コラム

【事例紹介】ルーバーファサードのメリットと設計デザインのポイント

近年、ビルなどの商業施設や病院、学校、役所など様々な建物の外観デザインに「ルーバー」を取り入れる事例が増えています。そこで今回は、ルーバーをファサードへ取り入れるメリットや成功事例、トレンド、設計デザインのポイントについて詳しく解説します。最後にTOPPANが提案する環境配慮型ルーバー材も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。


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<目次>

■ ルーバーファサードとは|メリット
■ 【成功事例】ルーバーファサードの建物
■ ルーバーファサードの最新トレンド
■ ルーバーファサードを採用する際のポイント・注意点
■ TOPPANの環境配慮型「木目調アルミルーバー材」
■ まとめ


■ ルーバーファサードとは|メリット

ルーバーとは、採光量や通風量を調節したりデザインのアクセントとして取り付けたりする目的で用いられる建築部材です。細長い板材や角材の形状で、それらを一定間隔に並べて取り付けます。

本来は窓の前にガラリとして設置することが多いルーバーでしたが、近年はファサードのデザインアイテムとして採用する事例は少なくありません。
※ガラリ:ブラインド状の羽板が連なる換気設備

建物のファサードとは、建物を正面から見た際の外観デザインを指し、その建物を象徴する“顔”と言っても過言ではありません。ファサードデザインは建物のコンセプトを表現し、建物利用者へその価値を伝える大切な要素です。ルーバーファサードは、日本国内のみならず世界中でトレンドとなっています。

では、ルーバーファサードの具体的なメリットを紹介します。

ファサードデザインに個性をプラス

ビルやテナントなど、ファサードに個性を出しにくい建物でも、ルーバーを部分的もしくは全面的に取り入れると、高級感と現代的な印象をプラスできます。ルーバーによる凹凸が生み出す光の変化によって、平滑な建物の外観にも奥行き感が加わる点も人気のポイントです。

室内環境の快適性向上

ルーバーをガラス面の前に設置することで、ガラリによる日射遮蔽効果を得られて、窓辺の暑さを軽減でき木陰にいるような心地よさを感じられます。

ルーバーは、日射熱を遮りつつ同時に通風を確保できる点もポイントです。自然風を室内に取り入れると、建物利用者のリフレッシュ効果や集中力・作業効率アップも期待できます。

省エネ化・SDGsへの貢献

窓から差し込む日射熱を軽減できると、空調負荷を抑制できて省エネにつながります。

ルーバーは日差しを完全にシャットアウトするのではなく、太陽高度や時間帯によっては適度に自然光を取り入れられる点もポイントです。ルーバーによって暑さ対策と自然光(昼光)利用の両方を取り入れるビルも増えています。

環境省の調べでは、企業・事務所が消費するエネルギー量は国内総消費エネルギー量の約60%を占めることから、企業の店舗やオフィスの省エネ化は、SDGsへの貢献につながるとされています。

経済的効果

ビルや工場などの建築物は電力を大量に必要とするため、法人向けの特別高圧電力や高圧電力を利用します。特別高圧電力や高圧電力は住宅向け電力と比べても値上がり率が高いため、空調・照明にかかるエネルギー量を抑制できると、建物の維持コスト削減につながります。

また、省エネをメインコンセプトとした建物運営は、GX投資やESG投資のチャンスにつながる点も経営面の大きなメリットです。日本では環境配慮に取り組む企業への積極的な投資は始まったばかりですが、世界では気候変動リスクへの対策を講じる企業への投資額は増え続けています。

※GX投資:GXはグリーントランスフォーメーションの略称で、化石燃料依存からの脱却と自然エネルギー活用への移行に向けた取り組み全般を指す。GXに関する活動に対して政府や資本家が企業などへ投資することをGX投資と呼ぶ。

※ESG投資: 企業などの利益だけを評価せず、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス=自主管理や自主統制)への取り組みも踏まえて評価する投資手法

企業のブランドイメージ向上

企業において自社ビルやオフィス、店舗はブランドイメージをアピールするための重要なツールです。特に外観デザインの印象を決めるファサードデザインは、会社の理念を表現する場所として適しています。ルーバーによる環境配慮性は、企業のブランドイメージ向上に貢献します。

■【成功事例】ルーバーファサードの建物

TOPPANは、環境に優しいオレフィンシート仕上げのアルミルーバーを製造しており、数々の建物ファサードへご採用いただいています。その中からいくつかの事例を抜粋し、デザインのポイントを紹介します。

【駅】シンプルな形状にルーバーでアクセントをプラス

こちらの事例は、シンプルな形状の駅舎にルーバーを取り付けた事例です。角地に建設されており2方向から建物がよく見えるため、2面にルーバーを配置しています。

駅舎は建設コストを抑えるために低価格のパネル材を外装材へ採用する事例もありますが、それではデザイン面で利用者の記憶に残りません。ルーバーによってシャープでオリジナリティのある外観にすることで、街のシンボルとなる建物になり得ます。

【ビル】ルーバーでコストを抑えて曲面を表現

こちらの事例は、ビルの正面をルーバーによって曲面に仕上げた事例です。曲面のカーテンウォールはコストが高く採用できる事例が限られますが、ルーバーを固定する胴縁(ストリンガー)を工夫すれば、比較的コストを抑えて自由な曲面を表現できます。

こちらのビルは正面にテラスがあるため、その前にルーバーを設置することで外部からの視線を適度に遮断している点もポイントです。

【工場】木目調ルーバーで無機質な印象を払拭

こちらは工場のファサードへルーバーを採用した事例です。工場の設計において、これまで外観デザインが重視されるケースはあまり多くありませんでしたが、近年はSDGsの観点から周辺環境へ溶け込むデザインが求められます。

そこでこちらの事例では、メンテナンスフリーな木目調ルーバーを全面に配置し、工場特有の無機質な印象を払拭したナチュラルで温かみを感じるファサードに仕上げました。

【ホテル】ルーバーで装飾的なファサードに

ルーバーはシンプルモダンなファサードデザインに多く採用されますが、こちらの事例は色の異なるルーバー材を計画的に配置して、優雅でダイナミックなデザインを表現しています。

サイズの異なるルーバー材をランダムに配置することで、平面的な仕上がりにならず重厚感のある豪華な雰囲気に仕上がりました。

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■ ルーバーファサードの最新トレンド

ルーバーファサードを採用する際には、最新トレンドを押さえておきましょう。

ルーバーをデザインアクセントに

定番になりつつあるのが、デザインアクセントとして部分的にルーバーを採用する手法です。ガラスやコンクリート打ち放し、ホワイトのシンプルな外壁などクールで無機質な素材と、木目調のルーバー材を組み合わせるデザインが人気で、国内外問わず多くの事例に採用されています。

直線的なルーバーと有機的な曲面をもつ建物を組み合わせたり、シンプルな建物形状とルーバーの生み出す自由曲面を組み合わせたりするデザインもおすすめです。

カラー・サイズ・間隔をランダムに

ルーバーと聞くと、同色・同サイズの材料を規則正しく並べて施工するイメージが強いですよね。

しかし、最近弊社に多くご相談いただくのが、ランダムなルーバープランです。カラーやサイズ(太さ・幅)の異なるルーバー材を並べる事例が増えています。材料の質感や木目の風合いの揃った材料を組み合わせることで、雑然とせずまとまりのあるデザインに仕上がります。

【ポイント】
TOPPANのアルミルーバーは、断面形状・カラーのレパートリーが豊富で、さらに内装・準外装・外装F仕様に加えて、最高グレードの耐候性をもつ外装R仕様もお選びいただけます。

■ ルーバーファサードを採用する際のポイント・注意点

ファサードへルーバーを採用する際には、いくつかのポイントや注意点を押さえる必要があります。

ルーバーの設置範囲と室内空間の関係性

ファサードの広範囲にルーバーを採用すると、窓からの採光や日射熱を大幅に遮断できます。省エネの観点ではメリットですが、「日中でも室内が暗い」「冬に寒い」などのデメリットを生み出す可能性は否めません。

そのため、ファサードデザインのバランスだけではなく、室内空間との関係性を踏まえてルーバーの設置場所や施工面積を検討しましょう。

関連法規の確認

ファサードへルーバーを採用する際は、主に2つの関連法規に適合しているか確認する必要があります。

【採光面積】
建築基準法及び建築施行令では居室に必要な最低有効採光面積を定めており、原則として床面積に対して1/5〜1/10以上の採光可能な窓を設置しなくてはいけません。有効採光面積を算出する際には、窓の面積に加えて、ルーバーごとに定められている開口率が関係します。

開口率とは、ルーバー材の幅と間隔(スパン)から算出でき、仮に開口率50%のルーバー材を窓の前に設置すると、有効採光面積は窓面積の半分程度になります。採光窓の設置が義務付けられている学校や保育所、病院、ホテルのファサードへルーバーを採用する場合は、必ず材料の開口率を確認しましょう。

【防火規定】
建設場所が法22条区域や防火地域・準防火地域に該当する場合や、建物が特殊建築物に該当する場合は、「延焼の恐れのある部分(対象範囲内の外壁や庇の仕上げ材、構造体など)」に不燃材・準不燃材・難燃材の認定を受けた材料使わなくてはいけません。そのため、ルーバーをファサードへ用いる場合は、不燃性の高い材料を選ぶ必要があります。
※特殊建築物:不特定多数の人が利用する公共性が高い建築物(建築基準法第2条1項の2)

施工性

建物の規模が大きくなればなるほど、材料の施工性が工期やコストに影響します。
ルーバー材を選ぶ際は、以下のポイントについても確認しましょう。

・材料の重量
・材料の品質安定性
・変形する可能性の有無

材料が重いと運搬や施工のスピードは遅くなりますし、品質にムラがあり保管環境によって反りやねじれなどの変形が起きると、効率よく施工することが難しくなります。

ルーバー材には木製とアルミ製がありますが、木製ルーバーは温度や湿度の変化によって変形しやすく、長尺の材料ほど取り扱いが難しい可能性が高まるので注意しましょう。

対してアルミルーバーは、工場生産品なので品質が安定しており、長尺材でも変形リスクはあまり心配ありません。

メンテナンス・維持管理

公共的な建築物や規模の大きい建築物ほど、メンテナンスや維持管理のしやすさが重要になります。ここで、木製・アルミ製ルーバーそれぞれの耐用年数とメンテナンス方法を比較してみましょう。

【木製ルーバー】
無垢材や突板化粧板仕上げのルーバー材は、湿度の高い場所では木材に雨染みやカビが発生する可能性があるため注意しましょう。屋外へ施工する場合は、防虫・防腐剤を注入してある材料でも5年前後に一度は塗装メンテナンスが必要になります。塗装を怠ると10年も経たずに劣化して朽ちてしまう可能性もあるため注意しましょう。

建築基準法の防火規定をクリアできる不燃木材や認定取得済みの突板製品もありますが、どちらも温度や湿度変化による変形リスクはあり、表面保護を目的とした塗装メンテナンスは欠かせません。そのため、ファサードへ木製ルーバーを採用する場合は、メンテナンス計画も含めた慎重な検討が必要です。

【アルミ製ルーバー】
アルミ製ルーバーは20〜30年程度メンテナンスを必要としないものが大半です。また、表面の保護層だけではなくアルミ基材にまで達するほどの深い傷がつかない限り、30年以上経っても目立った劣化は現れません。

建築基準法の防火規定をクリアできる不燃認定を受けている製品の選択肢が多い点もポイントです。

【ポイント】
TOPPANのアルミルーバーは、数十種類もの木目カラーラインナップからデザインに合う製品をお選びいただけます。内装・準外装・外装F・外装Rと全ての仕様で不燃認定番号を取得済みですので、防火規定を受ける建物へもぜひご採用ください。

環境配慮性

近年、森林の活性化や炭素固定量増加を目的に木材利用が推進されていますが、木製ルーバーはこまめな塗装メンテナンスが必要で耐用年数も短いことから、過酷な環境にさらされるファサードへ取り入れることが必ずしも“環境に優しい”とは言えません。

対してアルミルーバーはメンテナンスや交換のサイクルが長いため、建物のLCCO2や工事における消費エネルギー量を削減できる可能性があります。
※LCCO2:ライフサイクルCO2の略称で、 建築物の建設から解体・廃棄に至るまでで排出される総CO2量を指す。

【ポイント】
TOPPANのアルミルーバーの表面材には、塩ビシートと比較してCO2排出量を抑制でき、燃焼時も有害物質を出さないエコ素材「オレフィンシート」を使用しています。

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■ TOPPANの環境配慮型「木目調アルミルーバー材」

TOPPANは、環境配慮とデザイン性を兼ね備えた内外装用不燃アルミ意匠材・フォルティナを製造しており、木目調アルミルーバーだけではなく多彩なファサードデザインを実現できるアイテムを取り揃えております。

【FORTINA(フォルティナ)の製品ラインナップ】
・ルーバー
・フラットパネル
・スパンドレル
・リブパネル(フォルティナレッジ)

【FORTINA(フォルティナ)ルーバーの特長】
・最新の印刷技術によって再現したリアルな木目と質感
・工場製造による高い品質安定性
・フラットパネルやスパンドレルとのトータルコーディネイトが可能
・ストリンガータイプとストリンガー不要の直付けタイプの選択が可能
・角材・円柱・ガラリなど多彩な断面形状(ストリンガータイプ43種・直付けタイプ26種)
・専用オプション部材によってシンプルで多彩な納まりに対応可能
・トレンドを押さえた厳選された20種類以上の木目ラインナップ(内装用は80種類以上)
・低汚染なオレフィンシートによる環境配慮性(準外装・内装用のみ)
・耐候性をアップさせ屋外環境でもシート表面のクラック・各層の密着低下・絵柄の退色や変色を長期間抑えられる外装R仕様

【ポイント】
TOPPANでは、意匠性だけではなく施工性・耐候性の高い環境配慮型建材を多数開発・製造しております。設計におけるデザイン・納まり・環境配慮に関するご相談も承っておりますので、お気軽にご相談ください。

■ まとめ

ルーバーを取り入れたファサードデザインは、人々の印象に残る外観を実現できるだけではなく、日射遮蔽や採光量調節など、建物利用者にとって快適な室内環境を整えるメリットもあります。近年は、省エネの観点から建物の外装材として採用する事例は少なくありません。

TOPPANでは、施工性・デザイン性の高い環境配慮型内外装用建材を開発・製造しております。「人に長く愛される建物」や「環境に優しい建築」、「街のシンボルになる建築」の材料選定でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

2025.06.24

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