コーポレートブランディングを強化する
6つのステップ
――経営ビジョンを“見える化”する方法
「自社の強みが顧客に正しく伝わっていない」「競合他社との価格競争から抜け出せない」「優秀な人材の採用に苦戦している」――。こうした経営課題の根底には、コーポレートブランディングの問題が隠れているかもしれません。
コーポレートブランディングは、企業理念や価値観を中長期的に発信し、企業ブランドの価値を向上させ、競合他社との差別化を図るために重要な経営戦略です。その価値を最大化し、確かな成果へつなげるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
今回は、コーポレートブランディングの定義や目的、効果のほか、強化するための6ステップ、成功させるポイントなど、コーポレートブランディングの成功につながる要点を解説します。ぜひお役立てください 。
<目次>
1.コーポレートブランディングとは?
2.コーポレートブランディングを強化する6つのステップ
3.コーポレートブランディングを成功させるポイント
4.コーポレートブランディングの専門家支援を受けるメリット
5.まとめ
1.コーポレートブランディングとは?

コーポレートブランディングとは、「企業のブランディングを指し、企業そのもののブランド価値を広く社会に浸透させ、向上させることで企業競争力を培う経営戦略の一種」です。継続的かつ中長期的な取り組みが求められます。
コーポレートブランディングの目的と効果
コーポレートブランディングの目的は企業ごとに異なりますが、一般的には社内外のステークホルダーとの信頼関係を構築し、企業のブランド価値を高めることにあります。
その結果、展開中の事業や商品の市場におけるポジションを確立しやすくなり、次のような効果が期待できます。
・競争力が強化できる
・資金調達が有利になる
・従業員エンゲージメント(※1)が向上する
・優秀な人材を獲得できる
※1従業員エンゲージメント:従業員が自社に対して持つ「愛着」や「信頼」を指し、ビジョンや経営方針への共感度、仕事への熱意の度合いを表す指標。
コーポレートブランディングを強化する必要性
コーポレートブランディングは従来から行われてきた取り組みですが、近年は特に強化する必要性が増しています。その背景として、市場の変化と競争激化のほか、特に信頼性やパーパス(社会的な存在意義)がより問われるようになったことが挙げられます。
企業の利益最大化ではなく、SDGs(持続可能な開発目標)のゴール達成への取り組みをはじめとした、社会課題への取り組みや貢献度が評価される時代になりました。そのため、顧客や取引先、投資家の興味関心を引き、信頼を得るために、企業の価値観やパーパスを明確に打ち出し、取り組みを発信していくことが求められています。
2.コーポレートブランディングを強化する6つのステップ

コーポレートブランディングを実施するに当たっては、ぜひ効率的に進め、強化することをおすすめします。次の6つのステップを進めることで、強化することができます。
1)プロジェクトチームの編成
コーポレートブランディングは、組織横断のプロジェクトとして取り組むことが不可欠です。社内の部署横断のメンバーを募り、各メンバーが積極的に意見を言い合える場にすることが重要です。
2)現状把握
目的を明確にした上で、その目的を達成するために現状を把握しましょう。自社ブランドが確立されたゴールをイメージし、何が不足しているか実態を把握します。
現状把握は経営者や顧客、従業員へのヒアリングやアンケート調査、コーポレートブランドデザインの確認を行います。
3)コーポレートアイデンティティ作り
ブランドの格となるコーポレートアイデンティティを立案します。
ここで決めるのは、ビジョンやミッション、バリュー、パーパスなどのステートメントです。
作成手順は、まず自社の現状把握と競合他社の分析を通じて自社の強みや競争力の源泉を確認します。またインタビューで得られた内容をもとにコーポレートアイデンティティを固め、言語化していきます。
4)ロゴやキービジュアルへの落とし込み
コーポレートアイデンティティをロゴやキービジュアルへ落とし込みます。
5)実施・運用~社内外への浸透
ブランディング施策を検討し、実施します。
まずはコーポレートアイデンティティの浸透のために、Webサイトや商品デザインの社名やロゴの変更、ブランディング広告やプレスリリースの発信などを行うのが一般的です。
6)フィードバック/効果測定・改善
ブランディング施策の結果、フィードバックを受けて効果測定と改善を行います。
3.コーポレートブランディングを成功させるポイント

コーポレートブランディングは、次のポイントを押さえることで成功につなげられます。
ステートメントの確立
ステートメントをしっかりと確立することが何よりも優先事項です。ステートメントとは、ビジョンやミッション、バリュー、パーパスなどを指し、ブランドの軸となるものです。この基盤は社内のステークホルダーすべてが納得するものを固めましょう。
対象顧客のインサイト(※2)深掘り
ブランディング対象となる顧客のインサイトを深掘りし、ターゲットに響くステートメントの設定やコミュニケーション設計を行いましょう。そうすることで、真の意味での共感と信頼を生み出すことができます。
※2インサイト:消費者自身も気づいていない無意識の心理。本人が気づいている顕在ニーズや、本音のところにある潜在ニーズを起こすスイッチのような役割を果たすといわれ、消費者の購買意欲を引き出すのに重要視されている。
全従業員への理解・浸透
対外的なアプローチはもちろんのことですが、社内の全従業員へと理解・浸透を促すことが先決です。なぜなら従業員こそブランドの発信源であり、ブランド体現者であるためです。勉強会や研修、ワークショップなどを計画しましょう。
長期的な視野によるKPI効果測定・改善
ブランディングはKPI測定を行い、改善を繰り返す長期的かつ継続的な取り組みが重要です。KPIとしては主に次のものが使われます。
・新規接触率 :これまでブランドを知らなかった層に、どれだけアプローチできたかを示す指標。
・ブランド認知率:ターゲット市場において、自社ブランドがどれだけ知られているかを示す指標。
・ブランド想起率: 「〇〇(業界名)といえば?」という質問に対し、自社名が挙がる割合。
・NPS(Net Promoter Score):顧客が自社を他者に推奨したい度合いを数値化した指標。
・問い合わせ数:ブランディング活動を通じて、興味を持った潜在顧客からの連絡数。
・商談数/成約数:ブランディングが実際のビジネス成果にどれだけ結びついたかを示す指標。
・顧客満足度:提供する商品やサービスに対する顧客の満足度。
専門家の知見・ノウハウ活用
コーポレートブランディングを進めるに当たっては、専門家の知見やノウハウを活用することで大きな成果につながります。ブランディングにかけるリソースの最適化はもちろんのこと、客観的な視点でアドバイスをもらえるのもメリットの一つです。
4.コーポレートブランディングの専門家支援を受けるメリット

コーポレートブランディングを推進しようとすると、一般的には多くの壁に当たります。そのため、コーポレートブランディングの専門家に支援を受ける場合、大きなメリットとして、次のようなものが挙げられます。
コーポレートブランディングの戦略立案や実行における課題を解決できる
コーポレートブランディングの推進には、「客観的な自社の強みが見出せない」「時代に合ったブランドコンセプトが描けない」といった戦略立案の壁や、「専門部署がなくリソースを割けない」「従業員の共感を得られず、活動が形骸化してしまう」といった実行面の壁が立ちはだかります。専門家は豊富な実績とノウハウをもとに、これらの課題を乗り越えるための具体的な道筋を提示し、実行まで伴走することが可能です。
より正確にブランドイメージを構築できる
ブランディングはイメージ戦略であることから、ブランドイメージにそぐわない取り組みやメッセージが一つでも含まれていると、本来伝えたいブランド価値観が正しく浸透しなくなってしまいます。より正確なブランドイメージを世間に構築するためにも、第三者の視点と知見を取り入れることが有効です。
データ・調査・分析の精度向上
ブランディング活動には、対象顧客のニーズやインサイトなどのデータ分析が前提となります。社内では実施がむずかしい場合も多く、精度向上のためにも専門家による支援は有効です。
「設計」と「アウトプットの施策(例:グラフィック・商品制作)」を一貫して委託も可能
ブランディングに関するコンサルティングと同時に、ロゴイメージやビジュアル面の制作、広告クリエイティブや商品への落とし込みなどもあわせて委託できるサービスもあります。改めて制作会社に依頼するよりもブランドイメージやアイデンティティのずれが生じにくく、トータルコストを考えた際のコスト削減にもつながるでしょう。
まとめ
コーポレートブランディングは市場において企業競争力を高めるために重要な取り組みです。その目的を達成するには、顧客や社内の浸透や効果的なステートメント、KPI測定・改善などを通じてプロジェクト単位で中長期的に進めていく必要があります。
一方、直面するノウハウやリソース不足などの課題に対しては、専門家の支援を受けることも有効です。専門家の支援を受ける際には、ぜひTOPPANへご相談ください。
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2025.10.09