コラム

企業研修の最新トレンド|ユニークな研修プログラムを紹介

企業研修は過去から現在にかけて形態や内容が大きく変遷してきました。現代において企業研修は多様化しており、ユニークな研修も生まれています。今回は、企業研修の最新トレンドや事例についてご紹介します。従業員の方のモチベーションを引き出し、効果を高める企業研修を検討されている方は、ぜひご覧ください。


企業研修の変遷

企業研修の考え方や手法は、さまざまな変遷をたどってきました。大まかな流れを見ていきましょう。

1950~60年代

高度成長期にさしかかる、大量生産のこの時代では、特に製造業や重工業において多くの労働力を底上げするべく、基礎的な技能を現場で効率的に身に付けさせるために、OJTが中心に進められていきます。OJTとは「On the Job Training」の頭文字を取った手法で、職場内訓練を意味します。座学形式の集合研修とは対照的に、職場の上司や先輩が、部下や後輩に対して、実際の仕事を現場を通じて指導し、知識、技術など を身に付けさせることが特徴です。

1960~70年代

1960年代以降、産業や経済が成熟していくにつれて、市場競争に打ち勝っていくためには生産量を増やすだけでなく、品質の向上が必要になっていきました。よって労働者についても、基礎能力を一斉に身に付けさせるよりも、一人ひとりの能力を開発する方向へシフトする傾向になり、より専門的な知識を身に着けるための階層別研修も整備されていきました。

特に1970年代は、1973年の第一次オイルショックを受け、日本経済は混乱し、経営のスリム化が余儀なくされる中、社内の中高年が役職や立場に頼れなくなり、職能による昇格制度が採用されるようになりました。これも階層別に職能を育成する潮流が生まれた背景です。

また1960年代には1950年代に米国で誕生したとされる組織開発の手法が日本にも入ってきたことで、従業員同士の横のつながりを強化して組織のパフォーマンスを強化する流れが生まれました。

1980~90年代

製造業の海外進出の動きが見られるようになり、グローバル人材育成ブームが生まれました。言語学習や異文化教育をはじめとしたグローバリゼーションのための研修が生まれていきます。

1990~2000年代

1986年から1991年頃にかけてはバブル景気の時代となり、やがて崩壊の時代が訪れます。このタイミングで、日本に根付いていた終身雇用や年功序列が見直されるようになりました。教育についても、勤続年数や経験よりも成果を重視したキャリア開発のための研修が重視されるようになりました。

2000年代以降

2000年代以降になると、グローバル化が一層加速したことで、リーダーシップ開発や企業理念浸透に力が注がれるようになりました。

2010年以降は、国内の少子高齢化による人手不足が深刻化していきます。またインターネットの普及により情報社会となったことから価値観の多様化が進み、働き手の考えも多様化しました。
これにより多様な価値観を受け入れ、市場に多くの労働力を投入するべく、ダイバーシティ研修が注目されていきます。
研修の多様化も見られ、画一的な研修から個別研修への流れも生まれました。その他、他社と連携した研修や研修開発のグローバル化、組織開発の視点の強化などが行われていきます。

近年においては、人材が持つスキルや能力を経営資源としてとらえて活かすタレントマネジメントの概念が浸透していきます。


企業研修の最新トレンド~手法編

さまざまな経緯をたどり発展してきた企業研修ですが、現代においても新しい潮流が生まれています。企業研修の手法における最新トレンドについてご紹介します。

パーソナライズドラーニング

学習者一人ひとりに個別最適化されたプログラムをカスタマイズして提供する手法です。一人ひとりの興味・関心や、経験、好みの学習方法などを取り入れるのが特徴です。能動的かつ主体的な学びが促進されるため、より高い学習効果が得られることが期待されています。

アダプティブラーニング

「適応学習」と訳され、一人ひとりの学習状況や習熟度、理解度をAIによる診断やテストなどを通して分析し、その分析結果に基づいて学習プログラムやコンテンツを最適化させる手法です。一人ひとり、異なる得意・不得意の分野や単元を見極めることで、当人にとって最適なペースで学習を進めていくことができます。

マイクロラーニング

1回に3分や5分といった短時間で集中的に学ぶ手法です。PCやスマートフォンなどのモバイルデバイスを活用して、従業員が業務の隙間時間を活用しながらeラーニングなどを通じた学びに適しています。リモートワークが定着し、個別最適化された研修が推進される中、いつでもどこでも隙間時間に自分のペースで学べる点が注目されています。

マイクロラーニング

ブレンディッドラーニング

「複数のものを混ぜ合わせた」との意味を持つ「ブレンディッド」ラーニングは、集合型・対面式の研修とオンライン、自己学習とグループワークなど、さまざまな学習方法を混ぜ合わせて実施する手法です。研修・学習手法が多様化する中、それぞれの長所や短所を混ぜ合わせることでそれぞれの良さを活かすことができます。

体験型研修

体験型研修とは、参加者が能動的かつ主体的に、自身の体や頭を動かしてスキルや知識を学ぶ研修スタイルです。参加者同士が意見交換しながら進めるワークショップ形式が取られることも多く、自らの体験を通じて学ぶことで、高い学習効果が得られると期待されています。

越境学習

越境学習とは、普段の職場を離れ、まったく異なる環境に身を置きながら学ぶ手法です。他社への出向や社会人大学院入学、勤務場所外など、自分の普段からの領域を越えて異なる領域での体験や学習を行うことで、社内研修では提供できない専門的な内容や、幅広い教養の学びを促進します。


企業研修の最新トレンド~テーマ編

企業研修のテーマにおける最新トレンドについて、ご紹介します。

ウェルビーイング

ウェルビーイング(Well-being)とは、身体的・精神的・社会的にすべてが満たされた幸福な状態を意味します。近年、多くの企業において、従業員の健康を軸にした経営や働き方改革などの、働く人が快適に働き、生産性向上を目指せる労働環境を整備する取り組みが推進されています。ウェルビーイングを向上させるためには、ウェルビーイングの概念の理解や幅広い教養の学びが必要になります。そのため、企業研修プログラムを設計する上においても、ウェルビーイングが想定されることもあります。

ダイバーシティ

ダイバーシティ(Diversity)とは、多様性を意味して人種、性別、障がいの有無、価値観、文化的背景などの異なる属性を持った人が組織やチームで共存する概念です。日本でも国を挙げて推進されており、多様な人材を受け入れることで顧客の多様化するニーズに応えることができることから、競争力強化につながります。ダイバーシティを研修に取り入れることで多様な人々と一緒に働くことの意義や実際の働き方を習得していくことができます。

リベラルアーツ

リベラルアーツとは、日本語に直訳すると「教養教育」となり、特定の専門職への職業教育ではなく、広範かつ深い教養を身に付ける教育方針を指します。TOPPANの提供しているサービス「リベラルアーツ研修」では問題解決能力や批判的思考力、コミュニケーション能力など、幅広い視野と深い思考力を身に着けることで変化の激しい時代に自ら対応していくことができる人材を育成します。


企業研修のユニークな研修プログラムの事例

企業研修のユニークな研修プログラムの事例をご紹介します。

ダイバーシティ研修・体験型研修・越境学習の事例

高野山は平安時代のはじめに弘法大師によって、開かれた真言密教の聖地です。自然・歴史・理念が継承されてきた高野山・山上宗教都市からは環境の持続性、事業の持続性、多様性受容といった多様なテーマを学ぶことができます。

ある製造業の会社は、この高野山現地で、企業倫理とダイバーシティをテーマに、働く意味と意義、自分の果たすべき役割を学び、適切な倫理観を持った上級管理職、経営者となることを目指す研修を行いました。

高野山に伝わる理念を、現地に足を運ぶことで、長年続く環境の持続性から事業の持続性、多様性の受容などの学びが期待できます。隔絶された環境で自身を見つめながらより大きなビジネスの構想に思いを馳せることができます。

リベラルアーツ研修・体験型研修・越境学習の事例

あるサービス業の会社は、現在も政財界の人々が多く参禅する、都内有数の禅寺「全生庵」にて、管理職向けに心身を整え自身と向き合う研修を行いました。

坐禅により自己を棚卸しし、目の前のことに集中することで、チームメンバー同士を理解し受け入れる体験を通じて、チームとしての一体感をつくることを目指しました。職場から離れた越境の地における非日常の体験をチームで共有することが、一体感の向上につながります。

体験型研修・ウェルビーイング研修

TOPPANでは新入社員研修を完全オンラインで実施しており、体験型の要素やアートサロン、ストレスマネジメントといったウェルビーイング関連の要素を取り入れています。

スタンドアローン型VRゴーグルを活用した体験型研修では、VRゴーグルを新入社員全員に貸与し、VRコンテンツを通じた体験型学習を実施しました。

またTOPPANのオリジナルアプリを用いたコンディション管理により、新入社員が自身の睡眠状況や運動を客観的に把握できます。日々のコンディション管理を習慣化させることで、一人ひとりの健康と生産性向上につなげる意図があります。さらに、各人が自宅のオンライン上でアート作品を制作し鑑賞し合う「アートサロン@HOME」を実施する試みも行いました。


まとめ

現代における企業研修は手法もテーマも多様化しています。今後は、より個別最適化された、個々人の人材の健康や幸福を追求する流れが進んでいくでしょう。

TOPPANでは、新しい研修トレンドに追随する「リベラルアーツ研修」や「ブンカ・ラーン」といった企業・教育機関向けの研修プログラムをご提供しています。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

2024.04.12