コラム

自治体における窓口DXの
メリットと課題とは?住民満足度を
高めるポイントを解説

自治体で強力に進められているDXのうち、窓口DXは住民サービスの向上と業務効率化をより一層高めるために重要な取り組みです。
今回は、窓口DXにフォーカスし、自治体における現状とメリット、課題、課題解決のポイントをご紹介します。


■自治体で進む窓口DXの現状

まずは自治体で進められている窓口DXの現状から見ていきましょう。

●自治体の窓口DXとは?
自治体の窓口DXとは、単なる行政手続きのオンライン化やITツールの導入に留まらず、デジタル技術を手段として行政サービスの在り方そのものを住民起点で抜本的に変革する取り組みを指します。

DXの本質は、デジタル化によって組織の文化や住民の生活をより良いものへ変容させることにあります。自治体における窓口業務においては、これまで当たり前だった紙の申請書や対面での本人確認という物理的な制約をデジタルで解消し、住民が場所や時間に縛られず手続きを完結できる仕組みを構築します。

現在、政府が進める地方公共団体情報システムの標準化・共通化も窓口DXを支える大きな基盤となっており、システムを統一することでデータ連携を円滑にし、一度の入力で済むワンスオンリーの実現も目指されています。

自治体は単なる手続きの場ではなく、住民一人ひとりのニーズに寄り添った付加価値の高いサービスを提供する組織へと進化することが期待されているのです。

●自治体の窓口DXの手法の具体例
自治体の窓口DXの手法には幅広いものがあり、具体例としては次のものが挙げられます。

・国による「自治体窓口DXSaaS」
・窓口DXツール導入
・AI通訳や遠隔通訳
・RPAなどによる業務プロセスの自動化
・BPOの利用

全般的に、ツールやAI・RPAなどの先端技術による窓口業務のデジタル化および効率化が進められています。

またデジタル庁は、「自治体窓口DXSaaS」を構築し、自治体窓口DXを推進しやすくするための機能をSaaS(Software as a Service/インターネット経由で利用可能なソフトウェア)として提供しています。複数事業者が政府共通のクラウドサービスであるガバメントクラウド上に、窓口DXに役立つSaaSを展開しており、自治体が活用できるようにしています。

また、近年、BPO(Business Process Outsourcing/ビジネス・プロセス・アウトソーシング)と呼ばれる、業務やビジネスプロセスを民間企業に外部委託する手法が取り入れられています。業務改善や業務改革を見据えて自治体の窓口業務を代行してもらうものです。

●自治体で窓口DXが求められる背景

窓口DXが急務とされる背景には、深刻化する人手不足と住民ニーズの高度化という、現場が抱える切実な課題が複雑に絡み合っています。

・住民の課題
住民側は、民間サービスにおいて24時間365日スマホ完結が当たり前の環境にあります。そのため、平日の日中にわざわざ窓口へ赴き、手書きで書類を作成して長時間待機するという従来のスタイルに強い不満や負担を感じています。 加えて、政府の政策的後押しもあり、物理的な移動を伴わない「行かない窓口」や、入力の手間を省く「書かない窓口」の実現は、利便性向上のみならず、持続可能な行政サービスを維持するための不可欠な使命となっているのです。

・自治体職員の課題
人口減少に伴い職員数が減少する一方で行政需要が多様化する「2040年問題」が迫っており、限られたリソースでの効率的な運営が不可欠です。従来の紙ベースの業務は、書類の誤記確認や対面での説明に膨大な労力が割かれ、職員の精神的・肉体的な負担となっています。

窓口DXは、これらの課題を解決できる有効な手段ととらえられています。

■自治体における窓口DXのメリット

自治体が窓口DXを進めることにより、次のようなメリットが得られると考えられます。

●住民の利便性向上
窓口DXを進めることで、先に挙げた住民の課題を解決でき、利便性や満足度の向上に寄与します。手続きのオンライン化が実現すれば、窓口に赴き、手書きをする手間、待ち時間のストレスなどが低減されるでしょう。

●自治体における業務効率化、人手不足への対応
自治体や職員にとっても、先に示した課題を解決できるメリットがあります。少ない人員で対応でき、さらに記入方法の説明はあらかじめWeb上に用意しておくなどすれば、その都度説明する必要もなくなります。デジタル化によって対応範囲が減り、標準化できる可能性も高まるでしょう。

●手続き・申請状況の把握による透明性向上
窓口DXが進めば、現在の手続き・申請状況の進捗を容易に追えるため、把握しやすくなります。その結果、窓口業務フローの透明性が向上するメリットもあります。

●多様な言語への対応
窓口での外国人対応も、デジタル化によって多言語に翻訳するなどして案内が容易にできるようになります。外国人の住民にとって利便性が高まるのはもちろんのこと、自治体職員側の外国人対応の負荷も低減されるでしょう。

■自治体における窓口DXの課題

一方で、自治体窓口DXを進めるに当たっては、次のような課題に直面しがちです。

●DX人材不足
国内では、DXを推進する際に多くの現場でDX人材の不足が叫ばれています。自治体職員そのものの人数が減っているのに加えて、先頭を切ってDXを推進していける各種技能を持ったDX人材の不足は自治体にとっても大きな課題です。

●セキュリティ対策の困難さ
窓口業務では、個人情報を始めとした住民の情報を取り扱います。そのためセキュリティ対策は非常に重要です。通常よりも高いレベルで構築する必要のあるセキュリティ体制の実現は、民間の専門的な技術や知見を用いずにはむずかしくなっています。

●組織内のアナログ文化や抵抗
自治体の中には、古くからなじんできたアナログなやり方に利便性の高さを感じている職員が、一定数存在します。またこれまでの業務のやり方を急に変えるといったときには、どのような場合でも抵抗が生まれるものです。自治体においても同様に組織内に根付くアナログ文化や、心理的な抵抗が窓口DX推進の障壁となります。

●財源の確保
DXを進めるにはシステムやツール導入のためにコストがかかるため、財政に問題を抱えている自治体において財源の確保は重要課題となります。限られた財源で、いかに進めていくかが問われています。

■自治体における窓口DXの課題解決のポイント

自治体が直面する窓口DXの課題は、次のようなポイントを踏まえることで、解決につながると考えられます。

●DX人材の確保
DX人材の確保が急務といえる中、自治体職員のITリテラシーやスキルの向上が課題解決策の一つに考えられます。しかし、人手不足や業務負荷が高い状況の中で、教育機会を設けることすら困難な状況もあるでしょう。その場合には、民間企業など、外部の優秀なDX人材とつながり、サポートしてもらうことも有効な手段といえます。

●財源の確保
財源の確保については、補助金や助成金を活用する方法が考えられます。政府は積極的に補助金や助成金制度を設けているので、自治体DXに利用できるものを利用するのも一つの方法です。

●組織的かつ長期的な取り組みを行う
アナログ文化や心理的抵抗への対策としては、自治体内の一部ではなく、全組織的に体制づくりを行うこと、そして長期的に進めていくことがポイントです。
あらゆる部署から人員を集め、計画立案を長期的に行うDX推進体制を作ることが理想です。

●BPO・BPRの積極的な活用
民間企業への委託を積極的に活用することもおすすめです。業務改善・改革まで含めたアウトソーシングであるBPOや、業務フローを抜本的に見直して、既存の仕組みや習慣を再構築するBPR(Business Process Re-engineering/ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)を導入することが有効です。ただのオンライン化や窓口対応代行に留まらない、未来につながる体制づくりを実現できるでしょう。

■自治体の窓口DXを円滑に進めるための具体的な推進方法

窓口DXの重要性や解決すべきポイントを理解していても、実際に「どこから手をつければよいのか」と悩む担当者の方も少なくありません。窓口DXは単なるツールの導入ではなく、業務プロセスそのものの見直しを伴うため、場当たり的な対応を避け、計画的なステップを踏むことが成功への近道となります。

●ステップ1:業務の可視化とBPRの実施
窓口DXの第一歩は、現在行われている窓口業務を全て洗い出し、可視化することから始まります。どの手続きにどれだけの時間がかかっているのか、住民と職員の接点でどのような「滞留」が発生しているのかを客観的に把握します。ここで重要になるのが、既存の業務フローをそのままデジタル化するのではなく、業務そのものを再構築する「BPR」の視点です。

●ステップ2:優先順位の決定とツールの選定
全ての業務を一気にDX化するのは、リソースが限られる自治体にとって現実的ではありません。ステップ1で可視化した業務の中から、利用件数が多い手続きや職員の負担が特に大きい業務などを基準に優先順位を決定します。

優先順位が決まったら、次にその課題を解決するための最適なツールや手法を選定します。デジタル庁が提供する「自治体窓口DXSaaS」のような汎用的なクラウドサービスの活用を検討するほか、特定の課題に特化したツールの導入も視野に入れます。また、この段階で自前で運用するのか・BPOなどの外部パートナーに委託するのかという運営体制の切り分けも行います。セキュリティ要件や財源の確保状況を照らし合わせ、持続可能なシステム構成を構築することがポイントです。

●ステップ3:スモールスタートと全庁的な展開
準備が整ったら、まずは特定の部署や手続きに限定して導入するスモールスタートを推奨します。一部の窓口で実際に運用を開始することで、マニュアルの不備や住民の反応をダイレクトに確認し、迅速に改善を回すことができます。初期段階での成功体験を積み上げることは、組織内のアナログ文化や心理的抵抗を和らげる効果もあります。便利になったという実感を職員や住民が共有することで、他部署への展開や全庁的な推進に対する協力が得やすくなります。最終的には、窓口間でのデータ連携やバックヤード業務の完全デジタル化を目指し、長期的かつ組織的な体制でDXを深化させていきます。

窓口DXの推進は、現状の徹底的な分析から始まり、優先順位に基づいた段階的な導入、そして運用の検証と改善というサイクルを繰り返すことが肝要です。このプロセスを確実に行うことで、住民の利便性と職員の業務効率を最大化する「次世代の自治体窓口」が実現します。

■TOPPANによる自治体窓口DXの支援実績・導入事例

窓口DXの成功には、各自治体の規模や直面している課題に合わせた最適なアプローチが不可欠です。ここでは、TOPPANが支援する鹿児島県指宿市の実証実験をはじめ、総務省のモデルプロジェクトに採択された先進的な改革事例をご紹介します。

●鹿児島県指宿市様:低コストで「行かない・書かない」窓口を同時実現
鹿児島県指宿市では、予算や人的リソースが限られる中小規模自治体でも自走できる「指宿市モデル」の構築に取り組んでいます。具体的には、国の行政手続きシステム「ぴったりサービス」を活用し、オンライン申請の拡充と窓口のデジタル化を同時に進めました。

TOPPANは、職員の負担が大きかった申請フォームの登録代行や、運用のための勉強会を通じて伴走支援を行っています。さらに、独自開発の「窓口タブレット申請システム」を導入し、窓口で入力されたデータをオンライン申請と共通のシステムで管理できるようにしました。この改革により、転入などのワンストップ関連手続きにおける記入項目が最大66%減少する見込みとなり、住民の待ち時間削減と職員の事務負荷軽減の両立を目指しています。

●先進自治体に見るフロントヤード・バックヤード改革の多様な形態
総務省のモデルプロジェクトでは、地域の特性に応じた多様な改革が進んでいます。山口県宇部市では、窓口DXSaaSの導入に加え、操作ログなどのAI分析を通じて継続的な業務改善を行っています。兵庫県神戸市では、データ連携基盤を活用して本人確認や審査を自動化する仕組みを構築し、バックヤード業務において年間約660時間の削減を実現しました。

また、山形県西川町のような小規模自治体では、高齢者に配慮し、住民ではなく職員が移動する形式のワンストップ窓口を運用するなど、デジタル郵便や電子申請を組み合わせた「住民に優しい窓口」を実現しています。これらの事例は、窓口DXが単なるシステムの導入に留まらず、業務フローの抜本的な見直しを伴うものであることを示しています。

住民の利便性を高めるフロントヤード改革と、職員の負担を減らすバックヤード改革をセットで進めることが、持続可能な自治体運営の鍵となります。

■まとめ

窓口DXは、自治体と住民が抱える課題の解決につながる重要な取り組みです。すでに多くの自治体では取り組みが進んでいますが、その中で新たな課題に直面しています。そうした課題は、一つひとつ解決策に取り組むことで、長期的に体制が整うと考えられます。

TOPPAN BPOでは、自治体さま向けサービスを多数ご提供しており、窓口DXの強力なご支援が可能です。

例えば「オンライン申請拡充と窓口デジタル化の支援サービス」では、指宿市さまとの実証実験でも活用された「指宿モデル」をベースに、国の「ぴったりサービス」を活用した低コストかつスピーディーなオンライン化を支援します。設定の難易度が高い申請フォームの登録代行や、職員さまが自走するための勉強会実施など、現場に寄り添った伴走支援が特徴です。

また、窓口での「書かない」環境を実現する「窓口タブレット申請システム」では、タブレット入力とオンライン申請データをAPIで統一化することで、住民の記入負担を最大66%削減し、内部事務の効率化も同時に実現します。

このほかにも、子育て支援の取り組みをサポートするサービスや、給付金申請受付業務を代行するサービス、デジタル化を推進して業務改善や業務改革につなげるBPRサービスなど、幅広い範囲にてご対応しております。窓口業務でお困りのことがありましたら、最適な方法をご提案できますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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2026.01.26

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