ヘルスケアとは?
ヘルスケアの重要性や最新トレンドを解説
近年、健康を増進する意識が人々の間で高まっており、個人が自ら健康を管理する行動も活発になってきています。ヘルスケアサービスについても、従来の医療や健康分野だけでなく、日々の生活に関連した各種サービスにも広がってきています。
今回は、ますます注目を集めているヘルスケアの意味や重要性、最新トレンドについてご紹介します。
ヘルスケアとは?
ヘルスケアとは、健康の維持や増進のために行う行為や健康管理をすることをいいます。
従来のヘルスケアは医療や健康に限られた分野で使われてきた言葉でしたが、近年はさらに意味合いが広がってきています。
例えば、公益財団法人日本ヘルスケア協会においては、次のように定義されています。
『ヘルスケアとは、分析の知と臨床の知との対話の下で、産業横断的に提案される価値の創造を通じて、人々が「よく生きること(well-being)」をめざし、個人的にも社会的にも、より少ない負担で、病気や心身の不調からの「自由」を実現し、かつ自らの「生きる力」を引き上げていくための手伝いをする諸活動である。』
ただ不調や病気、けがなどを改善・治療するだけでなく、well-being(ウェルビーイング)、すなわち心身ともに満たされた幸福な状態を目指すことが、ヘルスケアの広義として認識されるようになっています。
ウェルネスとの違い
ヘルスケアと似た言葉に「ウェルネス」があります。ウェルネスとは、十分、満足、元気を意味する「well」と、病気を意味する「illness」が合わさった言葉ですが、健康を身体の側面だけでなく、精神的、社会的な側面からも広義にとらえ、心身ともに満たされ、充足した人生を目指す概念です。ヘルスケアは手段であり、ウェルネスは目指すべきところである点が違いといえるでしょう。
しかし先述の通り、近年はヘルスケアにもウェルネスやウェルビーイングの概念も含まれるようになってきています。
ヘルスケアに関わる業界
ヘルスケアに関わる業界といえば、治療や診察、医薬品などの「医療分野」や、栄養、運動、健康管理などの「健康分野」がイメージされますが、近年は「生活分野」の業界にも広がってきています。
生活分野の例を挙げれば、美容院やサロンなどの美容、ヒーリングミュージックや園芸などの趣味・カルチャー、旅を通じて健康増進を図るヘルスツーリズム、栄養管理されたメニューを提供するレストラン、健康に配慮した住宅・建築、健康度合いに応じて保険料の割引や還付金などの特典が受けられる健康増進型保険、ジムやリフレッシュスペースを備えるオフィスなど多岐にわたります。
ヘルスケアの重要性
ヘルスケアは昨今、重要度を増していますが、どのような背景があるのでしょうか。確認しておきましょう。
健康寿命の延伸による医療費削減の必要性
国内において急速に進む高齢化により、医療費の拡大が財政を圧迫する要因となっています。近年の国民医療費は増加の一途をたどっており、2020年度は42兆9,665億円となり、2000年度の30兆1,418億円から約42%増となっています(※1)。さらに、“健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間”を表す「健康寿命」については、日本では平均寿命との差が大きいことから、健康寿命を延伸させ、いかに平均寿命との差を小さくするかが重要になっています。ちなみに2019年の日本国内の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳でした(※2)。
※1 出典:厚生労働量「令和2(2020)年度 国民医療費の概況 結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/20/dl/kekka.pdf
※2 出典:厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000872952.pdf
そのためには、日ごろからの病気の予防活動や早期診断・早期治療、市販薬などを用いて医療機関にかからず自ら健康管理するセルフメディケーション(※3)などのヘルスケアが重要になってきています。
※3 セルフメディケーション:自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること。世界保健機関(WHO)により定義付けされている。
企業の健康経営の必要性
国による医療費削減の必要性を背景として、企業においても従業員に対する健康を増進することが求められています。さらに、労働力不足や働き方改革の推進などの課題を受け、人員確保や生産性向上も求められています。従業員の健康状態の悪化は生産性にも悪影響を及ぼすことから、経営的視点で従業員の健康保持・増進に取り組む「健康経営」が重要視されています。
さらに近年は、人材を「資源」ではなく「資本」ととらえて、人材に投資することで人材の価値を上げていく「人的資本経営」も注目されています。人的資本経営は従業員のウェルビーイングを高めることが重要視されていることからも、従業員のヘルスケアの観点から取り組むことは、もはや必要不可欠となっています。
高齢化に伴う地域の多様な健康ニーズの充足
地域では人口減少と医療・介護費増大が進んでおり、高齢化に伴う地域の多様な健康ニーズを満たしていく必要があります。例えば、デイケアにおけるリハビリや体操などの身体機能の維持や、訪問介護などの居宅サービスの利用による食事・入浴・排泄などの生活機能維持・向上、介護施設の利用を通じた総合的な健康・生活介助などの複数の健康ニーズに対応していくことが求められます。さらに介護予防や健康支援などの通いの場や、地域包括支援センターや保健所などが行っている保健指導といった運動、栄養、保健に関わる健康ニーズもあります。これらを満たすためにヘルスケアは重要なテーマとなっています。
ヘルスケアのトレンド
近年、ヘルスケアの分野では、データ活用が進んでいます。そこでデータ活用の関連したトピックスを4つピックアップしてご紹介します。
医療DX
医療の分野でもDX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)が進んでおり、デジタル技術によって、ビジネスや社会、生活の形・スタイルを変革することを目指しています。
具体的には、疾病の発症予防から診察・治療・薬剤処方、診断書などの作成、診療報酬の請求までの一連の医療や、介護を含めたケア、医療・介護の研究開発などの分野において発生するあらゆる情報やデータについて、基盤構築から関係機関のシステム連携・標準化などを図ることで、人々が病気への予防や、より良い医療を受けられるように、社会や生活の形を変革していくことを指します。
医療DXが進むことで、人々はより質の高い医療・介護サービスを受けられるようになり、ヘルスケア促進につながります。
PHRの利活用
PHR(Personal Health Record:個人健康情報記録)とは、医療機関や薬局ごとに保存・保管している個人の保健医療データのことです。例えば医療機関にかかった受診履歴や予防接種歴、妊婦検診、特定検診の結果などのデータが該当します。
国は、PHRを国民自らが管理し、同意の下、必要に応じて表示・活用するサービスモデルや情報連携技術モデルを構築する取り組みを推進しています。PHRの利活用が進んでいけば、国民は質の高い医療を受けられるようになり、より予防に関するヘルスケア活動も促進されると考えられています。
予防に関するヘルスケア活動の例としては、電子母子手帳や活動量計などの民間サービスのデータと、国が所有する健診データなどを連携させた総合健康支援サービスの提供が挙げられます。こうしたデータを個人が閲覧・活用できる環境を整えることは、健康寿命の延伸に寄与するでしょう。
第3期データヘルス計画
データヘルス計画とは、厚生労働省主導で2015年から進められている健康保険組合加入者の健康保持増進を目的とした健康事業のことです。健康寿命の延伸と医療費適正化を図るために、健康保険組合と各自治体はレセプト(診療報酬明細書)や健診結果などのデータ分析を行い、分析結果に基づく加入者の健康保持増進のための事業計画を作成します。
データヘルス計画の作成により、現在、リスクのある健康状態・生活習慣の組合加入者に対し、健診の受診勧告を行うことで、予防や早期発見につなげ、医療費削減などを目指します。
データヘルス計画は、期間が定められており、2015年度~2017年度の3年間実施された第1期を経て、第2期では2018年度から2023年度までの6年間実施されてきました。第2期からは、課題に応じた目標設定と評価結果の数値による指標化や「データヘルス・ポータルサイト」の開発・活用推進など、よりデータ活用が促進されました。
2024年度から2029年度までに行われる予定の第3期では、第2期と方針は大きく変更はありませんが、引き続き、データ活用・分析を通じて国民のヘルスケア増進を進めていくことが求められています。
ヘルスケアIT投資
近年、健康・医療分野におけるデータ利活用の重要性が高まっていることや、諸外国と比べて、民間のヘルスケアITビジネスへの積極的な投資が少ないことを背景に、民間への投資を活性化させる取り組みが経済産業省主導で推進されています。AI・IoTなどの技術革新を最大限に取り入れ、医療の質を高めるイノベーションを実現するビジネスへの投資が活発になれば、ヘルスケアサービス領域はより活性化するでしょう。
まとめ
ヘルスケアはこれからもさらに、幅広い業界で推進されていくものと考えられます。TOPPANでは、ヘルスケア関連のサービスを複数展開しております。
データヘルス計画策定を計画素案の策定からデータ分析・集計、計画書・報告書の作成、多様な勧奨施策の企画・実施まで支援するサービスや、デジタルクローン技術を活用してインフォームドコンセント等を支援するサービス「DICTOR™」、医薬分野の翻訳業務効率化を実現する高精度なAI機械翻訳サービス「PharmaTra™」、医師を含む医療従事者や患者とのメディカルコミュニケーションの戦略立案、制作・運用を支援する「メディカルコミュニケーションサービス」などを取り揃えております。
詳細はサービス詳細ページやプレスリリースをご覧ください。
関連サービス
2023.10.26