コラム

ポジティブメンタルヘルスとは?
ウェルビーイング向上につながる
注目のキーワードを解説!

企業が従業員に対して実施するメンタルヘルスケアの方法は幅広いものとなっています。これまでは精神的な不調のケアが中心だった一方で、近年では、ポジティブメンタルヘルスという新しいアプローチ方法も生まれています。
今回は、ポジティブメンタルヘルスの概要から、近年注目されている背景、ポジティブメンタルヘルスを向上させるメリットや方法までをご紹介します。


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ポジティブメンタルヘルスとは?

ポジティブメンタルヘルスの概要と、注目されている背景を見ていきましょう。

ポジティブメンタルヘルスとは?

ポジティブメンタルヘルスとは、企業が従業員に対して実施するメンタルヘルスケアの手法の一つです。
従来はメンタル不調などを起こした従業員に対して、その都度、職場復帰支援や職場のストレス要因を把握して改善していくというやり方が主流でした。つまり、ネガティブな状態の予防と対処に主眼が置かれていました。

一方、近年進められているポジティブメンタルヘルスは、はじめからメンタルヘルスのポジティブな側面に注目し、伸ばしていく考え方でさまざまな取り組みを行います。従業員の心身の健康度を高め、生産性の向上につなげることを目指します。

またポジティブメンタルヘルスという言葉は、心身ともに健康で、熱意をもって仕事に没頭し、いきいきと働くことができている状態を意味することもあります。

ポジティブメンタルヘルスが注目されている背景

なぜ、ポジティブメンタルヘルスが注目されているのでしょうか。

近年は、あらゆる分野における技術革新を背景に、デジタル化やDX化が推進される中、さらなるイノベーションが企業にとって喫緊の課題となっています。また、AI(人工知能)の登場に伴い、人間の知的生産性や創造性はこれまで以上に、高いレベルのものが求められています。
もはや従来のような大量生産・大量消費の時代とは異なり、ものをつくっていれば売れる時代ではなくなりました。いかに選ばれ、イノベーションを通じて新たな社会的価値のあるモノやサービスを生み出していけるかが問われています。

こうした背景から、従業員についてもただ働くだけではなく、労働の質の向上、および創造性の向上が期待されてきています。その成果を生み出すために、経営側は従業員の働く環境改善はもちろんのこと、心身ともに健康で、心からやりがいを持って働けるようにする取り組みが求められています。
そのため、ポジティブメンタルヘルスは、従業員のメンタルヘルスを向上させるために取り組まれています。


ポジティブメンタルヘルスの重要指標「ワークエンゲージメント」とは?

ポジティブメンタルヘルスの取り組みの達成度を測るための重要指標として「ワークエンゲージメント」が活用できます。

ワークエンゲージメントとは

ワークエンゲージメントとは、働き手としての一人の人間が、自分の仕事に対し、ポジティブで充実した感情を持続的に抱いている心理状態を指します。

ポジティブメンタルヘルスを推進するにあたっては、メンタルがネガティブになるストレスなどの要素を取り除くだけでなく、ワークエンゲージメントを高めるようなポジティブな要素を増やすことが大切です。

ワークエンゲージメントを構成する3つの要素

ワークエンゲージメントは、次の3つの要素がそろった状態だといわれています。

活力:「仕事から活力を得ていきいきとしている状態」
熱意:「仕事に誇りとやりがいを感じている状態」
没頭:「仕事に熱心に取り組んでいる状態」

ワークエンゲージメントが高い人は、仕事にやりがいと誇りを感じ、仕事から活力を得て、いきいきとしながら熱心に取り組んでいる人といえます。それも一時的ではなく、継続的にその状態が続いている状態を指しています。

「仕事の要求度―資源モデル」

ワークエンゲージメントを向上させるためには、向上するに至る心理的メカニズムをわかりやすく整理したモデル「仕事の要求度―資源モデル」を理解することが大切です。

仕事の要求度―資源モデル

出典:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-/第2-(3)-8図 仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)とワーク・エンゲイジメントについて」https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/19/backdata/2-3-08.html

例えば、人手不足などで仕事のプレッシャーや精神的・肉体的負担などの「仕事の要求度」が高すぎると、従業員は仕事にストレスを感じます。このとき、「仕事の資源」である熱量や正当な評価、フィードバックなどが少ないとワークエンゲージメントが低下するといわれています。

一方で、「仕事の資源」が豊富にあれば、「仕事の要求度」が高くてもワークエンゲージメントは向上されるといわれています。このように「仕事の要求度」と「仕事の資源」はバランスが重要になります。

また、「個人の資源」である自己効力感(※1)や楽観性などは、「仕事の資源」と相互に影響を及ぼしながら、ワークエンゲージメントを高めるといわれています。

※1 自己効力感:ある状況において必要な行動を、自分がうまく遂行できるという可能性を認知していること。

このことから「仕事の資源」と「個人の資源」を充実させる取り組みが、ワークエンゲージメントを高め、ポジティブメンタルヘルスを向上させるためのカギとなるといわれています。


ポジティブメンタルヘルスを向上させるメリット

ポジティブメンタルヘルスを向上させるメリット

企業が従業員のポジティブメンタルヘルスの向上を追求することは、従業員の心身の健康増進のみならず、他にも多くのメリットが期待できます。

生産性向上につながる

ワークエンゲージメントスコアを向上させることは、個人の労働生産性の向上につながる可能性があることがわかっています(※2)。生産性向上は、顧客満足度向上や売上向上などさまざまな良い効果を生み出す可能性があるでしょう。

従業員のウェルビーイング向上につながる

近年は「ウェルビーイング」という概念が重要視されるようになってきました。ウェルビーイングとは、一般的には心と身体と社会的なつながりが良好な状態のことを指します。健康や幸せ、福祉をすべて含有する概念といわれています。

従業員にやる気や成長意欲があり、いきいきと働きながらも、幸福度の高い充実した状態であることは、従業員個人にとって大きなメリットです。また企業にとってもウェルビーイングの高い従業員を抱えることで、企業成長につながることが期待できます。

人材流出の防止

ワークエンゲージメントが高まると、人材流出の防止が期待できるといわれています。調査(※2)によれば、新入社員の入社3年後の定着率が高い企業や、従業員の離職率が低い企業は、ワークエンゲージメントスコアも高いことがわかりました。

※2 出典:厚生労働省『第Ⅱ部 人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について』
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf


ポジティブメンタルヘルスを向上させる方法

企業が従業員のポジティブメンタルヘルスを向上させる方法をご紹介します。

仕事の要求度を低減し、仕事と個人の資源を充実させる

前述の「仕事の要求度―資源モデル」に基づき、仕事の要求度を低減し、仕事の資源と個人の資源の両方を充実させることが重要になってきます。

・仕事の資源の例
経営層との信頼関係の構築、公正な人事評価、個人の尊重、キャリア形成支援、上司・同僚の支援、安定的な報酬、ほめてもらえる職場、失敗を認める職場、明確な役割、成長の機会

・個人の資源の例
自己効力感、自尊心、楽観性、レジリエンス(粘り強さ)

例えば、次のような方法が考えられます。
・対人業務に対する情緒的不安がある環境において、ロールプレイングを行い自己効力感を高める。
・成功体験を作らせ、適切かつ公正な評価を行う。
・若手社員がチャレンジできるような環境を作る。
・上司と部下の1on1ミーティングを定期的に実施し、キャリア形成支援を行う。

ワークエンゲージメント調査やストレスチェックを実施する

従業員の心身の状態をチェックして数値化し、課題を把握した上で施策を打つことも方法の一つです。例えば、ワークエンゲージメント調査やストレスチェックの実施が考えられます。

TOPPANでは、ハーバード大学医学部客員教授の根来秀行氏監修の下、メンタルヘルス不調のリスク判定と、個人向けケアの自動化を実現した企業向けストレスチェックシステムを開発しました。社内で活用するとともに、今後はサービスとしてご提供できるよう準備を進めています。ストレスチェックシステムを活用することで、より広範囲の調査を行うことができるようになります。

メンタルヘルス研修の実施

ポジティブメンタルヘルスに関わるメンタルヘルス研修を実施する方法です。近年、企業においてはポジティブメンタルヘルスの意識が高まってきており、メンタルヘルス研修にポジティブメンタルヘルスの要素を盛り込む傾向にあります。

研修にポジティブメンタルヘルスの要素を盛り込むことで、ワークエンゲージメントが高まったり、ストレスを感じたときも前向きにとらえられるようになったりと、結果として仕事へのストレスが軽減し、心身共に健全な状態となり、モチベーションがアップする可能性があります。

TOPPANでは、そのポジティブメンタルヘルス研修をeラーニングでご提供しています。ストレスの対処方法が学べ、活力ある職場づくりに有効な内容となっています。「シーン・ワーク・解説」で構成されるインタラクティブ教材で、1章が約5分程度のショートストーリーであり、従業員のモチベーションアップと組織力の強化に効果的なプログラムです。


まとめ

ポジティブメンタルヘルスは、今後、さらに多くの企業が本格的に取り組んでいくことでしょう。その実践方法はさまざまなものがあり、それぞれの企業にとって最適な方法を検討する必要があります。

TOPPANでは、ポジティブメンタルヘルス向上に寄与するさまざまなサービスをご提供しております。
従業員の健康状態を確認できるものから、健康的に働ける空間を提供するもの、楽しみながら健康増進できるものまで多種類ご用意しております。ぜひお気軽にご相談ください。


健康状態を確認できるサービス

健康的に働ける空間を提供するサービス

楽しみながら健康増進できるサービス


2023.11.28

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