コラム

建築基準法の内装制限とは|概要・条文・対象建築物をわかりやすく解説、おすすめ内装材についても

商業施設や公共施設の設計デザインをする上で重要なチェックポイントとなるのが「内装制限」です。建築基準法による仕様制限で、内装仕上げ材の選定にかかわります。しかし、関連する条文は多岐に渡り複雑です。

そこで本記事では、建築基準法における「内装制限」の基礎知識や緩和条件、改正内容に加えて、消防法における決まりについても詳しく解説します。内装制限の対象部位に採用できる環境に優しい建材も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。


<目次>

■ 建築基準法における内装制限と防火材料の関係性
■ 天井・壁でも内装制限の対象外となる部分も
■ 内装制限における緩和措置
■ 消防法における内装制限との違い
■ 「不燃+エコフレンドリー+高耐久」な不燃化粧パネル“ローバル”
■ まとめ

■ 建築基準法における内装制限と防火材料の関係性

「内装制限」とは、不特定多数の人が利用する建築物において火災発生時に内装材へ引火・延焼して避難経路を妨げないようにするための規定です。

建築基準法第35条の2(特殊建築物等の内装)
 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物、階数が3以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物、延べ面積が1,000㎡をこえる建築物又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたものは、政令で定めるものを除き、政令で定める技術的基準に従つて、その壁及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにしなければならない。

条文を簡単に要約すると、以下の建物について、法令で定められている防火基準に適合した天井・壁材を選定しなくてはいけないという内容です。

【対象となる建築物の範囲】
・建築基準法(2条1項2号)で定めた特殊建築物(※)
・3階建て以上で延べ床面積が500㎡を超える建築物
・2階建て以上で延べ床面積が1,000㎡を超える建築物
・1階建て以上で延べ床面積が3,000㎡を超える建築物
・政令で定める窓やその他開口部がない居室のある建築物(天井の高さ6mを超えるものを除く)
・調理室や浴室、その他火気使用作業(溶接・溶断・研磨など)を行う施設のある建築物

※特殊建築物:建築基準法第2条の2で定めた「学校(専修学校及び各種学校を含む)・体育館・病院・劇場・観覧場・集会場・展示場・百貨店・市場・ダンスホール・遊技場・公衆浴場・旅館・共同住宅(マンション)・寄宿舎・下宿・工場・倉庫・自動車車庫(ガレージ)・危険物の貯蔵場・と畜場・火葬場・汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物」

これらの建築物において、「建物用途・規模・防火区画の有無・消防設備(スプリンクラーなど)の有無」に応じて、居室と通路(階段)の壁・天井に使用できる内装仕上げ材および下地材の種類が限定されます。

【内装仕上げ材に関する制限】

(建物種類)

(居室)

(通路・階段)

特殊建築物
劇場、病院、ホテル、共同住宅、百貨店、飲食店など

難燃以上

準不燃以上

特殊建築物自動車車庫、自動車修理工場など
地下に劇場、病院、ホテル、共同住宅、百貨店、飲食店などがある建物

準不燃以上

準不燃以上

3階建て以上で延べ床面積が500㎡を超える建築物
2階建て以上で延べ床面積が1,000㎡を超える建築物
1階建て以上で延べ床面積が3,000㎡を超える建築物

難燃以上

準不燃以上

窓などの開口部のない居室

準不燃以上

準不燃以上

調理室や火気使用室

準不燃以上

準不燃以上

※詳細は関連法規の条文をご覧ください。(建築基準法施行令第128条の3の2、第128条の4、第129条、第112条、第128条の3など)

【天井・壁下地材に関する制限】

(建物種類)

(居室)

(通路・階段)

階数が11階以上の建物(200㎡以内に防火区画された範囲)

準不燃以上

準不燃以上

階数が11階以上の建物(500㎡以内に防火区画された範囲)

不燃以上

不燃以上

地下街(200㎡以内に防火区画された範囲)

準不燃以上

準不燃以上

地下街(500㎡以内に防火区画された範囲)

不燃以上

不燃以上

非常用エレベーターホールや避難階段

不燃以上

不燃以上

※スプリンクラー等自動消火設備があると区画面積制限が2倍まで緩和されます。

詳細は関連法規の条文をご覧ください。(建築基準法施行令第128条の3の2、第128条の4、第129条、第112条、第128条の3など)

不燃材料

加熱開始後20分間は燃焼しない

平成12年5月30日 建設省告示第1400号

準不燃材料

加熱開始後10分間は燃焼しない

平成12年5月30日 建設省告示第1401号

難燃材料

加熱開始後5分間は燃焼しない

平成12年5月30日 建設省告示第1402号

防火性能は「不燃材料>準不燃材料>難燃材料」の順で高くなります。そのため、「準不燃以上」と記載されている範囲については、準不燃材もしくは不燃材を採用すれば基準をクリアしたことになります。

2025年建築基準法改正での変更点

2025年に改正予定の建築基準法では、内装デザインに関する内容が組み込まれています。

【改正前(現行の内容)】
耐火性能が必要な大規模建築物においては、壁や柱など全ての主要構造部を耐火構造にしなくてはならない

【改正後】
耐火性能が必要な大規模建築物においても、壁や床などで防火区画された(「火災時に周囲に大規模な危害が及ぶことを防止できる」範囲であれば部分的に木造化でき、木質梁の表し(あらわし)が可能

これによって、木質建材を大規模建築物の内装へ取り入れられる可能性が高まります。

■ 天井・壁でも内装制限の対象外となる部分も

内装制限は規定で定めた建築物の居室及び通路や階段の天井と壁が対象です。ただし、天井・壁全面が制限を受ける訳ではありません。

以下の部分は内装制限の対象外です。

・床面から1.2m以下の壁面
・天井と壁の取り合い部分に設置する回り縁部材
・窓周りに設置する窓枠や窓台、その他これらに類する部分

■ 内装制限における緩和措置

2020年に改正された建築基準法において、内装制限の“緩和条件”が追加されました。

・避難経路を含まない範囲
・階数が11階以上でも100㎡以内に防火区画(乙種防火戸を除く)がある場合
・対象となる居室や通路、階段の天井高さが3m以上ある場合
・屋外へ直接避難できる経路がある範囲
・スプリンクラー・水噴霧消火設備・泡消火設備などの自動式消火設備及び建築基準法施行令第126条の3「排煙設備」の規定に適合する設備を設けた範囲
・その他建築基準法施行令第128条の4「制限を受けない特殊建築物等」に該当する場合

※詳しくは関連法規の条文をご確認ください。

ただし、これらの緩和条件に当てはまるかどうかは「建物用途・規模・階数」などの条件によって異なりますので、詳細は最新法令を確認の上、行政所管へ事前に相談しましょう。建築基準法告示による排煙免除を行う場合、建築基準法の避難安全検証法を使う場合は、内装制限とは別に不燃材の仕様が必要になる場合があります。また、都道府県ごとに独自の内装制限を定めている可能性もあるため注意してください。

■ 消防法における内装制限との違い

建築基準法における内装制限に加えて、消防法による「内装制限」もチェックしましょう。両者はどちらも「建築物の火災から人命と財産を守る」ことが目的ではありますが、アプローチは少々異なります。

【それぞれのアプローチ】

建築基準法

  • 頻繁な出火防止
  • 建物利用者の避難安全確保
  • 周囲への危険防止
  • 市街地火災対策

消防法

  • 防火管理
  • 消防用設備
  • 消防活動の容易性向上

このように、目的は同じでもそれを達成するための方法が異なり、対象建築物や制限の内容にも違いがあります。

建築基準法

  • 対象建築物:特殊建築物など
  • 対象範囲:室内の天井・壁
  • 使用できる材料:防火材料(不燃・準不燃・難燃)
  • 所管省庁:国土交通省

消防法

  • 対象建築物:防火対象物
  • 対象範囲:室内の床・壁全面へ設置されている絨毯・カーテン・暗幕・ブラインド・工事用シート等の内装材
  • 使用できる材料:防炎材料
  • 所管省庁:総務省消防庁

特殊建築物で尚且つ防火対象物に該当する建築物においては、建築基準法・消防法それぞれで定められた内装制限をどちらもクリアしなくてはいけません。

■ 「不燃+エコフレンドリー+高耐久」な不燃化粧パネル“ローバル”

内装制限の対象となる部分に木目を生かしたウッドインテリアを取り入れたい場合、天然木材ではまだまだ制限が多く、不燃木材はコストの高さが懸念されます。また、天然石は国土交通大臣より不燃認定を受けている製品は限られる上に重量があり材料を薄くできないため、施工効率や納まりの面で採用が難しいケースは少なくないでしょう。

そこでおすすめするのが、TOPPANの不燃化粧パネル「ローバル」です。燃焼時に有毒ガスが出ず製造過程における二酸化炭素排出量を抑えた(当社比)オレフィン製化粧シートに、抗ウイルス・抗菌機能をプラスした環境と人にやさしい不燃化粧パネルです。1900年の創業以来改良を重ねてきた最先端の印刷技術を用いて、木目・石目・メタル調などリアルな色合いと質感を表現した45種類もの色柄ラインナップを取り揃えています。

内装制限の対象となる建築物の空間デザインを検討中の方は、ぜひローバルの採用をご検討ください。

2024.09.17

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