コラム

板張り壁のデメリットと解決策|材料別の特徴と設計デザインのコツ、建築基準法の規定を解説

住宅・非住宅と建物の用途を問わずトレンドの「板張り壁」ですが、仕上げ材別に注意しなくてはいけないデメリットがあります。また、建物の規模や用途によっては建築基準法の規定を踏まえた設計デザインが必要です。

そこで今回は、板張り壁を採用するメリットと仕上げ材別デメリット、建築基準法における関連規定について詳しく解説します。1900年創業のTOPPANが自信を持って提案するおすすめ内外装材を採用した事例写真を交えて紹介しますので、ぜひ最後までごらんください。


◎◎

<目次>

■ 板張り壁とは
■ 板張り壁を採用するメリット
■ 板張り壁に用いられる材料の種類|特徴とメリット・デメリット
■ 板張り壁の設計デザインポイント
■ 内装制限の対象となる室内壁仕上げ材選びのポイント
■ 防火・準防火・法22条地域の外壁・間仕切り壁仕上げ材のポイント
■ 板張り壁にはTOPPANの内外装材をご採用ください
■ まとめ


■ 板張り壁とは

「板張り壁」とは、無垢材(羽目板)もしくは木質化粧板、その他木目のパネル材を壁の仕上げ材として用いるデザイン手法です。板張り壁は室内壁だけではなく外壁の一部にアクセントとして取り入れられる事例も珍しくありません。

同じ様なデザイン手法である「板張り天井」も人気です。最近は、フラットなパネル材を施工するプランに加えて、凹凸のあるリブパネルや格子(ルーバー)を取り入れるデザインも増えています。

■ 板張り壁を採用するメリット

住宅だけではなく、商業施設や教育施設、福祉・医療施設など様々な用途の建物に採用されている板張り壁には、デザイン面・機能面においてメリットがあります。

・デザインにナチュラルな印象をプラスできる
・シンプルなデザインに個性をプラスできる
・無垢材を採用すると、調湿効果や木の香りによるリラックス効果を得られる
・濃い木目の材料は汚れが目立ちにくい
・表面コーティングされた化粧板は、キズに強く水拭きできる
・部分補修が塗装やクロス仕上げより目立ちにくい

ただし、これらメリットの一部は材料の種類によって発揮するものとそうでないものがあるので、空間用途やメンテナンス計画などに合わせた材料選びが重要になります。

■ 板張り壁に用いられる材料の種類|特徴とメリット・デメリット

板張り壁の仕上げ材に用いられる材料は主に以下の5種類です。

・天然木材(無垢材)
・木質化粧板(突板・挽板化粧板など)
・ポリ(PVC)化粧板・プリント紙化粧板
・メラミン化粧板
・オレフィン化粧板

どれも一般的に採用される建築材料ですが、板張り壁の仕上げに用いる場合はそれぞれメリットとデメリットが異なるため注意しましょう。

天然木材(無垢材)

天然木材を羽目板形状※に加工したものが壁の仕上げ材に用いられます。
※羽目板(はめいた):フローリングと同じく長手方向の両端に凹凸(サネ・溝)を作り、連結させて施工できる材料

【メリット】

  • ・質感がナチュラル
  • ・調湿性・吸音性や、木の香り成分によるリラックス効果がある
  • ・防虫・防腐処理された材料は屋外にも施工できる

【デメリット】

  • ・温度や湿度の変化によって、反り・ねじれ・伸縮などの変形が発生する
  • ・経年や日焼けによって変色しやすい
  • ・カビやシロアリ、木材腐朽菌が繁殖する(環境によっては寿命が短い)
  • ・材料が分厚いので納まりに工夫が必要
  • ・耐水性・耐火性は低い
  • ・無塗装だとキズ・シミ・汚れがつきやすい
  • ・定期的な表面保護塗装や防虫・防腐処理が必要
  • ・不燃性能を付与した不燃木材は高価

木質化粧板(突板・挽板化粧板など)

木質化粧板で一般的に壁の仕上げ材に用いられるのが、突板(つきいた)化粧板と挽板(ひきいた)化粧板です。

・突板化粧板:無垢材を0.2〜0.3mmの薄いシート状にスライスした素材である突板を表面材とする化粧板
・挽板化粧板:無垢材を2〜3mmの薄い板状にスライスした素材である挽板を表面材とする化粧板

【メリット】

  • ・表面は天然木そのものなので、無垢材と質感や色味が近い
  • ・無垢材よりは劣るものの、調湿性・吸音性や、木の香り成分によるリラックス効果がある
  • ・無垢材よりも変形しにくく、基材の種類によっては薄い材料や防火材料※も選べる

【デメリット】

  • ・無塗装だとキズ・シミ・汚れがつきやすい
  • ・表面材が薄いため、キズやシミの補修はできない
  • ・湿度などによって表面材と基材が剥離する可能性があるため、原則として室内にしか施工できない
  • ・耐水性・耐火性は低い

※防火材料:建築基準法の規定をクリアした不燃・準不燃・難燃材料の総称

ポリ(PVC)化粧板・プリント紙化粧板

ポリエステル化粧板とプリント紙化粧板は、どちらも色柄を印刷した化粧紙を表面材とし、ポリエステル化粧板は表面材の上にポリエステル樹脂コーティングが施されている化粧板です。

【メリット】

  • ・価格が安い
  • ・色柄のレパートリーが多い

【デメリット】

  • ・プリント紙化粧板は防火規定のある場所には施工できない
  • ・室内壁にしか施工できない
  • ・他の材料よりも強度が低い
  • ・耐水性・耐火性は低い
  • ・キズ・シミ・汚れがつきやすい

メラミン化粧板

メラミン化粧板は高圧メラミン化粧板と低圧メラミン化粧板に分類されますが、どちらもメラミン樹脂を含浸させた特殊紙を積層してプレス成形したパネル材です。ポリエステル化粧板・プリント紙化粧板と同様に、色柄はプリントによって表現します。

壁面の広範囲に施工するよりも、キッチンや給湯室の壁やトイレブースなどの材料として採用する事例が一般的です。

【メリット】

  • ・耐火性・耐水性が高い
  • ・表面強度が高い
  • ・色柄のレパートリーが多い
  • ・防火認定を受ける場所にも施工できる

【デメリット】

  • ・価格が高い
  • ・室内壁にしか施工できない

オレフィン化粧板

ポリプロピレンやポリエチレンなどを主原料としたオレフィンシートを表面材とした化粧板で、他の化粧板と比べて、基材がケイカル(ケイ酸カルシウム)板や不燃パネル、アルミ材など多岐に渡る点が特徴です。こちらも、色柄はプリントによって表現します。

【メリット】

  • ・耐水性・耐候性が高い
  • ・表面強度が高い
  • ・色柄のレパートリーが多い
  • ・環境配慮性が高い(環境負荷を抑制できる)
  • ・基材によって室内にも屋外にも施工できる
  • ・基材によって防火認定を受ける場所にも施工できる

【デメリット】

  • ・価格が高い(メラミン化粧板よりは安価なものも)
  • ・紫外線によって色あせやひび割れが生じる

オレフィン化粧板について特筆すべき点は、その環境配慮性です。オレフィンシートは、燃焼しても水(H2O)と二酸化炭素(CO2)に分解されて塩化水素ガスやダイオキシンなどの有毒ガスをほとんど排出しません。

また、一般的な塩ビ素材よりも製造過程のCO2排出量が少なく、VOC※の発生原因となる可塑剤が含まれていない点もポイントです。そのため、エコな内外装材として採用される事例は少なくありません。
※VOC:揮発性有機化合物 (Volatile Organic Compounds) の略称で、塗料や接着剤に含まれる溶剤もそのうちの一種。大気汚染の原因物質になる。

【ポイント】
TOPPANはオレフィンシートを用いた内外装材を製造しております。内外装アルミ不燃意匠材「フォルティナ」の外装R仕様は、オレフィン化粧板のデメリットである色褪せやシートのひび割れを大幅に軽減できるため、ビルなどの外装材にぜひご採用ください。

◎◎

■ 板張り壁の設計デザインポイント

板張り壁をプランに採用する際には、材料選びだけではなくデザインのポイントも押さえましょう。

・重厚感・高級感を演出したい時には濃い色の木目を選ぶ(アクセントとして部分的に採用するプランもおすすめ)
・圧迫感が出ないように空間の広さや天井高を考慮して木目のカラーを決める(淡い色は圧迫感が出ない)
・より個性的に仕上げたい場合は、パネル割(サイズ・形状)にもこだわる
・アクセントウォールにする場合は、材料コストと見た目のバランスを考慮して施工範囲を決める
・床・天井・家具とのトータルデザインを取り入れる(無垢材では難しい場合も)
・公共性の高い空間には、高耐久で長寿命な材料を選ぶ
・環境に配慮した材料を採用し、SDGsなどへの取り組みをアピールする

空間用途やデザインコンセプト、ご予算に応じて、これらのポイントを設計デザインに取り入れてみてください。

【ポイント】
TOPPANでは、正形に加えて空間のアクセントとなる異形貼り(矢羽形・五角形・三角形・風車型)にも対応できる内外装不燃化粧パネル「ローバル」と、同色柄・同素材でフラットパネル・ルーバー・リブパネルを選べる内外装アルミ不燃意匠材「フォルティナ」を製造しております。オリジナリティのあるデザインや統一性のあるデザインをご希望の方は、ぜひTOPPAN製品をご採用ください。

■ 内装制限の対象となる室内壁仕上げ材選びのポイント

非住宅分野の設計デザインにおいて重要なポイントが「内装制限」です。内装制限とは、不特定多数の人が利用する公共的な建物(特殊建築物)において、火災時の避難経路や避難時間を確保するために室内の天井と壁の材料を制限する規定です。

建物の用途と規模(延床面積・階数)に応じて、不燃・準不燃・難燃材料の認定製品を採用する必要があります。

仕上げ材の種類によって材料選びの注意点が異なるためチェックしておきましょう。

無垢材

  • ・不燃木材を採用する▶︎コストが高く納まりが難しい
  • ・不燃材料(プラスターボードや耐火ボードなど)との二重貼りにする▶︎壁が厚くなり、コストが高い

木質化粧板

  • ・防火材料認定を受けている材料を採用する

非木質化粧板

(メラミン化粧板・オレフィン化粧板など)

  • ・防火材料認定を受けている材料を採用する

これらの点から、内装制限の対象となる壁には、通常化粧板が施工されます。木質・非木質問わず、防火材料として国土交通大臣より個別認定を受けている製品は多いため、必ず不燃・準不燃・難燃のどれに該当するかカタログなどに書かれた認定番号で確認してください。

【認定区分】

【認定番号】

不燃材料

一般:NM-◯◯◯◯

外部仕上げ用:NE-◯◯◯◯

準不燃材料

一般:QM-◯◯◯◯

外部仕上げ用:QE-◯◯◯◯

難燃材料

一般:RM-◯◯◯◯

外部仕上げ用:RE-◯◯◯◯

【ポイント】
防火材料の不燃性能は「難燃<準不燃<不燃」の順で高くなるため、難燃の指定範囲では難燃・準不燃・不燃材料、準不燃の指定範囲では準不燃・不燃材料を使用できます。TOPPANのオレフィン系内外装材は、不燃認定を受けていますので、各種防火規定の対象範囲の全てにご採用いただけます。

◎◎

■ 防火・準防火・法22条地域の外壁・間仕切り壁仕上げ材のポイント

建築基準法では、建物を建てる地域が防火地域・準防火地域・法22条地域に該当する場合や、建物規模(延床面積・階数)が一定規模以上である場合、建物を「耐火構造・準耐火構造・防火構造」のいずれかにしなくてはいけません。そのため、外壁・間仕切り壁を板張りにする場合は、仕上げ材の選定と納まりに注意しましょう。

【構造の種類】

【壁に求められる性能】

耐火構造

  • ・耐火性能(加熱開始後1〜3時間に対する非損傷性・遮熱性・遮炎性)を有する構造であること
  • ・告示(建設省告示第1399号)で定められた仕様もしくは、試験等により性能が証明されて国土交通大臣の認定を受けた仕様であること

▶︎間仕切壁=耐力壁・非耐力壁ともに「1時間」以上の耐火性能
▶︎外壁(耐力壁)=「1〜2時間(階数による)」以上の耐火性能

▶︎外壁(非耐力壁で延焼のおそれのある部分※)=「1時間」以上の耐火性能

▶︎外壁(非耐力壁で延焼のおそれのある部分以外)=「30分」以上の耐火性能

準耐火構造

  • ・準耐火性能(加熱開始後45〜60分間に対する非損傷性、遮熱性、遮炎性)を有する構造であること
  • ・告示(建設省告示第1358号)で定められた仕様もしくは、試験等により性能が証明されて国土交通大臣の認定を受けた仕様であること

▶︎間仕切壁=耐力壁・非耐力壁ともに「45分1時間」以上の耐火性能
▶︎外壁(耐力壁)=「45分1時間」以上の耐火性能

▶︎外壁(非耐力壁で延焼のおそれのある部分)=「45分1時間」以上の耐火性能

▶︎外壁(非耐力壁で延焼のおそれのある部分以外)=「30分」以上の耐火性能

防火構造

  • ・建物の周囲で火災が発生した際、周囲への延焼を防ぐために、外壁や軒裏に一定の防火性能を備えた構造であること
  • ・告示(建設省告示第1359号)で定められた仕様もしくは、試験等により性能が証明されて国土交通大臣の認定を受けた仕様であること

▶︎外壁(延焼のおそれのある部分)=「30分」以上の耐火性能

※延焼のおそれのある部分:隣地境界線・道路中心線・同一敷地内に建つ2以上の建築物相互の外壁間中心線から、1階は3m以内、2階以上は5m以内にある建築部分

防火地域

防火地域とは都市計画法第9条の21によって「市街地における火災の危険を防除するための地域」として定められた地域です。建築基準法第61条では、延床面積と階数ごとに耐火建築物・準耐火建築物のいずれかにすることが定められています。

【階数】

【延床面積50㎡以下】

【延床面積100㎡以下】

【延床面積100㎡超】

4階建て以上

耐火構造

耐火構造

耐火構造

3階建て

耐火構造

耐火構造

耐火構造

2階建て

45分準耐火構造

45分準耐火構造

耐火構造

平屋建て

防火構造

45分準耐火構造

耐火構造

※建物の詳細によっては上記規定以外に防火区画の設置や構造部の仕様に制限がありますので、事前に関係省庁にご確認ください。

準防火地域

準防火地域も防火地域と同じく都市計画法第9条の21によって定められた地域で、防火地域の周囲を指定するのが通常です。建築基準法第62条によって延床面積と階数ごとに建物の構造に制限があるものの、その規定は防火地域より厳しくありません。

【階数】

【延床面積50㎡以下】

【延床面積100㎡以下】

【延床面積100㎡超】

4階建て以上

耐火構造

耐火構造

耐火構造

3階建て

一定の防火措置※

45分準耐火構造

耐火構造

2階建て

防火構造(木造の場合)

45分準耐火構造

耐火構造

平屋建て

防火構造(木造の場合)

45分準耐火構造

耐火構造

※建物の詳細によっては上記規定以外に防火区画の設置や構造部の仕様に制限がありますので、事前に関係省庁にご確認ください。

法22条地域

法22条地域とは、建築基準法第22条に基づく区域を指し、火災の延焼を防止するために防火地域・準防火地域以外の市街地が指定されます。

法22条区域に建てる建築物の外壁は、建築基準法第23条「建築物の敷地、構造及び建築設備(外壁)」が適用されるため、防火地域・準防火地域ほどではないものの、仕上げ材に使用できる材料が限られるので注意しましょう。周囲の火災による輻射熱や火の粉などによって外壁から延焼しないように、外壁仕上げ材は準防火性能以上の基準をクリアする必要があります。

【ポイント】
TOPPANのオレフィン系内外装材は、不燃認定を受けていることに加えて耐候性が高いため、建物規模を問わず様々な事例で外壁仕上げ材としてご採用いただいております。

■ 板張り壁にはTOPPANの内外装材をご採用ください

TOPPANは、環境配慮と高意匠を実現できるレパートリー豊富な内外装不燃アルミ意匠材「FORTINA(フォルティナ)」と内外装不燃化粧パネル「LOVAL(ローバル)」を製造しております。

【特長】
・最新の印刷技術によって再現したリアルな木目と質感
・不燃材料認定番号取得済み
・豊富な形状レパートリーによる様々な納まり・デザインを実現できる多様性(ルーバー・スパンドレル・フラットパネル・リブパネル(フォルティナレッジ))
・20種類以上の色柄ラインナップ(内装用は80種類以上)※リブパネルは3種類
・低汚染なオレフィンシートによる環境配慮

ローバル・フォルティナ以外にも多彩な建築材料を取り扱っておりますので、ぜひ設計デザインへご採用ください。

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■ まとめ

板張り壁の仕上げ材にはいくつかの種類があり、それぞれメリット・デメリットは異なります。また、建物の用途や規模によっては、不燃性能のある材料を採用しなくてはいけません。そのため、板張り壁の仕上げ材は、デザイン性・コスト・不燃性・施工性・環境配慮性などの特徴を多角的に比較してご選定ください。

TOPPANでは、環境に配慮しデザイン性を豊かにする内外装建材を開発・製造しております。「環境に配慮した建築」や「人に長く愛される建物」、「街のシンボルになる建築」の材料選定でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

2025.09.17

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