コラム

越境学習とは?
企業研修に導入するメリット

先行き不明のVUCAの時代、越境学習を取り入れた企業研修が注目されています。今回は、越境学習とは何か、越境学習の方法、企業研修に取り入れるメリット、越境学習を実施するときの注意点をご紹介します。


越境学習とは?

まずは越境学習の概要を解説します。

越境学習とは

越境学習とは、普段、勤務している職場を離れ、まったく異なる環境に身を置きながら、何らかの研修を行うことで新たな視点などを得る学びのことを指します。

主に、他社への出向や社会人大学院入学、勤務場所外など、自分の普段からの領域を越えて異なる領域での体験や学習のことを意味します。

越境学習が注目される背景

越境学習が注目される背景としては、VUCAの時代にあることから、予測不可能な現代のビジネス環境のもとでどのように乗り切っていくかが問われています。ただ論理的思考やビジネスにおける経験値からでは乗り切っていくことはできません。

※VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった言葉で、目まぐるしく状況が変わり、予測困難な状況を意味する。

そのため人間力に関わるコミュニケーション能力や信頼感醸成といったソフトスキルを身に付けることが重要になってきます。こうしたソフトスキルは、従来の集合型研修のような講義形式の研修では身に付けにくいため、越境によるさまざまな体験や気づきを通じた学習に注目が集まっています。

体験型研修との関係

近年の企業型研修のトレンドとして、体験型研修が注目されています。体験型研修とは参加者が能動的かつ主体的に、自身の体や頭を動かしてスキルや知識を学ぶ研修スタイルを指します。

体験型研修においても越境して普段とは異なる環境で体験しながら研修を実施することもあるため、体験型研修において越境学習スタイルが取り入れられることもあります。


越境学習の方法

越境学習には、さまざまな形態や方法があります。主な方法を見ていきましょう。

社外研修

社外研修とは、自社の外に出て行う研修です。外部の研修会社の研修を受けたり、会議室やホールを貸切り、外部の講師を呼んで研修を行ったりする方法です。

ワーケーション

ワーケーションとは「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語で、休暇中に旅先で仕事をするのが一般的な形態です。近年は地方企業で働き貢献しながら越境学習を行うといった取り組みも行われています。

在籍出向

会社に在籍しながら他社に出向する方法です。さまざまな呼び名がある中で、たとえば「レンタル研修」や「ジョブトライアル」があります。

レンタル研修とは、自社に籍を置きつつ期限を決めて他社に出向することを指します。経験や知見が通用しない新しい環境下で実力をいかに発揮できるかが試されます。普段の業務では得られなかった新たな知見やスキルを培うことができるメリットもあります。

ジョブトライアルとは、自部署に籍を置きつつ、社内で別部署の業務を体験することを指します。同じ社内とはいえ、部署の垣根を越えて新しい業務を経験することで、新たな知見やスキルが培われるのに加え、自社や自部署の業務を多角的な視点で見ることができるようになります。

プロボノ(pro bono)

プロボノ(pro bono)とは一定期間にわたってボランティアとしてNPO法人や地方自治体の一員となって支援業務を行うことを指します。地域や災害復興プロジェクトなどを通じて社会貢献するのが特徴です。

副業

副業とは、自社に在籍しながら勤務時間外を利用して本業とは異なる業務を行うことです。アルバイトのような形で勤務することもありますし、自身でカルチャースクールを開くなどすることもあります。働きながら新たな自分の能力を活かしつつ、普段の業務では得られないスキルを得ることも可能です。

社会人大学院・ビジネススクール

社会人向けの大学院やビジネススクールに通う方法です。勤務時間外の夜間・休日に開講している大学院や講座を受けることで、新たな学びが可能になります。

異業種勉強会

異業種勉強会とは、異業種同士が集まる勉強会です。異業種交流会とも呼ばれています。経営層同士が集まってコラボレーションを検討したり、コンサルタントや専門家を招聘して講演会を開催したりされています。

越境学習:異業種勉強会

越境学習のメリット

越境学習には、次のようなさまざまなメリットが期待できます。企業と従業員それぞれにとってのメリットを見ていきましょう。

【企業側のメリット】

日々の業務ではむずかしい学びの提供

社内研修では提供できない専門的な内容や、幅広い教養を学ばせることができます。従業員のスキルや総合的な人間力が向上することは、企業の事業の強力な推進力となります。

人材流出防止

企業が自ら越境学習として学びの場を社内外に確立することで、人材流出防止につながります。社内であればジョブトライアル、社外であれば社外研修やレンタル研修などが挙げられます。

これらの場所や機会を用意することで、働きやすさの確保や選択肢増加の効果から従業員の満足度が高まり、人材流出の予防につながるでしょう。

効率的な人材育成

自社では用意できない環境を社外の越境学習では作ることができます。たとえば若手社員にリーダーとしての業務体験をさせることは、スキルや経歴などの関係からむずかしいことがありますが、違う業務を行っている部署や社外のベンチャー企業などでは、若手社員にもリーダーを経験するチャンスを与えられます。企業にとっては効率的な人材育成につながるでしょう。

イノベーション創出

企業にとって、これまでにない革新的な仕組みや習慣を生み出すイノベーション創出は大きな課題となっています。越境学習により、社外の新たな方法論やアイデアに触れることで、社内プロジェクトなどに活かすことができる可能性があります。


【従業員側】

新しいチャレンジが可能

従業員にとって、会社の外に出てこれまでに得られなかった成長のチャンスや、新たな自分を発見できるチャンスを得ることができます。今後のキャリアにとって大きな意味を成すでしょう。

知の探索によるイノベーション

新たな視点に触れることによってイノベーションが生まれやすくなることは、従業員にとってもメリットといえます。普段の業務では得られない深い知の探索により、新しい価値観が生まれ、イノベーションを生み出すことができれば、自社はもちろん社会への貢献度が高まります。

自己の価値観や想いを再確認する内省が進む

自分が身を置く普段の職場環境における自己の価値観や想いは、いかなるものなのか、一度フィールドの外に身を置いてみることで客観的に見えてくることがあります。自分自身の内省が進むことで成長や結果につながります。


越境学習を実施するときの注意点

越境学習を企業研修として実施する際には、次の注意点を押さえておくことをおすすめします。

目的の明確化

越境学習は新鮮な体験ができることから、参加すること自体に意義を見出してしまいがちです。しかし、実際のところ研修のために実施する場合、一定の効果を得る必要があります。なんとなく参加して「良い体験をした」で終わらせないために、まずは目的を明確にすることが重要です。

例えば越境学習でリーダーシップを身に付けさせた後、社内プロジェクトのリーダーとして活躍させるなどが考えられます。

強制ではなく、自発的な参加を促す

越境学習は、主体的に学ぶ姿勢がなければ身に付くものも身に付きません。強制的に行わせるのではなく、自発的な参加を促すことが前提となります。

対象者を吟味する

越境学習での学びは、一般的な企業研修のプログラムでは作ることができない、幅広いジャンルの教養などの学びが得られます。全社員を漠然と対象にするのではなく、教養を身に付けさせたい管理職等、対象者を限定して吟味することが重要です。

デジタルやオンラインを活用して効率化する

越境学習は社外の学びが前提となります。しかし、場所や時間の制約があることもあり、気軽に越境学習を行えないという課題もあるでしょう。その場合には、オンラインで現地と中継しながら行ったり、デジタルコンテンツを研修に活用して社内のデバイス上で行い効率化することも選択肢の一つといえます。


まとめ

越境学習は、社内では得られない貴重な学びの体験ができる学習の機会です。企業にとっても従業員にとっても重要な価値のある学習となります。

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2024.03.21