SDGsコンパスとは?
5つのステップの詳細の解説から活用方法をご紹介
SDGsを推進することは企業にとって必要不可欠です。そして企業は綿密な計画を立てて進めていく必要があります。しかし従来の戦略立案とは異なり、環境やSDGsの内容に即した幅広い知見と推進が求められるため、ガイドラインが必要になるでしょう。
そこで世界的に活用されているのが「SDGsコンパス」というツールです。
今回は、SDGsコンパスの概要からSDGsの実践ステップ、SDGsコンパスに基づく取り組み例をご紹介します。
SDGsコンパスとは?
まずはSDGsコンパスの概要を確認しておきましょう。
SDGsコンパスとは?
SDGsコンパスとは、「SDG Compass -SDGsの企業行動指針-」を正式名称とした、GRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)、UNGC(国連グローバル・コンパクト)、WBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)の3組織が開発したSDGsの、企業向けの行動指針です。
SDGsは2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標であり、「17のゴール」と「169のターゲット」から構成されています。地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っており、世界中の個人、企業、自治体、国などすべてが取り組むべき目標です。中でも企業がSDGsを実践するには、経営戦略に取り入れ、融合させることが成果につながるといわれています。
SDGsコンパスは、その冒頭で次のようにその意義を伝えています。
本SDG Compassは、各企業の事業にSDGsがもたらす影響を解説するとともに、持続可能性を企業の戦略の中心に据えるためのツールと知識を提供するものである。
SDGsは貧困や健康、教育、気候変動、環境劣化など、企業にとって関連のある広範な課題を扱っています。そのため、SDGsを企業戦略に取り入れることで、地球規模の優先課題につなげることに寄与します。。
SDGsコンパスの5つのステップ
SDGsコンパスは、企業が取り組みを進めていく際の手順として、5つのステップを示しています。それぞれの詳細を確認しておきましょう。
ステップ1 SDGsを理解する
企業がSDGsに関して十分に理解することを支援するステップです。
SDGsとは何か、どのように策定されたのか、SDGsをいかに有効に活用できるか、従来の企業責任の上に成り立っていることを解説しています。
ステップ2 優先課題を決定する
優先的に取り組む課題を決定するステップです。バリューチェーン(※)全体を通して、SDGsに関する「現在・未来」「正・負」の影響を評価し、その上で課題を決定します。
※バリューチェーン:事業活動がどのように企業全体の価値を高めるかとの視点をもとに、各事業活動がどのように企業価値向上に貢献するかを分析するフレームワークのこと。
1.バリューチェーンをマッピングし、影響領域を特定する
バリューチェーンの各工程において課題を特定し、正の影響を強化し、負の影響を最小化するための目標設定とマッピングを行います。
2.指標を選択し、データを収集する
マッピングによってどこにSDGs実践の取り組みを集中させるべきかを分析した後は、持続可能な開発のための指標を1つ以上設定し、達成度を把握できるようにします。
選択した各事業指標について、データの洗い出しと収集を行います。
3.優先課題を決定する
あらゆる判断基準に基づき、優先課題を決定します。例えば、現在および将来的な負の影響の規模や強度、可能性、ステークホルダーにとっての重要度、資源効率化による競争力強化の機会などを考慮します。
ステップ3 目標を設定する
目標を設定することは、事業の成功にとって重要です。目標は優先的事項の共有を促進し、パフォーマンスを改善します。またSDGsと整合させることにより、企業は持続可能な開発に対する責任や参加意思を示すことができます。
1.目標範囲を設定し、KPI(主要業績評価指標)を選択する
目標の対象範囲を、ステップ2で決定した優先課題から導き出します。そして取り組みの進捗を促進・モニタリングして、活動や結果に直接対応する「KPI(主要業績評価指標)」を選択します。
2.ベースラインを設定し、目標タイプを選択する
ベースラインとは、目標達成のベースとなる基準のことです。例えば「女性役員の数を2013年末のベースラインと比較して、2020 年末までに40%増加させる」といった具合です。
また目標タイプとは、「絶対目標」と「相対目標」のことです。絶対目標は指標の増減を目標値として設定します。例えば、「労働災害の発生率を2019年から2025年までに30%削減する」のように、企業の事業活動の成長や衰退に関係なく設定できる目標を指します。
一方、相対目標は企業活動の算出単位と比較して目標設定する場合です。例えば、「自社の売上高に対して、温室効果ガスの排出量を2015年から2025年までの間に30%削減する」といったように、売上高などの企業活動の状況に応じて相対的に設定される目標を指します。
3.意欲度を設定する
意欲度の高い目標設定を行うことを推奨しています。時間を長く取って中長期的な目標設定にすることで、意欲の高さやメッセージ性を対外的に示すことができます。一方で、複数のKPI設定や進捗を細かく示していくことが重要です。
4.SDGsへのコミットメントを公表する
対外的に目標の一部や全部を公表します。従業員や取引先のモチベーションの向上にもつながり、外部のステークホルダーとの建設的な対話の基盤にもなります。
ステップ4 経営へ統合する
中核的な事業と企業ガバナンスに持続可能性を統合し、企業の取り組みに持続可能な開発目標を組み込みます。
また、目的の追求や組織的な課題への取り組みを進める上では、バリューチェーンを通じた企業や政府などとのパートナーシップによって協働していく必要があります。
1.持続可能な目標を企業に定着させる
CEOや経営幹部といった経営トップが、目標に対して事業として取り組む根拠や企業価値向上に寄与することなどを伝え、組織内に確実に定着させていきます。
2.全ての部門に持続可能性を組み込む
持続可能性を事業戦略、企業風土、事業展開に組み込むためには、各部門の支持と部門自らの主体的な取り組みが重要になってきます。多くの企業では、部門横断的な持続可能性に関する協議会や委員会などを設立することで対応しています。
3.パートナーシップに取り組む
バリューチェーン内の企業や行政、民間企業、市民社会組織などとのパートナーシップを検討します。
ステップ5 報告とコミュニケーションを行う
SDGsコンパスに沿って進めるにあたり、共通の指標や共有した優先課題についてパフォーマンスの報告を行うことが重要です。SDGsに関して多くのステークホルダーとの意見交換を行い、報告に盛り込むことが推奨されています。
1.効果的な報告とコミュニケーションを行う
報告に関しては国際的な基準や枠組みを用いることが重要とされています。一例として、UNGCとGRIによる「SDGsを企業報告に統合するための実践ガイド(日本語翻訳版)」が挙げられます。
2.SDGs達成度についてコミュニケーションを行う
情報開示については、SDGs優先課題の決定プロセスや正と負の影響、目標と進捗状況、戦略と実践方法などの項目を取り扱うことが推奨されています。
まとめ
SDGsコンパスの概要をご紹介しました。企業がSDGsを経営に統合し、取り組んでいくことは社会的な責任を果たすことをベースに、企業成長にもつなげていくことができる有意義な取り組みです。
効果的な実践のための指針であるSDGsコンパスをもとに、進めていくことで、成果につなげていくことができるでしょう。
TOPPANでは、お客さまのSDGsの取り組みを多方面からご支援しています。そのうちの一つ「可能性アートプロジェクト」は、障がいのあるアーティストのサポートにつながるアートを活用する機会をご提供するものです。アートが採用されるとアーティストやその支援団体へアート使用料が支払われ、自立支援に役立てられます。すでに数々の企業に建設現場の仮囲いや広報誌、ノベルティなどへ採用いただいています。
詳細については、ぜひサービスページをご覧ください。
関連サービス
関連コラム
2024.05.15