コラム

RFIDとは~基本から活用事例までご紹介

物流業界から製造業、アパレル・小売業まで、さまざまな業界で在庫管理などに利活用されているRFID。業務効率化および生産性向上を実現する技術として注目を集めています。これからRFIDを導入しようとご検討されている方向けに、RFIDとは何かといった基本からその種類、活用事例までわかりやすくご説明します。


RFIDとは

RFID(アールエフアイディー)とは、「Radio Frequency IDentification」の略称で、電波を使って非接触でICタグのデータを読み書きする自動認識システムです。

一般的にRFIDを用いたソリューションは、ICチップとアンテナから構成される「ICタグ」と、そのデータを読取る「リーダ(ライタ)」、それらを制御する「システム」で構成されています。管理対象となる商品ごとにICタグを付与し、電波を利用しリーダで読み取り、上位システムにデータをあげることで、どの商品が、どこの場所で(どのリーダで)読まれたか記録を残すことがきます。

RFIDソリューションは、従来のバーコードと比較して利便性などの面でメリットが多いことから、業務効率化が必要なさまざまなシーンで導入され、活用の幅が広がっています。

具体的に活用されている現場として、アパレルなどの小売店舗から物流倉庫、製造業の製造ライン、図書館などが挙げられ、省人化・省力化を実現し、業務効率化・コスト削減につなげることが可能です。

RFIDの構成要素と仕組み

RFIDシステムは、「ICタグ」「リーダライタ」「システム」によって構成されています。この中のICタグとリーダライタの間でデータの送受信を行い、情報をやり取りすることができます。

RFIDの種類

RFIDには、さまざまな種類があります。ここでは、周波数帯の違いによる分類と、バッテリー搭載の有無の違いによる分類をご紹介します。

周波数帯の違い

日本で使用されているRFIDの周波数は主に3つです。

・LF帯のRFID
LFとは「Low Frequency、長波」のことで、135KHzまでの周波数です。通信範囲は数㎝~最大50㎝程度で、RFIDの黎明期より利用されてきた周波数です。水分の影響を受けにくいため、主に海外では家畜管理に使用されており、国内でも犬や猫などのペット管理用に使用されています。

・HF帯のRFID
HFとは「High Frequency、短波」のことで、周波数は13.56MHzです。通信範囲はLF帯同様、数㎝から最大50cmまでと狭いのが特徴です。LF帯と比較してHF帯は小型化がしやすいため、図書館の蔵書管理や交通系ICカードなどに使用されています。スマートフォンに内蔵されているNFC(Near Field Communication)もこちらと同じ周波数です。

・UHF帯のRFID
UHFとは「Ultra High Frequency、極超短波」のことで、周波数は920MHzです。通信範囲は最大10mまでと長いことから、ICタグとリーダの距離が離れていても、まとめて一括で商品の読み取りをする場面で利用されています。アパレル関係や雑貨などを中心に店舗での会計時における一括読み取りや、商品の棚卸などに利用されています。

バッテリー搭載の有無の違い

RFIDは、ICタグにバッテリーが搭載されているかどうかによって次の3種類に分類されます。

・パッシブタグ
電池が内蔵されていないICタグです。リーダから受信した電波を利用してICチップが動作します。用途に合わせたICタグの選択が可能です。

・アクティブタグ
電池が内蔵されているICタグです。パッシブタグと比較して数十メートル程度と通信距離が長いのが特長です。一方で、ICタグのサイズが大きくなり、電池が無くなった際には、電池の交換も必要です。一般的にパッシブタグよりも価格は高価です。

・セミアクティブタグ
通常はパッシブタグとして作動していますが、リーダから特定の電波を受信したときに内蔵電池を使用するICタグです。パッシブタグよりも通信距離が長く、アクティブタグより電池の消耗が少ない点が特徴です。

RFIDの特徴

RFIDは、以前は工場や物流センターの中だけで繰り返し利用する用途での導入が主流でしたが、近年ICタグやリーダの低価格化、高機能化、システムのクラウド化が進み、商品・消耗材のトレーサビリティ管理などの用途で導入が進んでいます。
物流や製造、小売などの現場における作業の効率化のために導入が広がっており、従来バーコードでおこなっていた管理を、より多くのメリットがあるRFIDでの管理に置き換える企業が増えています。

①読み取り距離が長い
UHF帯のRFIDは、通信範囲は最大10m程度なので、読み取り距離が長い点が特長です。バーコードは目の前のものしか読み取りできませんが、ICタグは手の届かない場所でも読み取りが容易に行えます。
例えば、倉庫などでの商品の棚卸の場合、フォークリフトを使って棚から荷下ろしをし、個別にバーコードを読み取りしていたことに比べて、RFIDを導入することにより、作業者がRFIDハンディリーダを持ち歩きながら読み取りができ、棚卸時間と工数が10分の1程度に削減できます。

②汚れていても隠れていても読み取り可能
バーコードは読み取り面が汚れているとリーダで読み取れませんが、ICタグは表面が汚れていたり、箱の中に隠れていても読み取りが可能です。

③複数タグの一括読み取りが可能
RFIDでは、一度に複数のタグを読み取ることができます。従来のバーコードによる読み取りの場合、バーコードを一つずつかざして情報を読取る必要があったのと比べて大幅な作業効率化が図れます。


RFIDの導入事例

実際にRFIDを導入して業務効率化に成功した事例を2つご紹介します。

1.生活協同組合様の事例

●導入前の課題
商品の物流に利用していた折り畳みコンテナやカゴ車、カートラックなどの搬送容器について、滞留や紛失の状況がつかめない課題がありました。

●導入による効果
物流向け搬送容器管理システムを導入し、搬送容器にUHF帯防水対応ICタグラベルを貼付して容器の所在や在庫状況を、ネットワークを通じて把握する仕組みにしました。
結果、輸送状況や所在の可視化されたことに加えて、一括読み取りによる業務負荷軽減も実現しました。また紛失履歴を管理者が把握することにより、返却意識も高まり、回収率が上がり、毎年の循環容器の補填購入費用の削減につながりました。

2.生地・アパレル製造販売会社様の事例

●導入前の課題
膨大なシャツ生地反物の入出荷や棚卸作業を目視によって実施していましたが、作業負担が大きかったうえに、在庫情報の精度に課題がありました。

●導入による効果
反物管理システムを導入し、業務効率化と保管在庫の削減に成功しました。パレットに載せた70~80本の反物すべての情報をRFIDのICタグによって自動的に取得する仕組みにしたところ、検品作業負担が低減しました。システム導入前は、棚卸作業1回につき、のべ240時間かかっていましたが、導入後は、1回につき4時間で終了できるようになり、大幅な時間削減につながりました。

まとめ

TOPPANでは、多様な業界での豊富な導入実績で培った知見をもとに、ICタグの設計・開発から最適なリーダライタの選定、運用設計、システム開発、現場導入サポート、タギングのためのラベラーまでワンストップでご提供しております。ICタグは水分や金属の影響を受け、読取率が低下したり、通信距離が長すぎるために、読み取り対象ではないものを読んでしまう誤読問題が発生したりすることがありますが、TOPPANにてお客様の導入環境、運用状況を加味し、事前検証や現場検証を繰り返し実施し、最適なタグ、リーダ、ソリューション、運用をご提案させていただきます。

すでに多様な業界の企業様にTOPPANのRFIDソリューションを導入いただいており、入出庫・棚卸業務などを効率化したい、適切な在庫数を保つために在庫管理を徹底したい、出荷後の流通状況を把握して不正流通を防止したい、海外輸出製品に偽物が出回り消費者が簡単に真贋判定できる仕組みを構築したい、などのお悩みがある方へ課題に応じた最適なご提案をさせていただきます。お気軽にご相談ください。

2024.04.15