コラム

【展示会レポート】第24回自動認識総合展

TOPPANは、2022年9月14日から3日間にわたり東京ビッグサイトで開催された、国内唯一の自動認識技術&ソリューションの専門展示会である「第24回自動認識総合展」に出展しました。今回のテーマは『Erhoeht-X®で拓く未来志向のTOPPAN IDソリューション』。ブースでは、TOPPANが推し進めるDXコンセプト「Erhoeht-X®(エルへートクロス)」として展開する、製造・物流領域のソリューションが多数展示されました。今回、編集部では展示会初日に現地取材を実施。7つのソリューションをピックアップして、会場説明員によるアピールポイントや編集部の感想などを紹介します。


Erhoeht-X®(エルへートクロス)とは
TOPPANが全社をあげ、社会や企業のデジタル革新を支援するとともに、当社自体のデジタル変革を推進するコンセプトです。「エルヘート」は、当社創業の原点である当時の最先端印刷技術「エルヘート凸版法」から名付け、語源であるドイツ語の「Erhöhen(エルホーヘン)」には「高める」という意味があります。TOPPANは、これまで培ってきた印刷テクノロジーの更なる進化とともに、先進のデジタルテクノロジーと高度なオペレーションノウハウを掛け合わせ、データ活用を機軸としたハイブリッドなDX事業を展開し、社会の持続可能な未来に向けて貢献していきます。

製品の低温管理とトレーサビリティを同時実現 温度ロガーラベル

今回のTOPPANブースでは実に様々なICタグが紹介されていましたが、まず紹介するのは「温度ロガーラベル」です。名刺サイズのラベルに、温度センサーやバッテリー、NFCとUHF通信用のアンテナまで搭載し、一定時間ごとに測定・記録されたラベル表面の温度を、NFC対応スマートフォン(Android)で読み取ることができます(オフライン型)。複数の荷物に貼り付けて管理する場合は、クラウド上の管理システムにデータを転送しPCで一覧表示できるオンライン型も用意され、今回のブースではその両方のデモを実施していました。「印刷バッテリーの寿命は半年程で、1時間に1回測定して4,500回ほど記録できる計算です(太田)」印刷バッテリータイプは、ラベルの厚さが1mmほどで段ボールケースや循環資材容器に貼り付けて使用したり、温度ロガーラベルの剥離紙を剥がさずに、循環資材の専用ケースにいれて、印刷バッテリーの寿命が終わるまで、繰り返し使用していくことを想定しています。
なお、「温度ロガーラベル」ですが、令和2年度農林水産物・食品輸出促進緊急対策事業において、日本酒コールドチェーンコンソーシアムによる温度管理ツールとして採用され、6つの酒蔵の製品を中国の各都市に配送する際の低温(5℃以下)管理を支援した実績があります(2021年10月~2022年3月にかけて実証実験)。輸送時の温度を管理する「温度ロガー機器」はこれまでにもありましたが、1台数千円~数万円という価格の高さや回収の手間などがネックでした。これに対し「温度ロガーラベル」は、ワンウェイ使用型を目指し、構造と機能のシンプル化により、1/10以下の低価格を実現しています。日本酒に限らず、野菜や果物、魚介類など、日本の美味しい生鮮食料品の輸出拡大に役立ちます。

“見える”バッテリーレス表示機能付きRFIDタグで製造DX Near cross® D 2.9

電子ペーパーによる表示機能が付いたバッテリーレスRFIDタグ「Near cross® D 2.9」を紹介するコーナーでは、「社内便に添付する伝票」としての活用シナリオをデモで紹介していました。「発送/受取時にNFC対応のスマートフォンなどで読み取るとクラウドにデータ登録され、発送者/受取者双方が今どんなステータスかをWeb上でリアルタイムに確認できます。もちろん『Near cross® D 2.9』にも必要な伝票情報を表示でき、ペーパーレスにもつながります(仁瓶)」このほか、工場などで一般的な搬送トレイのカードホルダーに差して、紙ラベルの代わりに利用するシナリオも想定しているそうです。RFIDとの通信時の非接触リーダー/ライターからの電力を利用して電子ペーパーの表示変更を実現しており、バッテリー切れを心配しなくてよいのはユーザーにとって大きなメリットです。

真贋判定サービス/トレーサビリティサービス ID-NEX®

商品の固有IDをクラウドで管理するサービス「ID-NEX®」のコーナーでは、QRコードによる真贋判定のデモを体験しました。商品のパッケージに貼られたQRコードをスマホのカメラで読み込むと、クラウド上に登録されたIDかどうかを瞬時に確認。正規品(登録済)であることを示すチェックマークがスマホ画面に表示されました。「ID-NEX®で生成されるIDは、デモで使用していたQRコードのほか、バーコードやシリアルナンバー、ICタグなど様々な媒体に展開・拡張できます(島村)」IDに紐付く情報の追加も可能なので、真贋判定だけでなく、物流や製造におけるトレーサビリティ・資材管理などでも活用できます。

固有IDの付与・認証による顧客接点構築とサプライチェーン可視化 クラウド型ID認証プラットフォーム

「クラウド型ID認証プラットフォーム」を紹介するコーナーでは、実際に採用された2つの事例についてデモを交え紹介していました。1つ目は、株式会社メディコム・トイ様と株式会社博報堂プロダクツ様が2022年7月に発表した模倣品対策ソリューション「du-al.io™(デュアルドットアイオー)」です。メディコム・トイ様が製造・販売するクマ型ブロックタイプフィギュア「BE@RBRICK(ベアブリック)」の実物が展示されていましたが、その右脚部にはTOPPANのNFCタグが内蔵されています。スマホをかざすと、そのたびに異なる“ワンタイムURL”が生成されるハイセキュリティタイプのNFCタグが使用されています。実際にスマホをかざすと、ブラウザが起動して正規品であることを証明する画面が表示されました。生成されるURLが可変のため、URLコピーによる不正を排除できるという訳です。「TOPPANは、このハイセキュリティタイプのNFCタグによる認証の仕組みをAPIの形で提供しており、この仕組みを利用してお客さまが様々なサービスを展開できる“汎用性”も特長になっています(秋葉)」
もうひとつの事例は、開封検知機能を有するNFCタグを内蔵した、中国茶ブランド「半守(Halfism:ハーフイズム)」の紙器(パッケージ)です。パッケージの開封検知だけではなく、パッケージに内蔵しているNFC通信用回路の一部を脆性構造にすることで、パッケージからNFCタグを取り出そうとすると、回路が破壊されNFCタグ自体が壊れる加工も行っています。「開封検知を有する回路も併せて配置しておけば、ユーザーがスマートフォンをかざした際に、開封済と未開封で異なるコンテンツを表示することもでき、消費者の状態により適したコミュニケーションを行うことができます(秋葉)」TOPPANが長年手がけてきた紙器と最新のテクノロジーが融合した“スマートパッケージ”と言えます。

環境保全DXソリューション e-Platch™

製造業におけるSDGsの取り組み支援をアピールしていたのが「e-Platch™」です。「e-Platch™」は製造工場における環境データを自動収集し、リスクマネジメント強化を可能とする統合的な監視システムです。
LANやWi-Fi接続環境が整っていない工場や倉庫などで、次世代LPWA規格のひとつZETAを活用してネットワークを構築。ZETA対応の温湿度センサーのほか、産業用インターフェース(4-20mA/RS-485)を有する既存センサーにZETABOX™を接続して、リモートでの点検・記録を実現します。「通信の安定性において定評のあるZETAですが、中継器で広い工場や倉庫にも対応し、大規模な工事や投資を必要とせず、手軽に導入できるのが魅力です(ハルバーソン)」アナログメーターの読み取りが可能な角度センサーや専用の管理コンソール(データ閲覧アプリ)も開発中とのことで、今後のソリューション展開に注目したいと思います。

スマートグラスで工場・製造現場のDX化をサポート RemoPick®

工場などの現場にいる作業員の視界をスマートグラスやスマホで共有し、離れた場所から作業指示やサポートができる遠隔コミュニケーションツール「RemoPick®」のコーナーでは、実際に記者もスマートグラスを装着して体験してみました。記者が装着したスマートグラスで撮影された視界映像がタブレット端末に映し出され、説明員がタブレット画面をタッチすると、記者のスマートグラスのデイスプレイにポインターが表示されて、どこを指したのかが分かる仕組みです。複雑な機械の操作指示など言葉だけでは伝えにくいケースでも、ピンポイントで正確に指示でき、作業効率向上や誤操作防止などの効果を期待できます。「リモートで果物狩り体験にもご活用いただいている仕組みで、果物の色を鮮やかに表示するための色調調整機能も備えています(茅根)」

投影画像指示と作業ミス徹底防止のピッキング作業支援システム プロジェクションピッキングシステム®

「プロジェクションピッキングシステム®」のコーナーでは、システムの指示に従って実際に基板を完成させるデモを見学しました。作業台の上部に設置されたプロジェクターで目の前のスクリーンや作業台に映像が映し出され、その通りに作業をおこなえば、ミスなく効率よく基板が完成する仕組みです。デモでは、部品の入った引き出しから指示された部品を取り出しますが、ここで間違えるとアラートが出ました。正しい部品を取り出したうえで、次の指示に従い部品を配置すると、ビス留めする箇所が順番に指示され、トルクレンチでビス留めしていくと無事に基板が完成しました。「プロジェクターで映し出す映像は、品名や数量、商品画像、などを表示でき、正しい作業手順をナビゲート。作業の属人化を防いでマルチスキル育成を支援します(荒川)」画像認識やセンサー認識(2D・3D)技術を柔軟に組み合わせて、間違った作業を高精度で判定することができ、ライトや警告音など現場の状況にあわせたアラート通知も可能で、作業ミス防止効果が期待できます。


最後に

今回ご紹介した、7つのソリューションの他にも製造・物流業界の方々向けに様々なソリューションがございます。
是非、お気軽にご相談ください。TOPPANとして課題解決に寄与できるように引き続き、取り組んで参ります。



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2022.10.03