事例紹介

チケットレス化で生産性が飛躍的に向上!
デジタルクーポン導入ソリューション
「マルチスタンプ®・クーポン」が観光DXを実現

1989年、JR東海グループの旅行会社として誕生したJR東海ツアーズ。東海道(および山陽、九州)新幹線を使った旅行商品の販売や、新幹線を利用したくなるような魅力的な現地観光プランを企画・販売している。

従来は一般的な旅行代理店と同様に店頭でお客様からのご相談を受けながら販売を行っていた。しかし、2023年10月にWeb販売に特化した形態へ業態を変更。現在はWebのみで、JRが提供する新幹線予約「EXサービス」とホテルや観光プランを組み合わせたパッケージ商品「EX旅パック」などを収益の柱としている。Webへの業態変更は「チケットレス化」への取り組みと深く関わっている。Web特化およびチケットレス化への事業変革をどう進め、どのように成功させたのか。 情報システム室 室長 樂 雅氏、同室 担当課長 髙梨 秀章氏にお話を伺った。


紙チケットでの運用がさまざまな問題を生んでいた

株式会社JR東海ツアーズ 情報システム室
髙梨 秀章氏

発券・発送コストや現地での運用が大きな負担に
長らく旅行業界・観光業界では、紙チケットでの運用が主流だった。しかし、紙での運用にはさまざまな問題があった。
「旅行チケットの発券や手配、郵送などの手間やコストが発生し、当然そのための人件費も必要になります。

また、当社は以前から神社仏閣への『特別拝観』などを提供していますが、以前は、まず駅などの集合場所にお客様にお集まりいただいて、そこで名簿から名前を確認することで受付していました。名前が確認できない場合は他の方法で確認したり、その場でお客様からの質問に対応したりするため、受付だけで多くの時間がかかります。その結果、集合時間どおりに集まっても入場までに時間を要し、駅などの人混みの中で人の列ができてしまうので周囲にも迷惑をかけてしまっていました」と、紙チケット運用における課題について髙梨氏は説明した。特別拝観は早朝や夜間に場所を貸し切って実施する場合も多く、さらに、繁忙期には毎日何か所も現地を回らなければならないケースも発生する。こうしたことが現地スタッフの負担増にもつながっていた。

株式会社JR東海ツアーズ 情報システム室
樂 雅氏

紙での運用が観光プラン開発の制約にもなっていた
加えて、紙チケットでの運用は観光プランを開発する際の制約にもなっていた。
「特別拝観などの現地観光プランは、単価がそれほど高くありません。例えば京都の特別拝観なら1,000~2,000円程度、交通チケットなら1,000円未満のものもあります。

毎回発券して発送していると採算が合わないこともあり、プランを拡充するのが難しいという課題がありました。デジタル化することができれば、発送コストなどが不要となり、安価なプランも販売しやすくなります。また、同時に提供できるプラン数も増やすことができます」。樂氏は、このように紙チケット運用の影響が商品プランの企画にも影響を及ぼしていたことを語った。加えて、紙チケット運用の場合は利用枚数のカウントや集計などを手作業で行わなければならないことも負担になる。
「チケットの利用に応じて店舗や施設への支払いが発生するので、以前は利用後に回収した紙チケットを集計し、月締めで当社に送っていただいていました。チケットの種類も多く、それが当社にとっても店舗や施設にとっても、大きな負担となっていました。ある取引先事業者様では、毎月2人が半日かけてすべての券を支店から回収し、集計作業をしているケースもありました」と、樂氏は自社のみならず取引先や利用店舗でも負担が大きかったことを説明した。

「マルチスタンプ®・クーポン」導入がWeb専業へのDXを推進

導入時の負担が軽く旅行プランでの活用に適した「マルチスタンプ®・クーポン」を採用

JR東海ツアーズが、従来の店舗販売からWeb販売に特化した理由には、店舗を構えることで発生する家賃や人件費の問題に加えて、上記に挙げたような紙チケットでの運用によるデメリットも大きかった。さらに、紙チケットの使用が販売機会の損失につながることもあった。

「チケット現物をお客様に渡さなければならないため、すぐに手配して発券し、Web販売の場合は郵送する必要があります。確実にお客様の手元に届けるには、プランの5日前には受注を締め切らなければなりません。しかし、旅行は『明日や明後日にすぐ行きたい』『急に出張が決まった』などの急な需要も多く、こうしたニーズに応えるためにもチケットレス化を進める必要がありました」と、チケットの電子化の経緯について髙梨氏は語った。

チケットレス化を実現するための電子チケットシステムを調査する中で出会ったのが、TOPPANのデジタルクーポン導入ソリューション「マルチスタンプ®・クーポン」だ。

「他社の電子チケットシステムとも比較しましたが、まず決定的だったのが1つのチケットを複数の店舗で利用でき、さらにどの店舗で利用されたかを把握できる点です。他社システムは、特定店舗での利用を前提として設計されているものが多く、1つの電子チケットを複数の店舗で利用できませんでした。これでは当社が提供する『系列店のどこでも利用できるドリンク券』を実現できません」と、選定理由の1つを樂氏は説明した。また、導入時や運用時の店舗の負荷も考慮する必要があった。

「電子チケットを導入する際、通常は認証用の専用端末などを店舗に設置する必要があります。しかしマルチスタンプ®・クーポンの場合は、電子スタンプを用意するか、認証用のQRを掲示するだけで準備が整います。チケットの利用も、電子スタンプを押すかQRを読み込むだけで済むため、導入準備や運用時の店舗の負担が非常に軽いことも重要な選択理由でした」と、髙梨氏は導入店舗側から見た採用理由を説明した。
また、操作が簡単で店舗の従業員にも受け入れられやすかったことや、レポート機能が充実しており便利に使えることも導入の決め手となった。

チケットレス化に向けた取り組みは不可欠

チケットレス化の構想を抱き始めたのは2018年。提携する店舗や施設との調整を進め、2020年にはチケットレス化を試行する段階にまで到達した。そこで便利さを実感すると共に新たな課題も明確になり、コロナ禍の終息を見据えて改めて本格導入に向けた検討を進めた。「やはり紙のチケットのほうが安心できる」という意見もあったが、「コロナ禍の影響で非接触サービスが以前より一般的になったことで、チケットレス化への抵抗感が薄れました。『現場からの意見はすべて改善するから、みんなで覚悟を決めて挑戦しようじゃないか』とはっぱをかけ、マルチスタンプ®・クーポンによるチケットレス化に全社的に舵を切ることができました」。このように髙梨氏はチケットレス化に向けた全社の取り組み状況を振り返った。

マルチスタンプ®・クーポンにより大幅に業務を効率化、事業構造変革にも貢献

1,600を超える観光プランの大半で活用、販売機会や現地オペレーションの課題を解決

マルチスタンプ®・クーポンのデジタルチケットで最も利用されているのが、『ぷらっとこだま』予約時などに付加するドリンク引換券だ。乗車時に駅売店などで提示することで1ドリンクサービスを受けられる。しかし、やはり本命は観光プランでの活用だ。

「当社はJR東海と共に『EX旅先予約』を展開しています。『特別なイベントを独自に企画し、それをきっかけに旅行に出かけてもらおう』という趣旨の旅行商品です。1,600を超える観光プランの大半でマルチスタンプ®・クーポンを活用しています。毎月の利用者数は数万人規模に達しており、本商品を提供するうえで欠かせない存在となっています」と、樂氏はマルチスタンプ®・クーポンの具体的な活用状況について説明した。

これまで、旅程中の列車や宿泊などはチケットレス化が進んでいたが、観光施設の対応は一歩遅れていた。しかし、マルチスタンプ®・クーポン導入によりチケットレス化の最後のピースが埋まったことになる。

「チケットレス化によって当日の観光プランを多数購入いただけるようになりました。その日の天候や気分によって、より自由に旅行を楽しんでいただけるようになり、当社としても販売機会を増やすことができています」と、樂氏は旅行プラン販売の観点から導入効果を語った。

さらに、チケットレス化で処理業務を効率化したことが事業構造にも好影響を及ぼしている。チケットの発券や発送業務が不要になったことで営業費用が大幅に削減され、コロナ禍以降、より利益が見込める事業構造へと変革できた。

「発券や発送などに費やしていた人的リソースは、商品開発やマーケティングなどのクリエイティブな業務に再配分。当社の経営体力を強化するという意味でも、非常に効果があったと考えています」と、樂氏はマルチスタンプ®・クーポンの導入が競争力強化にもつながっていることを評価した。

また、課題となっていた現地オペレーションや事後の集計などのバックヤード業務も改善された。チケットの集計業務は不要になり、現地での受付時間も従来の1/10程度に短縮できた。

新たな機能やアイデアを駆使してさらなる商品拡充を図る

JR東海ツアーズの事業活動にとってマルチスタンプ®・クーポンは必須のツールとなった。しかし、まだすべての機能を使い切っているわけではない。今後は回数券やフリーパス機能なども積極的に活用し、商品ラインナップ拡充を図る考えだ。また、多言語機能を活用したインバウンドニーズへの積極的な対応にも意欲を示している。

JR東海ツアーズでは、マルチスタンプ®・クーポンを単なる施設入場やサービス利用のためだけの手段ではないと考えている。今まで実現できなかった旅行商品を形にしたり、フリーパスの電子化によるチケット売り場の混雑対策など、さまざまな事業課題や社会課題の解決につなげていく可能性を感じている。

最後に

『マルチスタンプ・クーポン』は、システムフレンドリーな設計で、既存システムに組み込みやすい自由度の高さが強みです。O2O施策や会員向け特典の拡充によって顧客のLTV向上に取り組みたい企業様を含め、より多種多様な業種・業態への展開を目指しています。是非、お気軽にお問い合わせください。

2025.05.29