インナーブランディングの進め方は?
基本的な流れと成功させるポイントを解説
インナーブランディングを進めることは、従業員に自社への愛着が生まれ、モチベーションアップなどの組織の生産性向上につながるため、とても有効です。人材獲得競争が進む昨今、新しい人材を確保するのはもちろん、従業員の定着化にも寄与することから、企業にとって重要な施策の一つとなっています。
今回は、インナーブランディングの定義や具体的な施策、進め方のステップ、直面する課題、課題を解決するポイントをご紹介します。
インナーブランディングとは?

まずはインナーブランディングの定義と具体的な施策をご紹介します。
インナーブランディングとは?
インナーブランディングとは、自社の従業員に対して、企業理念や価値観を浸透させる活動全般を指します。理念や価値観を浸透させることで、組織全体の一体感を醸成し、企業戦略や事業目標を達成しやすくするために行います。
インナーブランディングで期待するのは、ただ理念を社内に説明するだけに留まらず、従業員が理念などを理解し、体現できるようになることです。
インナーブランディングの具体的な施策
インナーブランディングの具体的な施策は、企業によって異なりますが、一般的には次のものが挙げられます。
①社内報/社内ポータルの展開
社内報や社内ポータルは社内での情報共有に有効な手段ですが、単なる情報共有に留まらず、経営者からのメッセージを伝えたり、ディスカッションなどのコミュニケーションを行ったりする場でもあります。
②社内イベントの開催
社員旅行や新年会・忘年会、スポーツ大会、バーベキュー大会などの開催も、仕事から離れた場所での従業員同士の貴重なコミュニケーションの場となります。組織の一体感の醸成にもつながるでしょう。
③表彰制度の創設
特に理念を体現した従業員の成果を表彰する場を特別に設けることで、どのような行動や成果が会社に喜ばれるのかを従業員が知ることができるため、モチベーションアップにつながります。
④ビジョン浸透プログラムの実施
ビジョン浸透プログラムとは、特に企業のビジョンを伝える研修やワークショップなどを指します。インナーブランディングを根底から行う重要な機会です。
インナーブランディングの進め方・基本的な流れ

インナーブランディングの基本の進め方を、順を追って解説します。
1.社内の現状分析・課題の洗い出し
インナーブランディングを実施するに至る理由としては、「離職率が上がっているので下げたい」「従業員の行動に一貫性を持たせたい」などさまざまなものが考えられます。どのような課題に直面しているのかを具体的に洗い出します。
また現在、企業理念、価値観、ミッションなどが社内にどの程度浸透しているのかを測定し、曖昧なまま放置されている項目があれば明確化するなどの準備が必要になります。
2.目標設定
インナーブランディングの目標を設定します。インナーブランディングは定量的に測定しにくい側面があることから、目標を明確にしなければ、曖昧なまま終わってしまいます。もしくは実施することそのものが目的となってしまいます。
目標を設定するポイントとしては、インナーブランディングを行う対象の階層別に設定することです。
階層 | 目標の例 |
会社/組織 | 「組織の一体感を醸成する」「離職率を下げる」 |
管理職 | 「リーダー層の行動を変革させる」 |
従業員 | 「一般社員のモチベーションを高める」「新入社員の企業理解促進」 |
3.戦略・施策立案
目標に基づき、戦略と施策を立案します。この場合も階層によってアプローチ方法が変わってくるため、対象者別に検討することが重要です。例えば、次のようなアプローチ方法と施策が考えられます。
階層 | アプローチ方法 | 施策例 |
会社/組織 | トップダウン | 社内報や動画などによる経営層からの発信・繰り返し訴求 |
管理職 | ハイブリッド | ビジョン・ミッション・バリュー(価値観)に関するリーダーシップトレーニング |
従業員 | ボトムアップ | 参加型ワークショップでパーパスを自分ごと化・実践できるようにする |
4.実行
戦略に基づき、施策を実行します。
5.効果測定
あらかじめ効果測定方法についても検討しておきましょう。
インナーブランディングの効果測定方法としては、社内アンケートや直接のヒアリングなど様々な方法があります。具体的な方法はKPIの設定方法と共に後ほどご紹介します。
インナーブランディングを進める際に直面する課題

インナーブランディングを進める際に、直面しがちな課題を見ていきましょう。
目に見える効果が現れない
インナーブランディングを進めても、目に見える明確な効果が現れないということはよくあります。
原因は、インナーブランディングはそもそもすぐに効果が出るものではないという理解が不足している点、中長期的に取り組む戦略やKPI設定ができていない点などが挙げられます。インナーブランディングは、従業員への理念浸透といった時間を要する取り組みであるという理解を持ちましょう。
価値観を強要しすぎることによる従業員からの反発
残念ながら、インナーブランディングを強力に進めたいあまりに、経営層から企業理念やビジョンを強要しすぎることで、従業員からうっとうしく思われてしまうケースもあります。
そもそもインナーブランディングは従業員に共感を促し、自ら積極的に体現してもらうものであり、各個人の価値観を否定してまで進めるものではありません。大前提の理解が必要です。
施策にリソースを割けない
インナーブランディングの取り組みは、普段の事業活動に関わる業務とは異なるところで行う活動であると同時に、社内向けの施策であるため、どうしても事業活動が優先になりがちです。人的・時間的リソースが割きにくいこともあるでしょう。
専門的知見に欠ける
インナーブランディングには専門的な知見が求められるものの、それに対する知見が自社内にない場合、手探りの独自手法で進めて本当に効果が出るのか不安を覚えることもあるでしょう。
インナーブランディングの課題を解決して成功させるポイント

インナーブランディングの課題を解決して成功させるポイントをご紹介します。
ターゲットと目的・目標の明確化
インナーブランディングは中長期的に計画し、対象となるターゲットと目的・目標を明確にすることが重要です。
行動変革に至るまでの心理的プロセスにおけるKPIの設定
施策を実施しながら、従業員が企業の理念や価値観にどれだけ共感し、内面化しているかを定量的に把握することが重要です。最終目標は、従業員の行動変革にあります。
行動変革に至るまでの心理的プロセスは次のようになります。
「認知・理解」→「共感/自分ごと化/行動方法の理解」→「行動」
このプロセスを定量的に測定するには、KPIを設定することがポイントです。
KPI例:
①従業員満足度②従業員エンゲージメント③社内推奨率④チームパフォーマンス など
KPI測定手法:
①社内アンケート
「企業理念を説明できるか」などを問い、数値化します。研修の一環として、eラーニングを使用した理解度調査やアンケートを実施することも有効です。
②ヒアリング
直接従業員に企業理念を尋ねたり、共感度をヒアリングしたりします。
③社内コミュニケーションツールの活用状況調査
社内で利用しているMicrosoft TeamsやSlackなどのコミュニケーションツールの利用頻度をアプリ側から取得し、活用状況を調査することで、社内コミュニケーションの変化を把握できます。
※Microsoft TeamsはMicrosoft Corporationの登録商標です。
※SlackはSlack Technologies,Incの登録商標です。
④顧客満足度調査
従業員が会社やブランドの理念を体現しているかどうかは顧客にアンケートを取ることでも把握できます。特に顧客満足度の数値に変化が見られることもあるため、有効な測定手法です。
一回きりで終わらせない
施策を実施する際には、一回きりで終わらせないこともポイントです。
例えば社内イベントを開催しても、実施する側が「やった」という満足を得るだけでは終わらせず、効果測定を行うとともに、最適な多数の手段で確実に浸透させる戦略的な取り組みが功を奏します。
受動と能動のバランスを重視する
経営層からのメッセージなどの「伝える」施策だけではなく、当事者として「考えさえる」施策も大事です。
例えば、企業理念浸透研修で「このようなシーンでは顧客にどのように対応するか?」などを問い、チームでディスカッションさせることなどが挙げられます。
このように受動と能動のバランスを重視することで、効果が期待できます。
多様な価値観の尊重
インナーブランディングは、価値観や考え方を浸透させるものであるため、大前提として、個人の価値観を尊重するスタンスが重要です。
専門家への相談・委託
インナーブランディングを実施する際にリソースに負担を感じる場合は、外部委託の検討も有効です。
専門的な知見と実績から、有効な施策を率先して実施できるのもメリットです。
まとめ
インナーブランディングの進め方と課題、成功のポイントをご紹介しました。重要なのは、対象と目標をあらかじめ明確にすること、そして中長期的に、KPIをとらえながら受動・能動などのバランスがとれた施策を実施し続けることにあります。
しかし、実施にあたっては専門的知見やリソース面でまだまだ課題が残ることもあるでしょう。その場合は、お気軽にTOPPANにご相談ください。
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2025.08.19