コラム

BPRとは? 
BPR実施における
アウトソーシングの役割とメリット

企業は人手不足やDX、働き方改革などあらゆる課題に直面しており、業務改善や業務改革に取り組んでいます。その手法の一つである「BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)」に近年、注目が集まっています。
今回は、BPRの概要から実施の際のステップ、BPRの導入メリット・デメリット、手法、アウトソーシングする際の選定基準をご紹介します。これからBPRをご検討の方は、ぜひ基本的な内容を確認されてください。


■BPRとは? BPRの基礎を解説

BPRとは、「Business Process Re-engineering(ビジネスプロセスリエンジニアリング)」のことで、直訳すると、「ビジネスのプロセスなどをデザインし直す」といった意味合いになります。これは、単に業務の一部を効率化する「業務改善」とはまったく異なり、企業の経営目標を達成するために、既存の業務フローや組織構造、情報システムといったビジネスプロセス全体を根本から見直し、ゼロベースで再構築する抜本的な経営手法であり、コストの劇的な削減、生産性の飛躍的な向上、そしてお客さま満足度の最大化といった、企業全体の競争力を根本から高めることにつながります。

●BPRと業務改革・業務改善の違い
業務改革を行うというと、一般的に行われている「業務改革」や「業務改善」と同じようなものだととらえられがちですが、BPRは、ただの業務改革や業務改善ではなく、特に組織の中で分断されたプロセスを課題ととらえ、抜本的に組織全体を通した効率的な業務プロセスを再構築する意味合いがあります。

従来の組織は、部門・部署ごとに業務が分断され、時には部門・部署が重複する業務もありました。また、それぞれが独立して業務を行うことで、情報共有が不十分なこともあり、非効率なシーンが多い点が課題といわれています。そうした課題に対して、アプローチするのがBPRです。

また、業務改善は業務プロセスやフローは基本的に変更せずに、既存の仕組みの中で業務効率化を図る活動であるため、抜本的な見直しを図るBPRとは異なります。

●BPRとDXの違い
業務改善や業務改革のほか、近年よく耳にする「DX」もまた、企業の変革を促す重要な概念です。しかし、BPRとDXでは、その目的とアプローチに明確な違いがあります。

BPRは、業務プロセスそのものを根本から再設計することに焦点を当てています。これは、非効率な業務フローや組織の縦割りを解消し、業務を最適化するための経営戦略であり、デジタル技術の導入はそのための有効な手段の一つに過ぎません。例えば、ITシステムを導入する前に、「そもそもこの書類の承認プロセスは本当に必要なのか?」とゼロベースで問い直し、プロセス自体をなくしたり、簡素化したりするといったアプローチがBPRです。

一方、DXはデジタル技術を活用して、企業文化やビジネスモデルそのものを変革し、競争優位性を確立することを目的としています。DXによる変革は、単なる業務のデジタル化にとどまらず、顧客への新たな価値提供や、新しいビジネスの創出を目指します。

BPRは変革の土台を築き、DXは最新の技術を使ってその土台の上により大きな価値を生み出す、相互補完的な関係にあります。多くの企業では、BPRによって業務プロセスを効率化した後に、DXを進めることで、その効果を最大限に引き出しています。

●BPRが現代の企業にとって重要な理由
なぜBPRが近年、多くの企業や自治体から注目を集めているのでしょうか。その大きな理由として、少子高齢化による労働力不足の慢性化に伴う業務効率化や働き方改革などがあるといわれています。少ない人員で生産性を保ちながら業務を遂行することが求められる中、抜本的な見直しを図り、組織改革を行うことで、成果を出す考え方が生まれています。

また、近年はAIやIoT、RPAなどのIT技術を業務に取り入れ、より業務を効率化する手だてが整ってきています。これらの先端技術を導入するためにも、アナログ・デジタル両方のフローを含めた抜本的な見直しが求められていると考えられています。

■BPRプロジェクトの典型的なステップ

BPRを推し進めるには、組織的なプロジェクトを組んで行う必要があります。典型的なステップを見ていきましょう。大きく5つのステップで進めていきます。

1.課題の抽出
2.業務フロー・組織構造の分析
3.戦略設計・方針策定
4.実行
5.モニタリング・効果測定

それぞれにポイントとなる点をご紹介します。

1.課題の抽出
業務改革を図りたい対象の業務フローに対して、課題を具体的に抽出します。そのためには属人化していた業務の担当者から詳細をヒアリングするなどして、問題の焦点をあぶりだす必要があります。

2.業務フロー・組織構造の分析
課題を特定できたら、改善策を検討します。そのためには、まず分析が求められます。なぜ問題が起こっているのか、根本的なボトルネックを見つけ、さらに問題を深堀りしていきます。

3.戦略設計・方針策定
BPRを進める上で、どのような方針と戦略を持って進めるべきかを検討します。このとき注意が必要なのは、全社的に決めることです。BPRは組織の抜本的なプロセスを改革するものであるため、一部のメンバー間で決めるのではなく、従業員全体で共有しながら同意の上で進めていく必要があります。コストや構成メンバーを決めるほか、アウトソーシングの検討も行います。

4.実行
プロジェクトを実行するフェーズです。方針通りに進められているか、従業員と共有しながら進めていくことを重視します。

5.モニタリング・効果測定
実行しながら、モニタリングを行い、定期的な効果測定は欠かせません。業務プロセスはスムーズにいっているか、問題があれば原因と対策を講じるなどして改善活動を重ねていくことが大切です。

■BPRの導入メリット・デメリット

BPRを導入することで次のメリットやデメリットが期待できます。

●メリット

・コスト削減・リソースの最適化
BPRにより、組織内における業務の無駄や重複が一掃されるため、その分のリソースが空けばコスト削減につながります。人材配置や設備投資などのリソース配分も最適化できます。

・プロセス効率の向上
業務プロセスの効率化につながり、これまで長時間かかっていた業務も時間が削減されます。同じ時間で多くの業務がこなせるようになれば、生産性向上につながります。

・従業員満足度の向上
業務プロセスが改善されることで、これまで手間に感じていたことが減り、作業負荷の低減につながります。また作業時間が削減されれば長時間労働が是正され、働きやすい環境になります。その結果、従業員満足度が上がる可能性があります。

・競争力の強化
BPRは、市場の変化や顧客のニーズに迅速に対応するための組織体制を構築する上で不可欠です。非効率なプロセスをなくし、柔軟な組織構造にすることで、新サービスの開発や市場への投入スピードが向上します。その結果、競合他社に先んじて市場の優位性を確立し、企業の競争力を抜本的に強化することができます。

・組織風土の変革
BPRは単に業務の仕組みを変えるだけではなく、従業員の意識改革を促します。従来の「言われたことをこなす」という受け身の姿勢から、「自ら課題を見つけて改善する」という主体的な行動へと意識が変化します。部署間の連携も強化されるため、組織全体のコミュニケーションが活性化し、イノベーションが生まれやすい風土へと変革できます。

●デメリット

・全社的な取り組みが求められる
BPRは、企業や組織が全社的に行う業務改革であるため、全社的なプロジェクトになります。成功させるには、手間と時間、コストがかかることは避けられないでしょう。また専門的な知見が求められることもあります。

・従業員や部門の抵抗が生じることがある
業務プロセスを見直しつつも、既存の慣れ親しんだ業務プロセスのほうが効率が良いと感じる従業員も一定数出てくるのが一般的です。そのような社内の抵抗に対しては、メリットを正しく伝え、経営側から一方的にならないような進め方が求められます。

■BPRの主な手法

BPRを実現するための手法には、次の種類があります。

●業務分析による業務仕分け
業務フローやプロセスを細かく分類し、業務を仕分けして図式化して可視化する作業です。下記のいずれの方法を行う際にも、まずは着手します。

●ERP(Enterprise Resources Planning)の導入
人・モノ・金・情報などを一元管理するERPシステム(統合基幹業務システム)を導入することで、社内で共有できます。これまでバラバラだった情報を一元的に管理できることで、経営資源の効率化や意思決定の迅速化につながります。

●シェアードサービス
シェアードサービスは、複数企業が集まるグループ企業において、各企業の財務・経理、総務・人事、情報システム、物流、法務、監査といった間接部門を一つにまとめることを指します。一元的にシェアすることで業務効率化やガバナンス向上などに寄与します。

●アウトソーシング・BPO
外部企業に業務を委託するアウトソーシングや、特に業務改善を目指すBPO(Business Process Outsourcing)においても、BPRを実施することができます。委託先企業に業務改善だけでなく業務改革も併せて委託します。第三者の視点により問題が可視化されやすく、組織的な変革につながることがあります。

●SCM(Supply Chain Management)
SCMは、調達、製造、物流、販売、といったサプライチェーンにおける情報を共有・管理する手法です。部門を越えた管理の一元化により、製造販売業務を促進します。

■BPRを成功させるためのポイント

BPRは大きな変革を伴うため、成功させるためにはいくつかの重要なポイントがあります。これらを意識してプロジェクトを進めることが、失敗のリスクを最小限に抑え、期待する成果を出すための鍵となります。

●目的とゴールの明確化
BPRは「何のために行うのか」という目的が曖昧だと、途中でプロジェクトが頓挫したり、期待外れの結果に終わったりする可能性が高いです。「コストを〇〇%削減する」「顧客対応のリードタイムを〇〇に短縮する」といった具体的な数値を交えたゴールを設定し、関係者全員で共有することが不可欠です。

●トップマネジメントの強いコミットメント
BPRは部門や部署を横断する全社的な取り組みです。従業員の業務内容や役割が変わるため、反発や抵抗が起こることも少なくありません。こうした状況を乗り越えるには、経営層が旗振り役となり、変革の意義や重要性を一貫して伝え続ける強いリーダーシップが求められます。

●現場を巻き込んだコミュニケーション
変革の当事者である現場の従業員の理解と協力がなければ、BPRは成功しません。一方的なトップダウンではなく、現場の意見を吸い上げ、課題や改善点を共に洗い出すことで、従業員の主体性を引き出し、変革への抵抗感を和らげることができます。プロジェクトの進捗や成果を定期的に共有し、透明性を確保することも重要です。

●IT技術の適切な活用
BPRの目的は、あくまで業務プロセスの再構築であり、ITシステムの導入自体がゴールではありません。ただし、AIやRPAなどの最新技術は、抜本的なプロセス改革を強力に後押しするツールとなります。アナログな業務フローをそのままデジタル化するのではなく、新しいプロセスに最適なIT技術を選定・導入することで、BPRの効果を最大化できます。

●外部の専門家の活用
自社内だけでBPRを進めようとすると、客観的な視点で見にくくなったり、専門的なノウハウが不足したりすることがあります。BPRの実績が豊富なコンサルティングファームや、アウトソーシング・BPOベンダーの力を借りることで、第三者の視点を取り入れ、効率的かつ効果的にプロジェクトを進めることが可能です。特に、自社にない専門性やリソースを補う上で、アウトソーシングは有効な選択肢となります。

■BPR実現のためのアウトソーシングサービスの選定基準と注意点

BPRを実現するためにアウトソーシングおよびBPOサービスを利用する場合には、次の選定基準を押さえると良いでしょう。

●実績と信頼性
最も重要なのが、実績と信頼性です。BPRは業務改革を目的とするため、業務改革の実績と業務における専門知識が求められます。評判など信頼性も確認しましょう。

●セキュリティ
少なからず機密情報を預けるアウトソーシング先には、徹底したセキュリティ対策と姿勢が求められます。具体的セキュリティ対策を、必ず確認し、業務遂行場所の見学を行うなどして慎重に選びましょう。

●コミュニケーションの円滑さ
BPRを進めるにはアウトソーシング先企業との密なコミュニケーションが欠かせません。円滑にコミュニケーションが取れる企業を選びましょう。

●伴走してくれるか
目的達成のために、伴走してくれるかどうか、その姿勢は見極めポイントです。フィードバックの頻度などに現れるため、確認しましょう。

アウトソーシングを利用する際には、セキュリティやコスト増し、品質低下などのリスクがあります。それを避けるために、戦略に基づく目的を見据えた上で、複数社比較の上、選定することをおすすめします。

■まとめ

BPRは、現代の企業に求められる重要な取り組みです。戦略的かつ組織的に進めることが重要です。

アウトソーシングを利用してBPRを進める際には、ぜひTOPPAN BPOをご検討ください。業務効率化を実現するためのアウトソーシングサービスを複数展開しており、BPRについてもご相談いただけます。

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2025.10.06

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