エクスペリエンスデザインサービス コラム

長期ビジョンは予測不能な時代の羅針盤!
数値化できない“ありたい姿”が強い組織を作る理由とは?

先行きが不透明で予測困難なVUCAの時代、組織が同じ方向に向かってゴールを目指すためには、強固なビジョンが求められます。多くの企業では中期的なビジョンを掲げていますが、長期ビジョンは策定していないケースもあります。

また周年や事業変革などのタイミングは、長期ビジョンを見直す絶好の機会です。

そこで今回は、長期ビジョン策定の必要性から策定に最適なタイミング、策定手順とそれに伴うよくある失敗、浸透・実行フェーズにおける成功ポイントまで解説します。

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<目次>
1.そもそも長期ビジョンとは?
2.長期ビジョンがないことで陥る3つの罠
3.長期ビジョン策定に「最適なタイミング」とは
4.長期ビジョンの策定手順と「よくある失敗」
5.長期ビジョンを現実のものにする「浸透・実行」のポイント
6.まとめ


1.そもそも長期ビジョンとは?

長期ビジョンとはどのような位置付けなのか、策定が求められる理由を解説します。

長期ビジョンとは?

長期ビジョンとは、企業が長期的に目指す方向性や理想像を明確にしたものです。数値的な目標とは異なり、企業の経営理念や価値観などを反映した、未来の姿です。

・中期ビジョンとの違い
ビジョンには中期的に設定する「中期ビジョン」もありますが、長期ビジョンが5年から10年のスパンで設定するのに対して、中期ビジョンは3〜5年程度のスパンで設定します。長期ビジョンでは長期的な将来の姿を描くのに対して、中期ビジョンでは長期ビジョンを実現するために、中期的に目指すべき、より短期的かつ具体的な姿を掲げます。

・企業理念との違い
企業理念は企業が大切にする価値観であり、ビジョンと比較して時間的な概念がありません。ビジョンが変化し得る未来像であるのに対し、企業理念は創業時もしくは理念策定時から不変の価値観です。その意味ではビジョンは時代や環境によって変化する可変のものといえます。

・ミッションとの違い
ミッションは企業が果たすべき使命です。これだけでは目的が抽象的となるため、ビジョンで目指すべき像を明確にする必要があります。その意味で、ミッションはビジョンを支える考え方であり、互いに補完し合っているといえます。

・パーパスとの違い
パーパスは企業の社会的な存在意義であり、「なぜ存在するのか?」を意味することから、時間軸としては「現在・過去・未来」共通の、普遍的なものとなります。それに対してビジョンは「未来にどうありたいか?」と、未来の姿を意味する点で異なります。

長期ビジョン策定が求められる理由

なぜ今、多くの企業に「長期ビジョン」が求められているのでしょうか。その背景には、テクノロジーの急激な進化や社会課題の複雑化など、数年先の予測すら困難な「VUCA」と呼ばれる経営環境があります。
こうした予測不能な荒波を乗り越え、生き残る強い組織を作るためには、目先の波風に惑わされない一貫した指針が欠かせません。
長期ビジョンという明確な「目的地」があれば、たとえ各々異なる困難に直面しても、組織がバラバラになるのを防ぎ、全員が同じ方向を向いて進むことができます。
この揺るぎない共通認識こそが、組織に真の結束をもたらすのです。


2.長期ビジョンがないことで陥る3つの罠

先述の通り、長期ビジョン策定は、現在、社会的にも求められていることです。その理由を深掘りしていきましょう。長期ビジョンがない組織は、次の3つの罠に陥りやすくなります。

大きな変化に見舞われると経営の方向性にブレが生じてしまう

大震災やパンデミック、インフレなど、予測困難な事態に直面したとき、ビジョンがなければ、ただ目先の混乱に翻弄される状態になりかねません。
不透明な時代において、長期ビジョンという「羅針盤」を持たず理想像を描かないまま経営することは、一貫性のある決断を妨げ、組織の存続を揺るがすリスクとなりえます。

長期的な戦略や投資の判断基準が曖昧になる

長期ビジョンは、長期的な戦略や投資の判断基準にもなり得ます。長期ビジョンがない、もしくは曖昧な状態では、判断しにくい状態になってしまいます。実施する担当者によって基準が異なってしまう恐れもあります。

現状維持ばかりにとらわれ、変革に挑戦できない

長期ビジョンは、目指すべき方向性、つまり未来の組織像を提供してくれます。もしこの未来像がない場合、目先の現状をいかに維持するかというところだけに意識が向かいがちです。そうなれば、未来に投資すべき変革への挑戦に目が向かなくなってしまう恐れがあります。イノベーションには程遠いでしょう。

これらのことから、長期ビジョンは、策定しないことに一定のリスクがあると言えるのです。


3.長期ビジョン策定に「最適なタイミング」とは

長期ビジョンを策定する際には、最適なタイミングがあります。主なタイミングを理由と共に見ていきましょう。

経営者の交代

経営者が交代する際には、企業理念も含めてビジョンを見直すべき大きな機会となります。

中期経営計画の見直し

3〜5年スパンの中期経営計画を策定する・見直すタイミングは、そのさらに先にある「長期ビジョン」が現状に即しているかを確認し、必要に応じて刷新する絶好の機会です。

周年記念

会社設立50周年、100周年などの周年の際は、過去の歴史を振り返る機会であると同時に、新たな転換のチャンスでもあります。今後どのような方向性に向かっていくか、時代の流れに沿った新しいビジョンを掲げるのに最適なタイミングです。

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事業拡大(事業変革)

事業を拡大したり、大きく変革したりする際は、組織の方向性が変わるタイミングです。長期ビジョンの見直しも検討すべきでしょう。

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社名変更

リブランディングのタイミングなどに、社名を変更することがあります。ブランドイメージやビジュアルを刷新するにあたって、ビジョンも刷新することも多いでしょう。ビジョン刷新により、企業イメージ向上や認知向上、海外展開などの領域拡大を目指します。


4.長期ビジョンの策定手順と「よくある失敗」

長期ビジョンの策定手順を見ていきましょう。ステップごとによくある失敗と回避策も併せてご紹介します。

1.長期ビジョン策定の体制づくり

まずは体制づくりから始めます。長期ビジョン策定は、全社的なプロジェクトとして実施しましょう。また、ビジョンは策定プロセスに留まらず策定して完成、ではなく長期的に見直し、改善していくものであることも念頭に置いておきましょう。

●よくある失敗「経営トップやリーダー層のみで体制を作ってしまう」
長期ビジョン策定は全社的に行う必要がありますが、経営トップやリーダー層のみで体制を作ってしまうケースは少なくありません。しかしその結果、ビジョンが社員に受け入れられず、形骸化してしまうという失敗につながってしまいます。

●回避策
社内の部門や部署から各1名ずつ選抜する、次代のリーダー層などの複数レイヤーから選抜するなどして、全社横断的に構成することを推奨します。

2.内部環境と外部環境の調査

自社を取り巻く内部環境と外部環境を入念に調査し、現状把握を行います。そして10年後、20年後において、環境がどう変化するのかを予測する必要があります。

●よくある失敗「将来起こり得る環境変化を加味していない」
長期ビジョンは未来の自社の姿です。未来の環境は現状とは変わっていることでしょう。将来起こり得る環境変化を加味する必要があります。

●回避策
当然ながら、未来は正確に予測することはできません。現実的な未来予測だけではなく、ある程度大胆な未来予測も含め、社員がワクワクする要素を盛り込むことがポイントです。

3.ビジョンの要件整理

収集した情報を踏まえ、自社がありたい姿の要件を整理します。例えば、地球環境に優しい事業を推進する企業になっていたいのか、市場において先進的な立ち位置でリードしている企業なのかなど、目指したい姿によって細かな要件が変わってきます。

●よくある失敗「自社の理解不足」「中期・短期の具体策が曖昧」
ビジョンの要件整理の落とし穴として、調査不足や経営層のみで整理してしまうということがあります。また、長期的にありたい姿に向かうためには、中期や短期の具体的な施策が求められます。具体策が曖昧なまま取り決めてしまうと、現実離れしたビジョンになってしまう恐れがあります。

●回避策
回避策としては、調査の段階で、社員やお客さまなどへのインタビューおよびアンケートなどの結果を取り入れることが挙げられます。また、中期・短期の具体策を検討しておくことも重要です。

4.テキスト化

要件整理したものをビジョンとして言語化するフェーズです。

●よくある失敗「抽象的すぎる」「定量・定性両方を含んでいない」
言語化は非常に難しい取り組みです。
定性的で数値的な面が皆無であると抽象的すぎてとらえどころがなく、社内に根付かず、行動につながらない恐れがあります。

また反対に、定量的な数値だけなどと具体的すぎても、社員の行動シーンが限定されてしまったり、共感しにくくなってしまったりするため、できるだけ避ける必要があるでしょう。
理想的なのは、定性的要素と定量的要素の両方を盛り込んだビジョンです。

●回避策
ビジョンの文言はある程度、具体的なイメージができるようなものである必要があります。一方で数値だけで表すと単なる数値目標になってしまいます。未来像としてのイメージが湧くビジョンとして言語化する必要があるでしょう。

例えば、「2040年までに当該市場でシェアNo. 1を獲得し、お客さまに持続可能な未来を提供する」などはバランスの良いビジョンです。

5.ステークホルダーからのフィードバック

社員、顧客、取引先などのステークホルダーからのフィードバックにより調整していくフェーズです。

●よくある失敗「偏った対象からのフィードバックに留まってしまう」
フィードバックを受ける際に、特定の部門やリーダー層のみなど視点が偏ってしまうと、全社的な浸透につながりにくく、社員が腹落ちしない恐れがあります。

●回避策
ステークホルダー全体からフィードバックを受け、全員が共感および納得し、行動に移せるビジョンに調整していくことが重要です。

6.社内への共有・浸透

長期ビジョンを策定した後は、経営トップから社員へ発信し、浸透施策を実施していきます。

●よくある失敗「経営トップからの発信のみに留まり、現場の行動に紐づかない」
長期ビジョン策定後に経営トップから発信するのみで、その後は何もしないケースも少なくありません。しかし、それでは結果的に長期ビジョンに向けた行動喚起につながらず、形骸化してしまう恐れがあります。

●回避策
経営トップからの発信は、ビジョン浸透の始まりに過ぎません。ここから社員が自分ごと化して、自ら目標となる理想像として掲げ、そこへ向かうために行動を起こす状態になることが重要です。

そのためには、ワークショップや研修を開催し、「組織が長期ビジョンを実現するには、今どのような行動が求められるか?」をディスカッションする場を設けるなど、個々人による言語化もポイントです。

7.定期的な見直し・修正

長期ビジョンは策定した時点で完了するものではなく、定期的な見直しと修正を行い、環境変化に合わせて調整していくものです。

●よくある失敗「一度作ったビジョンにこだわり、変えようとしない」「改善する体制が不十分」
ある程度、ビジョンにはこだわりが必要ですが、環境が変わっているのにもかかわらず、変えようとしないのは避けたいところです。また見直しの意向はあるものの、「どこで、誰と話し合えば良いかわからない」状態で、体制づくりが不十分であるケースもあります。

●回避策
長期ビジョンのプロジェクト体制づくりの際に、1年ごと、5年ごとなど、定期的に見直す機会をスケジューリングしておくと良いでしょう。


5.長期ビジョンを現実のものにする「浸透・実行」のポイント

長期ビジョンを社内に浸透させ、実行するポイントをご紹介します。

単なる発信に留めず、社員の自分ごと化を重視する

先述の通り、長期ビジョンは経営トップからの単なる発信に留めず、社員の自分ごと化を重視することが重要です。そのためには、ワークショップ開催のほか、経営層と社員とのコミュニケーション施策を数多く実施することを心がけると良いでしょう。

アンケート調査の実施

長期ビジョンに関して、社内アンケートを定期的に実施し、どのような印象や意見を持っているかを確認することが大切です。課題が見つかり次第、見直すことも検討しましょう。

経営トップによる体現

ビジョンが形骸化してしまう理由の一つに、経営層がビジョンを体現していない、もしくは目指していないことが明らかな場合が挙げられます。経営層が自らビジョンを体現し、見本となることが重要です。

ブランドブックなどの制作・配布

長期ビジョンに関して、その策定の背景や思いなどを記したブランドブックを制作し、社内やステークホルダーに配布することはビジョンを身近に意識することにつながります。社内にブランドの価値観が浸透する一助となります。

人事評価制度への組み込みなど熱意をもって取り組める仕組みづくり

社員が積極的にビジョンに基づく行動を取るようにするには、人事評価制度に含めることが有効です。たとえ成果につながらなかったとしても、ビジョンに基づき行動したというプロセスを評価するなどすれば、社員はビジョンの実現に、より力を注ぐでしょう。


6.まとめ

長期ビジョン策定は、変化の激しい時代において、強固な組織を保つために重要な取り組みです。

しかしながら、「かっこいい言葉を並べただけの状態」「社内に浸透しない」などの失敗に陥ることは決して少なくありません。重要なのは全社的にプロジェクトを走らせ、社内からの頻繁なフィードバックを受けることや、浸透施策に力を入れることです。それにより、社員全員が腹落ちし、理想に向かってワクワクしながら取り組む組織が作られるでしょう。
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「コープデリが明かす!2年間に渡るビジョン策定プロジェクトの全貌

2026.03.27