自治体情報システム標準化の課題と
解決策をわかりやすく解説!
自治体DXが推進される中、自治体情報システムの標準化や共通化が一つの重要な取り組み事項となっています。地方行政を効率化し、住民サービスをよりニーズに応える充実したものにしていくためには、自治体情報システム標準化は欠かせません。
今回は、自治体情報システム標準化の概要からメリット、課題、解決策までわかりやすく解説します。
■自治体情報システム標準化とは?
自治体情報システム標準化とはどのような取り組みなのか、概要や背景、目的、対象業務をご紹介します。
●自治体情報システム標準化とは?
自治体情報システムの標準化とは、自治体が使用している情報システムについて、住民サービスに直結する児童手当や子ども、子育て支援、住民基本台帳といった全20業務を対象に国が取り決めた標準仕様に合わせて標準化することを指します。
2025年までの移行が目指されており、ガバメントクラウドと呼ばれるクラウド環境のシステムへの移行を行います。
●自治体情報システム標準化の背景・目的
自治体情報システム標準化は、デジタル庁や総務省を中心として進めるDX推進施策の一つです。「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」では、地方公共団体情報システムを住民の利便性向上や行政運営の効率化、互換性確保などを目的に標準化された共通のシステムを利用することが規定されています。自治体において、利用は努力義務となっています。
従来から、各自治体の情報システムは、独自のものが導入されていることもあり、自治体同士の情報共有や連携がむずかしいのが現状です。こうした状況は、業務効率や情報管理、情報セキュリティの観点から懸念があります。こうした背景から、自治体情報システムの標準化と共通化が進められています。
●自治体情報システム標準化の対象20業務
自治体情報システム標準化の対象20業務は、下記が該当します。
・児童手当
・子ども・子育て支援
・住民基本台帳
・戸籍の附票
・印鑑登録
・選挙人名簿管理
・固定資産税
・個人住民税
・法人住民税
・軽自動車税
・戸籍
・就学
・健康管理
・児童扶養手当
・生活保護
・障害者福祉
・介護保険
・国民健康保険
・後期高齢者医療
・国民年金
■自治体情報システム標準化のメリット
自治体情報システム標準化のメリットをご紹介します。
●業務効率化
自治体の情報システムを標準化することは、業務効率化に寄与します。その理由として大きなものは、職員同士の情報共有や自治体同士の連携がスムーズにいくことが挙げられます。ガバメントクラウドへ移行すれば、クラウド環境ならではの利便性が生まれ情報がスムーズにやりとりされることで業務全般に良い影響を与え、効率化につながります。
●コスト低減
業務効率化により、無駄なコストが削減される可能性があるのに加えて、情報システムが標準化されることで、個々の自治体が独自にシステムを開発する必要がなくなるため、その分のコスト削減にもつながります。
●IT人材不足への対応
情報システムが標準化され、共通化されれば、個々の自治体が独自に情報システムの構築や運用を行わなくて済むようになります。その分の人員を削減できる可能性があります。また自治体共通のシステムが定着すれば、システム関連の知識も共通化されることで、研修・教育の負担も軽減されるでしょう。
●住民サービス・住民の利便性向上
業務効率化や情報連携が進むことで、住民サービスや住民の利便性向上にもつながります。よって、これまでよりも住民ニーズに応えやすくなると考えられます。
また、情報システムの標準化が行われれば、独自にシステムを開発・運用する負荷が軽減されるため、リソースをより住民サービスへと投入しやすくなるとも考えられます。
●AIやRPAなどの先端技術の活用推進
情報システムの標準化は、AIやRPAなどの先端技術の活用をより容易にすることから、デジタル化およびDX化が促進されると考えられます。AIやRPAは業務効率化と生産性向上に役立てられる技術であることから、人材不足への対応、働き方改革にもつながるでしょう。
■自治体情報システム標準化の課題
自治体情報システム標準化は、現状、各自治体において、移行に関する課題に一つ一つ対応しながら進められています。主な課題として、次のものが挙げられます。
●迫る期限とITベンダーの負担増し
ガバメントクラウドへの移行は、2025年度末が期限とされているため、支援を行うITベンダー各社のリソースはその時期周辺に集中するといわれています。移行には現行システムの確認、洗い出しはもちろんのこと、移行計画、分析、移行などさまざまな手順を踏む必要があります。スケジュールを考えると期限までに間に合わないと判断した自治体からは、期限延長の要望も出ています。
●周辺システム移行などにかかるコスト負担
ガバメントクラウド構築や移行に関しては、国からコスト的な支援措置があり、補助金が出ますが、付随して移行する必要のある周辺システムにまつわるコストは支援されません。そのため、全体的なコスト負担が大きいものとなっています。
■自治体情報システム標準化の課題解決策~BPRの徹底
自治体情報システム標準化の課題解決策として、「BPR」を徹底することが必要だといわれています。
●BPRの目的と意義
BPRとは、「Business Process Re-engineering(ビジネスプロセスリエンジニアリング)」の頭文字を取った言葉で、業務におけるフローや組織構造、管理基盤、情報システムなどを刷新し、再構築しながら業務改革することを指します。
BPRが一般的な業務改革や業務改善と異なる点は、抜本的に組織を変革する意味が含まれていることにあります。部門・部署ごとに業務やシステムが分断され、非効率な状態になっている状況を、組織全体をとらえる視点により、抜本的に変え、再構築していく取り組みです。
●BPRの徹底が自治体情報システム標準化の課題解決策となり得る
現在、進められている自治体情報システム標準化は、BPRの一環と考えられます。つまり抜本的な組織改革のために、自治体情報システム標準化を進めていることになります。
そう考えると、ただガバメントクラウドに移行すれば終わりではないことがわかります。
現状は移行の期限や人的リソース、コスト的負担が課題となっていますが、移行後のメリットとして運用のコスト削減が見込めるといわれています。そのメリットを享受するためにも、ただの移行ではなく、移行後の標準化・共通化されたシステムに合わせて、業務プロセスを根本的に見直して変革させることが求められているのです。
●自治体BPRをアウトソーシングすることのメリット
BPRを進める際は、アウトソーシングやBPOを利用する方法もあります。
BPRを専門の民間企業に委託して実施することのメリットは、第三者の視点により問題が可視化されやすく、組織的な変革につながりやすい点が挙げられます。また、BPRに関する専門知識やIT人材不足への対応にも寄与します。自治体がBPRに取り組む際には、アウトソーシングを頼るのも一案です。
■まとめ
自治体情報システム標準化の概要からメリット、課題、解決策までご紹介しました。ポイントになるのは、ただ移行することを目的とするのではなく、本来の目的である移行後の運用コスト抑制や業務効率化、住民サービス向上などを見据えて、BPRの観点から抜本的な改革に取り組んでいくことであると考えられます。
TOPPAN BPOでは自治体向けBPOサービスの豊富な実績をもとに、さまざまなサービスをご提供しております。また、BPRも含めたコンサルティングも可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
2024.12.13