データテクノロジー&プラットフォームサービス コラム

CDP(プライベートDMP)のメリットと活用事例、成功のための6ステップ

今回は、CDP(プライベートDMP)の活用メリットと具体的なCDP活用事例、またCDP(プライベートDMP)導入時によく起こりがちな失敗例と、それを防ぐための6つのステップについて解説します。

これからCDP(プライベートDMP)導入を検討する、あるいはすでに導入プロジェクトを進行中でお悩みの方に、ぜひお読みいただきたい内容です。

【参考】

CDP(プライベートDMP)とは?DMPとの比較・違い


<目次>
■ CDP(プライベートDMP)活用 3つのメリット
 1|顧客データの効率的な一元管理
 2|顧客インサイトのより深い分析でLTVを高める
 3|部署間連携による顧客対応の全体最適化
■ CDP(プライベートDMP)活用事例
 1|ITメーカーA社「新規顧客の獲得」
 2|サブスク型サービスB社「既存顧客のファン化」
 3|不動産グループC社「既存顧客のLTV最大化」
■ CDP(プライベートDMP)導入で起こりがちな失敗とは?
 1|データが集まらない・大量のデータが把握できない
 2|部署の壁を越えられず、プロジェクトが破綻
 3|データ集積が目的化し、活用のための具体的な戦略がない
■ CDP(プライベートDMP)導入を成功させる6つのステップ
 1|データ集積・統合する目的の明確化と共有
 2|導入段階とKPIの明確化
 3|データ把握・整理などの「下準備」を入念に行う
 4|部署間の連携ルール、方法を決めておく
 5|外部ベンダーとの連携方針を定めておく
 6|運用を見据えてトレーニング・講習などをプランニングしておく
■ まとめ


CDP(プライベートDMP)活用メリット

まず初めに、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)活用で得られる3つのメリットを紹介します。

CDP(プライベートDMP)活用メリット1:顧客データの効率的な一元管理

CDP(プライベートDMP)は社内に散在するデータを、顧客ひとり一人のデータとして統合。CRMの顧客情報をMA用に加工してアップし直す、といったマーケティング担当者の業務負荷が削減されます。また、Webサイト・SNS・メルマガ・アプリなどチャネルごとに顧客管理していることで同一顧客に何度も同じお知らせが届いてしまう、大切な顧客にネガティブ・マイナスの印象を与えるリスクを防ぐことができます。

CDP(プライベートDMP)活用メリット2:顧客インサイトのより深い分析でLTVを高める

昨今のマーケティングは「顧客に最適な体験を提供し、継続して購入を促す」、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)が重視されます。CDP(プライベートDMP)は顧客に関わるすべてのデータを集積することで顧客ひとり一人のより深い分析とニーズ把握、LTV向上のための施策検討や実施、振り返りが可能になります。

CDP(プライベートDMP)活用メリット3:部署間連携による顧客対応の全体最適化

CDP(プライベートDMP)をBIツールと連携させ、分析結果を全社(部署間、グループ会社間)で共有することで、顧客対応を全体最適化し、満足度向上を促進することができます。その影響範囲はマーケティング部門では実施施策立案、営業やコンタクトセンターではクレーム対応と離脱防止、製造部門では商品開発や製造スケジュールの調整など幅広く、真の「顧客中心の企業活動」実現のための基盤となります。

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CDP(プライベートDMP)活用事例

続いては、CDP(プライベートDMP)の具体的な活用事例を3つ、ご紹介します。

CDP(プライベートDMP)活用事例1:ITメーカーA社「新規顧客の獲得」

ITメーカーA社では、CDP(プライベートDMP)で自社Webサイトの閲覧ログ・資料ダウンロード・問い合わせなどのデータと、フィールドセールスの商談データなどを顧客単位で紐付けし、見込み顧客を興味・関心・欲求レベルに応じてセグメント化。そこからコンテンツ配信やセールスによるウェビナーの実施、キャンペーンなどの施策を実施することで、新規顧客の獲得と成約率アップにつなげています。

CDP(プライベートDMP)活用事例2:サブスク型サービスB社「既存顧客のファン化」

サブスクリプション型でサービスを提供するB社では、顧客の属性情報・行動ログ・利用サービス・クレームなどのデータを集積したうえ、AI解析で既存顧客の解約リスクを予測。解約リスクの高いユーザーを把握することで効率的なアフターフォローや、長期利用ポイント・特典付与施策などを実施し解約率低減・ファン化を実現しています。

CDP(プライベートDMP)活用事例3:不動産グループC社「既存顧客のLTV最大化」

不動産グループC社では、1st Partyデータ(自社Webサイトの閲覧ログ・過去の契約履歴など)、2nd & 3rd Party データ(比較サイトやメディアのログデータ)を集積して分析。これにより、既存顧客のライフステージイベント(結婚・出産・家および車の購入時期など)とニーズ状況が把握できるようになり、顧客に応じたレコメンド情報の発信や商談時のアドバイスを実施。賃貸、分譲、売却などそれまで個社で実施していたマーケティング施策を全体最適化することでLTV向上を目指しています。


CDPで顧客理解を深めることで、デジタルマーケティングの1to1化、リアルタイム化が可能になります。また、既存顧客と見込み顧客のニーズを正確に把握することは、将来の新規事業の創出にもつながっていきます。


CDP(プライベートDMP)導入で起こりがちな失敗とは?

このように、CDP(プライベートDMP)はこれからの企業の競争力向上の原動力となる重要な取り組みですが、前例のない組織横断のプロジェクトであるため、失敗のリスクも高いことは想像に難くありません。ここからはCDP導入時に起こりがちな失敗例を、3つご紹介します。

CDP(プライベートDMP)導入で起こりがちな失敗1:データが集まらない・大量のデータが把握できない

いざデータを収集してみると思いのほかデータ量が不足し、アクションプランが実行できないケース。一方、やみくもにデータを収集してしまいボリュームが多すぎて把握・管理できなくなるケースもあります。

CDP(プライベートDMP)導入で起こりがちな失敗2:部署の壁を越えられず、プロジェクトが破綻

特に顧客情報は各部署の縄張り意識が強く、またこれまで独自ルールで管理、運用されてきたためにデータ統合の目的や進め方、予算配分などで社内の意思統一ができず、軋轢が高まりプロジェクト自体が破綻してしまうケースは少なくありません。

CDP(プライベートDMP)導入で起こりがちな失敗3:データ集積が目的化し、活用のための具体的な戦略がない

CDP導入(データの集積と分析)は手段であり、目的ではありません。しかし多くの場合、CDP導入自体がいつの間にか目的化してしまいます。そうすると、かかった工数の割に成果が曖昧で納得感が得られず、プロジェクト自体が失敗との評価に終わってしまいます。


CDP(プライベートDMP)導入を成功させる6つのステップ

それでは、このような失敗にならないためには何に気を付ければよいのでしょう?
ここからは、CDP導入を成功させる6つのステップをご紹介します。

CDP(プライベートDMP)導入を成功させるステップ1:データ収集・統合する目的の明確化と共有

まず初めに、CDP導入(データを集積・統合)する目的を明確化し、社内でしっかりと共有しましょう。

CDP(プライベートDMP)は「実在する個人」に紐づけて顧客データを集積するプラットフォーム。CDP導入の主目的は「顧客理解を基にした施策の実行でブランド価値を高める、売上を向上すること」です。こうした目的を明確化、共有しないでプロジェクトをスタートすると、いつしか「データを集めればいいや」となってしまい、肝心の顧客理解につながらないものとなってしまいます。

CDP導入の目的は、企業によりさまざまですが、大きく「攻め」と「守り」に分けることができます。以下を参考に、自社の目的を明確に定めましょう。

<攻め>
・ 既存商品・サービスの高度化・提供価値向上
・ 顧客接点の抜本的改善
・ ビジネスモデルの抜本的改革

<守り>
・ 業務効率化・省力化
・ 業務プロセスの抜本的改善・再設計
・ 経営データ可視化による意思決定の迅速化・スピード経営

CDP(プライベートDMP)導入を成功させるステップ2:導入段階とKPIの明確化

CDP導入プロジェクトは、数年もの長期に渡ることが少なくありません。そのため導入を段階別に、また段階ごとに評価可能なアウトプットを意識したプランニングが大切です。

KPIの設定は比較的早期に成果の得られる「業務効率化」と、成果が出るまでに期間のかかる「売上向上」の大きく2つの観点で設定します。最初から「売上向上」のみを成果に設定すると、結果が出るまでに時間がかかり、モチベーションが保てなくなります。

初期フェーズでは「レポート自動化」「分析の高度化」をKPIとして設定する企業が多いです。「レポート自動化」は「業務効率化」の一部ですが、工数削減でコスト効果が高く、評価しやすい項目です。また「分析の高度化」はこれまで分析できていなかった、あるいは時間がかかっていた部分がどう改善されたかを評価することで、後の施策実施時のアクションプラン立案や成功確度の向上にもつながります。

CDP(プライベートDMP)導入を成功させるステップ3:データ把握・整理などの「下準備」を入念に行う

CDP(プライベートDMP)導入前に、
・ 統合対象のデータがどのシステムにあるのか
・ 他に(別部署などで)管理しているデータはないか
・ システムの管理者は誰か(社内だけでなく外部ベンダーが管理しているものはないか)
といったデータの把握と、各データが
・ どのようなルールで保存・管理されているか
・ フォーマットはどうなっているのか
といったデータ整理の「下準備」をしっかりと行っておくことが非常に重要です。

これを怠るとCDP(プライベートDMP)を導入しても活用したいデータが不足して成果につながりません。また、CDP導入の最中にデータが欠損している、値が揃っていない、違っているなどデータの不備が発覚するとやり直しとなり、プロジェクト全体の進行に多大な影響を与えてしまいます。

社内のデータ統合を実施する際、「RFP(Request for Proposal/提案依頼書)」の作成が欠かせません。
この資料ではプロジェクト開始時に社内で取りまとめておくべき20項目を解説しています。

CDP(プライベートDMP)導入を成功させるステップ4:部署間の連携ルール、方法を決めておく

CDP(プライベートDMP)は社内の顧客データを集積・統合するため、マーケティング部門など特定部署だけでなく、各事業部門、情報システム部門など全社での連携が欠かせません。「後から必要に応じて協力を仰げばよい」といった見切り発車でプロジェクトをスタートさせると進行のたびに調整が発生し、その都度目的や意図などを説明する余計な手間がかかるだけでなく、協力が得られない事態につながります。当初から部門間の連携ルールと具体的なアクションについて、プランに組み込んでおきましょう。

CDP(プライベートDMP)導入を成功させるステップ5:外部ベンダーとの連携方針を定めておく

戦略立案からCDP(プライベートDMP)導入までを100%内製化することは人的リソース面、ナレッジの面からも現実的ではありません。そのため多くの場合は、コンサルティングやシステム、ツールメーカーなど外部のベンダーとの連携が発生します。その際、どの部分を自社で、どこを外部で、また意思決定や連携方法はどのように行うか、といった基本方針をあらかじめ定めておく必要があります。

社内にどのような部署横断のプロジェクトチームを立ち上げるのか、どの程度の人員とスキルセットが必要になるのかなどは早めに外部ベンダーに相談し、一緒にプランを立案するのがよいでしょう。

この資料は企業のデジマ運用・データ利活用にはどのような人材とスキル、体制が必要なのかをまとめてあります。ご活用ください。

CDP(プライベートDMP)導入を成功させるステップ6:運用を見据えてトレーニング・講習などをプランニングしておく

CDP(プライベートDMP)導入後、全社で適切なデータ活用を行うにはトレーニング、講習などの社内研修が欠かせません。改めて事業部門や経営企画部門などのユーザーサイドにデータ利活用の目的を周知し、具体的なダッシュボードの見方、ツールの使い方などをレクチャーすることで「特定部署しか活用できない」「導入したものの利用されていない」などの状況を避け、データ利活用をワークフロー、社内カルチャーとして根付かせることができます。

こうした社内トレーニングも外部ベンダーがプログラムとして提供することが多いので、早期に予算も含めて相談しておくことをオススメします。

【参考】


まとめ

全社横断で進めるCDP(プライベートDMP)導入プロジェクトの成功イメージを持っていただけたでしょうか。

まとめると、CDP(プライベートDMP)導入プロジェクトには「組織」「データ」「戦略」という3つの障壁が存在します。

ここをうまく乗り越えるには、「データ集積・統合する目的の明確化と共有」「導入段階とKPIの明確化」を行った上で、「データ把握・整理などの下準備を入念に」行い、「部署間の連携ルール、方法を決める」ことと「運用を見据えたトレーニング・講習」までのプランニングを、「外部ベンダーと連携して」行うことが大切なのです。

TOPPANは、単なるツールの提供とプラットフォーム構築にとどまらず、目的に応じた導入から構築支援の各種コンサルティングや、デジタルマーケティングの人材リソースの提供などでも数多くの実績を誇ります。

CDP(プライベートDMP)導入によるデータ統合・利活用をご検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

2023.09.14