コラム

自治体DXの課題とは?
成功するためのポイントや事例をご紹介

自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、行政手続のデジタル化や行政内部のデータ連係などを通じて、住民の利便性向上と業務効率化を図るものです。しかし、民間企業と比べて自治体のDXは後述するように多くの課題があり、推進が難しいところがあります。
本コラムでは、自治体DXの課題や解決するポイントを解説します。また、成功事例もご紹介しますので、具体的な課題に直面している自治体やこれからDXの実現をご検討されている自治体にとって、参考になりましたら幸いです。


自治体DXとは?

総務省では、自治体DXとは、「行政手続のデジタル化や行政内部のデータ連係などを通じて、住民の利便性向上と業務効率化を図るもの」と定義しています。具体的な取り組みとしては、行政手続のオンライン化やSNSを用いた問い合わせ業務の効率化、自治体業務でのRPAやAI技術の活用などが挙げられます。

●自治体におけるDXの必要性
総務省「地方自治の担い手不足:若者の公務員離れ」によると、一般行政職員の30歳未満の離職者数は9年間で2.7倍となり、2022年では4,244人が離職していると公表されており、採用人数も年々減少傾向であることから人手不足が問題視されています。行政職員の慢性的な人手不足が深刻化すると、従来のアナログシステムではスムーズな行政手続きができなくなることが見込まれます。
また、新型コロナウイルスの感染拡大によって急激に加速したDXへの対応が、地方行政では十分に進んでいないのも課題です。

総務省は2018年に、地方行政が立ち行かなくなるリスクを懸念し、「地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及びAI・ロボティクスの活用に関する研究会(スマート自治体研究会)」を立ち上げました。

自治体DXについては、同研究会が発表した報告書のなかでも言及されており、将来的に地方行政が陥る可能性がある課題を、未然に防ごうとする取り組みともいえるでしょう。

さらに、紙媒体などアナログに保管されていた個人情報を、適切なセキュリティ対策のもとデジタル化することで、利便性や業務の効率を向上させることも必要とされている背景にあります。


参考:地方自治の担い手不足:若者の公務員離れ|総務省
https://www.soumu.go.jp/main_content/000947258.pdf

参考:地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及び
AI・ロボティクスの活用に関する研究会(スマート自治体研究会)|総務省
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/process_ai_robo/index.html


自治体DXが進みにくい理由

自治体DXは、住民の利便性向上と業務効率化を図る重要な取り組みですが、民間企業に比べてあまり進んでいない状況です。2021年にデジタルトランスフォーメーション研究所が実施したアンケート調査によると8割の自治体がDXに未着手と回答し、成熟度は民間企業の半分以下でした。国の施策などにより、2024年には未着手は4割弱まで減りましたが、さらなる推進が必要とされています。
ここでは、まず自治体DXが進みにくい主な理由をご説明いたします

参考:自治体DX調査報告書|株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所
https://www.dxlab.jp/logo

参考:自治体デジタル・トランスフォーメーション (DX)推進計画 【第3.0版】|総務省
https://www.soumu.go.jp/main_content/000944052.pdf

●労働人口不足及び、業務量の増加

日本では、労働人口が減少している一方で、自治体の業務量は増加傾向にあります。総務省の「令和5年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果」によると、職員の時間外労働について全職場合計で月141.1時間となり、月45時間以上の時間外労働をしている職員の割合は全体の4.8%でした。今後も少子高齢化の影響で予測される人手不足の課題に対処するには、デジタル技術を上手く活用した業務効率化が重要です。

参考:令和5年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果|総務省
https://www.soumu.go.jp/main_content/000984529.pdf

●アナログ文化の浸透

自治体では、長年にわたってアナログな業務プロセスが浸透しています。総務省の「情報通信白書」によると、自治体におけるオンラインサービスの利用率は依然として低い水準にとどまっています。例えば、2020年度のデータでは、オンラインでの公的サービス利用率は全体の20%以下という報告があります。
この背景には、「電子申請できる行政手続きが限られている」、「電子申請できることを知らない」、「電子申請の使い方が複雑」等の理由からオンラインの利用が広まっていないことが挙げられ、紙ベースの書類や手作業による処理が自治体、住民ともに主流であり、住民がデジタルサービスを利用するためには、わかりやすいインターフェースやインフラの刷新が求められます。

参考: 令和3年版 情報通信白書|我が国の政府及び地方公共団体における現状|総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd113210.html

デジタル人材の不足・体制の未整備

自治体DXを推進するためには、専門的な知識とスキルを持つデジタル人材が必要ですが、その確保が難しい状況にあります。経済産業省の「IT人材受給に関する調査」によると、IT人材は2030年には最大79万人ほど不足すると公表されており、地方自治体に、デジタル人材が流れにくくなっています。そのため、DXを効果的に推進するための体制が整っていない自治体が多いのが現状です。

参考:IT人材受給に関する調査|経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf

●住民の多様化するニーズ

ライフスタイルの変化やICT(情報通信技術)の進展等により、住民のニーズは多様化しており、対応するためには柔軟かつ迅速なサービス提供が求められます。
現代の住民が求めていることは何か、ニーズを理解するためにも、コミュニケーションを取る必要があります。
また、総務省の「公的分野におけるデジタル化の現状と課題」によると、DX推進に 係る課題として、都道府県・市区町村ともに「財源の確保」を挙げる団体が多く、次いで、「情報 主管課職員の確保」「デジタル専門人材の確保」を課題に挙げる団体が多いようです。
そのため、限られたリソースで効果的なDXを進める方法が求められています。

参考:公的分野におけるデジタル化の現状と課題|総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/n1300000_c.pdf

自治体DXの課題を解決するポイント

1. 現状分析・DXリテラシーの整理

まずは現状の分析が必要です。自治体の業務プロセスやシステム、データの管理状況を徹底的に調査します。この段階で、職員のDXリテラシー(デジタル技術に対する理解度)も整理することが重要です。リテラシーが不足していることが、DX推進の障壁とならないように、職員のスキルレベルを把握し、必要に応じて教育プログラムを計画します。

2. 住民の利便性向上・インフラの刷新

自治体は、既存のインフラを見直し、デジタル技術を活用した新しいサービス提供モデルを構築することが必要です。
オンライン手続きや電子申請の導入に取り組んでいる自治体も多いですが、上述の通り、ユーザーエクスペリエンスを重視した、誰でも使いやすいシステムを構築することが求められます。
また、インフラの刷新には、クラウド技術やIoTの導入をすることで、データの一元管理やリアルタイムの情報共有が可能となり、行政サービスの効率化も期待されます。

3. DX推進体制の整備

DXを推進するためには、専門的な知識を持った人材が必要です。自治体内でDX人材を育成するためのプログラムを設計し、定期的な研修や外部の専門家との連携を図ります。これにより、職員が最新の技術やトレンドに対応できるようになります。
また、自治体DXは一部門だけでなく、全体で取り組む必要があります。部門間の連携を強化するためのコミュニケーションプラットフォームなどコミュニケーションツールを導入し、情報の共有や意見交換を促進することで、DX施策がスムーズに進行し、全体の効率が向上します。

自治体DXの事例をご紹介

これから自治体DXに取り組まれる方への参考として、TOPPANが支援してきた事例を3つご紹介します。

事例1:つくばスマートシティアプリとして採用~茨城県つくば市様~

つくば市におけるスマートシティの取り組みのなかで、市内在住・在勤者に各種情報を提供するスマートフォン向けアプリケーション「つくスマ」としてクラシラセル®をご採用いただきました。

お住まいの地区や年代、家族構成、受け取りたい情報の種類などを登録(任意)すると、その設定条件に応じた情報がプッシュ配信されるほか、各種行政手続きや地図情報等を簡単に探すことができます。また、約140の国・地域の方が生活する国際性・多様性を有するつくば市の特性を踏まえ、多言語表示にも対応しています。

今後、つくばスーパーサイエンスシティ構想の様々な先端的サービスを、ワンストップで操作できるアプリとして活用していく予定です。併せて、シニア向けアプリ講習会の開催など、世代間の情報格差の緩和や解消も視野に入れ、本アプリの普及を図っていきます。

>ニュースリリースはこちら

事例2:デジタル田園都市国家構想交付金事業として採用~宮城県名取市様~

デジタル田園都市国家構想交付金事業で採択された取り組みのひとつとして、名取市公式ポータルアプリ「ナトぽた」にクラシラセル®をご採用いただきました。
今後、住民の「施策認知度の向上」や「行政への住民参画」の促進を図るために、 「ナトぽた」を通じて住民の行政情報へのアクセスを容易にするとともに、住民との双方向のコミュニケーションの機会を創出することが期待されています。

事例3:長野市の住民向けポータルアプリとして採用~長野県長野市様~

デジタル田園都市国家構想交付金事業で採択された取り組みのひとつとして、長野市の住民向けポータルアプリ「ながのプラス」にクラシラセル®をご採用いただきました。
子育てや生活に役立つ情報を、年齢や家族構成など住民の属性に合わせてプッシュ型で発信していくことで、住民のニーズにフィットした情報提供と住民と行政のコミュニケーション機会の創出が期待されています。今後、様々なサービスと連携することで、住民の暮らしをより便利にしていきます。

まとめ

本コラムでは、自治体DXを推進する上での課題やこれから自治体DXに取り組まれる方への参考として、TOPPANがご支援してきた自治体DXの事例をご紹介してきました。
TOPPANでは、自治体さまの事務効率化に長年貢献し、自治体さまが抱える課題解決を官民協働で推進してきました。
業務プロセス改善からデジタルツール導入支援まで、幅広いDXソリューションで解決いたしますので、悩みごとやご質問などございましたら、ぜひ弊社へお問い合わせください。


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2025.01.09