コラム

【徹底解説】模倣品対策の基礎
~第1回 模倣品対策の方法~

市場において、製品の偽物が発生・流通する「模倣品問題」。
模倣品の存在は、正規品の売上を毀損するだけでなく、消費者に実害を与えイメージダウンを招くなど、自社ブランドを展開する企業にとっては大いに頭を悩ませる問題です。
一般的に模倣品と言えば、有名なハイブランド品のような高級品かつBtoC市場のみで発生していると思われがちですが、実際には中価格帯の日用品や消耗品、BtoB市場が主である機械部品等においても発生しており、その被害規模は大きいものです。

模倣品対策の情報課題と本コラムの主旨

一方で、模倣品問題はその深刻さや被害規模の広さに反してあまり体系的な分析・論述がされていない、という現状があります。
いくつかの企業は模倣品対策サービスを提供していますが、それぞれ自社の提供するサービスの説明に終始しており、模倣品問題を俯瞰的に眺め比較検討するようなコンテンツが存在していないのが現状です。
これにより、模倣品の対策を行おうとする企業様においては、模倣品への対策内容を比較検討できず「本当にこの対策が有効なのか」「状況に対して不十分もしくは過剰なのではないか」という不安を抱えることも少なくありません。そしてその結果、模倣品対策の導入に二の足を踏んでいるという状況が見受けられるのです。

この状況を受けて、本コラムでは模倣品問題についてその解決方法を提示することを前提に、さまざまな角度から分析・網羅的に提示し皆さんに比較検討いただけるような情報をお伝えすることを目的とします。
第一回としましては、模倣品問題について誰もが知りたいであろう「解決方法」について紹介していきます。

模倣品問題にお悩みの企業様、担当者様が取るべき行動の参考になれば幸いです。

模倣品対策の方法

まず初めに理解いただきたいのは、現状、模倣品を短期的に根絶する方法は無く継続的な対策が必要であるということです。
模倣品は、当然のことながら企業の目が届きにくいところで行われるため、その実態や規模の把握が困難です。特に日本企業の製品の場合、国外で発生することが多く、物理的・文化的な距離の遠さも把握の困難さに拍車をかけています。

模倣品は、市場から撲滅できたとしてもそこまでに数年の期間を要すのが一般的です。また、再発を防止するために対策を継続することも必要になります。
これらのことから、模倣品対策は短期的に「実施する」というよりは、長期的に「運用する」という視点が必要になってきます。

それでは、もし商品に模倣品が発生したらどのような対策方法が考えられるのでしょうか。
現状世間で存在・実施されている方法を、実施までの準備期間別に紹介します。

●すぐに実施可能な方法

・告知
模倣品の存在が確認された場合にまずすべきことは、その存在を消費者に「告知」することです。
模倣品を使うことで消費者が不利益を得てしまうことを防ぐとともに、企業が模倣品を把握しておりそれを許さない企業姿勢を持っているというアピールにつながります。
告知方法は自社HPやプレスリリース、各種広告媒体が考えられますが、広く告知できる方が良いのは間違いありません。
また、実際に模倣品が出ている国・地域のメディア・言語を用いることも検討すべきでしょう。
商品自体に直接模倣品への注意喚起メッセージを書くという方法も有効であり、実際に行われたケースもあります。

●準備期間半年程度で実施可能な方法

・商品に正規品の目印を設ける
商品にホログラムや製品IDを用いた認証の仕組みなど、いわゆる「正規品の目印」を設ける方法です。
商品に正規品の目印を設け、消費者に購入前に正規品であることを確認できる仕組みとして模倣品の購入を防ぎます。
模倣品対策としては広く用いられている方法で有名キャラクター製品等でも運用されています。

・ECサイト等流通の監視、削除申請
模倣品の流通がインターネット上のECサイト等を通して行われているのであれば、それらの「監視と削除申請」が有効です。模倣品作成者の販路を潰すことで模倣品の流通を阻止するという方法です。
削除申請は、そのECサイトやサービスプロバイダの規約に則り、商品の商標権等を行使することで行います。

・税関での差し止め対策
模倣品が海外で製造され日本国内に持ち込まれているケースにおいては「税関による差し止め」が有効です。税関で対象製品を申請することで、疑わしい物品が確認された場合に申請企業に連絡が入ります。

●準備期間に一年以上要する方法

・権利行使による摘発
模倣品製造業者に対して、商品の持つ「特許権・商標権・意匠権などを行使しその製造を差し止める」方法です。

法的根拠に乗っ取った方法のため成功した際の効力が大きい反面、企業側も根拠となる権利の整備・申請書類の提出など実務的な負荷がかかります。また、その対応が国をまたぐ場合は、現地の法律と言語への対応が必要であり、より高い実務負荷がかかります。

・トレーサビリティによる流通管理
トレーサビリティ体制を構築し「模倣品の入る隙を無くす」方法です。

具体的には、各製品に固有の識別コード(例:シリアルナンバー、QRコード、RFIDタグなど)を付与します。このコードは製品の製造元、製造日時、出荷先などの詳細情報をデータベースに記録し、追跡可能にします。これにより、製品がどのような経路を辿って消費者の手に渡るのかをリアルタイムで把握できます。

医療・医薬品の分野ではこの方法で模倣品の混入を防ぐケースが多数あります。ただし、実施には流通業者含めサプライチェーン全体の協力が必要であり、実施のハードルは高くなります。



現状存在する模倣品対策を方法別に並べると、以下の図のようになります。

最後に

いかがでしたでしょうか。
まずは初回として、現状存在する模倣品対策の手法について述べてみました。

ただし、これらのどれを実施すべきかは製品の特性や模倣品の発生状況によって異なり、正解はありません。これらを効果的に運用するには、模倣品問題に対する理解を深める必要があります。

次回からは、適切な対策方法を定める為に、模倣品問題の実態や被害を詳細に分析し提示していきます。

2023.07.01

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