企業に求められる従業員の健康管理とは?
具体的な健康管理の方法10選と
運用のポイントを解説!
企業にとって、従業員の健康管理は欠かせないものとなっており、力を入れる企業が増えています。なぜ従業員の健康管理が注目されているのでしょうか。
今回は、健康管理の意味から必要性、企業が従業員の健康管理を行う方法や実際の運用のポイントまで解説します。
企業による従業員の健康管理とは?
企業による従業員の健康管理について解説します。
企業活動において、従業員の生産性が事業の成功に直結しています。その従業員の健康管理を行うことを推進する企業が増えています。
健康管理とは
ここでは健康管理の意味を確認しておきましょう。健康管理とは「心身共に調子が良く健やかで、社会的にも順調で満たされた状態」を保つために管理することを指します。
体調やメンタルの調子が低迷すれば適切な処置をとって再び健康な状態に戻します。
個人の健康管理は、社会人として働く上で重要な活動といえます。
健康管理は通常、「予防」「早期発見と早期対応」「治療と再発予防」の3つのステップにて進めていきます。
予防は、日頃、睡眠や食事、運動などの生活習慣を整えること、早期発見と早期対応は、定期的、継続的に健康診断などを受け、自身の不調を知って対応することを指します。治療と再発予防は、病気が判明すれば治療し、再発を予防することを指します。
企業における従業員の健康管理の必要性
企業において、従業員の健康管理の必要性とニーズが高まっている背景を確認しておきましょう。
安全配慮義務によるもの
平成20年3月1日に施行された労働契約について基本的な理念やルールを定めた法律である「労働契約法」の第五条において、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と記されており、労働契約における雇用者の安全配慮義務が明文化されています。
また労働安全衛生法をはじめとする労働安全衛生関係法令においても安全配慮義務に触れられており、従業員の健康管理は義務として企業に求められる事柄となっています。
国の推進事業によるもの
国としても企業に健康管理を促す事業を進めています。
経済産業省は、東京証券取引所の上場会社の中から健康管理に優れた企業を選定公表する「健康経営銘柄」などの創設を通じて、企業が率先して従業員の健康管理を進めるよう働きかけています。
また厚生労働省は企業と健康保険組合などの保険者が保険加入者である従業員とその家族の健康を効果的に行うための「コラボヘルス」を推進しています。
ウェルビーイング経営の世界的な高まり
ウェルビーイング経営とは、ウェルビーイング(Well-being)が意味する身体的、精神的、社会的に良好で、幸福な状態を従業員が実現できるような環境づくりのための施策を、経営戦略として実施する手法です。近年は世界的なトレンドになっていることから、今後も心身ともに従業員の健康管理を行う企業は増えていくと考えられます。競合他社に後れを取らないためにも積極的に取り組むべきことといえます。
人手不足などによる生産性向上の必要性
深刻な人手不足や働き方改革など、業務効率化や生産性の向上が求められる中、健康管理は従業員の健康を大きく左右することから、企業活動として重要な取り組みとなっています。
企業イメージ低下へのリスク対応
従業員の心身が不調であることは、生産性の低下だけでなく、企業イメージや業績・採用率の低下などにもつながってしまいます。そのようなリスクへの対応が求められます。
企業が従業員の健康管理を行う方法10選
企業が従業員の健康管理を行う具体的な方法を見ていきましょう。また健康管理を行う方法やシステムを活用する上での注意点や実施のポイントも合わせてご紹介します。
1.産業医による面談・指導
労働者が50人以上の事業場では産業医を選任し、従業員の健康管理などについて相談し、アドバイスをもらう仕組みづくりが必要です。
従業員に対して、健康診断やストレスチェック、面接指導や結果に基づく措置、作業環境の維持管理など幅広く従業員の健康管理について対応します。
【ポイント】
面談の実施だけで終わらせず、各種診断結果や面談結果をもとに労働環境の見直しや環境改善へと確実につなげることが求められます。
2.健康診断・ストレスチェックの実施
企業は労働安全衛生法に基づき、健康診断を従業員に受診させる必要があります。
またストレスチェックという自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査については、労働者が50人以上いる事業所では、2015年12月から年に1回、検査を指定の労働者に実施することが義務付けられています。
【ポイント】
ただ実施するだけでなく、より詳しい職場の状況を把握するために、ストレスチェックの項目にプラスアルファのチェック項目を用意するなどの工夫を行うことも一案です。例えば、睡眠や運動、食事に関する生活習慣にまつわる項目を追加することで、職場に潜むメンタル不調の兆候を察知できるだけでなく、よりリアルな生活の状況も含めた健康状態を計測することができるため、心身共に健康的に働ける就業環境の構築に役立てられます。またチェック後に、個人のケアを促進するための仕組みづくりも重要です。
TOPPANはハーバード大学医学部客員教授の根来秀行氏監修の下、メンタルヘルス不調のリスク判定と、個人向けケアの自動化を実現した企業向けストレスチェックシステムを2021年3月に開発しました。
独自の質問項目を追加しているほか、高ストレス対象者に対しては医師面接推奨や各種相談窓口の案内をするといった適切な個人向けケアが、システムを介して自動で提供される仕組みになっています。
3.安全衛生推進
労働安全衛生法で定められている安全衛生の推進も健康管理に密接に関わっています。従業員の労働時間や休日、休暇を適切に管理したり、安全で衛生的かつ健康的な労働環境を提供したり、安全衛生教育を行ったりすることなどが挙げられます。
【ポイント】
安全衛生教育は、従業員の興味関心を引き付け、自分ごと化できる方法を選ぶことが重要です。
例えばTOPPANの「安全道場」は、印刷工場にある機械で起きる従業員の挟まれ・巻き込まれ体感機などの体感教育ができる施設です。また実際に現場で起こりうる10種の労働災害をVR(バーチャルリアリティ)により体感できる「安全道場VR」も、自ら体感することで危険を知り、命や健康への意識を高めることにつながります。
4.長時間労働是正
2019年4月から施行された働き方改革関連法のうち、長時間労働の是正は、健康管理の取り組みとしても捉えられます。
労働時間に関する制度の見直しなどを通じて、従業員の長時間労働を防止する取り組みは心身の健康を守るために重要といえます。
【ポイント】
労働時間の実態を正確に把握することが重要です。システムの導入などによる客観的な勤怠管理体制を敷くことが第一歩といえます。
5.安否確認システムの採用
万が一の大規模災害時にも事業を継続させるための準備の一つとして安否確認システムの採用が挙げられます。
災害時でも通信できる環境が用意できるほか、従業員に対し、一斉送信を行う体制づくりは、従業員の安否を知るだけでなく、広い意味での健康管理にもつながります。
【ポイント】
災害時に安否確認を確実に行えるサービスを選定することが、従業員を守るために重要です。
6.快適に働ける職場環境の整備
日ごろの職場環境が快適でなければ、改善する必要があります。暑さや寒さなどの温度管理、仕事に集中できるスペースや休憩室の整備など働きやすい環境づくりは、従業員の健康を守るだけでなく、生産性向上にも直結します。
【ポイント】
トップダウンで進めるのではなく、働く従業員の立場に立った環境づくりがポイントです。
盲点になりがちなのが、窓のない職場です。窓がなく閉鎖的でプレッシャーを受けやすい空間で働く人のストレスケア対策も検討する企業が出てきています。
例えばTOPPANの窓のない閉鎖的な職場に高品質4K映像による窓を再現する超臨場感環境ソリューション「Natural Window®︎」や、天窓のない空間に太陽光を再現し、開放感や安心感を与えることでストレスケアや生産性の向上を促す「自然光再現照明 CoeLux」の活用は有効な手段です。
7.健康状態の確認
健康診断のほかに、従業員の健康状態を定期的に確認する仕組みづくりも重要です。例えばIoTなど最先端技術を使って確認できる仕組みを導入することも可能です。
【ポイント】
近年はセンサー技術が発達しており、遠隔から監視や見守りができるサービスも生まれています。
例えば、TOPPANの「ID Watchy®︎」はBLEセンサーによるIoT監視システムで、監視・見守り対象である従業員などにBeaconカードを搭載させることで、対象者の位置情報を可視化するサービスです。
オプションで対象者のバイタル状況も可視化することが可能です。従業員の脈拍や血圧測定、歩数検知、転倒検知、ストレス度測定などの結果をクラウド上に蓄積します。管理者は位置情報と共にバイタルデータを労務・健康管理、安全管理、トラブル発生時の証跡としてなど、幅広く活用できます。
8.福利厚生の充実
企業が自由に選定、導入できる法定外福利厚生として、健康関連の福利厚生を充実させることも健康管理に役立ちます。
例えば人間ドックやスポーツ施設利用費やサークル活動費の補助、アニバーサリー休暇やリフレッシュ休暇の特別休暇など、心身の健康を増進するものが考えられます。
【ポイント】
近年、福利厚生サービスにおいては、ヨガやピラティスなどの運動イベントを開催する運動不足解消サポートや、健康的な食生活につながる食事補助サービスなど、健康管理にまつわる福利厚生も充実しているため検討してみると良いでしょう。
9.メンタルヘルス研修の実施
メンタルヘルス研修は、従業員のメンタルの健康を促進するために行われる研修です。従業員が自らストレスや悩みをコントロールできるようにすることが可能です。
【ポイント】
近年は、ポジティブメンタルヘルスに注目が集まっています。従来のメンタルヘルスへのケアといえばネガティブな状態の予防と対処に主眼が置かれていましたが、ポジティブメンタルヘルスは、はじめからメンタルヘルスのポジティブな側面に注目し、伸ばしていく考え方であり、従業員の心身の健康度を高め、生産性の向上につなげることを目指すものです。
TOPPANのアドラー心理学を取り入れたポジティブメンタルヘルス研修は、従業員に新たな心のケアの知見を提供します。
10.メンタルヘルスケア面談・相談窓口の設置
メンタルヘルスに関する面談や相談窓口を用意することも有効です。従業員のメンタルヘルス不調の予防や、早期発見・早期対応につながります。
【ポイント】
相談窓口を設置しても利用されなければ意味がないことから、相談のしやすさが重要です。厚生労働省は、「メンタルヘルスに関する社内相談窓口設置のポイント」として事例を公開しています。
社内相談窓口の専用携帯電話を設け、すぐに電話をかけやすい体制づくりを行うなどの工夫を行っている事例があります。
まとめ
従業員の健康管理は、企業にとって重要な取り組みです。今回ご紹介した実施方法のほかにも、自社に合わせた取り組みを見つけることをおすすめします。
TOPPANのサービスの中には、健康管理に役立つサービスもちろん、それ以外にも、ヘルスケアビジネスに関連するサービスがまだまだあります。ぜひお役立てください。
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2023.12.21