自治体DXの現状と課題
~進まない理由を克服するためのポイント
自治体は今、DXを力強く推進していますが、総合的に見ればまだ課題が多く、進んでいないといわれています。その背景にはどのようなことがあるのでしょうか。またどのようにすれば克服できるのでしょうか。
今回は、自治体DXの現状と自治体DXが進まない理由、その課題を克服するためのポイントと共に、特にBPOを活用することに焦点を当てて紹介します。
■自治体DXの現状
自治体DXは現状、どのくらい進んでいるのでしょうか。デジタル庁による統計データ「自治体DXの取組に関するダッシュボード」(2024年7月12日付け)よりピックアップしてご紹介します。
●市区町村ごとのDX推進状況
市区町村ごとのDX推進状況のうち、次の3つの分野を確認していきましょう。
・DX推進体制
DXを推進する体制については、「CIOの任命」約73%、「全体方針策定」約50%、「全庁的な体制構築」約65%であり、市区町村の半数以上が着手しています。
・自治体業務DX
自治体業務のDXについては「セキュリティ基本方針策定」約99%、「AI導入」約50%、「RPA導入」約41%、「テレワーク」約60%となりました。セキュリティ基本方針についてはほぼ策定し終えており、これからAIやRPAを導入していく流れがみられます。
・住民サービスDX
住民サービスのDXについては、「マイナンバーカードの保有」約73%、「子育て・介護26手続のオンライン化」約65%、「子育て・介護26手続のオンライン申請利用」0.7%、「よく使う32手続のオンライン化」約32%、「よく使う32手続のオンライン申請利用」約63%となりました。子育て・介護26手続のオンライン化は進んでいる一方で、申請利用がごくわずかです。またよく使う32手続のオンライン化の進捗も遅れているとみられます。
●都道府県のDX推進状況
都道府県ではどうでしょうか。
・DX推進体制
DXを推進する体制については「CIOの任命」約91%、「全体方針策定」100%、「全庁的な体制構築」約98%という状況でした。ほぼすべての分野で順調に進んでいます。
・自治体業務DX
自治体業務のDXについては「セキュリティ基本方針策定」100%、「AI導入」100%、「RPA導入」約93%、「テレワーク」100%とほぼすべて達成されています。
・住民サービスDX
住民サービスのDXについては、「よく使う32手続のオンライン化」約83%、「よく使う32手続のオンライン申請利用」約39%と、まだまだ申請利用が少ない状況があります。
(2024年7月12日更新時点)
■自治体DXが進まない理由とは?
データを見ると着々と進んでいるように見えますが、市区町村において、特に小規模になるとDXの遅れが顕著であるなどの課題があります。自治体DXが進まない理由としては次のことが挙げられます。
●予算不足
DXを推進するためには莫大な予算を要します。しかしDXにだけ予算をかけられるわけではありません。また予算があっても費用対効果を説明できなければ投資することができないのが現状です。
●DX人材の不足
DXを推進するには専門知識と技術を持った人材が必要不可欠ですが、自治体では深刻な人材不足に陥っており、民間企業でさえ不足している中、人材確保はむずかしい状況です。
●他業務に伴うリソース不足
自治体の通常業務をこなしながらのDX推進は、リソース不足を引き起こしています。組織全体で強力に推し進める必要がある中で現実的ではない業務量となっています。
●アナログ・紙文化
地方行政においてはまだまだ紙帳票に手で記入するなどのアナログ文化が残っており、それらを含めたデジタル化には大きな手間と時間を要します。
●世代間のデジタル格差
自治体職員の中でも若年層と熟年層ではデジタル格差が生じているといわれています。熟年層は特に、長年親しんできたやり方を変えることに抵抗を感じるケースも少なくありません。そうした現場の抵抗感とどう折り合いをつけるかも大きな課題です。
■自治体DXが進まない課題を克服するためのポイント
上記の課題を克服するためのポイントをご紹介します。
●DX推進計画における指標・成熟度を正確に把握する
DXを推進するには、何よりもまず推進計画を立て、目標となる指標を数値で明確にし、計測しながら進捗度合いを随時把握することが重要といわれています。その理由としては、組織全体がこの指標をもとに認識を共有することで、一丸となって推進していけるからです。
●DX推進の体制構築・組織的な意識統一
共通認識としての指標を設定すると共に、部署を横断した、組織全体が協力し合える体制づくりを進めることが重要です。同時に、他の自治体との連携を図る意味でも必要になります。このような組織的な取り組みを通じて意識統一を図ることが重要です。
●BPOなどの民間サービス活用による人材確保
BPOとは「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の頭文字を取った言葉です。簡単に言えば、業務やビジネスプロセスを外部委託することです。アウトソーシングの領域を超えて、業務改善や業務改革を見据えるのが特徴です。
自治体のDX人材不足を補填するために、このBPOなどの民間サービスを利用することが考えられます。
●DX人材の採用・育成
DX人材の採用を積極的に進める一方で、人材育成に注力する方法があります。自治体職員の中でも比較的ITスキルの高い人材に絞って研修を受けさせるのも一案です。
●身近な業務の効率化から着手
予算不足や現場の抵抗にあうなどの課題が多い中、身近な業務から順次効率化を進めていくことが賢明といえます。一つの部署で成功すれば他の部署にも横展開しやすくなるでしょう。
■BPO活用による自治体DX推進のポイント
先にご紹介したBPOについては、すでに多くの自治体で活用が進められています。
●自治体BPOでできることの例
自治体BPOでは、例えば次のような業務を代行し、効率化を進めています。
・行政手続きのオンライン化
これまで紙による窓口申請が必須だった手続きも、自宅にいながらスマートフォンを通じてインターネット手続きができるようにするなど、委託先事業者の技術やノウハウを活かし、オンライン化を進められます。
・文書管理・電子決済・業務改善アプリ・システム導入による業務効率化
委託先事業者がサポートしながら、様々なアプリやシステムを導入することで、業務のデジタル化を図ることができます。
・RPAやAI-OCRなどを用いた業務改革
RPAによってロボットがデスクワークの一部を自動化したり、AI-OCRによって紙文書をスキャンしてテキストデータを高精度に取り出してデジタル文書化したりすることで業務改革を行うことができます。
・マイナンバーカードの普及促進
国はマイナンバーカードの普及を急いでいますが、平日日中の窓口での手続きが困難な住民に対して、委託先事業者ならではの資源とノウハウを用いて、商業施設や地域センターなどにマイナンバーカード受付窓口を増設する試みが行われています。
●自治体BPOでDXが促進された事例
自治体がBPOを利用することで、DX促進につながった先進事例を2つご紹介します。
1.大規模なワクチン接種におけるデジタル化
ある自治体では住民に対する大規模なワクチン接種を進める必要があり、集団接種に係る会場設営と運営業務をBPOにて進めました。
相談や接種予約の窓口としてコールセンターを設け、住民からの電話問い合わせや予約申請に対して柔軟に対応。またAI-OCRを活用した予診票の内容確認およびデータ化、ワクチン接種記録システム用登録データ・医療機関請求用データの作成などを効率的に実施しました。
集団接種会場においては従業者確保による設営・運営業務を効率化し、全体を通じて自治体職員の支援およびデジタル化による業務効率化を実現しました。
2.ノンコア業務への職員負荷を軽減し住民サービスの向上へ
ある自治体の行政事務センターにおいては、人手不足が深刻化する中、多様化・高度化する住民ニーズへの対応や近年の感染症対策の必要性などを背景に、職員をより重要性の高い業務に従事させる必要がありました。そこでBPOを利用し、職員でなくとも対応可能なノンコア業務を委託しました。
BPO事業者は申請受付処理やデータ入力などの定型的な業務へ集中して対応し、デジタル化・自動化を通じて工夫することで業務効率化・高度化を実現。個人情報を取り扱う上で高いセキュリティ体制も構築しました。
結果、職員でなければ対応できないコア業務への人的リソース配分が可能になりました。
■まとめ
自治体DXが進まない理由と対策、BPO活用によるDX促進の可能性や事例について解説しました。現状においても自治体DXは加速していますが、今後はさらに加速させていく必要があります。
そうした中、BPOはさらに大きな助けとなっていくと考えられます。ただの人員補填の意味合いを超えて、長い目で見た業務効率化・高度化、業務改善を目指して、活用してみてはいかがでしょうか。
自治体BPOの利用をお考えの方は、ぜひTOPPANにご相談ください。
TOPPAN BPOでは自治体さま向けに様々な業務にご対応するサービスをご提供しております。お困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
2025.01.16