションの要素を取り入れるなどの工夫も有効です。
メタバースを教育現場で活用する際の課題
メタバースを教育に取り入れるメリットを紹介しましたが、メリットと合わせて教育現場で活用する際の課題も理解をしておきましょう。
初期費用がかかる
メタバースを活用するには、インターネット環境の整備が必要です。またVRゴーグルの準備や、VRゴーグルに対応したパソコンなど、ある程度の性能を備えたパソコンを準備する必要があります。また機材だけではなく、教育現場専用のメタバース空間を作成する必要があります。
コンテンツが少ない
教育現場でのメタバース活用が増えてはいるものの、まだ十分なコンテンツが揃っているわけではないため、メタバース空間内ですべてを対応していくには難しい状態です。
メタバースを活用した国内の教育事例
メタバースを教育分野に活用することで、多くのメリットが期待できます。実際に、日本でもメタバースを活用して教育を実施しています。その事例を見ていきましょう。
通信制高校のVR授業
ある通信制高校では、VR授業を行っています。これもメタバースに通じるところがあります。VRゴーグルを装着し、教室を模した空間で授業を受ける形式です。すでに300本を超えるVR授業コンテンツを制作しており、生徒は好きな時間に好きな場所から授業を受けられるようになっているといいます。未来の通学スタイルを垣間見た気がしますね。
バーチャル教育空間で不登校対策を検証
ある企業は、不登校対策として、メタバースを教育に活用する効果の検証を小中学校と共同で実施しています。メタバースでは、集合して受ける授業も、個別授業も共に用意されており、アバターを通じて授業を受ける仕組みになっています。メタバースを実際の教育現場に導入する際の課題を抽出することで、解決策が見えれば、今後の実装が期待されます。
社会人向け英会話スクールのVRライブレッスン
日本人が国内でネイティブレベルの英会話スキルを身に付けるためには、ネイティブスピーカーとのコミュニケーションの頻度が重要といわれており、ある英会話スクールは、メタバース内でリアルな英会話の機会を作りました。メタバースの中において、世界中を旅しながら、英語に触れられます。教室のほか、ファストフード店や空港、ホテルなどのシチュエーションが40種類ほど用意されており、その中で英会話の訓練が可能です。生徒からは、シーンごとに内容にあった英会話練習ができるのが良いという声が挙がっています。
企業の新入社員研修
TOPPANでは、2022年度の新入社員研修において、従来より実施してきた完全オンライン研修での取り組みに加えて、新入社員同士の新たなコミュニケーションのプラットフォームとして、自社開発のメタバースショッピングモールアプリ「メタパ」をカスタマイズして導入し、メタバース上に新入社員同士の交流を促進させる場を用意しました。これによって、社員研修の新しい形の可能性が広がりました。
まとめ
メタバースを教育分野に活用することは、ただ単にゲーム活用のようなモチベーション向上につながるだけでなく、学習の質や効果を高めることや、不登校や障がいを抱えた子どもたち、遠方に住む子どもたちに対する学習メリットなど多様な可能性を秘めていることがわかります。今後、教育への活用が進むことを期待したいものです。
TOPPANでは、ビジネス向けメタバースサービス基盤「MiraVerse(ミラバース)」をご提供していますが、教育用途の活用も可能です。現実空間を正確に取り込んだ高い臨場感のメタバースにおいて、アバターを通じてセキュリティ上安全に利用可能です。教育分野での活用も可能となっています。メタバースを教育用途に導入する際には、ぜひご検討ください。
また、メタバースについてより知識を深めたい方は、TOPPANの情報誌「ideanote vol.148」をご一読ください。弊社のCXサービスをご紹介しており、その中で、複数のメタバース関連サービスの情報も掲載しております。
また、弊社のセミナーに登壇したバーチャル美少女ねむ氏の登壇動画は、メタバースビジネスの理解に役立ちます。ぜひご覧ください。
2023.11.22