典型7公害について
公害は、私たちの健康や環境に深刻な影響を与える問題です。
特に、製造業は水や化学物質を扱うことも多く、
これらの使用に伴って汚染物質を排出する可能性が有るため、
公害を予防するためには積極的な活動が必須です。
本コラムでは、製造業においても重要となっている典型七公害と、
それらの対策についてご紹介します。
<目次>
■日本における公害について
■典型7公害とは
■典型7公害への対応策
■まとめ
■日本における公害について
技術や経済の発展に伴って水質汚染や大気汚染などの公害が引き起こされ、
このような公害によって多くの人々が健康被害を受け、
長年にわたる周辺地域の生態系や環境への悪影響を与えました。
特に日本においては高度経済成長期下に引き起こされた4大公害病が広く認識されています。
当時は企業の利益が優先されており、
結果として事業活動による環境汚染が拡大し、公害で苦しむ多くの人を生み出しました。
このような過去の教訓から公害対策基本法が整備され、
その後、現在の日本の環境政策の根幹を定める環境基本法の制定につながることになります。
現代においては、法律のみならずSDGsや環境配慮への社会的重要性が高くなっており、
工場においてはより厳しい基準での環境汚染対策が求められつつあります。
■典型7公害とは
典型7公害とは、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭の7つの公害で、
これらの公害は前項で説明した「環境基本法」において規定されています。
①大気汚染
大気汚染とは、二酸化硫黄や窒素酸化物、微小粒子状物質などの
さまざまな有害物質によって引き起こされる大気中の汚染状態を指します。
大気汚染は酸性雨、光化学スモッグ、PM2.5といった様々な事象を引き起こします。
健康被害としても、呼吸器系、循環器系、神経系などに影響を与え、
長期的な影響は病気や死亡につながるという問題もあります。
対策としては、排出物の削減や浄化などが挙げられます。
工場においては排気ガスの浄化装置の導入やエネルギーの効率化などが有効です。
②水質汚濁
水質汚染とは、水中に存在する異物質や微生物が、人間や生物に有害な状態になることを指します。
主な原因は、工場からの廃水、家庭からの排水、
農業における農薬や化学肥料の使用、漁業における養殖物の餌や排泄物などです。
水質汚染は水産物の汚染、汚染水の摂取による感染症の発生、
ひいては、水生生物の生態系の崩壊などの問題を引き起こすことがあります。
対策としては、水質の監視や、廃水処理の改善などが挙げられます。
③土壌汚染
土壌汚染とは、有害物質が土壌に蓄積された結果汚染された状態を指します。
主な原因は、工場の操業中における有害物質の不適切な扱いや、
有害物質を含む廃棄物の不適切な投棄などが挙げられます。
土壌汚染は農作物の汚染や、汚染された土壌が引き起こす生物汚染などを引き起こします。
生物汚染は一度発生してしまうと連鎖していくため、
原因を取り除いたとしても、長期間にわたり影響が残りやすく、
完全な解決に至りにくいという傾向があります。
対策としては、自社における有害物質の使用・管理状況を知っておくことをはじめ、
定期的な土壌調査を実施することなどが考えられます。
④騒音
騒音は後述する振動、悪臭と並び感覚公害に属しており、
長時間さらされることにより身体的・心理的ストレスを与える過度・不要な音を指します。
日常生活に密着した公害であることから
典型7公害に関する苦情の3分の1以上を占めていると言われています。
主な原因は、工場・事業場騒音、建設作業騒音となっており、
これらの事業から発生する騒音は騒音苦情全体の約半数を占めています。
騒音は心理的なストレスや睡眠障害、集中力の低下、聴力障害などを引き起こし、
まれに聴力障害、生理機能の変化を引き起こす可能性もあります。
対策としては騒音源の防音、または施設全体への防音の実施があり、
これらを実施する前段として普段からの騒音の計測が重要です。
⑤振動
振動公害は、人為的に地盤振動が発生し、建物が振動することによる物的被害、
あるいは、その結果として人に不快感を与えるものを指します。
主な原因としては、
工場の機械の稼動や建設工事、自動車の通行などによる地面や建物の揺れがあげられます。
また、振動が発生する多くの場合において騒音の発生も伴います。
振動は、ストレス、睡眠障害などの心的被害を与え、
振動が強い場合には壁やタイル等のひび割れ、
建物の倒壊や機械の故障など物的被害を引き起こすことがあります。
製造業における対策としては、
機械の整備不良により、異常な騒音・振動が発生しないよう点検・整備に努める、
機器の選定時点で低振動の機器を選択するなどがあります。
⑥地盤沈下
地盤沈下とは、地表面が広い範囲にわたって徐々に沈下していく症状を指します。
特徴として、一般的には長期間かけ進行するため、被害として認識されにくいこと、
また一旦発生すればその回復が難しいことなどが特徴としてあげられます。
原因としては地下水の採取、天然ガスかん水の採取、
構造物等による圧密、沖積層の自然圧密があります。
地盤沈下は、不等沈下による建物の傾斜、ひび割れ、道路の陥没の発生、
ガス・上下水道等の地下配管の破損などを引き起こします。
地盤沈下に関しては個人レベルでの対策は難しく、主な対策としては地下水の節水が挙げられます。
⑦悪臭
悪臭とは、人にとって不快なにおいによって生活環境が損なわれ、
感覚的・心理的な被害を与えるものを指します。
原因としては、アンモニアや硫化水素などの化学物質の臭いが原因です。
悪臭は人体に影響を与え、食欲不振、吐き気、精神的不安などを引き起こすと考えらえています。
対策としては、悪臭の原因となるものを特定し、
それらの悪臭を検知、計測するためのセンサーの設置が推奨されます。
■典型7公害への対応策
ここまで典型7公害について紹介し、対策についても言及しましたが、
多くの公害の対策においてまずは「計測する」というアクションが重要になります。
それぞれの原因におけるパラメーターを計測することにより、
定期的な点検を実施し、予め対策を講じることが出来れば、
公害の発生、近隣住民からのクレームのリスクを低減させることが可能です。
特に、異常が発生した際には可能な限り迅速に発見することが求められるため、
IoTを活用することにより、遠隔で計測する仕組みを整えることが理想といえます。
■まとめ
このように法規制、社会的責任等の観点から、
公害対策を実施することは非常に重要となっています。
公害には大きく7種類がありますが、
製造業においては対策を十分に実施しながら事業を存続させることが経営課題となっています。
TOPPANは公害に関するパラメーターを計測し、
遠隔での監視をサポートする「e-Platch」を提供しております。
e-Platchの活用により経営課題である公害の防止が可能です。
公害対策についてお悩みの方は弊社にご相談ください。
2024.10.23