エクスペリエンスデザインサービス イベントレポート

『至高のCX
生活文化の形成を見据えた
「新しい顧客体験」の戦略と実装』
発刊記念セミナー

近年、AIを活用した効率化・最適化の追求により、結果として商品やサービスが提供する価値の均質化が進み、差別化が難しくなっていくことが予想されています。
こうした状況を打破するためには、既存市場での競争に留まらず、生活者の潜在的な欲求や課題を起点に新たな市場を創出する視点が求められます。さらに、その価値が生活者に認識・評価され、その暮らしや社会へ定着していくには、多様なステークホルダーを巻き込んだ顧客体験を描いていくことが重要になります。

その実現に向けてTOPPANは、2026年5月25日に新刊『至高のCX』を株式会社インテグレートと共著いたしました。今回は、その発刊を記念して、書籍内で提唱する「価値創生CX」について、理論や実装プロセスをご紹介するとともに、実務にどのように取り入れていくべきかセミナーにて講演を行いました。ここでは講演のサマリー内容をご紹介します。

なお、書籍執筆者・登壇者によるパネルディスカッションの全貌は資料DLが可能ですので、是非ご覧ください。
【イベントレポート】『至高のCX 生活文化の形成を見据えた「新しい顧客体験」の戦略と実装』発刊記念セミナー~パネルディスカッション編~のバナー画像


〈プログラム〉
Topic1:【オープンニングトーク】AI時代の「最適化の罠」を突破する次世代CX戦略
Topic2:【キーノートスピーチ】マーケティングの常識が通用しないAI時代に、必要な商品・サービスの新たな価値創生とは?
Topic3:【キーノートスピーチ】価値創生CX│実践編
Topic4:【パネルディスカッション】


書籍執筆者・セミナースピーカー

TOPPAN株式会社
情報ソリューションBU マーケティングDX事業部
エクスペリエンスデザイン本部

服部 憲

広告代理店にて15年間コミュニケーション戦略を担当。帰任後は様々な業界の事業戦略・ブランド戦略立案に携わりながら、市場・顧客起点の価値設計を強みに、生活者一人ひとりの幸せを分析し「売れ続ける仕組み」を創造するCX戦略案件を多数リード。また、若者視点でのマーケティングや地域創生を実践する。

TOPPAN株式会社
情報ソリューションBU マーケティングDX事業部
ビジネストランスフォーメーション本部

亀井 光則

広告会社のクリエイティブ部門で10年経験の後TOPPANへ。商品・パッケージ企画から、ブランディング支援、WEBおよび店舗販促まで多様なマーケティング施策を担当。データ駆動型のCX戦略立案を得意とする。ACC、カンヌライオンズ、CLIO、OneShowなど受賞。スパイクスアジア、JPMなど審査員経験も多数。

株式会社インテグレート
戦略コンサルティング事業本部
CXデザイン部

川又 大二郎 氏

総合広告代理店のストラテジックプランナーとして、企業ブランド構築・商品開発・統合コミュニケーション戦略の立案など、企業活動の様々なレイヤーにおけるマーケティング支援に従事。現職では、Well-being目線で人々の生活行動を捉えたCX戦略なども含め、新たな視座の元でビジネス開発支援や価値創造プロジェクトを推進。

株式会社インテグレート
戦略コンサルティング事業本部
アナリティクス&データ部

白井 俊行 氏

外資系広告代理店複数社を経て、CRM・デジタル領域のアナリスト経験と、クライアントのビジネス課題をコミュニケーションで解決するストラテジックプランナーとしての経験の両方を20年近くにわたり積む。戦略立案、KPI策定、調査設計、行動ログ分析、予測モデル構築に加え、事業側とデータ側を橋渡しする立場でのプロジェクト参画も多い。

株式会社インテグレート 
代表取締役CEO

藤田 康人 氏

味の素株式会社を経て、ザイロフィンファーイースト社(現ダニスコジャパン)の設立に参画。キシリトール・ブームを仕掛け、製品市場をゼロから2000億円規模へと成長させた。
2007年、IMC(統合型マーケティング)プランニングを実践する、マーケティングエージェンシー 株式会社インテグレートを設立。

 


Topic1:【オープンニングトーク】AI時代の「最適化の罠」を突破する次世代CX戦略

●「『至高のCX』の話と思いきや、根底にあるのはAI時代におけるマーケティングのあり方である」——株式会社インテグレート:藤田社長の投げかけから本セミナーは始まりました。

藤田氏:新著のテーマである「至高のCX」の根底には「避けては通れないAIの存在」があります。AIの急速な浸透により、顧客の購買行動や企業のあり方は根本から変わりつつあります。「エージェントコマース」に代表されるように、AIが特定ブランドのみを推奨する世界では、新しいブランドの参入やAIを通じて生活者との接点をつくるマーケティング活動はきわめて困難になります。

現在、多くの企業がAIを導入して広告運用等を効率化していますが、欧米の最新動向を見ると、これは決して「バラ色の未来」というわけではありません。AIは既存データの延長上で短期的な最適化を行うため、最初はパフォーマンスが上がることがあっても全てのプレーヤーが導入すれば同質化します。人件費やオペレーションコストが下がることで過酷な値下げ・コスト競争が始まり、その結果、価格競争とボトムラインの引き下げが加速し、市場全体が縮小していく「負のスパイラル」に陥る懸念が指摘されています。欧米の識者は、マクロ経済学観点での市場の縮小や人間の思考・創造性の低下といったリスクに強い警戒感を示しています。

藤田氏:こうした時代において、我々はどうすべきか。まずAI導入は、既存市場の最適化という短期的な生存戦略として「今日の飯を稼ぐ」ための「必要条件」ですが、AI単独で「未来の飯」となる新しい市場を生み出すことはできません。

したがって、マーケターが取り組むべき唯一の道は「AIの外」で新しい価値や市場を創出することです。顧客が自覚している「顕在ニーズ」の分析や対応は、すでにAIの方が高精度かつ低コストで処理できます。一方で、顧客自身が言語化できていない「潜在ニーズ」を捉え、非連続で非合理的なアイデアから新サービスや新ブランドを生み出すことは、人間にしかできません。ここではクレイトン・M・クリステンセン氏らが提唱した「ジョブ理論」などを活用し、顧客の本質的なニーズを捉える人間の深い洞察力が必要とされます。

AIへの過度な依存は、経営判断を短期的かつ合理的な投資へと偏重させ、中長期的・非合理的な新規事業開発や研究開発への投資を阻害する危険があります。AIによる効率化で足元を固めつつ、AIが及ばない領域で、経済学者ヨーゼフ・シュンペーター氏が示した「新結合(イノベーション)」を起こしていくことこそが、マーケターや企業に求められる新たなCX戦略として重要となるのです。

●さらに、AI時代のマーケティングにおいて非常に重要な要素として「広告」のあり方について切り込みました。

藤田氏:皆さんご存知のように、AIは広告を基本的にはあまり評価をしません。広告やインフルエンサータイアップはAIから評価されず、企業が放つ「ノイズ」として扱われるという話もあります。さらに、ソーシャルメディアに使われていた生活者の可処分時間はChatGPT等のAIに奪われ、従来のSNSマーケティングもリーチが難しくなっていきます。こうした状況下でAIが高く評価するのは、口コミや第三者メディアに取り上げられるような、公共性・信頼性の高い情報です。

こうした「コントロールできない世界」で重要なのが、AIを介さない非デジタル領域を含め、AIによる最適化を超えて新たな価値を生み出すCX(顧客体験)です。これは従来のUI/UXのように、既存の体験を最適化するだけでなく、生活者自身もまだ気づいていない潜在的なニーズを捉え、「欲しい」という新たな欲求を生み出す発想が求められます。

マーケターや企業は、AIがもたらす社会変革や経済の根源的な変化に対し、AIの外側で豊かな未来を作っていくための新たな取り組みに向き合っていく必要があるのです。それがこの「至高のCX」です。


Topic2:【キーノートスピーチ】マーケティングの常識が通用しないAI時代に、必要な商品・サービスの新たな価値創生とは?

●続いてTOPPAN:服部より、まずは前提となる「CX(顧客体験)の本質」についての整理から紐解いていきました。

服部:ここで改めて、そもそもCXとは何でしょうか?
CXはUI/UX改善やイベント等の単発施策と捉えられがちですが、本質は単なる体験接点の設計ではなく、ブランドと生活者との時間軸のなかで、顧客と継続的で良好な関係を築き上げていく取り組みこそがCXの真の価値であると考えます。

服部:購買前から購買後まで、オンライン・オフラインを問わず、生活者がブランド価値に気づいてくれて、買い続けたいという動機を生み出す包括的な体験設計だけでなく、重要なのは、「顧客と生涯にわたってつながり続けること」です。
そのためには、商品の機能性を超える期待感を届けて企業の提供価値を絶えずアップデートし、ブランドの魅力を更新し続けなければなりません。この価値を更新し続ける「循環型CXデザイン」を通じて、顧客のLTV(顧客生涯価値)を最大化していくことこそが、本来目指すべきCXの姿です。

●AI主導のマーケティングが加速する中で、「なぜ、新しいCX戦略が必要なのか」

服部:生活者が購買の意思決定にAIを活用するようになりつつある中、AIの推奨だけに左右されず、生活者が自ら「ブランドを選びたい」と思う体験設計が重要となります。効率化された正解を提供するAIには不可能な「人間の非合理な感情を捉えた非連続な体験」を通じ、価値を提供し続けて絆を作るCXこそが、選ばれ続ける原動力となるのです。

また、マーケターにとってAIによる情報の最適化や顧客のパーソナライズ化はマーケティングの効率化をもたらす一方、過去データに基づく最適化情報に頼っていては顕在化された市場の奪い合いを招き、持続的な収益構築を困難にします。この「最適化の罠」を抜け出すには、AIに効率化を委ねつつも、データに表れない人間の感情や生活の変化をマーケターの観察力・共感力で読み解くことが欠かせない。生活者自身も気づいていないジョブ(未解決・未充足な課題)を捉え、心に響く体験を通じて新市場を創出・拡張し、ブランドを生活文化として根付かせる「価値創生CX」が不可欠なのです。


Topic3:【キーノートスピーチ】価値創生CX│実践編

続いて、インテグレート:川又氏より、具体的にどう落とし込んでいくのか「価値創生CX実践編」を説明しました。

川又氏:一般的なCXが購買前の体験やUI/UX改善にとどまるのに対し、「価値創生CX」はアプローチのスコープが異なります。私たちが課題と捉えているのは、多くの企業におけるCXのスコープ(対象範囲)の狭さです。既存のCXは「顕在化したニーズ」の奪い合いになっており、以下の視点が十分に取り入れられていません。

●商品を認知させる前に、顧客が気づいていない課題に目を向け、「新しい認識」を生み出す視点
●商品の購入に留まらず、それが「生活習慣や文化」として定着するまでを設計する視点
●単に商品を売るための短期的な体験設計ではなく、社会的な課題を顕在化させ、新たな選択軸を提示する視点

川又氏:お客様側の扱っている商材によって、手前に課題があるのか、もしくは後半にあるのかによって、どこに力を入れていくべきかは変わってきますが、その全体感としてこの一連の流れを見ていくところが、「価値創生CX」のスコープです。認知の手前にある「課題の顕在化」から、購買の先の「文化の形成」までを統合する「価値創生CX」の実践編としてこの4ステップを踏まえるべきだと思っています。

①未充足なジョブの特定:顧客の未解決な課題や欲求を洗い出す。
②問いと答えの構造化:課題を世の中に顕在化させる問いを立てる。
③ストーリーの構築:新たな価値を社会に浸透・定着させるためのストーリーを設計する。
④ステークホルダーの巻き込み:専門家や自治体を巻き込みエコシステムを築く。

例えば、「キシリトール」は「虫歯は予防できる」という認識を歯科医と共に広げて市場を創出しました。また「WARBY PARKER」は眼鏡の民主化を唱え、Eyeケア文化を形成しました。

川又氏:「価値創生CX」の本質は、商品認知から始まるマーケティングを脱却し、潜在課題を顕在化させて市場そのものを創り出すことにあります。その市場を文化として生活に定着させることで、企業は創出した市場を専有できる可能性が高まります。自社商材が解決し得る、生活者自身も気づいていない課題に目を向け、「課題顕在化」と「文化形成」へと視野を広げてCXを再設計することが、これからの時代に持続的な競争優位性を築くための鍵となります。



Topic4:【パネルディスカッション】

執筆者・スピーカー登壇者4名が、
●「新しい顧客体験」は生活の中から発信できる!
●「価値創生CX」とは何か?
●「至高のCX」を実現するために必要なこと

の3テーマを元にディスカッションをしました。

貴重なディスカッション内容の詳細は、こちらから資料DLが可能です。
【イベントレポート】『至高のCX 生活文化の形成を見据えた「新しい顧客体験」の戦略と実装』発刊記念セミナー~パネルディスカッション編~のバナー画像


2026.09.30