コラム

海外の事例から見る
教育DX最前線

デジタルテクノロジーを活用して、児童・生徒への指導方法や教員の業務など、教育現場に変革をもたらす「教育DX」。GIGAスクール構想により、ほぼすべての児童・生徒に1人1台端末が支給され、授業や校務への活用が進められています。日本は欧米諸国と比べて教育へのICT活用が10年遅れたといわれますが、海外ではどのような取り組みが行われているのかご紹介します。


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各国が教育DXに取り組む背景

現在学校教育を受けている児童・生徒は、生まれたときからインターネットやスマートフォンなどが身近に存在していたデジタルネイティブ世代であり、今後ますますデジタル活用は浸透していくものと見られます。そうしたデジタル化社会を生きていくうえで必要となる、高度なITリテラシーやスキルを身につけることが求められています。実際、デジタル人材不足のため、子どもだけでなくシニア世代へのリスキリングとしてデジタルを活用した学習を進めている国もあります。

また、デジタルならではの強みを活かした授業や、教育データの活用などICT活用による教育の質や効率性の向上が期待されています。特に様々な事情を抱える児童・生徒に対して、教育バリアフリーをめざすためにデジタルを活用する事例も多く見られます。例えばインドでは視力の弱い児童・生徒のためにズーム機能を強化したタブレット端末を活用、バングラデシュでは点字を書く支援をするアプリの利用なども進められています。

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最先端の教育DXに取り組む海外の事例

海外ではデジタルを活用し、教育DXに取り組んできたICT教育先進国が多く見られます。どのような取り組みが行われているのか、事例をご紹介します。

フィンランドでの教育DXの取り組み

教育へのICT活用をいち早く取り入れ、2000年代にはPISAでトップクラスの成果をあげたことで注目されたフィンランド。具体的な取り組みとして、オープンソースのクラウドプラットフォームやデジタル教材プラットフォームなど、すべての児童・生徒が平等に教育ICTを享受できる環境を国が整備。生成AIを活用した個別学習の提供や、デジタル教材の開発に積極的に取り組んでいます。

例えばVRグラスを活用し、博物館にいるような没入感を取り入れた授業や、ロボット型知育教材を使ったプログラミングの授業などの取り組みが行われています。学校教育にデジタルを取り入れることに対して柔軟なのは、フィンランドが2019年に大学入学資格試験(高校卒業試験)を完全デジタル化したことも影響がありそうです。

また、地方自治体や大学などによる教員向けの研修プログラムも充実しており、デジタルツールを効果的に活用する方法を学ぶ機会を提供しています。その優れたシステムは国内での活用のみならず、教育クラウドサービスなどの教育ICTシステムの輸出が推進されています。
一方で、行き過ぎたICT活用を見直す取り組みも出てきており、適切なバランスを模索する動きに注目が集まっています。

シンガポールでの教育DXの取り組み

シンガポールでは国がSTEAM教育に力を入れており、国家戦略としてデジタルスキル向上を加速させています。その成果もあってか、PISA2022では全参加国・地域中、数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーの3部門すべて1位という驚異的な結果となりました。

シンガポールの教育DXの歴史は長く、1997年にはICT教育マスタープランが発表され、小・中学校へのパソコンの設置やそれを活用した授業が行われてきました。1人1台タブレット・ラップトップの配布を2021年までに実現、質の高いe-learningの整備やデジタル教科書の活用、オンラインプラットフォームの活用などを実施しています。学習システム(LMS)を国が開発し、全国の小中高校に無償で提供。児童・生徒は自分の学習ログを確認することができ、教員も学習状況の把握や学習指導の支援に活用することができます。

特筆すべきは教員のデジタルリテラシー向上のためのサポート体制です。PISAの調査結果でも、シンガポールは教員がICT利用の公的研修を受けた割合が他国と比べてもきわめて高く、テクニカル補助スタッフの設置割合やオンライン学習を支援するプラットフォームの整備率も非常に高くなっています。

オーストラリアでの教育DXの取り組み

オーストラリアもICT教育先進国として知られています。2016年から小学校でのプログラミングやコンピューターサイエンスの授業が必修化されており、ビジュアル言語やテキスト言語などを段階的に学んでいきます。iPadなどタブレット端末を持つことを義務付けている学校もあり、BYODが一般的。宿題も学習プラットフォームを活用して個別最適化された問題が課され、インタラクティブボードやパワーポイントを活用したプレゼンテーションや協働授業が盛んに行われています。
それを実現するために必要なインターネット環境は、国が州や民間と協働して国全域での学校インフラの整備を行っています。

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教育DXが成功している国に共通する特徴

教育DXが成功している国に共通して見られた特徴として、国の強いリーダーシップによる統一されたオンライン学習プラットフォームや学習管理システムなど、学校間で学習ツールやノウハウの共有がスムーズに行える環境や、新技術の導入などに対する迅速な意思決定、教員のデジタルリテラシー向上支援などがあげられます。
日本でも1人1台端末を実現し、AIを活用した個別最適化や自動採点など、学習の効率化や教員の負担軽減に向けた取り組みが急速に進んでいます。海外の事例に学び、良いところは取り入れる時間を確保するためにも、校務DXを加速させることで教員の負担を少しでも軽減することが重要です。

まとめ

教育DXは、児童・生徒一人ひとりに最適な学習体験を提供するための重要なステップです。教育へのICTの活用は長い教育の歴史においてまだ始まったばかりであり、各国で試行錯誤している段階です。成果が出ている取り組み事例から学べるものは取り入れながら学びを拡充させ、アナログとデジタルの程よいバランスを模索し続ける必要があるといえそうです。

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2024.12.23

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