IoT用語を解説
押さえておきたい10のキーワード
情報通信技術のワードの中でも、近年多く耳にするようになった「IoT」。インターネットに、産業用機器から自動車、家電製品などさまざまな「モノ」をつなげる技術です。大量のデータを共有・分析することで社会インフラやビジネス、生活に大きな利便性と効率化を生み出します。今回は、IoTを取りまく新しい概念として押さえておきたいIoT用語を解説します。
❶ IoT(Internet of Things)
IoTとは「Internet of Things」の略称で、さまざまな「モノ」がインターネットに接続され、 情報交換することにより、自動制御や遠隔操作などを行う仕組みのことを指します。IoTには主に4つの用途「モノを操作する」「モノの状態を知る」「モノの動きを検知する」「モノ同士で通信する」があります。
家電では遠隔操作や状態管理、自動車では自動運転、工場機械では進捗管理や状態管理などの用途で活用されています。総務省の「令和3年版 情報通信白書」によると、2023年には世界で約340億台のIoT機器がインターネットに接続されるとされ、特に産業、コンシューマー、通信の分野の割合が多くなっています。今後は医療分野の成長も期待されており、スマート工場やスマートシティなどが目指されています。
❷クラウドサービス
クラウドサービスとはユーザーがサーバーなどのインフラやソフトウェアを持たなくてもインターネットを通じて、サービスを必要な時に必要な分だけ利用するシステムを提供するサービスを指します。サーバーやソフトウエア、回線など、全ての環境をユーザー全体で共有して使う「パブリッククラウド」、企業が自社のために構築した専用のクラウド環境「プライベートクラウド」複数のクラウドベンダーから提供されるパブリッククラウドを組み合わせて最適な環境を実現する「マルチクラウド」などがあります。クラウドサービスの代表的なものにはAWS(Amazon Web Services)・GCP(Google Cloud Platform)などがあります。TOPPANでもAWSやクラウドサービスを基盤とした製造現場のIoT化を推進するさまざまなサービスをご提供しています。
NAVINECTクラウド
「NAVINECTクラウド」は、製造業務のPDCAをまるごとデジタル化する「クラウド型製造DXサービス」です。TOPPANが自社製造現場で開発・実装・運用してきたデジタル化のノウハウを基に、幅広いお客さまに導入できるよう汎用化しました。
❸オンプレミス
クラウドサービスと並んでよく聞くのが「オンプレミス」というキーワード。オンプレミスとは自社設置型のサーバーです。自社でシステム構築に必要なハードウェア・サーバーを調達し、システムを開発・運用する仕組みです。いわゆる自社で完全運営するシステム構築のことをさします。オンプレミスの利点は、自社に適した設計にできることです。クラウドサービスではベンダーが用意した環境のため選択肢が限定される場合がありますが、オンプレミスの場合はカスタマイズが自由にできる利点があります。セキュリティ面でもオンプレミスは独自のセキュリティ構築が可能のため、機密性の高いデータを扱うような場合はオンプレミスで運用される場合があります。
❹IoTプラットフォーム
IoTプラットフォームとは、IoTを用いたサービスを導入する際に土台とするクラウドサービスのことです。
IoTデバイスをネットワークに接続し、収集された大量のデータを処理することを目的としたシステム基盤で、情報の可視化や分析、制御などが可能になります。最初からIoTシステムをクラウド上で管理することを前提に、クラウドならではの特性を活かせるよう設計・最適化しています。クラウドベンダー提供範囲内での運用に限定されるデメリットはあるものの、初期投資が少なく開発期間短縮が可能になるメリットがあります。高スケーラビリティ機能を持ち合わせているため、部分最適で導入頂き、将来的に統合するといったような段階的なIoT化が実現します。TOPPANではAWS基盤をベースに構築した統合ID認証プラットフォーム「ID-NEX®」などがあります。
統合ID認証プラットフォームID-NEX®
「ID-NEX®」は、TOPPANが従来培ってきたセキュリティ技術やICT技術のノウハウを活用し、商品のライフサイクルをトータルに管理できる統合ID認証サービスです。ID管理はもちろん、循環資材管理サービスや真贋判定サービス、トレーサビリティサービスをご提供しています。また本サービスはクラウドで提供され、企業は個別のアプリケーションやシステムを開発する必要がないため、初期コストや導入負荷を低減できます。
ID-NEX®真贋判定サービス
スマホで誰でも簡単に真贋判定が可能な「ID-NEX®真贋判定サービス」。模倣品対策として、スマホを用いてユニークID(英数混在のランダムで重複のないID)を読み取り、判定サイトによって正規品か否かを確認できます。
ID-NEX®トレーサビリティシステム
TOPPANのID-NEX®トレーサビリティシステムは、商品一つ一つのトレーサビリティを実現します。商品にユニークIDを付与して流通拠点で記録し、情報をクラウド上のシステム「ID-NEX®」に集約することで商品流通過程を管理し、不具合発生時の迅速な影響範囲の把握と原因究明、消費者への安心・安全の提供を実現します。スマートフォンやパソコンから、製品に付けたIDを入力することにより、Webを経由してIDの履歴を閲覧することが可能です。
❺IoTゲートウェイ
IoTゲートウェイとは、端末と遠隔のサーバ(クラウド)がデータのやりとりをする際、中継する役割を担う機器です。装置に設置されたPLC(Programmable Logic Controller)*から装置情報を収集し、情報をサーバーに送る事で生産装置のさまざまな監視に活用可能です。
TOPPANではIoTゲートウェイ連携による現場作業のナビゲーションツールとして現場作業のナビゲーションツール 「工程管理」サービスをご提供しています。さまざまな装置情報を自動で取得することが出来るようになり、装置情報の入力が自動化されることで作業時間の短縮・入力のミスを削減させることが可能です。
*PLC:機械が実行する動作を事前に順序付けて記憶させることで効率的に機械を動かすことができる装置
❻IoTデバイス
IoTデバイスとは、IoTに使用される機器全般をさします。機器同士やローカルのネットワーク、またはインターネットで接続し、情報や制御のやりとりをする、IoT(モノのインターネット)における「モノ」にあたります。RFIDで利用するハンディターミナル、ICタグ、リーダ/ライタ、スマートマット(在庫を重量で検知するIoT重量計)などがあります。
❼ RFID(Radio Frequency IDentification )
RFID(Radio Frequency IDentification )とは、IC タグを利用した識別システムです。従来のバーコード等を使用した識別システムとは異なり、電波を使用して識別するため、汚れに強く、複数のものを一括で読み取ることができるという特徴があります。また電波が届く範囲であれば、IC タグが遠くにあっても読み取りが可能です。
RFIDは多くの製品や配送物等から情報をすばやく正確に読み取ることが可能なことから、身近なところでは交通系カードや電子マネーなどに使用されており、産業分野においても物流や検品管理の現場作業などに広く用いられています。
RFIDは周波数の違いによりさまざまな用途があります。
例えばUHF(920MHz帯)は、電波の照射範囲内のものを一括で読み取ることができるほか、ダンボールを開封せずに外側から中のものを読み取ることも可能です。このことから、かごに複数の商品が入ったもののレジ会計や、重なった商品の棚卸などに活用されています。
TOPPAN RFIDソリューション
TOPPANのRFIDソリーションは、ICタグ媒体の設計・開発、最適なリーダ/ライタの選定、運用設計、システム開発、導入のサポートまでワンストップで提供するサービスです。日本と中国の2箇所にRFID開発拠点を持ち、独自のICタグの開発環境や各種評価設備にて実施しています。整備された開発環境において、各種周波数、ICチップ、さまざまな加工オプションに対応したICタグの開発を推進しています。
❽ センシング
センシングとは、英語の「sensing」に由来する言葉で、技術の世界では、カメラや各種センサーなどを使用して情報収集することや、その技術を指します。センシングでは、温度や音量、明るさ、衝撃の強さといったさまざまなデータを計測・数値化します。
センシング技術は、近年遠隔から行うリモートセンシングが登場し、宇宙・航空・地球化学などの分野で用いられています。
例えば製造現場ではセンシング技術を用いて生産状況をリアルタイムに把握したり、故障や不具合の予知を行ったりします。最近ではスマートセンシングという技術も活用されています。これはスマートセンサー*による衝撃や温度、光量などの情報取得によるセンシング技術で、すでに医療や製造、自動車などさまざまな業界に採用されています。
*スマートセンサー:光・音など感知した物理量を処理するセンサー
❾エッジコンピューティング
エッジコンピューティングとは生産装置やヒト、モノに対してセンシングの配置をはじめとするIoT化を行い、IoTデバイスからデータ収集を可能にする仕組みのことです。よりデバイスに近いところで処理を行うことで、処理の高速化やセキュリティを確保することが可能になります。
NAVINECTエッジ
TOPPANではIoT技術で実現するリアルタイムな製造現場管理ソリューション「NAVINECTエッジ」をご提供しています。生産装置やエッジデバイスのデータを自動的に取得、エッジサーバーで高速処理し、活用することで現場のさまざまな課題を解決します。従来人手で行っていたデータの取込・集計・処理・監視・可視化、生産装置の制御、作業指示といった内容をIoTの技術で自動化することで、より高度かつスピーディな製造現場の改善が実現可能になります。
❿ IoT向け通信技術「LPWA(Low Power Wide Area) 」
LPWA(Low Power Wide Area)とはIoTに使われる無線通信技術の一つです。低消費電力、長距離通信、低コストを特徴とし、注目を集めています。LPWAに対応した機器の台数は今後急速に拡大し、億を超える規模になると見込まれています。
参照:総務省「平成29年度情報通信白書」IoT 化する情報通信産業
遠隔操作・監視システムを実現する手段としての利用が進んでいます。例えば農産業などで人の代わりにセンサーを設置して土壌の状態などの情報を遠隔でモニターできる他、インフラや物流分野に活用されています。
今後、スマートシティやスマートオフィス、スマートファクトリー、資産管理等、さらに利用が促進されていくと考えられます。
IoT向けLPWA(低消費電力広域ネットワーク)規格 ZETA
TOPPANはIoT向けLPWA(低消費電力広域ネットワーク)規格 ZETAを提供しています。ネットワーク構築に必要となる、センサーデバイスからサーバーまで幅広く取り扱い、 案件調査・システム提案・構築・運用支援までカバーするトータルソリューションです。
中継器を利用することによって低コストで広い通信エリアを低消費電力で通信が行えるIoT向けのネットワークをご提供します。野生動物の罠監視や河川水位監視システム、スマート農業、施設の利用状況、スマートオフィス、工場の環境保全、物流管理などに活用可能です。
2024.07.05