工場における水質汚染の対策
多くの工場において大量の水や薬液を使用していますが、
近年、環境問題への注目が高まっていることもあり、使用後の排水管理の重要性も増しています。
排水の管理を怠ってしまうと水質汚濁・水質汚染を引き起こす原因となってしまうため、
工場における排水管理は非常に重要な問題です。
本コラムでは工場における水質汚染を引き起こさないための対策についてご紹介します。
<目次>
■排水処理とは
■排水処理の方法について
■排水処理における水質管理の重要性
■TOPPANの点検システム「e-Platch」
■まとめ
■排水処理とは
工場において水や薬液を使用すると、汚濁物を含んだ水が発生します。
これらの汚染された液体を適切な処置を行わずに河川や海に排出してしまうと、
自然環境や生態系、地域住民の生活用水などに悪影響を及ぼすことになってしまいます。
そのため、工場から排出される水を適切に処理して、
環境に対する影響を低減することが要求されており、このような処理のことを排水処理と呼びます。
過去には、日本の工場から汚染物質を含んだ水が流出したことで、
甚大な公害被害を引き起こした歴史もありますが、
一度発生した公害はその後数十年にわたって影響を及ぼし続けることになります。
それらの影響は、工場の操業停止・賠償責任のみならず、
広大な地域の水環境への影響を引き起こし、住民への健康被害を巻き起こすことになるため、
汚染水の排水は企業として確実に予防し、対策する必要があります。
公害の歴史を通して、旧水質二法やそれに続く水質汚濁防止法などが制定され、
日本における産業公害は激減しましたが、
現在においても、誤った水質管理によって油が工場外に漏れてしまったり、
知らず知らずのうちに用水路に汚染水が流出してしまう事故が後を絶ちません。
予期せぬ排水が少しでも流出すると、
少量の汚染水の水質回復のために必要な水量は数千倍にも及びます。
そのため、汚染事故そのものに対する対策に加えて、
仮に汚染水の流出が発生した場合にも迅速に発見が出来る仕組みを構築する必要があります。
このように製造業において水や薬液の使用は避けられませんが、
それぞれの企業が水質汚染事故を引き起こす可能性が有るという認識を持ち、
適切な水質の管理を実施し、対策を行う必要があります。
■排水処理の方法について
工場における排水処理の方法としては大別すると主に「分離」と「分解」の2つがあります。
・分離とは
汚濁物質と水を分離させる方法で、汚濁物質が混ざった水を化学的・物理的に分ける方法です。
化学的な手法においては、汚濁成分と反応する薬剤を排水中に投入し、
水と汚染物質の比重の違いを利用してそれぞれを分離します。
また、物理的な手法においては、
フィルターを使用して汚染物質をこしたり、
ふるいをかけたりすることで水と汚染物質を分離します。
・分解とは
基本的には有機物が含まれている排水に対して使用される手法で、
工場排水に溶け込んでいる有機物を微生物によって分解し無害化する方法です。
このようにそれぞれの処理方法には使用できる対象が限定されていることもあり、
多くの場合は排水の成分を見極めて、分離・分解の2つを組み合わせて処理を行います。
水質汚染を引き起こさないために適切な排水処理を実施する必要があり、
そのためには排水処理装置が必要です。
加えて排水処理を行う上で、もう一つ欠かすことが出来ない要素が、
水質を管理するためのpH、ORP、BODなどを測定するための計測器です。
■排水処理における水質管理の重要性
ここまで記載してきたように、
工場においては適切な処理を実施したうえで排水を行う必要がありますが、
これらの対応を行う上で、水質を管理するための計測器の存在が欠かせません。
排水処理装置を通して水質汚染対策を実施した場合も、
排出前には各地域のルールや法的規制の基準に適合しているのかを
計測器を使用して確認を実施する必要があります。
たとえば、実は排水処理装置が故障していた場合においても、
排水前に数値のチェックを行わなかったことで機器の故障・水質の問題の発見が遅れてしまい、
環境へ甚大な影響を及ぼすことになり、賠償責任を負ってしまう可能性も有ります。
このように排水処理装置を導入していた場合においても、
水質の数値管理については必ず実施する必要があります。
特に最近は、工場の通路の脇にある、
雨水を流すための雨水側溝を伝って予期せぬ水質汚染を引き起こしているケースもあります。
本来であれば雨水しか流れないため、工場起因の水質汚染を引き起こす可能性は低いものの、
誤って薬液を工場内の通路でこぼした場合、
汚染されてしまった雨水がそのまま工場の敷地外に流れる可能性も有り、
工場の敷地内から水が流れる様々な場所の水質を管理する重要性も高まっています。
実際にTOPPANにおいて、雨水側溝の遠隔監視を要求された事例を、
下記の記事においてご紹介しております。
■TOPPANの点検システム「e-Platch」
数時間に1回、巡回点検で数値を確認する方法では、
水質汚染事故が発生してから発見するまでにラグが発生します。
事故発生から事故発見・対策を実施する間にも汚染された水を排水し続けることになるため、
遠隔でデータ管理を実現することによって、迅速な事故の発見を実現する必要があります。
TOPPANが提供する点検システム「e-Platch」は遠隔での水質の管理をサポートします。
e-Platchにおいては、4-20mAやRS-485(Modbus)、パルス、ドライ接点等の出力を利用することで、
既存の計測器の無線データ化を実現する「ZETABOX」で実現します。
ZETABOXを使用することによって、
現場で計測器が表示している数値を自動で収集することが可能になるため、
従来は現場に行って数値のチェックをしていた作業の負荷を軽減し、
仮に事故が発生した場合も被害を低減することが可能になります。
排水処理場は工場内において製造ラインから少し離れた場所にあることも多いですが、
e-Platchは、ZETA通信という無線通信を使用することで
電波が届きにくく通信環境が悪い環境においても無線ネットワークを構築することが可能です。
■まとめ
今回は工場において重要な排水処理についてご紹介をしました。
最近の環境問題への注目度の高さから、サプライチェーン全体で環境汚染対策を実施する必要が出てきており、取引先から工場の環境汚染対策に対しての監査を実施するケースも増えています。
これらの対策のためにも、排水処理に対してもより力を入れて取り組む必要があります。
弊社においては、計測器のデータを自動で収集することが可能な点検システム「e-Platch」を提供していますので、現場における排水チェックの業務改善のご提案が可能です。
点検業務・排水管理におけるお悩みをお持ちの方は是非ご連絡お待ちしております。
2024.10.23