コラム

異次元の少子化対策とは?
自治体が知るべきポイントをわかりやすく解説

少子高齢化が進んでいる我が国では、近年、少子化への対応策が国と自治体を通じて急速に進められています。若年人口が急減する予測も立てられていることもあり、今のうちから少子化対策に力を入れておく必要があります。2023年1月には岸田文雄首相(当時)が「異次元の少子化対策」を進めることを発表しました。
今回は、異次元の少子化対策の概要と主な支援策、対応課題について、押さえておくべきポイントをご紹介します。


■異次元の少子化対策とは

異次元の少子化対策の概要を確認していきましょう。

 ●異次元の少子化対策とは?
異次元の少子化対策は、少子化問題が深刻化する中で、待ったなしの状況であることから、本格的に進める方針の「次元の異なる」少子化対策です。2023年5月には「第8回こども未来戦略会議」が行われ、子ども・子育て政策の強化が検討されました。
2030年代に入ると、若年人口は現在の倍速で急減することが懸念されていることから、2030年代に入る前の取り組みが鍵を握ります。

●異次元の少子化対策の主な4つの項目
異次元の少子化対策としての、子ども・子育て政策は、主に4つの項目にて打ち出されています。
・子育ての経済的支援
・全ての子ども・子育て世帯を対象とする支援の拡充
・共働き・共育ての推進
・安定財源の確保と予算倍増

児童手当などの子育てに関する経済的支援を強化すると共に、産前・産後ケアや幼児教育などの質向上などの支援の拡充などが検討されています。また共働き世帯に向けては、育児休業を取りやすい職場づくりや働き方改革を推進することで支援します。
そして対策自体の取り組みを加速するべく、安定財源を確保し、子ども家庭庁予算の倍増が目指されています。

■異次元の少子化対策の主な支援策

異次元の少子化対策の4つの項目それぞれについて、主な支援策の内容をご紹介します。

1.子育ての経済的支援

 ●児童手当の抜本的拡充
児童手当は従来の所得制限が撤廃され、支給期間が高校生年代まで延長されました。
すべての子ども・子育て世帯に対して、下記の金額が給付されます。
・0歳から3歳未満:月額15,000円
・3歳から高校生:月額10,000円

 ●出産育児一時金引き上げ、低所得の妊婦への初回産科受診料の費用助成など
出産育児一時金が42万円から50万円へと引き上げられました。また、低所得の妊婦への初回産科受診料の費用助成を行っています。2024年度からは、遠方の分娩取扱施設で出産する必要がある妊婦に対する交通費などの費用助成が始まっています。

●高等教育費の負担軽減
教育費が負担できないことで、子どもを産むのをためらう声を受け、高等教育費の負担軽減として2024年度に下記などを行います。
・授業料等減免・給付型奨学金の対象拡大
・大学院修士段階における授業料後払い制度の創設
・貸与型奨学金の毎月の返還額減額の制度について、年収要件の柔軟化など
・2025年度から多子世帯の学生などについて、国が定める一定の額までの大学無償化

●年収の壁への対応
いわゆる「年収の壁(106 万円・130 万円)」、つまり年収が一定額を超えると、扶養から外れてしまうことが懸念され、十分に働けないと考える人がいる問題があります。この課題に対しては、短時間労働者への被用者保険の適用拡大、最低賃金の引き上げ、制度の見直しなどが示されています。

●住宅支援の強化
住宅に関する支援として、今後10年間で、子育て世帯等向けの住宅を約30万戸用意するほか、住宅ローンのフラット35について、子どもの人数に応じて住宅ローン金利を引き下げる制度(フラット35子育てプラス)を開始しました。

2.全ての子ども・子育て世帯を対象とする支援の拡充

●伴走型相談支援と産前・産後ケアの拡充
安心して出産・子育てができるように、住まいの市区町村にて、妊娠・出産前後の3回、面談を行います。1回目と2回目の面談を受けると、合計10万円相当のギフトを受け取ることができます。その他、産後ケア事業の実施体制の強化策も進められています。

●幼児教育・保育の質の向上
保育園などの現場の職員配置基準について、保育士1人が見る1歳児を6人から5人へ、4・5歳児は30人から25人へと改善し、保育士の処遇を改善するなど質を向上させる取り組みが行われています。

 ●子どもの貧困対策・ひとり親家庭の自立促進
貧困対策として、子どもの生活支援や学習支援の強化や、ひとり親家庭に対する児童扶養手当の拡充、就業支援、養育費確保支援など多面的な支援によって強化されます。

3.共働き・共育ての推進

 ●育休手当の給付率を手取り10割へ
2025年から育児休業の取得促進のため、給付率が現行の67%(手取りで8割相当)から、80%(手取りで10割相当)へと引き上げられます。

●柔軟な働き方を選択できる制度
子どもが3歳以降、小学生就学前までの場合、短時間勤務・テレワーク・フレックスタイム制・新たな休暇など柔軟な働き方を選択できる制度創設を推進します。

 ●時短勤務への新たな給付創設
時短勤務が男女ともに選択しやすくなるように、「育児時短就業給付」を創設。子どもが2歳未満の期間に時短勤務を選択した場合、時短勤務時の賃金の10%が支給されます。

4.安定財源の確保と予算倍増

 ●子ども・子育て支援金制度
歳出改革と賃上げを行い、実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で子ども・子育て支援金制度を構築。全体として、実質的な負担は生じないとしています。

 ●子ども・子育て予算の倍増
3年越しで行われる「加速化プラン」の予算規模は3.6兆円程度の見込みであり、こども家庭庁の予算は約5割増加する見込みです。2030年代初頭までに、こども家庭庁予算の倍増が目指されます。

■異次元の少子化対策の対応課題

異次元の少子化対策を受け、自治体が対応するべき事柄も増えてきます。そうした中、次のような課題が挙がってくるものと考えられます。

 ●児童手当引き上げなど給付金関連の窓口対応の増加
児童手当の引き上げなどの施策がいくつか行われていることから、引き上げに関する対応はもちろんのこと、給付金関連の窓口に対して、住民から自治体への問い合わせ増加が予想されます。窓口対応をいかに効率的かつ、住民のニーズを満たすように実施していけるかが問われています。

 ●近隣自治体との情報共有と連携強化
近年は、DX推進や人手不足、働き方改革などを背景として、自治体において情報システムの標準化・共通化が推進されています。異次元の少子化対策の各事項を実施する際に、近隣自治体との情報共有と連携強化はますます求められてくるでしょう。システム移行に一部遅れが見られる現状課題を受け、今後はさらに加速していく必要があります。

 ●人手不足
自治体は、地域の実情を踏まえながら、それぞれに最適な施策を推進していくことが求められています。こうした中、近年、問題になっている人手不足の課題がより深刻になっていく可能性もあります。

これらの課題を受け、自治体は他の通常業務に支障をきたさないよう体制を整える必要があります。そうした中、手助けとなるのが、BPOサービスの利用です。

BPOは「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の頭文字を取った言葉で、業務やビジネスプロセスをBPOサービス提供企業に外部委託することを意味します。近年、自治体においてもサービスの利用が進んでおり、アウトソーシングの領域を超えて、業務改善や業務改革を見据えて行われるのが特徴です。
自治体窓口業務などは特にBPOが活用できることから、今後、利用がさらに進んでいくことでしょう。

■まとめ

異次元の少子化対策の概要や課題をご紹介しました。出産・育児を行いやすい社会に向けて本格的に取り組むフェーズにきている一方で、自治体内での人手不足などの課題はより深刻になっていくと考えられます。政策が滞りなく進むように、BPOの活用など柔軟な対応を行うことが一つの解決策となり得るのではないでしょうか。

TOPPAN BPOでは、給付金関連業務をはじめとした自治体支援のBPO実績が豊富にございます。自治体向けにさまざまな業務にご対応するサービスをご提供しておりますので、お困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。

子育て支援_画像バナー.png

幼保画像バナー.png

給付金BPO_画像バナー.png

HybridBPO_画像バナー.png

2024.12.13