Z世代マーケティングまとめ
戦略から手法、事例まで解説
Z世代を、日頃からマーケティングのターゲットとして重要視しているケースも多いのではないでしょうか。しかし、この世代を一概にひとくくりに定義することは困難であるほど、さまざまな特徴や考え方、消費傾向を持っています。
今回は、Z世代向けのマーケティングが求められる背景や基本戦略、具体的な手法について解説します。
<目次>
1.Z世代マーケティングとは?
2.Z世代マーケティングが求められる背景
3.Z世代マーケティングの基本戦略とは?
4.Z世代マーケティングの具体的な手法
5.Z世代マーケティングの成功事例
6.まとめ
1.Z世代マーケティングとは?

Z世代マーケティングとは、企業などがZ世代をターゲットに実施するマーケティング全般を指します。従来のマーケティング手法とは異なるといわれます。果たして、どのような理由でどのように異なるのでしょうか。まずはZ世代の傾向から確認していきましょう。
Z世代とは?
Z世代とは、1990年代中盤から2010年代前半に生まれた世代の総称です。年代の区切りは厳密に決まっているわけではなく、諸説あります。多くの共通認識として、この世代は、物心ついた頃からスマートフォンなどのデジタルデバイスとSNSに親しむ「デジタルネイティブ」であり、同時に「ソーシャルネイティブ」であるといわれています。
今後、本格的に社会活動および消費活動の中心的存在となることから、企業のマーケティング対象として年々、重要度を増しています。
Z世代向けマーケティングの特徴
後ほど詳しく解説しますが、Z世代向けマーケティングの特徴として、Z世代が従来の世代と異なった環境、つまりデジタルとSNSが当たり前にある中で生まれ育った点が挙げられます。その意味で、デジタルマーケティングとSNS活用は大前提となり、Z世代に対して多大な影響力を持つインフルエンサーの活用に期待がかかっています。
つまり、企業などは従来のマーケティング手法から脱し、新たなアプローチ方法で実施していく必要があるといえます。
2.Z世代マーケティングが求められる背景
では、なぜ今、Z世代マーケティングを行うことが求められているのでしょうか。その主な背景を見ていきましょう。
今後の消費行動の中心となる世代
国立社会保障・人口問題研究所によると、日本において、Z世代以降に生まれた世代が2030年には総人口の約3割に達し、2050年には約半数を占めるようになると推計されています。

Z世代とその後に続くα世代は今後の社会・消費活動の中心になっていきます。そのため、今のうちからZ世代を中心にテストマーケティングを重ね、ある程度成功法則を見出していく必要があるでしょう。
従来のマーケティング手法が通用しなくなる恐れ
Z世代以降はそれより前の世代とは異なる新しい価値観を持っているといわれています。そのため、今後、従来の価値観で立案したマーケティング戦略では、通用しなくなってくるリスクがあります。したがって、新たなマーケティング手法にシフトしていくという意識と体制づくりが早急に求められています。その意味で、あえてZ世代マーケティングという言葉が叫ばれていると考えられます。
3.Z世代マーケティングの基本戦略とは?

Z世代マーケティングの基本戦略をご紹介します。
SNSを全面的に活用する
先述の通り、Z世代はソーシャルネイティブであり、常日頃から情報収集の手段としてSNSには慣れ親しんでいます。その意味で、マーケティング戦略は公式サイトなどのデジタル広告やOOH広告(屋外広告・交通広告)を活用しつつも、SNSを中心にとらえることが基本といえるでしょう。
信頼性・透明性を担保する
Z世代は、経済的に不況の最中や東日本大震災などの不安定な時代に育ってきたこともあり、保守的で現実的な経済志向があるといわれています。またSNSで培った共感性の高さもあり、信頼性や透明性を担保することが重要です。
企業・ブランドの価値観と使命を前面に押し出す
多様性を重んじる傾向や、その商品を購入する「意味」を見出す「イミ消費」を好む傾向があるZ世代に対しては、積極的に企業・ブランドの価値観や使命を押し出すことがポイントといえます。
共感・親近感を重視
共感性の高さから、より深い共感を促すコミュニケーションもZ世代には向いているといえます。より親近感のわく、ユーザーの生活に密着したストーリーでコミュニケーションを作り出すことが有効といえるでしょう。
Z世代のトレンドを押さえる
Z世代ならSNSで発信すれば誰もが興味を持つわけではありません。トレンドの波というものがあり、Z世代もそれに基づいて情報収集するものです。トレンドを押さえるための手段を検討するのもおすすめです。
社会問題や環境問題への配慮
インターネットが定着しており、グローバルな視野を持つZ世代は社会問題や環境問題が身近に感じられる側面があるため、企業がSDGs(※1)などを意識して、社会問題や環境問題への配慮を常日頃から実践することが必要といえます。
※1 SDGs:「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、貧困や不平等、環境破壊などのさまざまな問題を解決し、持続可能でより良い社会の実現を目指す世界共通の目標。
タイパの良さや効率性を持たせる
Z世代の周囲には、常に膨大な情報やコンテンツがあふれており、すべてに触れていると時間を無駄にしてしまいます。そこで自分にとって本当に有用で必要な情報に短時間でたどり着き、目的を効率よく達成できる「タイパ(タイムパフォーマンス)」が求められています。コンテンツ提供やコミュニケーション面においてもタイパを意識することが重要です。
3.Z世代マーケティングの具体的な手法

Z世代マーケティングの手法を示します。
インフルエンサーの活用
SNSへの親しみ、共感性の高さ、自身の価値観や信念に基づいて行動する特性から、インフルエンサーの生の声はZ世代に大きな影響を及ぼします。似ている情報でも、企業発信よりもインフルエンサー発信のほうが響く傾向があるでしょう。
シェアしたくなるコンテンツ
多くのSNSは共感したら「シェア」する機能も備えているため、Z世代には「シェアしたい」意識も高いといわれています。そのため、Z世代に刺さるだけではなく「シェアして一緒に楽しみたい」と思わせるユーザー参加型キャンペーンなどが有効といえるでしょう。
「イミ消費」のための「意味」の提供
物質的な所有欲を満たす「モノ消費」から、体験に価値を置く「コト消費」、そのときにしか体験できない価値を重視する「トキ消費」を経て、近年は「イミ消費」がZ世代の間でトレンドとなっています。イミ消費とは、例えば、大震災の被災地支援のために商品を購入するなど、その消費活動を通じて「意味」が得られる消費活動を行うことです。マーケティング施策としては、何らかの「意味」を提供する仕掛けを検討するのもおすすめです。
チャネルの使い分け・オムニチャネル
顧客接点の多様化が進む中、SNSのほか、公式サイトやECサイト、リアル店舗、OOH広告といったさまざまなチャネルを使い分け、オムニチャネル(※2)化を図り、シームレスなコミュニケーションを設計するのもおすすめです。SNSキャンペーンを電車広告でアピールしたり、リアル店舗のセールと連動させたりすることで多様な入口によるZ世代とのコミュニケーションを可能にします。
※2 オムニチャネル:顧客接点となる複数のチャネルを統合し、連携させることで販売を促進するマーケティング手法。
4.Z世代マーケティングの成功事例

Z世代の特徴と傾向をうまくとらえることで、成功したマーケティング事例を3つご紹介します。
メタバース空間の提供と店舗送客プロモーション
総合小売イオンリテール様では、Z世代向けの新たな店舗送客の手段を模索する中、メタバース空間を活用したプロモーションを行いました。
メタバースにおいては、夏祭り会場での巨大射的ゲームや、リアル店舗を模したバーチャル食品売り場での買い物競争ゲームなどを提供し、純粋にコンテンツを楽しめるようにしました。さらにメタバース内で見つけた合言葉をメモしておき、リアル店舗に出かけた際に、掲出されているポスターのコードを読み取ってアクセスすると、Z世代に人気のVTuber(バーチャルYouTuber)の限定描き下ろし壁紙をGETできる仕組みにし、これまでになかった層の店舗送客を実現しました。
TOPPANでは、イオンリテール様のメタバース空間を活用したプロモーションの全体設計から施策実行、運用・効果測定、改善といった一連のPDCA運用を伴走支援しています。
リリックビデオで技術職の認知度向上
ある専門技術者の認知向上に取り組む団体は、入職を促進するために、Z世代に親しまれている「リリックビデオ」と呼ばれる、楽曲の歌詞を表示するミュージックビデオの形態でオリジナル動画を発信しました。各地域にある団体の拠点ごとに技術者や風景が実際に撮影され、楽曲はAI(人工知能)が作ったものをベースとして制作されました。
歌詞には、仕事のやりがいやプライドなどのメッセージを込めることで、職種の認知度向上を促進するだけでなく、より心に響くコンテンツにしています。
UGCコンテンツの投稿促進
あるECサイトは、インフルエンサーを活用し、インフルエンサーが割引セールで購入した商品レビューなどのプロモーション動画を発信することで、PR色を薄める施策を行いました。さらに、それを見た一般ユーザーたちが「インフルエンサーが購入していた商品○選」などのUGC(※3)コンテンツをぞくぞくと投稿したことも、マーケティング戦略の一環となっています。
※3 UGC:「User Generated Content」の略称で、一般ユーザーによって作られたコンテンツのこと。
5.まとめ
ソーシャルネイティブといわれるZ世代向けのマーケティングは、SNSを全面的に活用することや、共感性や信頼性を担保しつつ、価値観や使命を誠実に発信していくことが重要といわれています。またタイパや効率的な情報提供とコミュニケーションが、多くのZ世代との接点を生むでしょう。
Z世代へのアプローチには、前提となる傾向分析が欠かせません。Z世代マーケティングでお困りの方は、TOPPANのミレニアルズ・Z世代向け顧客起点のコミュニケーションデザインサービスにご相談ください。詳細は、サービスページをご覧いただくか、お気軽にお問い合わせください。
2025.04.23