コラム

顧客データを統合管理し実現する
One ID化とは

昨今、企業内に存在している複数サイトの顧客IDを統合したいというニーズが高まっています。これまでTOPPANでは、顧客データの統合管理と複数のサイトをOne IDで横断利用できるシステムを個別に開発し提供してきました。そしてこの度、ASP型のID統合プラットフォームサービスをリリースいたしました。

そこで、弊社ID統合プラットフォームサービスの詳細と、初期段階で決めていく項目やデータの移行方法などの具体的なプロセスを、ECサイトとブランドサイト等での顧客ID統合の事例紹介を交えて解説します。


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顧客IDの統合管理「One ID」の概要

なぜID統合が必要なのか?

ブランドや拠点ごとに顧客データを管理しているシステムは、顧客情報を全社で横断的に扱うことができず、ビジネスへ継続的に活用することができません。そこでシステムを統合し、データを長期的に記録していくことが重要となります。

また、国内外問わず個人情報の取得に関する法規制が年々強化されています。しかし法規制への随時対応は、事業者にとって体制面やコスト面での負担が大きいことから、法規制に対応できるシステムへ統合し、管理の手間を減らすことが解決の近道といえるでしょう。

さらにテクノロジー面で検討要因にあげられるのが、サードパーティCookieの廃止です。この規制により、自社サイト以外で収集された顧客情報に基づくターゲティング広告が今後できなくなると言われています。そのため、今後は自社でデータを保持しマーケティングに活用する必要があるのです。

分散したシステムを統合し、法規制にも容易に対応でき、顧客データを自社で保持する基盤を作るという3つの観点において、顧客IDの統合は有効な手段であるといえます。

サービス導入までの具体的なプロセス

TOPPANがご提供するID統合プラットフォームサービスの導入までのプロセスを、ご契約企業様が主体となって実施いただく3つのタスクを中心にご説明します。

サービス導入までの具体的なプロセス

▶要件定義
最初に本サービスが提供する機能(認証の方法や画面遷移、API、管理機能など)をご説明します。次にヒアリングシートを使い、ドメイン名、本サービスで保持する項目、データのレイアウトなど、サービスの各種構成を決めます。最後にデータ移行方針を弊社と共同で決定します。既存システムの構成内容によっても異なりますが、要件定義の打ち合わせは1セクションあたり1~2時間、全7回ほど実施する想定です。

▶データ移行
データ移行は次の5つを重視しながら進めていただきます。

① 影響範囲の確認
データ移行には移行元システムのサービス停止を伴う場合が多いため、停止の可否や可能な時間帯、事前告知の必要性などをあらかじめ確認します。

② 移行計画作成
移行には関連するステークホルダーとの調整事が多いため、早めにタスクを洗い出し、移行計画を立てることが重要です。

③ データのレイアウトの確認
仕様書上では存在し得ないはずのデータが存在する、といったことはよくあります。必ず移行元から仕様書とサンプルデータを入手した上で検証を行います。

④ データクレンジング作業
データには個人情報が含まれているため、万が一に備えて必ずセキュアな環境で作業を実施します。

⑤ リハーサルの実施
本番用の手順書と全データを使って移行リハーサルを行います。こうすることで手順漏れやデータ投入にかかる正確な時間を把握でき、本番での移行作業の確実性を高められます。

▶サービスサイトカスタマイズ
ID統合プラットフォームを導入するには、企業様にてサービスサイトのカスタマイズが必要です。例えば、メールアドレスとパスワードをID統合プラットフォームで管理する場合、Open ID Connect(認証に関する標準規格の一種)を使って連携できるよう、サービスサイトを改修していただきます。Open ID Connectを利用することで、これまで個別に行っていた認証処理をID統合プラットフォームにて一括で行うことができ、自社サイト内での会員ページ閲覧やシングルサインオンが可能となります。


One IDのデータ統合事例

データ統合を実施するステップ

複数サイトの顧客IDをどのように統合していくか、「ブランドキャンペーンサイト」「ECサイト」「ファンサイト」の3サイトの顧客データを統合する場合を例に挙げてご説明します。

[ステップ 1]データレイアウトの決定
前述のサービス導入プロセスにおける「要件定義」にて、ID統合プラットフォームで保持するデータと、自社サイト内で個別管理するデータを決定します。この例では、メールアドレス、名前、電話番号をID統合プラットフォームで管理。ECサイトの住所、ファンサイトのニックネームは自社サイト側で管理します。

[ステップ 2]重複データの有無の確認
1ユーザーが各サイトで個別に会員登録をしている場合もあるため、重複データを確認します。例えばメールアドレスで突き合わし、重複がなければそのまま移行データとして使い、重複がある場合は「名寄せ」の作業を行います。

[ステップ 3]データの選定
複数サイトで重複している項目は、どのサイトのデータを優先的に採用するかを事前に決め、移行用データを作成します。

[ステップ 4]移行データ登録
移行用データをID統合プラットフォームにインポートし、貴社からお客様に移行に関する通知を出します。案内を受け取ったお客様が新サイトにアクセスした際、新しい利用規約への同意を促します。

[ステップ 5]移行データの確認と修正
お客様同意後の2段階認証を経て、移行データの確認と(変更箇所があれば)修正を行っていただき移行が完了します。


One IDによるマーケティング基盤の構築

TOPPANのID統合基盤の構築

TOPPANでは顧客を中心としたデジタルマーケティングを推進しています。顧客に関するデータを全部門で統合し、どのような顧客が、いつ・何に興味を持ち、何を欲しがっているのかという顧客理解に基づいてPDCAを実行していくことが、ビジネス拡大のエンジンとなります。このために欠かせないのが顧客IDの統合です。

いわばデジタルマーケティングのスタート地点であるID統合基盤の構築には、手間とコストをかけるべきではないと考えます。このコンセプトから生まれたのがASP型のID統合プラットフォームサービスです。

例えば、複数拠点でサービスを展開している小売・流通事業者様の場合は、拠点をまたいだ購入履歴等のデータが共有可能になることから、より精度の高いマーケティングを実現できます。また、複数のブランドを展開しているメーカー企業様の場合は、ブランド横断でのサービス提供が可能となり、顧客ロイヤリティを高めることにつながります。

これまでさまざまな事業者様の顧客ID統合をサポートしてきたノウハウを生かし、実践経験の豊富なデジタルマーケティングのプロが対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

渕江 貴康(ふちえ たかやす)

TOPPAN株式会社
情報コミュニケーション事業本部 マーケティング事業部
デジタルマーケティングセンター

2023.10.03

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