SDGsへの高い貢献性で注目の
ヘルスケアビジネスとは?
メリット・デメリットから
具体例まで解説!
近年、ヘルスケアに関連するビジネスが注目を集めています。医療・介護分野だけでなく、健康や生活全般に関わる幅広い分野でビジネスが活発化しており、これから参入を考えている方も多いのではないでしょうか。
今回は、ヘルスケアビジネスの概要から参入することのメリット・デメリット、分野別の具体例まで解説します。
ヘルスケアビジネスとは?
ヘルスケアビジネスとは、ヘルスケアに関連するビジネス全般を指します。
ヘルスケアとは直訳すると「健康管理」を意味する言葉です。近年は「健康維持」や「体調管理」など、医療分野以外の意味合いも含んだ言葉として使われています。
そのため、ヘルスケアビジネスは、医療、介護、健康、生活など多岐にわたる分野を含むビジネス領域となっています。
治療などの医療行為のみならず、人々の健康をさらに幅広くとらえた上で、生活の質を向上させるための支援をするビジネスといえます。
医療機関や医療従事者だけでなく、一般企業において、ヘルスケア関連のデータを取得・活用したサービスが展開されており、今後も参入企業が増えていくと見込まれています。競争の激化により、市場は急速に変化していくでしょう。
ヘルスケアビジネスのメリットとデメリット
ヘルスケアビジネスへこれから参入する際には、ぜひメリットとデメリットを確認しておきましょう。
メリット
●国のヘルスケア産業の創出・振興施策により参入しやすい
少子高齢化を背景とした医療費高騰などを受け、高齢で自立して健康的に過ごせる期間「健康寿命」の延伸は重要課題の一つです。その課題解決の一環として国はヘルスケア産業の創出・振興を推進していることから、企業は支援を受けられることもあるため、参入しやすいといえます。
●国際的なトレンドであるウェルビーイング経営の促進につながる
近年、世界的にウェルビーイング経営を取り入れる企業が増えています。ウェルビーイング経営とは、ウェルビーイング(Well-being)が意味する身体的、精神的、社会的に良好で、幸福な状態を、従業員が実現できるように組織の環境を整えることを経営戦略として実施する手法を指します。今後はさらに企業の従業員の健康増進ニーズが高まっていくと予想されることから、ヘルスケアビジネスにおける発展も見込まれます。
●SDGsへの貢献
ヘルスケアビジネスの活性化はSDGsの目標達成にも寄与します。SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、人類が持続的に生活していくために達成すべき17のゴールを定めた国際目標です。特にヘルスケアビジネスは、SDGsの掲げるゴールの一つ「3.すべての人に健康と福祉を」に貢献します。これは地球上のすべての人が心身ともに健康で、社会的にも満たされた、幸福な生活を送ることを目指すゴールです。
●投資家からの評価が向上する
近年、投資家の間では投資先を選定する際にESG、つまり「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」を考慮した経営を推進する企業を重視することがトレンドになっています。ヘルスケアビジネス事業を行う企業は社会的な課題改善や環境配慮への影響で、社会貢献性が高くなることから、ESGを重んじる投資家から高い評価が得られる可能性があります。
デメリット
●研究開発の必要性がある
ヘルスケアビジネスは、人の命や健康にかかわることを扱うため、エビデンスがなければサービス提供はむずかしいものとなります。そのため研究開発からスタートすることが多く、プロジェクトの規模や期間の観点から大がかりになる傾向にあります。そのことで参入ハードルが上がりやすいでしょう。
●初期投資・ランニングコストが高額になりがち
商品やサービスとして提供するためには、研究から商品・サービスの開発まで多くの初期投資を要することになります。また、専門家の関与や監修が必要になることも多く、ランニングコストが高額になりがちです。
●エビデンスの収集や分析の必要性が高い
医療や健康の領域の商品やサービスは、利用者が費用対効果を実感できなければ購入に至りません。そのため、商品・サービスの提供側にとってはエビデンスの収集や分析がより重要になってきます。エビデンスの収集にコストと時間をかける必要があることから、参入のハードルが高くなることもあるでしょう。
●健康無関心層を巻き込む難しさ
そもそも健康に無関心な層にとって、ヘルスケアビジネスの商品・サービスは生活の範囲外にあるものです。関心のある層に対しても、個人の行動変容を促すことは難しいことから、無関心層に対してはよりハードルが上がります。いかにして興味関心を引き寄せ、巻き込んでいくかを考える必要があります。
ヘルスケアビジネスの具体例
ヘルスケアビジネスとは具体的にどのようなものなのか、いくつか例を通して確認していきましょう。医療(治療・予防)、介護、健康増進の3つの分野別にご紹介します。
医療(治療・予防)
●遠隔医療
遠隔医療とは、遠く離れた拠点同士をオンラインでつないで医療行為を施すことを指します。時間と空間の制約を超えた医療の提供が実現することから、へき地に居住する層や忙しい層など幅広い人々へ医療を受ける機会を提供できます。
●健康相談サービス
治療だけでなく、医師や看護師、薬剤師などの医療従事者に対して、体調が優れないとわかった時点で気軽にスマートフォンを通じて相談できるサービスです。疾病予防や早期発見につながります。
●遺伝子検査
遺伝子検査とは、個人の細胞を採取してDNAの情報を読み取ることで、病気のかかりやすさや体質などの遺伝的傾向を知る検査です。自身の傾向を知ることで、健康への関心を高めると共に、セルフケアに役立ちます。
●医療情報コミュニケーションツール
医療現場では、医療技術の高度化や医療制度の複雑化、安全性などの観点から多くの説明業務があり、医療提供業務を圧迫している現状があります。その患者への説明業務などの医療情報にまつわるコミュニケーションをサポートするITツールも出てきています。
例えば、TOPPANの「DICTOR™️」は、北海道大学病院 医療・ヘルスサイエンス研究開発機構と共同開発した、医師などのデジタルクローンを簡単に生成し、患者やその家族に対して医療行為をはじめとした説明を行う動画を自動生成し、再生するサービスです。医療コミュニケーションの一助として期待がかかっています。
介護
●介護ロボット
介護の分野では、介護施設や在宅介護などの場において介護ロボットが導入されています。特に、移乗介助を担う装着型の介護ロボットでは、介助者が装着することで高齢者の歩行を助けたり、身体を持ち上げたりすることで、介護現場をサポートします。
●見守りシステム
介護施設において欠かせない見守り業務をサポートする、センサーや外部通信機能を用いた見守りシステムの導入も進んでいます。
例えば、介護を必要とする人が使用する部屋やベッドにセンサーを設置することで、対象者の変化を常時チェックできる仕組みになっています。異常があれば介護施設のスタッフに通知がいくため、見守り業務を効率化できます。
TOPPANの介護見守りシステム「Sensing Wave」は、介護施設のベッドマットレス下にセンサーを設置し、バイタル情報や睡眠の質を取得することで、介護職員の負担を軽減することができます。
健康増進
●従業員の健康増進支援
経営戦略として従業員の健康管理を推進する企業が、従業員に対してさまざまなヘルスケアの施策を行う際に役立つサービスです。
例えば、TOPPANの「ID-Watchy®︎」はBLEセンサーによるIoT監視システムで、監視・見守り対象である従業員などにBeaconカードを搭載させることで、対象者の位置情報を可視化することが可能性です。
オプションで対象者のバイタル状況も可視化することが可能であり、従業員の脈拍や血圧測定、歩数検知、転倒検知、ストレス度測定などの結果をクラウド上に蓄積します。管理者は位置情報と共にバイタルデータを労務・健康管理、安全管理、トラブル発生時の証跡としてなど、幅広く活用できます。
●ヘルスツーリズム
ヘルスツーリズムは、旅行において、健康の回復や健康増進を図ったり、旅をきっかけにセルフケアへの関心を高め、健康リスクを軽減する活動です。旅先で健康ウォーキング・サイクリング、森林浴、温泉浴、健康的な食事などのプログラムを体験します。
●地域の健康教室
地域の集会所や福祉センターなどで、健康体操や健康セミナーなどを実施する健康教室の展開が各地域で行われています。これもヘルスケアビジネスの一つとして位置づけられます。例えば、保健師による健康づくりや疾病予防のセミナー、健康運動指導士による運動に関するアドバイス、管理栄養士による食事の栄養面に関する相談などが挙げられます。
●パーソナルトレーニング
パーソナルトレーニングとは、トレーナーがマンツーマンでトレーニングやエクササイズ、食事などをトータル的に指導してくれるサービスです。ダイエットや健康管理、リハビリテーション、パフォーマンス向上などを目的に、個人に合った指導を受けることでより健康を促進できます。
●ウェアラブルデバイス
ウェアラブルデバイスとは、身につけて使用するデジタル機器で、自身の健康データを簡単に取得・管理できる機能を持つものが増えてきました。リストバンド型やゴーグル型などがあり、歩数や血圧・心拍数、消費カロリー、睡眠時間などの測定を通じて自発的なケアが実現できます。
●健康管理ができるIoTデバイス
IoTセンサーによって、健康に関連するさまざまな生体データが取得できるIoTデバイスも注目されています。前述のウェアラブルデバイスのほか、センサーにより生体データを取得して蓄積できるサービスも出てきています。
例えば、TOPPANの「cheercle(チアクル)」は、洗面所の床に体重や体脂肪、肌温度などを取得できるセンサーを埋め込み、人が立つだけで、洗面所のミラーに計測された数値を表示することができるIoT健康管理サービスです。手持ちのスマートフォンでもデータを確認できます。
まとめ
ヘルスケアビジネスは、今後もさらに活性化していくと見られており、その分野も取り扱うテーマも広がっていくと考えられます。メリットが大きい反面、課題もあるため、一つ一つ解決していきながら、慎重に進めていくことが求められます。
TOPPANでは今回ご紹介したサービスのほかにも、さまざまなヘルスケアビジネスに関連するサービスを展開しています。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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2023.12.21