社史とは?
意味や作成する意義を解説
- TOPPAN CREATIVE編集部
社史は、企業の創業来のできごとを、事業に関わった人物や商品、社会背景などをまじえながら、網羅的にまとめた史料です。
歴史的事象に加え、企業の理念や事業にかける思いを形にして伝えることにより、社員教育や販促戦略に活用できます。また、社史を編纂する過程で自社のあゆみをふりかえり、次の発展への刺激にもなる経営ツールです。
本記事では、社史の概要と意義、制作の流れや具体的事例について解説します。
社史とは
社史とは企業の歴史を記した史料です。企業の発展に関係した人物や商品などを含めて企業の変遷が網羅的に書かれた、いわば企業団体の公式記録です。
社史を効果的に活用すれば、社員の帰属意識を高めて組織の一体感を醸成したり、企業PRやブランディングに役立てたりすることができます。さらに、社史の制作過程で自社のあゆみをふりかえることで、今後の経営戦略や業務改善にもつながる多機能な経営ツールです。
はじめに、社史の主な形式と、社史と混同しやすい沿革との違いを整理していきましょう。
社史の形式
社史に関連する形式には、通史(正史)、略史、編年史、小史、外史、稗史の6種類があります。一般的なのは、通史(正史)または略史を用いたものです。
通史(正史) | 企業の創業から現在に至るまでの企業の歴史を網羅したもの |
略史 | 前回の発行以後の歴史を中心にまとめたもの すでに社史を発行している場合に用いられる形式 |
編年史 | 企業の歴史を1年ごとの時系列で記したもの |
小史 | 企業の歴史を特定のできごとや人物にフォーカスし、簡潔にまとめたもの すでに社史を発行している場合に用いられることが多い |
外史 | 企業の本部ではなく第三者や社員が独自に作成する社史 |
稗史 | 事実やできごとの根拠が特定できないものを集めてまとめた歴史書 |
社史と沿革の違い
社史とよく似た歴史を扱うものに沿革があります。沿革は、企業の歴史を年表でまとめるものが多く、単なるできごとの羅列にとどまります。
一方、社史はできごとだけでなく関係者のストーリーや企業の文化、ビジョンにも焦点を当て、企業としてのあゆみの全体像を読みやすくまとめていきます。
そのため、企業の歴史背景や、大切にしている文化、ビジョンなどを、読者に深く理解してもらうためには、沿革よりも社史のほうが適しているといえるでしょう。
社史を作成する意義
社史は、歴史的なできごとだけではなく、企業の理念や事業にかける思いを編んでいくため、企業の内外へさまざまな形で活用できます。
ここからは、社史を作成する意義についてみていきましょう。
企業のあゆみを後世に伝える
社史では創業来の歴史がまとめられます。創業に至るきっかけや経緯、新規事業の開発といった転換期の物語はもちろん、時代ごとの代表的な製品や社員の活躍、社会に与えた影響など、企業のあゆみや存在価値を形にし、後世に伝える手段となります。
また、社史の制作にあたっては、それまで積み重ねられた社内・社外の膨大な資料を収集・整理するため、企業の資産として残すべき資料や情報を選別する機会にもなるでしょう。
社員のモチベーションを高め、企業の一体感を醸成する
社史には企業の歴史だけでなく、事業に関わった人々の思いがストーリーとしてまとまっています。そのため、社員にとっては自社の創業から現在に至るまでの苦労や過去の教訓、理念やビジョンなどを体系的に学べる貴重な資料となるでしょう。
社史を読むことで社員のモチベーションや帰属意識、一体感が高まり、業務の活性化につながる可能性があります。
企業のPRやブランディング活動に役立てる
社史には創業来の社会的な役割や存在価値も編まれるため、社内だけでなく社外にも自社をアピールするブランディングツールになります。
社史を顧客や取引先などに配布すれば、自社の現在の姿だけでなく、過去の歴史やこれまでの社会貢献、未来のビジョンについても伝えることができ、信頼感や期待感を高めることが可能です。また、一般社会へ広げることにより、さらなるイメージアップや新規事業への進展も期待できます。
今後の経営改善や業務改善に役立てる
社史の制作は、自社に関する資料を社内外から収集し、整理するところから始まります。また、さまざまな関係者への取材などをとおして、成功事例はもちろん、事業の成り立ちや苦境に陥った際の経営判断などの具体的な事例を拾い、まとめていきます。
社史の制作過程で自社の経営や事業の軌跡を客観的に分析でき、今後の事業展開や業務改善など、企業経営に関するヒントが得られる可能性があるのです。
社史の基本の構成
社史は基本的に、口絵、本編、関連する資料、年表の4要素で構成されます。
下表は、それぞれの要素について簡潔にまとめたものです。
口絵 |
本編に関係する写真で構成 企業の現在の写真、歴史が伝わる写真、サービスや製品の写真など |
本編 |
社史の中心部分(企業の歴史) 事業・人物・商品・業界・地域などの視点で捉えたもの |
資料 | 社内資料、自社に関連する統計資料・業界資料、変遷図など |
年表 | 創立以来のできごとを時系列にまとめたもの |
社史制作の流れ
社史制作の進め方としては、下記の流れが一般的です。
1. 基本方針の決定(目的やメッセージを伝えたい対象の設定など)
2. 社史に掲載する資料の収集・整理
3. 取材
4. 執筆・校正
5. デザイン・レイアウト調整
6. 発行と配布
はじめに、社史を作成する目的や、誰にメッセージを発信したいかを明確にすることが重要です。制作の課程では膨大な情報を取捨選択しますが、基本方針がしっかりしていれば、一貫性があり、ストーリー性のある内容に仕上げることができます。
資料収集や取材だけでも相当量があり、社史の制作には時間がかかります。企画の段階から数えると年単位でのプロジェクトになることも多いため、周年記念で発行したい場合は時間に余裕をもって取り組みましょう。
TOPPANの社史の作成事例
ここからは、社史作成の具体的な事例をみていきましょう。
社史「TOPPAN120年史」
TOPPAN120年史は、TOPPANが創業120周年を迎えた2020年に発行されました。
120年の長い歴史をなるべくコンパクトにまとめること、読みやすい社史を目指すことを基本方針とし、中心読者を2000年以降に入社した従業員に絞り込んで制作を進めました。
特に力を入れたのが、TOPPANならではのデザイン性と印刷技術への思いをビジュアルに伝えることです。表紙に描かれた特徴的な球体のモチーフは、TOPPAN独自の技術であるアート彩紋®を採用。独特の奥行きや濃淡、動きを感じさせる輝きは、証券の偽造防止に使用される紋様など120年にわたって培ってきた印刷技術が生み出したアート表現です。
「株式会社大林組130年史」
大林組創業130周年記念誌は、創業から130年の歴史を概観しつつ、2011年からの10年に焦点を当てて企画が進みました。特設サイトの制作のほか、130年の歴史を一覧して体感できる永続的な媒体として記念誌が制作されました。
特設サイトはアニメーションなどWebの特長を活かし、記念誌では写真を中心に、複数の著名人によるエッセイを掲載するなどの付加価値をもたせました。
海外拠点の社員や顧客に読まれることも目指し、多言語展開も行っています。英語だけでなく中国語(繁体字)、タイ語、インドネシア語、ベトナム語などに対応し、各地で社会貢献活動の周知に活用されました。
社史制作ならTOPPANへ
社史は、企業の創業から現在に至るまでの歴史を、できごとや人物、商品などさまざまな観点から網羅的にまとめ、企業の理念やビジョンを後世に伝えます。
資料収集や編集作業が大掛かりになり、長期にわたるため、効果的な社史を完成させるには、早い段階から専門家のアドバイスを受けてとりかかることをおすすめします。
社史制作4,000件を超える実績をもつTOPPANでは、専門知識をもつディレクターが企画から製本まで伴走し、豊富なコンテンツ例と制作ノウハウをもとに、社史として最もふさわしい構成や媒体、デザインをご提案します。
1900年に創業した総合印刷会社として、高い製版技術によるクリエイティブ性の高い紙媒体での社史制作だけでなく、Webサイトへの展開、複数言語への対応も可能で、社史制作を通じた経営戦略を総合的にサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。
2024.07.09