インナーブランディングとは?
目的からメリット、手法まで基礎知識を
まとめて解説
近年、社内に企業理念や価値観を浸透させる活動であるインナーブランディングが注目されています。労働力不足の加速を背景に、多様な雇用形態が認められるようになり、人材の流動性が増す中、企業は組織目標を達成するために、一体感を生み出す必要があります。
インナーブランディングは、社内の結束を高めるために欠かせない時代に合った施策といえます。
今回は、インナーブランディングの定義や目的、注目される背景から実施のメリット、具体的な手法、成功のポイントを解説します。
インナーブランディングとは?

まずはインナーブランディングの概要を確認しておきましょう。
インナーブランディングとは?
インナーブランディングとは、主に自社の従業員を対象に、企業理念や価値観を伝え、浸透させる活動を指します。「インターナルブランディング」と呼ばれることもあります。
「ブランディング」といえば、一般的に社外の消費者や顧客などに向け、企業やブランドなどに対して行う活動ですが、これを特に「アウターブランディング」と呼び、インナーブランディングと反対の意味で使います。
また、「エクスターナルブランディング」と呼ばれることもあります。
インナーブランディングの目的
インナーブランディングを実施する目的は、社内に企業理念を浸透させることで、様々な効果を得ることにあります。
厳密にいえば、目的はインナーブランディングを実施する企業ごとに異なります。
インナーブランディングによって得られる効果やメリットについては、後ほどご紹介します。
インナーブランディングが注目される背景
近年、インナーブランディングが多くの企業に注目されており、活動が推進されています。
その背景には、主に「労働力不足」や「採用市場の競争激化」、「人材の流動化」が挙げられます。
少子高齢化による労働力不足や採用市場の競争激化が起きていることから、企業は優秀な人材をできるだけ多く確保する必要があります。しかし、多様な働き方やキャリア観が生まれていること、終身雇用制度の終焉などから転職しやすい状況となっており、人材の流動化が進んでいます。
そのため、企業はインナーブランディングを進め、自社の理念やビジョン、価値観に共鳴する従業員を増やし、組織の一体感を生み出し、成果を創出する必要があります。
インナーブランディングのメリット

インナーブランディングを社内で進めるメリットをご紹介します。
自社への愛着向上・従業員エンゲージメント向上
インナーブランディングを進めることは、近年、重要視されている従業員エンゲージメント向上につながります。
従業員エンゲージメントは、大きく「仕事へのやりがい・情熱」と「企業理念への共感・愛着・貢献意欲」の2つで構成されています。自社への愛着と理解度が増せば、より仕事への情熱が高まり、他の従業員を刺激し、良い影響を与えます。
自社への理解促進・仕事の生産性向上
インナーブランディングで従業員に理念や価値観を浸透させることは、企業にとってのメリットだけではなく、従業員自身にとっても、組織で働くことのやりがいが増すというメリットがあります。モチベーションが上がれば、仕事の生産性も上がるでしょう。その結果、組織全体の生産性向上が実現します。
社外への企業のブランドイメージアップ
自社の企業理念を体現する従業員が営業活動や接客、取引先との交渉など社外に出ていけば、企業のブランドイメージが正しく伝わります。また、このような従業員はブランドの価値観を大切にすることから、ブランドイメージアップにもつながるでしょう。
離職率低下・優秀な人材の確保
自分の所属する組織の魅力を理解している従業員が多くいる職場と、そうでない職場とでは、どちらがイキイキとした職場になるでしょうか。当然、前者でしょう。
「いつまでもこの会社で働き続けたい」「こんな会社で働いてみたい」と本気で実感できる職場になれば、自然と離職率が低下し、優秀な人材が集まってくるのではないでしょうか。
インナーブランディングの手法

インナーブランディングの代表的な手法をご紹介します。
情報共有の強化
【社内報、社内ポータル、社内ポスター、理念ブック、ムービーなど】
情報共有を強化する取り組みです。経営者や従業員の取り組みに関するトピックスを幅広い情報を発信できるのが特徴です。部署・部門間を超えた情報共有が可能になることもメリットです。
ムービーでは、社内風景や経営者のメッセージ、従業員インタビューなどを通じて各人の活躍にスポットを当てることで、一体感を生み出します。
企業理念・ビジョン浸透
【携帯カード、ノベルティグッズの配布、研修、ムービーなど】
従業員が各自で身に付けられるポケットサイズの携帯カードやノベルティグッズを配布することで、自社のシンボルを携帯することができるので、理念やビジョンの浸透に役立ちます。
企業理念やビジョンを浸透させる集合研修やeラーニングといった、直接考えを伝える場も重要です。従業員同士が話し合いながら実施するワークショップもおすすめです。
社内交流・コミュニケーション活性化
【社内イベント、経営者とのオンライン座談会など】
情報共有に留まらず、リアルの場で交流を深めることにより、結束が深まります。
全社的なイベントであれば部署・部門の垣根も取り払われ、より一体感を生み出すことができます。また従業員同士だけではなく社長とのオンライン座談会を選抜メンバーで実施するなど、経営トップとの直接の交流の場を設けることも重要です。
モチベーションアップ
【表彰制度など】
企業理念を体現した行動を取った従業員を表彰する機会を設けることで、従業員が企業理念やビジョンを理解・共感する際のモチベーションを上げることもできるでしょう。
顧客経由
【顧客からのフィードバックの全社共有など】
顧客から企業理念が反映された行動を褒められたなどの嬉しいフィードバックを、全社的に共有することは多大な効果を生み出します。
インナーブランディングの成功ポイント

インナーブランディングの課題を解決して成功させるポイントをご紹介します。
ターゲットと目的・目標の明確化
インナーブランディングを実施後、短期的に効果を期待するのではなく、中長期的に計画しましょう。まずは対象となる組織、管理職、従業員といったターゲットと目的・目標を明確にすることが重要です。
行動変革に至るまでの心理的プロセスにおけるKPIの設定
インナーブランディングの効果測定はむずかしいイメージがありますが、従業員が企業の理念や価値観にどれだけ共感し、どれだけ内面化しているかを定量的に把握することは可能です。
最終目標は、従業員の行動変革にあり、行動変革に至るまでの心理的プロセスは次のようになります。
「認知・理解」→「共感/自分ごと化/行動方法の理解」→「行動」
このプロセスを定量的に測定するには、KPIを設定することがポイントです。
KPI例:
①従業員満足度②従業員エンゲージメント③社内推奨率④チームパフォーマンス など
KPI測定手法:
①社内アンケート
「企業理念を説明できるか」などを問い、数値化。研修の一環として、eラーニングを使用した理解度調査なども有効。
②ヒアリング
直接、従業員に企業理念などを尋ねる。
③社内コミュニケーションツールの活用状況調査
ツールの利用頻度をアプリ側から取得し調査。
④顧客満足度調査
従業員が会社やブランドの理念を体現しているかどうかを顧客アンケートにより把握。
一回きりで終わらせない
施策を実施する際には、一回きりで終わらせないこともポイントです。実施する側が「やった」という満足を得るだけでは終わらせず、効果測定を行うとともに、最適な多数の手段で確実に浸透させる戦略的な取り組みが重要です。
受動と能動のバランスを重視する
受動と能動のバランスを重視することで、効果が期待できます。経営層からのメッセージなどの「伝える」施策だけではなく、当事者として「考えさえる」施策も大事です。
多様な価値観の尊重
従業員からの反発を予防するために、大前提として、個人の価値観を尊重するスタンスを持つことが重要です。
専門家への相談・委託
インナーブランディングを実施する際にリソースに負担を感じる場合や、専門的な知見により効果的な施策を行いたい場合は、外部委託の検討も有効です。
専門的な知見と実績から、有効な施策を率先して実施できます。
まとめ
インナーブランディングの概要や具体的な施策、成功のポイントをご紹介しました。
ご紹介した施策はあくまで一例であり、実際は自社にとって最適な施策を検討することが大切です。そして、対象と目標をあらかじめ明確にし、中長期的にKPIをとらえながら受動・能動などのバランスがとれた施策を実施し続けることが重要です。
しかし、実際に推進する場合、専門的知見やリソース面でまだまだ課題が残ることもあるでしょう。その場合は、お気軽にTOPPANにご相談ください。
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ミッション・ビジョン・バリュー・行動指針等の策定、社内コミュニケーションツールの評価・見直し、社内コミュニケーション企画の立案、社内コミュニケーションツール制作など総合的にご支援することが可能です。
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2025.08.19