コラム

建築基準法における「防火区画とスパンドレル」の関連性|仕上げ材の種類と特徴を比較

建築設計において防火に関する規定はいくつかありますが、その中で外装デザインと関わりがあるのが「防火区画」と「スパンドレル」というキーワードです。

そこで今回は、防火区画の種類からスパンドレルとの関係性や外装材の種類と特徴、1900年創業のTOPPANが自信を持って提案する外装材について詳しく解説します。「耐久性の高い外装材を採用したい」「環境に配慮した建材を探している」という方は、ぜひ最後までごらんください。


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<目次>

■ 防火区画とは
■ 防火区画におけるスパンドレルとは
■ スパンドレルの仕上げ|建築材料の種類と違い
■ スパンドレルは「金属化粧板」を意味する場合も
■ 防火区画のスパンドレル仕上げ材におすすめ|TOPPANの高耐久&環境配慮型外装材
■ まとめ


■ 防火区画とは

防火区画とは、建物内部で火災時に炎や煙が広がるのを防ぐことを目的に、一定の基準に沿って屋内を区画分けすることを指します。

具体的には建築基準法施行令第112条で区画基準と対象建物の条件(用途・規模など)が定められており、それに沿ったプランニングが必要です。

防火区画には4つの種類があり、それぞれ対象範囲と基準が異なります。

面積区画

面積区画とは、建物の床面積に応じて一定の広さごとに区画分けするかを定めたルールです。

建築物の構造種別と用途によって、1,500・1,000・500㎡以内ごとに不燃性の高い仕上げ材などを用いて空間を区切ることが義務付けられています。

高層階区画

高層階区画とは、建物の11階より上の部分に適用されるルールです。

竪穴区画

竪穴区画とは、階段や吹き抜け、エレベーターシャフト、ダクト等、階層をまたいでつながる空間に適用されるルールです。

竪穴空間とその周りを防火構造で分けることによって、炎や煙が他の階に広がるのを防ぐことができます。竪穴区画は、主要構造部※が準耐火構造で、地階もしくは3階以上に居室のある建物が対象です。

※主要構造部:建築基準法第2条第5項で定められており、壁・柱・床・梁・屋根・階段(建築物の構造上重要でない間仕切壁・間柱・付け柱・揚げ床・最下階の床・小梁・庇などを除く)を指します。

異種用途区画

異種用途区画とは、1つの建物に複数の異なる用途で使用する空間が存在する場合や、複数の建物管理者がいる場合に適用されるルールです。

「耐火建築物等としなければならない特殊建築物(建築基準法第27条)」が対象です。

ただし、例外として国土交通大臣が定める基準を満たした警報設備(自動火災報知機・ガス漏れ火災警報設備・漏電火災警報器など)を設置するなどの措置が講じられている場合は、防火区画の対象から外れるケースもあります。

■ 防火区画におけるスパンドレルとは

建物と建物利用者の火災被害を最小限に抑えるために欠かせない決まりが防火区画で、それと深く関わるのが「スパンドレル※」です。
※建築基準法にはスパンドレルという単語は使われておらず、外部延焼防止帯と表記されます。

スパンドレルとは防火区画の壁や床に接する外壁部分を指し、区画の内側から外側に開口部、外気を介して炎が区画外の窓から回り込んで延焼するのを防ぐ役割があります。

具体的には、以下の部分を高耐火にすることが義務付けられています。

・防火区画の壁ラインを中心に左右45cmずつ、合計90cm以上ある折り返し外壁
・防火区画に接する外壁ラインから50cm以上突き出た袖壁
・防火区画の床ラインを中心に上下45cmずつ、合計90cm以上ある折り返し外壁
・防火区画に接する外壁から50cm以上突き出た庇(ひさし)

【ポイント】
スパンドレルは面積区画・高層区画・竪穴区画のみに対して設置義務があり、該当する範囲は準耐火構造(耐火建築物の場合は耐火構造)にしなくてはならず、国土交通大臣の認定を受けた材料・構造・構法を採用する必要があります。

ただし、異種用途区画および防火区画内の開口部周り、開口部を防火設備とした場合は、スパンドレルを設ける必要はありません。

ちなみに外装全面がカーテンウォールの場合、スパンドレルに該当する部分には外壁の防火関連規定が適用されます。

スパンドレルの範囲に換気口を設置する場合は、FD(防火ダンパー)などの防火設備設置が義務付けられ、防火区画の壁貫通部にはロックウールを充填するなど、延焼を防ぐ工夫が必要です。

■ スパンドレルの仕上げ|建築材料の種類と違い

スパンドレルは原則として準耐火構造もしくは耐火構造にする必要があり、主に用いられる外装仕上げ材は以下の4種類です。

・ガラスカーテンウォール
・窯業系サイディング
・ALCパネル
・金属系外装材

ガラスカーテンウォール

ガラスカーテンウォールとは、ガラスパネルとそれを取り付けるフレーム材をセットにした外壁構造材です。

ガラスは告示により不燃材料として認定されていますが、カーテンウォールの場合は製品(システム)として国土交通大臣より個別認定を受けた製品を選ぶ必要があります。

窯業系サイディング

窯業系サイディングとは、セメントと繊維系原料を混ぜ合わせて成形した外装材で、住宅からビルまで幅広い建築物の外壁に採用されています。

窯業系サイディングを採用する場合も、製品ごとに不燃材料もしくは準不燃材料として個別認定を受けているか確認しましょう。

ALCパネル

ALCパネルとは、Autoclaved Lightweight Concrete(軽量気泡コンクリート)の略称で、コンクリートの約1/4程度の重さであることから、主にS造建築物の外壁材として戸建住宅や中小規模のビルに採用されます。

ALCパネルは告示で不燃材料として認められているコンクリートに含まれるため、どの製品においても不燃材料としてみなすことが可能です。

金属系外装材

金属系外装材は、セメント、コンクリートよりも軽く建物への荷重負荷が少ないことから、様々な建物の外装材に採用されています。

昨今はリアリティのある木目・石目などの色柄を印刷した化粧シート貼りのものも多く、これらは高耐久である上に長期間メンテナンスフリーな点がメリットです。

【ポイント】
TOPPANの不燃アルミ意匠材FORTINA(フォルティナ)※は、環境に配慮したオレフィン化粧シートの上に高耐候なコーティング層を重ねることによって、色褪せや表面のクラックを抑えて、長期にわたる屋外での使用に耐えられる仕様です。

※フォルティナは従来の外装材よりも耐候性の高い「外装R仕様」に加えて、コストを抑えられる「外装F仕様」、「準外装仕様」「内装仕様」をお選びいただけます。

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各外装材の特徴比較

スパンドレルの仕上げ材として採用されるガラスカーテンウォール・窯業系サイディング・ALCパネル・金属系外装材は、どれも不燃性能が高い点は共通していますが、重量や断熱性、施工性、価格などに違いがあります。

ガラスカーテンウォール

窯業系サイディング

ALCパネル

金属系外装材

重量

30kg/㎡程度

33kg/㎡程度

70kg/㎡程度

20〜30kg/㎡程度

断熱性能

(熱貫流率)

3.4W/㎡・K程度

0.29W/㎡・K程度

1.7W/㎡・K程度

1.8W/㎡・K程度

防音・遮音性能

(500Hz透過損失)

35dB

32dB

29dB

31dB

施工容易性

より慎重な作業が必要

材料の重量が大きい

軽量で現場加工も可能

耐久性

(耐用年数)

20〜30年程度で基本的にはメンテナンスフリー

20〜40年だが、5〜15年ごとに塗装やシールの打ち替えが必要

40〜60年だが、5〜15年ごとに塗装やシールの打ち替えが必要

20〜30年程度で基本的にはメンテナンスフリー

材料コスト

使用条件

高さ13mを超える場所はメーカーの仕様から外れる可能性があるため要注意

【ポイント】
金属系外装材は軽量で施工しやすく、高耐久・メンテナンスフリーである点が魅力です。外装材としての断熱性はあまり高くありませんが、建物本体の断熱工事によってその点はクリアできます。

■ スパンドレルは「金属化粧板」を意味する場合も

スパンドレルは屋外での延焼を防止する意味で使われるだけではなく、目透かし張り※用に折り曲げ加工された「金属化粧板」を指す場合もあります。

※目透かし張り:パネル長手方向の継ぎ手に隙間が開くように納める仕上げ方法

【ポイント】
外装用金属化粧板は、外部延焼防止帯であるスパンドレルの仕上げ材にも採用可能です。ただし、金属化粧板自体は告示で不燃材料として認定されていないため、材料選定の際には必ずその製品が個別認定を受けているか確認しましょう。

スパンドレルの主な特徴は以下の通りです。

・アルミニウム合金押出形材で、フラットパネルよりも変形しにくい
・軽量で運搬や施工の効率が良い
・カットなどの加工を現場でもできる
・材料の保管中や施工後の変形がほとんどない
・アルミニウム合金の基材(きざい)の上に化粧シート層や保護コーティング層が施されているため、腐食に強く長期間メンテナンスフリー

これらの特徴によって、日射や雨風に直接当たる環境にも耐えられるため、多くの建物に外壁材として採用されています。

■ 防火区画のスパンドレル仕上げ材におすすめ|TOPPANの高耐久&環境配慮型外装材

TOPPANは1900年創業以来培った技術や経験によって、デザイン性・耐候性・耐久性の高い内外装材を製造しています。

FORTINA(フォルティナ)シリーズは、環境負荷を抑えた化粧シートと、軽量なアルミニウムを組み合わせた内外装用の不燃意匠材です。

【FORTINA(フォルティナ)の強み】

・カラー(柄)は、最新の印刷技術によって再現したリアルな木目・石目・メタルのラインナップ(外装用20種類以上・内装用70種類以上)からお選びいただけます。

・「塩ビよりも製造過程におけるCO2排出量が少ない」「塩素を含まないため燃焼時に有毒が発生しない」「空気汚染の原因物質VOCの一因である可塑剤を含まない」環境負荷の少ないオレフィン化粧シートを表面材として使用しています。

・同カラー・同仕様でルーバー・スパンドレル・フラットパネル・リブパネル(フォルティナレッジ)の形状をお選びいただけます。(それぞれサイズのレパートリーあり)

・内装・準外装・外装(F)仕様に加えて、さらに耐候性をアップさせ、屋外でも長期間「シート表面のクラック・各層の密着低下・絵柄の退色や変色」を抑制できる「外装R仕様」もお選びいただけます。

「不燃認定を受けていて施工性の高い外装材を探している」「環境に配慮した外装デザインにしたい」という方は、TOPPANにお任せください。

■ まとめ

スパンドレルには、防火区画の開口部付近に設ける「外部延焼防止帯」の意味と、仕上げ材として用いられる「目透かし張り用化粧金属板」という2つの意味があります。防火区画を義務付けられている建築物の場合は、不燃材料として認定されている外装材を選びましょう。

TOPPANでは、環境に配慮しデザイン性を豊かにする内外装建材を開発・製造しております。「環境に優しい建築」や「人に長く愛される建物」、「街のシンボルになる建築」の材料選定でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

2025.09.10

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