企業のSDGsへの取り組み事例②
医療ビッグデータを活用した
TOPPANの取り組み
SDGsの目標達成期限の2030年に向けて、持続可能な暮らしに向けた課題意識が高まってきています。しかし、実際にSDGsの取り組みを始めたい、視点を取り入れたいと考えていても、具体的な取り組み方法がわからない、という企業も多いのではないでしょうか。
今回は、企業はSDGsにどのように向き合うべきかを、TOPPANの実践事例を交えてご紹介します。
SDGsと企業の社会的責任
SDGsとは
SDGsとは2015年9月に国連で採択された国際社会共通の目標であり、「Sustainable Development Goals」を略したもので、「持続可能な開発目標」と訳されます。17のゴール(目標)と169のターゲット、及び232の指標で構成されており、貧困や差別、環境破壊などの社会問題を解決し、持続可能な世界を実現することが掲げられています。
企業はなぜSDGsに取り組まなければならないのか
SDGsは、特定の国や政府、企業や団体が、自分たちの利益を得るために掲げる目標ではなく、すべての人々が、誰一人取り残さない経済・社会・環境の実現に向けて達成するべき目標であるという前提があります。企業もその一員として、自社の成長と社会課題の解決との両立を目指した活動を行っていく必要があります。また、SDGsは中長期t的かつ国際的な目標であるため、企業が主体的に参画することにより、解決に向けた動きの加速につながります。
企業にとってSDGsへの取り組みは、自社の持続的な成長を考えるにあたって重要なだけでなく、投資家の信頼を勝ち取る条件でもあります。近年は世界中の企業が「ESG投資※」を積極的に取り入れており、ESGへの配慮ができていない企業は、投資家から良い評価が得られにくく、取り組みが遅れることでリスクが増大する可能性があります。企業がSDGsに取り組むことで、結果として株主や社員、顧客、地域社会などステークホルダーの期待に応えることにつながると考えられています。
また、SDGsに取り組むことで社会課題の解決や地球環境の保全に貢献することもできます。これにより、社員が自社のビジョンやミッションに共感し、その実現に向けて自ら行動することができるようになるため、やりがいや目的意識を持つことにもつながります。これによって、従業員のモチベーションアップや、企業の魅力も増すことで優秀な人材の採用も期待できます。
※ESG投資:「Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)」の略称。企業が長期的に成長していくための取り組みであり、サステナブルな社会に向けて地球環境をより良くするための経営手法を指す。
TOPPANがSDGsに取り組む理由
TOPPANは時代とともに変化する市場・顧客のニーズを把握し、「印刷」を原点とする技術・ノウハウを通じて、お客さま企業の課題解決を支援する「社会的価値創造企業」として事業活動を行ってきました。そのため、社会的価値創造と親和性の高いSDGsにおいても、社会への責務として取り組んでいます。
2019年には「TOPPAN SDGs STATEMENT」を設定し、「『環境・まち・ひと』が相互につながり合う『ふれあい豊かでサステナブルなくらし』」というコンセプトを掲げ、事業活動を通したSDGs実現を目指しています。ここからは、実際の取り組みについて、事例をご紹介します。
誰もが健やかに生活できる、健康長寿社会の実現に向けたTOPPANの取り組み
TOPPANが考える未来の「健康」
TOPPANは「誰もが健やかに生活できる、健康長寿社会」の実現を目指し、未来に向けた成長領域の一つに「健康・ライフサイエンス」を定めています。2025年には国民の4人に1人が後期高齢者となる日本において、医療・福祉のあり方をはじめ、社会保障制度や財政の問題、労働力人口の減少・及び人口減少に伴う経済成長率の低迷など課題が山積しており、人々が健康であることは非常に重要です。
SDGsの17の目標のうち、3番目にあたる「すべての人に健康と福祉を」では、誰もが健康で長生きできる社会を目指すための目標が示されています。TOPPANはこれを達成するために、「革新的なデジタル技術による健康への貢献」を、事業を通じて取り組むべき「事業活動マテリアリティ(重要課題)」の一つに掲げ、取り組みを進めています。
なぜTOPPANが医療・ヘルスケア分野で事業に取り組むのか
TOPPANが医療・ヘルスケア分野で事業を展開していることに驚く方も多いかもしれません。そもそも、印刷をコアテクノロジーに据えるTOPPANが、なぜ健康の問題に取り組むのでしょうか?
それは、TOPPANには人々の健康を支えるための、健康状態や病歴といった情報の管理と、その情報を適切にやりとりするコミュニケーション分野のノウハウがあるからです。
TOPPANは創業以来、有価証券の発行や金融系カードの発行、個人情報管理などセキュリティ領域のビジネスに深く携わってきました。医療データなどの高度なセキュリティ管理が要求されるデータを扱うことができるのは、その歴史と経験があってこそ。自治体や企業など、顧客からの信頼の厚さも、医療・ヘルスケア分野の事業推進の大きな支えになっています。
「誰も取り残さない」全員の健康のために
TOPPANの「ヘルスデータ事業」
次世代医療基盤法に基づき医療ビッグデータの活用を促進
医療ビッグデータを医療分野の研究開発に役立てることを目的に施行された「次世代医療基盤法※」。TOPPANは、この法律により「認定医療情報等取扱受託事業者」に認められたICI株式会社と業務提携を行い、治療結果を含む電子カルテデータの利活用事業に取り組んでいます(下図参照)。
※次世代医療基盤法:正式名称は「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」。健診結果やカルテ等の個々人の医療情報を匿名加工し、医療分野の研究開発での活用を促進する法律。
医療ビッグデータをより活用しやすく 製薬会社・自治体向け分析ツールの開発
電子カルテは、医療機関の日常的な臨床記録です。TOPPANはそのデータを分析するツール「DATuM IDEA」(デイタムイデア)を開発しました。診断患者数、処方患者数、性別、年代などの情報を、直感的な操作で確認・分析できます。TOPPANは、ICIが匿名化した電子カルテデータを情報化し、「DATuM IDEA」を活用してオンライン・ヘルス・データベースとして製薬会社様に提供します(下図参照)。
また、自治体様に対しては、医療ビッグデータの情報化ツールとして、「自治体向け保健医療ビッグデータ分析ツール」を提供しています。住民のさまざまなデータを集約・可視化することで、課題の発見、施策に応じた対象者の抽出、保健事業の費用対効果の測定などをサポートします。
【事例】滋賀県大津市のヘルスケアデータ分析実証実験で採用
滋賀県大津市では、健診結果や医療レセプト情報などから、地区・行政区ごとに医療費平均や疾病状況を分析できるツールをTOPPANサポートのもと導入。モデル地域において、咀嚼機能低下の課題に対して個別指導を行い、対象者の口腔機能の改善・維持を目的とする口腔機能低下予防事業を実施しています。
まとめ
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsへの取り組みがますます重要視されてきています。今回ご紹介したTOPPANのヘルスケア・医療ビックデータを活用したデータヘルス事業は、単にデジタルテクノロジーを用いた新しい事業というわけではなく、TOPPANがこれまで築いてきた信頼と実績を掛け合わせて構築されています。
このように、自社の強みを見直し、これから実現したい社会に対してどのように貢献していくかを検討することが、企業としてSDGsに取り組む第一歩となります。
トッパンは事業活動を通じてSDGsの貢献に取り組んでいるだけでなく、お客さまのSDGsに関する取り組みをサポートする事業も展開しています。トッパンの情報誌「ideanote」vol.146では、トッパンがサポートの上実現したさまざまな業界におけるSDGs取り組み事例や関連サービスについて掲載しており、また、vol.147では医療・ヘルスケア分野に絞ってサービスや事例をご紹介しております。取り組みに悩まれている方はぜひご覧ください。
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2023.03.27