コラム

スマートシティの用語をわかりやすく解説
知っておきたい10のキーワード

スマートシティとは、ICTやIoTといった先端的な技術を活用した、持続可能な都市や地域のことを指します。簡単に分かりやすく言うと、「環境にやさしく、誰もが住みやすい最先端の技術を活用した都市」ということです。スマートシティが注目されている背景としては、今後人類の人口増加が予想される中、都市居住人口もそれに合わせて増加することで、エネルギー問題・環境問題・貧困問題等、様々な問題が引き起こされると懸念されているためです。そのような問題を解決しつつ、誰もがより良い生活を享受できるような持続可能な都市を実現するため、先進的技術や各種データの利活用をまちづくりに取り入れたスマートシティの取り組みが、全国各地で始まっています。現在、各地で行われているさまざまな実証実験を経て、今後は社会実装に向けて加速していくことが予測されています。
今回は、そのスマートシティをひも解く10の用語をわかりやすく解説します。


❶スマートシティ

スマートシティは、ICT などの新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営など)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域であり、Society 5.0*の先行的な実現の場と定義されています。スマートシティは地域や解決すべき課題によってさまざまですが、大きく定義すると以下のようになります。

・スマートシティの定義
「3つの基本理念※1と、5つの基本原則※2に基づいた、ICT などの新技術や官民各種のデータを活用した市民一人ひとりに寄り添ったサービスの提供や、各種分野におけるマネジメント(計画、整備、管理・運営など)の高度化などによる都市や地域が抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける持続可能な都市や地域であり、Society 5.0*の先行的な実現の場」

※1 スマートシティの3つの基本理念
・市民(利用者)中心主義
・ビジョン・課題フォーカス
・分野間・都市間連携の重視

※2 スマートシティの5つの基本原則
・公平性、包摂性の確保
・プライバシーの確保
・相互運用性・オープン性・透明性の確保
・セキュリティ・レジリエンシーの確保
・運営面、資金面での持続可能性の確保

*内閣府「スマートシティ・ガイドブック引用/策定主体:内閣府、総務省、経済産業省、国土交通省」を加工して作成
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/01_scguide_1.pdf

内閣府HPより加工して作成:https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/


*Society5.0とは
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社(Society)、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。

TOPPANのスマートシティの取り組み

TOPPANは、スマートシティの取り組みを通じて、ふれあい豊かでサステナブルな暮らしに貢献する「社会的価値創造企業」を目指して事業を行っています。
スマートシティにおけるさまざまなサービス領域の中から、注力する6の領域
「1.基盤インフラ群、2.医療/ヘルスケア、3.デジタルガバメント、4.教育、5.観光/地域活性、6.UI/UX」を設定し、スマートシティ事業による社会への価値創出を加速させます。

自治体ポータルサービス「クラシラセル®」

クラシラセル®

「クラシラセル®」は、自治体と住民の情報コミュニケーション最適化を目指すアプリ型ASPサービスです。スマートシティ実現に向けて、都市OSの「共通的な機能や標準的なインタフェース」の役割を果たしていきます。
主な機能は、「パーソナライズ情報発信」「地域密着型機能(ナビ、マップ)」「多言語表示」「データ連携基盤接続」です。2022年より茨城県つくば市にて導入・運用を開始していきます。


❷スマートシティリファレンスアーキテクチャ

スマートシティリファレンスアーキテクチャとは、内閣府から提供されており、スマートシティの推進を希望する地域が、各々の地域の特性に合ったスマートシティを構築する際に参考となる設計図です。
各地域でのスマートシティの構築を、統一された手法・ルール(リファレンスアーキテクチャ)のもとで効率的に実施するために必要となります。
スマートシティリファレンスアーキテクチャは、「1.利用者中心の原則」「2.都市マネジメントの役割」「3.都市OS の役割」「4.相互運用の重要性」の4つのコンセプトを踏まえて構築されています。

❸都市OS

都市OSとは、日本のスマートシティの実現に向けた課題への対策として、①相互運用(つながる)、②データ流通(ながれる)、③拡張容易(つづけられる)を特徴として設計されているデータ連携基盤です。
①相互運用(つながる)とは、地域内外のサービス連携や各地域における成果の横展開を可能にし、つながりやすくするための仕掛けです。共通的な機能や標準的なインタフェースを備え、外部に公開する仕組みが必要です。
②データ流通(ながれる)とは、分野や組織の壁を越え地域内外のさまざまなデータを、ひとつの共有された論理的なデータのように見せ、地域内外でデータがながれやすくするための仕掛けです。異種データ(都市OS 内外の多種多様なデータ)を都市OS が仲介する仕組みが必要です。
③拡張容易(つづけられる)とは、地域が解決する課題や目指すべき将来像、及び、スマートシティリファレンスアーキテクチャの更新に合わせ、機能拡張や更新を容易にするといった、都市OS が継続的に維持・発展しつづけられるための仕掛けです。機能間の疎結合なシステム構築により、必要な機能のみを拡張・更新する仕組みが必要です。


❹スーパーシティ

令和2年の国家戦略特別区域法改正により、「スーパーシティ型国家戦略特区」として創設された国家戦略特区の一類型です。スマートシティではエネルギーなど、個別分野を対象とした取り組みが多く行われているのに対し、スーパーシティ構想では①生活全般にまたがる複数分野の先端的サービスの提供、②複数分野間でのデータ連携、③大胆な規制改革の3つをポイントとしており、住民が参画し、住民目線で、2030年頃に実現される未来社会を先行実現することを地域と事業者と国が一体となって目指す取り組みです。

*内閣府HP「スーパーシティ・デジタル田園健康特区について」(内閣府地方創生推進事務局)」を加工して作成
https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/supercity/supercity.pdf


❺デジタル田園都市国家構想

「デジタル田園都市国家構想」は、「新しい資本主義」の実現に向けた成長戦略の最も重要な柱であり、地方の豊かさをそのままに、利便性と魅力を備えた新たな地方像を提示するものとして、岸田政権が推進する政策です。産官学の連携の下、仕事・交通・教育・医療をはじめとする地方が抱える課題を、デジタル実装を通じて解決し、誰一人取り残されず全ての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らしを実現するという構想です。地域の個性を活かした地方活性化をはかり、地方から国全体へのボトムアップの成長を実現し、持続可能な経済社会を目指しています。

❻自治体DX

自治体DXとは、自治体が取り組むDX(デジタルトランスフォーメーション)のことを指します。DXとは、ITの浸透により、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変革させることを指します。政府は、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を掲げ、デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが叶う社会を実現し、誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を目指しています。実現のためには、住民に身近な行政を担う自治体、特に市区町村の役割は極めて重要だとしています。
自治体に求められていることは、自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させること。そしてデジタル技術やAIなどの活用によって業務効率化を図り、人的資源を行政サービスのさらなる向上につなげていくことです。

❼MaaS(Mobility as a Service)

MaaSとは、マースと読み、「Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の略称です。日々の生活の中で生まれる住民や旅行者一人ひとりの移動ニーズに対応するサービスのことです。これまでも鉄道やバス、観光などさまざまなサービスは存在していましたが、MaaSは複数の公共交通やバス、タクシーなどあらゆる移動サービスを最適に組み合わせて、検索・予約・決済などを一括で行うサービスのことを指します。また、観光や医療、物流といった目的地で提供されるサービスとの連携も行い、移動の利便性向上や地域の課題解決にも役立ちます。現在、国土交通省ではMaaSの全国的な普及に取り組んでいます。また、このMaaSでは交通事業者のキャッシュレス化や交通情報のデータ化などにより、利便性向上を目指しています。

❽IDaaS(Identity as a Service)

IDaaSとは、アイダースと読み、「Identity as a Service(アイデンティティ・アズ・ア・サービス)」の略称です。これはIDをベースに認証、シングルサインオンなどを提供するクラウドサービスのことを指します。
シングルサインオンとは、ユーザーが一度ログインすれば、連携している複数のクラウドサービスが使えるようになるというものです。
また、IDaaSでは多要素認証やIDライフサイクル管理、グループやグローバルでの統合ID管理などの機能も提供します。
従来、ID管理やシングルサインオンは同様のサービスがあったものの、オンプレミス環境で構築する必要がありました。一方、IDaaSはクラウド上で展開できることから、多くの企業に導入され、利便性を高めています。

ID管理・統合基盤サービス「IDaaS(アイダース)」

IDaaS

TOPPANの「IDaaS」は、ID管理などの認証基盤を備え、デジタルID機能を包括的にサポートするSaaS型のプラットフォームです。シングルサインオンなどの提供はもちろんのこと、サービス事業者自身がOpen IDプロバイダーになるための支援が可能である点が特徴です。OpenIDとは、管理主体の異なるシステムやサービス間で、ユーザーのIDやパスワードを共通して使えるようにするための連携方式を定めた規格のことです。Open IDプロバイダーになることで、OpenID Connectの認証の際に必要なIDトークンを発行するなど重要な役割を担うことができます。


❾eKYC

eKYCとは「electronic Know Your Customer」の略称です。従来、「KYC」という言葉自体は銀行口座開設などで必要になる本人確認手続きの総称として使用されていましたが、頭に「electronic」が付くeKYCは「電子orオンラインでの本人確認」を意味します。
犯罪収益移転防止法におけるオンラインで完結可能な本人確認方法として、個人顧客向けのうち本人確認書類を用いた方法には、次の4通りがあります。
「写真付き本人確認書類の画像+容貌の画像を用いる方法」、「写真付き本人確認書類のICチップ情報+容貌の画像を用いる方法」、「本人確認書類の画像またはICチップ情報+銀行などへの顧客情報の照会を用いる方法」、「本人確認書類の画像またはICチップ情報+顧客名義口座への振込みを用いる方法」です。

TOPPANの「オンライン本人確認アプリ」

~eKYCをアプリで簡単・高レベルに~

TOPPANが提供する「オンライン本人確認アプリ」は、PC・スマホ、対面・非対面を問わず、本人確認手続きが、マイナンバーカードの読み取りだけで完了するサービスです。TOPPANは総務省認定のプラットフォーム事業者としてJPKI(公的個人認証)の実施が可能であるため、安価に充実・安定したサービスレベルの公的個人認証機能をご利用可能です。


❿エイジテック

エイジテックとは「AgeTech」のことで、主に高齢者「Aged Person」とテクノロジー「Technology」を組み合わせた造語です。つまり、高齢者の生活や健康をサポートするためのテクノロジーやITサービスなどの総称です。
現在、高齢者をとりまく課題は多くある中、その解決のためにテクノロジーの力を用いた製品・サービスが多く登場しています。
例えば、歩数計測などの運動サポートアプリや栄養バランスを管理できる食事管理アプリ、血圧測定ができるスマートウォッチ、オンライン診療といった高齢者自身が利用するものや、高齢者とその家族をつなぐビデオチャット、ホームアシスタントなど、介護施設や自治体などに導入される介護ロボットや見守り機器などがあります。また、現在、若年層の人々に向けた将来の健康リスクに備えた健康管理デバイスや遺伝子検査なども含まれます。

自治体向け住民見守りサービス「あんしんライト」

あんしんライト

TOPPANが提供するエイジテックの一つ「あんしんライト」は、自治体向け住民見守りサービスです。LTE通信の活用により、防災無線が聞こえないご家庭や住民の方にも、情報をお伝えすることのできる戸別送受信機です。スマートフォンを持たない住民へ緊急情報や平時情報を光、音、文字、音読で報知し、自治体側が住民の受信状態を確認することができます。利用者が操作した情報を発信できるため、自治体側は利用情報を把握することができます。緊急通報装置としての活用と互助のネットワークの構築を実現します。また既存のシステムのメール機能などとの連携が可能なため自治体職員の負荷なく導入可能です。

2024.07.05