コラム

集客・売上アップにつなげる、
EC改善・リニューアルの進め方

生活様式の変化を受け、企業はEC活用を強化しています。一方、ECで成果を上げ続けるには、集客・UI・システムなど、様々な軸の課題を解決する必要があり、容易ではありません。

TOPPANはECサイトのあらゆる課題を紐解き、集客・売上アップにつながるEC改善・リニューアルを支援する「EC診断サービス」をリリースしました。本コラムでは、ECサイトの現状を把握するための手法と集客・売上アップに向けたEC改善・リニューアルの要点を解説します。


ECサイトをめぐる近年の潮流

EC市場はコロナ禍でも拡大傾向にあり、物販系ECの市場規模は約13兆円、EC化率は8%を超えています。特にAmazonなどプラットフォーム系のECサイトや、家電系、アパレル系だけで市場規模全体の約8割を占めています。

EC売上ランキング上位のサイトの中には、成長率の高いサイトが多く含まれています。EC売上トップを走る企業の多くが、常に新しい施策や改善を続けることで他社を引き離しているといえるでしょう。

しかし、多くのECサイト事業者は日々の運用や問合せ対応に追われ、運用人材が不足しています。また予算も限られる中で、ECサイト改善のために何から手をつけるべきか分からないという事業者も多いのではないでしょうか。

TOPPANのEC診断サービス

効果的・効率的な改善を行うためには、やみくもに施策を実施するのではなく、自社ECサイトの現状を知ることが最初のステップです。課題を見える化し、インパクト(効果)や費用・スピード(工数)などを加味したうえで、改善策の優先順位を決めていくことがとても重要です。

こうした現状把握と改善のヒントを得るために役立つのが、TOPPANのEC診断サービスです。
当サービスでは、ECサイト改善の課題となる「集客」「売り場」「CRM」「コール」「システム」の5つについて現状把握のための診断を行い、その結果を踏まえた効果が見込める改善方針を提供しています。

当コラムでは、顧客とのコミュニケーションに関わる「売り場」「コール」「CRM」の三つの観点での診断の進め方をご紹介します。


顧客コミュニケーションの再設計に向けた「EC診断サービス」

わかりやすい・買いやすい売り場とは(UI/UX診断)

ECサイトに関する利用者の不満をまとめたアンケートでは、「送料が不明瞭」「商品画像や説明が不足している」など、購入判断に必要な情報が集められないことや、「サイトの読み込みが遅い」「モバイルサイトの使い勝手が悪い」といったパフォーマンスに関する意見が上位を占めています。

ECサイトのUI/UXが良くないことはユーザーの不満に直結し、売上にも悪影響を及ぼします。このような状況にならないようにサイトのUI/UXを磨いていくことは非常に重要です。

UI/UX診断の流れ

①サイト解析
Googleアナリティクスのデータを使った売上状況の「基礎分析」や、「市場・競合比較分析」を行います。また、サイトの滞在時間や直帰率を診断し、課題と改善策を洗い出す「ユーザー行動分析」や、主要キーワードにおける検索結果順位などの状況を診断する「SEO分析」を実施します。

そのうえで、顧客がECサイトに訪れてから購入に至るまでの遷移状況をKPIマップに落とし込み、数値化することで課題の可視化と仮説を立てやすくします。


サイト解析

②調査
調査方法は2つあります。1つは実用性や視認性、操作性など、決められた評価項目に沿って、専門家の視点からページごとのユーザビリティを評価する「ヒューリスティック調査」。

もう1つは、ユーザーのペルソナ(ターゲット像)を設定し、近似ユーザーが実際にECサイトを閲覧・操作している様子を録画・録音し、浮かび上がる課題を抽出するほか、インタビューから問題点を探る「ユーザー調査」です。

どちらか一方の調査でも成立しますが、視点の偏りが出てくるので、できる限り両方の調査を行うことをお勧めします。
調査後、課題リストとして内容をまとめる際には、ECサイトにおける一般的な鉄則なども交えながら、完全性の高い課題抽出を目指します。



調査

③改善方針策定
課題リストをもとに優先順位をつけ、改善方針を策定します。
たとえば、商品説明の見直しやよくある質問の追加といった「コンテンツ改善」や、テキストサイズや行間を変えて読みやすくするなどの「UI改善」など、それぞれに改善プランを定め、実際の画面の設計案(ワイヤーフレーム)に盛り込んでいきます。

④制作
ワイヤーフレームの作成では、コンテンツやボタンのレイアウトなど、実際の操作イメージが湧くレベルまで具体化します。ECパッケージやECシステムを利用している場合でも、ワイヤーフレームの設計がシステム側で影響なく実施できるか検証しておくことが重要です。
ワイヤーフレームが固まったらプロトタイプ(モックアップ)の形を作って実際のデバイスで簡易的に動く状態に落としこみ、見え方や操作感をチェックして調整を行います。

【事例】食品販売会社のECサイトにおけるUI/UX診断・改善
旧ECサイトはユーザビリティが低く、詳細な調査や改善を行うPDCAの運用ができていませんでした。そこでサイトのUI/UX診断を実施。具体的にはアクセス解析や、競合比較、ヒートマップ解析、ユーザー調査を行ない、改善インパクトの大きい箇所を特定しました。

▼実施した改善施策
・ユーザーにとって決まっている「いつもの商品」を買うための導線をグローバルナビゲーションに集約
・特集のバナーを大きく配置してユーザーの視点を滞留させ、その周辺に掲載された商品も目に留まり、ついクリックしてしまうようなショッピング導線を作成

この結果、EC売上の向上につながり、サイトに対するユーザーの満足度も向上しました。

顧客満足度のために欠かせないコール診断

コールセンターはEC事業において、顧客と直接のコミュニケーションが取れる貴重な接点です。近年では顧客満足度の向上や、コロナ禍やオペレーターの人件費高騰を背景とした運営効率化が課題となっています。

顧客満足度の向上のために欠かせないのが、問い合わせ時のお客様がストレスなく簡単・手軽に疑問を解決できる「エフォートレスなコンタクト対応」です。
たとえば、FAQサイトを設けたり、メール問い合わせフォームや、チャットボットによる自動応答、電話対応にIVR(自動音声)を組み合わせるなどが挙げられます。顧客が求める解決チャネルの広がりに対して、マルチチャネルで満足度を上げていくことが必要です。

◆顧客動線の再設計方法
顧客動線の再設計に向けては、「デジタルor音声」という軸と、「有人対応or無人対応」という軸の四象限で整理します。

◆コールセンター診断の流れ
お客様自身で自己解決できる問い合わせ内容を把握し、自己解決の施策を実行するための4つのステップをご紹介します。

①問い合わせ経路の把握
顧客がどんな時に何を見て問い合わせをしてくるのか、なぜ電話やメールで問い合わせするのかを整理します。

②コールリーズンの分析
問い合わせ理由の分析・分類を実施し、全体の問い合わせ傾向を把握することで適正なチャネルの可視化が可能となります。

③自己解決できる問い合わせの分類
上記で分類した問い合わせに対し、有人対応でなければ解決できない問い合わせと、自己解決へ誘導できる問い合わせに振り分けます。

④自己解決させるための手段を実行
自己解決へ誘導できる問い合わせに対して動線を整理するほか、チャットボットの実装やFAQコンテンツの充実など、自己解決手段を検討します。

【事例】出版社の雑誌ECサイトの問い合わせ自動対応化
この出版社では問い合わせ数を削減してコールセンターの効率化やサイトの利便性向上に繋げたいという課題があり、現状の問い合わせ状況を診断しました。

▼実施した改善施策
・支払いや送料などに対する問合せについて、チャットボットによる自動対応に変更

これにより、コールセンターへの問い合わせ数の削減に繋がったほか、夜間の問い合わせにも対応が可能となりました。

顧客LTVを高めるためのCRM診断

人口の減少による顧客の取り合いや、市場の成熟により製品の差別化が困難になっているという現状から、EC事業ではLTV(顧客生涯価値)が重要視されています。また、顧客データを活用したOne to Oneマーケティングも発展してきており、新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持コストの約5倍とも言われています。こうした中で既存顧客に対するCRMを強化し、顧客LTVを高める取り組みがEC事業の成長には不可欠です。

◆CRM実行における顧客データの活用のポイント
EC事業をさらにグロースさせる顧客データ活用のポイントは、「データ」「マーケティングシステム」「人的なリソース・スキルセット」が整うこと。この3つがそろうことで本格的に推進できるようになります。

◆CRM診断の進め方
顧客データ活用の本格化に向けたこの3要素を、TOPPANでは独自のメソッド「DMAP」で診断します。

Step1:自社の現状を可視化
データの仕様書や実際のデータの受領、ヒアリングシートをベースに、データやスキルセット、マーケティングシステムについてヒアリングを実施。データの本格活用に向けて自社の現状の棚卸と可視化を実行します。

Step2:現在地を診断し、今後の処方箋を得る
Step1で把握した現状から、データ活用を進めるためのロードマップを作成します。ここで重要なのは、絵に描いた餅にならないよう現実的なロードマップにすること。中長期的な取り組みになることも多いため、実際の取り組み状況や部門間の関係性なども考慮しながら、どの部分から手を付けていくのが良いかをプランに落とし込みます。


【事例】通販企業のサイトにおける高度なデータ活用への転換
既存のCRM施策には限界を感じ、より高度なデータ活用を推進して行きたいという課題がありました。そこで、現状のシステム、データ、リソースの観点で診断を行い、現状の業務課題や開発のロードマップを整理しました。

▼実施した改善施策
・オフライン・オンラインを横断した様々なデータを統合する基盤の導入
・データの運用施策の具体化→顧客のステータスと購入商品を掛け合わせたセグメントでメール施策を整備するなど、データ活用を高度化するための仕組みづくり

これによって、顧客データを中心としたマーケティングが実行できるようになりました。


TOPPANの“個客中心”のマーケティング支援 

今回ご紹介した診断サービスだけでなく、TOPPANはEC事業の拡大に向けた事業戦略立案から、マーケティングのサポート、最適なECシステムの開発、さらにCRMやフルフィルメントなど顧客のエンゲージメントを高める運用まで、ワンストップで提供しています。

顧客一人ひとりの「今」を理解し、ニーズに合った最良の体験を提供することが企業活動の最重要テーマです。TOPPANのデジタルマーケティングセンターでは、顧客中心のマーケティング活動を伴走型で支援しています。ECサイト運営でお困りの方はぜひお問い合わせください。



菊地 秀行(きくち ひでゆき)
TOPPAN株式会社
デジタルマーケティングセンター
エンゲージメントサービス本部 プロデュース部

2023.10.12